製品や設計に関するデータを一元管理するPDM(製品情報管理)システムは、設計部門と他の部署間での情報共有や連携をサポートし、生産性の向上を実現する重要なシステムです。本記事では、PDMシステムとPLMの違いや導入メリット、機能について詳しく解説します。
PDMシステムの基本概念
PDM(製品情報管理)システムとは、設計工程で発生するデータを一元管理するシステムのことです。CADデータやBOM(部品表)などの設計情報を統合することで、設計部門と他の部署間での情報共有や連携を可能にし、生産性の向上を実現します。
3DCAD以外の情報管理も必要とされる設計現場において、PDMシステムはCADデータ以外の設計情報や図面、ドキュメントなども一元管理できることが特徴です。
PDMとPLMの違い
PDM(製品情報管理)とPLM(Product Lifecycle Management)は、製品開発におけるデータ管理を目的とする用語ですが、混同されることがあります。
PDMは、CADデータやBOMといった設計成果物の管理に特化したシステムで、設計作業を効率化します。
一方、PLMは製品企画から設計・調達・製造・販売・廃棄までのライフサイクルにおけるデータを一元管理することを目的としています。つまり、PDMは設計に限定された管理対象であり、PLMは製品のライフサイクル全体に関わる情報を管理します。
PDMシステムの主な機能と特徴
続いては、PDMシステムの主な機能と特徴について紹介します。次の4つにフォーカスして解説します。
- データ管理機能
- ワークフロー管理機能
- 検索機能
- セキュリティ機能
データ管理機能
PDM(製品情報管理)システムは、設計に関わるさまざまなデータを一元管理することができます。具体的には、CADデータや図面、ドキュメント、部品表(BOM)、設計変更管理などです。
これらのデータ同士を紐付けた管理が可能で、たとえば「CADデータに画像データや解析の結果を紐付ける」「製品データに部品データを紐付ける」といった管理方法が考えられます。
また、部品表(BOM)を作成することで、製品ごとの部品の在庫管理ができ、更新履歴の確認も可能です。PDMシステムは、製品設計においてデータの一元管理を実現し、設計部門と他の部署間での情報共有や連携をサポートすることができます。
ワークフロー管理機能
PDM(製品情報管理)システムには、ワークフロー管理機能があります。この機能を使うことで、設計部門内でのワークフローを可視化し、システム上での申請や承認が可能になります。
また、企業に合わせて柔軟にワークフローを変更することができます。ワークフロー管理機能によって、設計部門の業務効率を向上させることができます。
検索機能
PDM(製品情報管理)システムには、検索機能があります。この機能を使うことで、キーワードでファイルや図面を検索することができます。
また、システムによっては、ファイル内の文言での検索やプロパティ情報をもとにした検索も可能です。製品数や情報量が多い企業では、検索機能の質が業務効率に大きく影響するため、PDMシステムの導入時には検索機能の精査が必要です。
セキュリティ機能
PDM(製品情報管理)システムには、セキュリティ機能があります。この機能を使うことで、他の部署に共有したくない情報があれば、データへのアクセスを制限することができます。
また、重要な図面が勝手に変更されることも防げます。ユーザーの権限設定機能を活用することで、誰がどの情報にアクセスできるかをコントロールすることができます。PDMシステムは、重要な製品情報の保護を可能にし、企業の知的財産を守ることができます。
PDMシステム導入すべき4つ理由
ここではPDMシステムを導入した際のメリットについて紹介します。次の4つについてフォーカスして解説します。
- 生産性の向上
- 品質の向上
- 企業の信頼性アップ
- 在庫破棄のリスクの低下
生産性の向上
PDM(製品情報管理)システムの導入は、生産性の向上に大きく貢献します。
従来は、各部署が製品設計データを持ち、情報共有に課題がありました。しかし、PDMシステムを導入することで、製品設計データを一元管理でき、蓄積されたデータの検索や編集、更新が容易になります。また、システム上で各部署が同じデータをリアルタイムで共有できるため、製品設計データの更新があっても迅速に反映できます。
PDMシステムは、製品設計データの二次利用も容易になります。過去製品のBOMを参照した新製品の設計データの作成や、複数の製品に共通するデータの同期が容易に実施できます。これにより、設計変更や新製品の開発期間の短縮、コスト削減にもつながります。
PDMシステムを導入することで、企業の生産性を向上させることができます。製品設計データの一元管理やデータの共有化により、迅速な設計変更や新製品の開発期間の短縮、コスト削減につながるため、競争力を高めることができます。
品質の向上
PDMシステムは品質の向上にも貢献します。
たとえば、設計部門内での共有・管理が容易になることで、設計変更に伴うエラーを防止できます。また、図面の不備や部品表の漏れを防ぐことができます。
さらに、PDMシステムを導入することで、製品設計データの一元管理ができるため、品質管理に必要な情報を正確に取得できます。たとえば、生産現場での不良品の原因を調査する際に、製品設計データの履歴を確認することで、品質改善につながる情報を取得できます。
PDMシステムには品質管理に必要な機能が多数搭載されています。たとえば、部品表管理機能や検索機能、ワークフロー機能などがあり、これらを活用することで、品質の向上を図ることができます。製品設計データの正確な管理と、効率的な情報共有によって、品質の向上につながります。
企業の信頼性アップ
PDMシステムを導入することは、企業の信頼性を高めるための重要な取り組みです。PDMは製品情報を一元管理することができ、製品開発から販売、アフターサービスに至るまでのデータがリアルタイムに共有されます。そのため、製品の品質や信頼性を高めることができます。
また、PDMシステムを使用することで、データの改ざんや紛失を防止することができます。製品情報を正確に管理することで、製品不良やクレームの原因究明や解決につながります。
さらに、PDMシステムを導入することで、ISO認定を取得するための環境を整えることができます。ISO認定を取得することで、製品の品質や信頼性を証明することができ、顧客からの信頼を高めることができます。
PDMシステムを導入することで企業の信頼性を高め、顧客のニーズに応えることができるのです。
在庫破棄のリスクの低下
PDMシステムの導入により、在庫破棄のリスクが低下します。PDMシステムを使うことで製品情報が一元管理され、製品の開発、製造、販売、アフターサービスに至るまで、リアルタイムに情報を共有することができます。
そのため、在庫管理の精度が向上し、過剰な在庫を抱えることなく、最適な在庫レベルを維持することができます。また、PDMシステムを使用することで、在庫品目の把握や期限管理が容易になり、在庫の賞味期限切れによる破棄リスクを低減することができます。
PDMシステムのデメリット
続いては、知っておきたいPDMシステムのデメリットを紹介しましょう。
- 教育コストがかかる
- 費用対効果がわかりづらい
教育コストがかかる
PDMシステムの導入には、社員の教育コストがかかるというデメリットがあります。
PDMシステムは複数の業務プロセスを一元管理できるため、その仕様や使い方が複雑になる傾向があります。そのため、社員がPDMシステムを理解し、効果的に使用するためには、教育コストが必要となります。
社員のPDMシステムに対する理解度が不十分だと、PDMシステムの導入の効果を最大限に発揮できない可能性があります。また、教育コストを削減するために、PDMシステムに関する専門知識を持つ人材を採用する必要があるかもしれません。
そのため、PDMシステムを導入する前に、社員の教育に十分なリソースを充てることが重要です。
費用対効果がわかりづらい
PDMシステムの導入には、費用対効果がわかりにくいというデメリットがあります。
PDMシステムは、製品の全ライフサイクルにおける情報を一元管理するため、管理する対象が多岐にわたります。そのため、定量的な目標を設定しにくいという問題があります。
さらに、社員がシステムに慣れてから導入効果が出てくるため、製品導入の効果を明確に評価することは困難です。
また、PDMシステムの導入には多額の費用が必要になることもあります。
これらのデメリットを克服するためには、導入前に慎重な検討と計画が必要です。PDMシステムの導入には費用対効果がわかりにくいという問題はありますが、導入前に慎重な検討と計画を行うことで、効果的な導入を実現することができます。
PDMシステム導入における注意点とベストプラクティス
続いては、PDMシステム導入における注意点とベストプラクティスを紹介します。
- 課題を整理して全社で共有する
- 段階的に導入していく
- 運用体制を確立する
- 仕組みはなるべくシンプルにする
課題を整理して全社で共有する
PDMシステムの導入にあたっては、まず企業内でデータ管理に関する課題を整理することが重要です。
たとえば、「設計情報を共有することができない」「設計変更の承認プロセスが複雑で時間がかかる」などの課題がある場合、PDMシステムを導入することで効率化が期待できます。
また、PDMシステムの運用には体制の構築が必要です。導入目的や効果を現場に共有し、運用するためのルールや手順を整備することが重要です。さらに、運用するスタッフの教育・研修も必要です。
PDMシステムにより企業内で製品情報を一元管理し、設計変更の承認プロセスや製品の品質管理を効率化することができます。全社的に情報共有ができるため、情報漏洩や誤った情報の使用などのリスクを低減し、より高品質な製品を提供することができます。
段階的に導入する
PDMシステムを導入する際には、一気に全社に展開するのではなく、段階的な導入を検討することが重要です。最初は管理が難しいと思われる一部の部署から始め、システムの使い勝手や現場のフィードバックを受け取りながら改善していくと良いでしょう。
導入の段階を踏み、少しずつシステムを拡大していくことで現場の負担を減らし、システムの使い勝手も向上させることができます。また、優先度の高い情報だけを重点的に管理するなど、段階的に仕組み化していくことが重要です。
全社に一度に導入することは、管理の複雑化や現場での使い勝手の悪化を招くことがあります。導入の段階を踏んで、少しずつシステムを改善していくことで、現場の負担を減らし、システムの使い勝手を向上させることができます。
運用体制を確立する
PDMシステムを導入する際は、運用体制を確立することが重要です。PDMの効果を現場にアピールし、関心を持ってもらうことやPDMの使用方法についての研修、データの分類基準を統一することが必要です。
また、PDM導入後の運用も重要であり、継続的なフォローアップや改善活動を行うことで、システムを最大限活用することができます。
仕組みはなるべくシンプルにする
PDMシステムの仕組みはシンプルにすることが重要です。ワークフローや画面項目が複雑だと、現場が負担に感じてシステムが活用されないこともあります。優先順位をつけて必要性が高い項目に絞り、わかりやすい仕組みを構築しましょう。
おすすめの高品質PLMソフトウェア
最後に、PLMにおすすめのソフトウェアを紹介します。
PTC:Windchill(ウィンチル)
Windchill(ウィンチル)とは、PTC(パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション)社が提供する製造業の製品開発において必要な情報管理を行うシステムです。正式には「PTC Windchill」とも呼ばれています。
製品の企画から生産までのワークフローや部品表、コスト管理、品質管理ができる機能が備えられています。Windchillの導入によって、後戻りのない設計や開発が可能になるため、生産性の向上を期待できます。
Windchillには次のような機能があります。
- 製品データの一元管理機能
- CADとBOMの連携機能
- キーワード検索機能
- 文書管理機能
- 閲覧機能
- CADデータ集約機能
- 変更管理機能
- 工程管理機能
Windchillでは、製品開発に関するデータの一元管理や文書の電子化の実現による業務改善が期待できます。さらに、コストの最適化による無駄な経費の発見と削減に役立ちます。
これからPLMシステムの導入を検討されている方は、この機会にWindchillの導入を考えてみてください。
まとめ
PDMシステムは、製品開発において必要不可欠なデータ管理システムです。設計データの一元管理やワークフローの可視化、検索機能やセキュリティ機能、そして生産性の向上や品質の向上など、多数のメリットがあります。
ただし、PDMシステムの導入には課題の明確化や段階的な導入、体制の構築などの課題があるため、慎重に進める必要があります。今回お伝えした内容も参考にして、PDMシステムの導入を検討してみてください。