山留め工事とは、地盤の崩壊を防ぎ、工事現場の安全を確保するために不可欠な工事です。
土木業界に長年従事している方や、今後山留め工事を行う予定の方でも、詳しい内容まで把握している方は少ないのではないでしょうか。
そこで本記事では、山留め工事の基本的な内容から、安全な手順や注意点について詳しく解説します。
山留め工事とは
山留め工事は、主に地盤が崩れる可能性がある場所や斜面の掘削時に用いられる土木工事の一種です。
この工事は地盤の崩壊や土砂の流出を防ぐことを目的としており、安全で効率的な工事を行うために重要な役割を果たします。
特に都市部では、地下空間を確保するために深い掘削を行うことが多く、その際に周囲の地盤や建物に影響を与えないための山留め工事が必須です。
山留め工事には、掘削部分の周囲に壁を作ることで土の流出を防ぐ「山留め壁」や、地盤の強度を確認しながら仮設備を設置する「仮設工法」など、さまざまな方法があり、工事の規模や場所に応じた最適な工法を選ばなければいけません。
山留め工事箇所が問題なく維持されているかの確認も重要です。山留めウォッチャーなどを利用すると、スマホでもリアルタイムに施工箇所の異常検知が可能なため、安全管理対策に導入されてみるのもおすすめです。
下記に山留め工事でも度々問題視される、騒音の管理に関する記事を掲載するので参考にしてください。
山留め工事の安全な手順
山留め工事は、しっかりとした計画と安全対策を講じることで、現場の安全を確保して工事も成功させることもできます。
山留め工事の安全な手順は以下の通りです。
- 事前調査と設計確認
- 地盤の強度確認
- 仮説設備を設置する
- 工事中の安全管理を検討する
- 完了後の検査とメンテナンスを実施
ではそれぞれの手順を詳しく解説をします。
①事前調査と設計確認
山留め工事を行う際には、まず事前調査を徹底しなければいけません。
第一に地形や地質のデータを収集して現場の特性を把握することで、適切な設計と工法を選択できます。
この段階では周辺の建物や構造物への影響も考慮し、安全な計画を立てることが重要です。
その後に設計図面や施工計画を慎重に確認し、必要な補強策を取り入れることで地盤崩壊などの施工後のリスクを軽減させることができます。
②地盤の強度確認
次に、地盤の強度を確認するプロセスへと移ります。
地盤の強度が不十分な場合は崩壊や沈下のリスクが高まるため、専門の技術者による地盤調査が必須です。
調査の結果によっては、地盤改良や補強工事が追加で必要となる場合もあります。
この段階での判断ミスは後々の工事全体に影響を与えるため、慎重に調査、確認を行わなければいけません。
③仮設設備を設置する
地盤調査が完了して設計が確定した後は、工事現場に必要な仮設設備を設置しなければいけません。
仮設設備には工事用の足場や支保工、地盤の安定を保つための壁材などが含まれます。
このような仮説設備の設置は工事の進行を円滑にするだけでなく、作業員の安全を確保するためにも重要な役割を果たします。
特に山留め壁を設置する際は仮説設備の設置により、強度と耐久性を十分に確認することが不可欠です。
④工事中の安全管理を検討する
工事を安全かつスムーズに進行させるためにも、現場の安全を確保するための管理体制を整えることが重要です。
特に山留め工事は掘削作業が中心となるため、周囲の環境に与える影響や、地盤の崩壊リスクを最小限に抑えるための安全対策、管理を徹底しなければいけません。
具体的な方法として、定期的な点検やモニタリングシステムを活用し、異常が発生した場合には即座に対処できる体制を整えるなどの方法が挙げられます。
⑤完了後の検査とメンテナンスを実施
山留め工事の完了後も現場の安全性を確保するため、検査とメンテナンスを行うことが重要です。
一度工事が終了したとはいえ、地盤が完全に安定しているとは限らないので、定期的に点検をしなければいけません。
また天候の変化や周辺の状況によって、地盤に予期せぬ影響が及ぶ可能性があるため事前にメンテナンス計画を立て、必要に応じて補修工事を行うことが長期にわたる安全対策となります。
また下記に山留め工事も含んだ、建設工事に係る騒音や振動の規定を解説した記事を掲載するので参考にしてください。
山留め工事の工法
山留め工事には、現場の状況に応じた利用するいくつかの工法があり、状況次第での使い分けが重要です。
ここからは山留め工事の主な工法を下記に表記し、それぞれを詳しく解説するので参考にしてください。
山留め工事の工法 | 特徴 |
法付けオープンカット工法 |
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山留め壁オープンカット工法 |
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地山自立工法 |
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特殊工法 |
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法付けオープンカット工法
法付けオープンカット工法は、比較的安定した地盤で使用される工法です。
この方法は掘削面にある程度の角度をつけて地盤を削る工法で、崩壊を防ぐために斜面を安定させることを目的としています。
大規模な土量が必要となるため、敷地に十分なスペースがある場合に適した工法です。
山留め壁や支保工の設置が不要で、法面を確保できる場合にはコストパフォーマンスに優れた方法ともいえます。
山留め壁オープンカット工法
山留め壁オープンカット工法は掘削部の周囲に山留め壁を設置し、土砂の崩壊を防ぐ方法です。
都市部や周囲に建物がある場所では、この工法が多く利用されます。
掘削部の安全を確保するだけでなく、工事現場の地盤の安定性を向上させることも可能な工法です。
この工法では、鉄筋コンクリート製の壁や鋼製の支柱を用いて強度を確保します。
地山自立工法
地山自立工法は、地盤自体が十分に強度を持っている場合に採用される工法です。
地盤の特性や掘削の深さによって適用可能な範囲は限られますが、工期を短縮しコストを削減できる点が魅力といえます。
特殊工法
特殊工法は地盤の条件が確認しにくい場合など、特殊な要件が求められる場合に用いられる工法です。
例えば深度の高い地下工事や非常に軟弱な地盤での掘削が必要な場合には、特殊工法の代表的な工法である、薬液注入工法やアンカー工法が頻繁に利用されます。
これらの方法は工事の安定性を高めるだけでなく、周辺環境への影響を考慮するための対策として活用されるケースも多いです。
山留め工事の施工前の注意点
山留め工事を行う前にはいくつかの重要な注意点があり、事前に確認することで工事のトラブルを未然に防ぐことができます。
山留め工事で注意しなければいけない点は以下の2点です。
- 許可申請や関連書類に不備はないか
- 近隣住民への配慮を徹底する
ではそれぞれのポイントを詳しく解説します。
許可申請や関連書類に不備がないか
工事を開始する前には、関連する許可申請や書類の提出が必要です。
山留め工事は安全性が重要視されるため、各種法令や規制に基づく申請手続きが必要となります。
特に労働安全衛生法に記載されている建設計画届出など、重要申請を忘れないように注意しなければいけません。
仮に許可申請や関連書類に不備があれば、工事の遅延や罰則を受ける可能性があるため、事前にしっかりと確認しましょう。
近隣住民への配慮を徹底する
山留め工事では掘削作業によって騒音や振動が発生するため、近隣住民への配慮も徹底しなければいけません。
工事前に周辺住民への説明会を開催し、工事内容や予定を説明することで、工事に対しての理解と協力を得ることができます。
また工事中も騒音対策や振動を考慮し、近隣住民への配慮も検討しなければいけません。
現場での有効な振動対策を検討するのであれば、下記の記事を参考にしてください。
山留め工事でよくある質問と回答
山留め工事ではさまざまなスキルやノウハウ、専門知識が必要なので、疑問点がある方も多いのではないでしょうか。
そこでここからは、山留め工事でよくある質問とその回答を紹介するので、実際の施工時の参考にしてください。
一般的には数百万円の範囲で見積もられることも多く、深い掘削が必要な場合や、特殊な工法を施す場合には費用が高くなる傾向があります。
工事を依頼する際は、複数の業者から見積もりを取り、費用や工事の詳細を比較するのがおすすめです。
一般的に工期は数週間から数カ月程度かかることが多く、規模が大きい工事では半年以上かかるケースも多いです。安全第一で工事を進めるためにも事前に工期の目安を確認し、スケジュールに余裕を持たせることが重要といえます。
特に周囲に建物が密集している場合や、地盤が不安定な場合には、安全を確保するために山留め工事を行わなければいけません。また山留め工事を行う際には工事規模に関係なく、事前に専門家に相談するのも重要なポイントです。
山留め工事を安全に進めよう
山留め工事は地盤の崩壊を防ぐための応急的な工事ですが、適切な手順と注意点を抑えて施工すれば、工事全体の安全性を高めることが可能です。
山留め工事においては、工事前の調査や設計確認、施工中の安全管理、そして工事後のメンテナンスまで、すべての段階でしっかりとした対策を講じることが重要です。
山留め工事を安全に進めるために、本記事を参考にして基本的なノウハウを抑えて実践に進んでください。
