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【2023】PLMの「Aras Innovator」とは?機能・使い方・導入企業事例

近年の業務のデジタル化に伴い、製造業ではPLMシステムの導入が急速に進められています。PLMシステムでは、製品開発における時間とコストの削減が可能なことでも注目されています。

しかし、実際にはPLMシステムの導入に至っていない企業も多く存在します。そこで今回は、PLMシステムを採用しているAras Innovator(アラス イノベーター)の特徴から、導入に向いている企業について解説します。

この記事を読んでいただくことで、PLMシステムに対するイメージが明確になるでしょう。

Aras Innovatorの特徴

Aras Innovator

Aras Innovator(アラス イノベーター)とは、アメリカに本社を置くAras社が開発したPLMシステムです。Aras Innovatorを導入することで、製品開発における企画から保守までの製品ライフサイクルの管理や情報の一元管理が可能です。それぞれの部門で徐々に作業を進めながらPLMシステムの構築ができるアジャイル方式を採用しています。

Aras Innovatorは、主に製造業で活用されていますが、近年では医療機器や宇宙開発の分野でも活用実績があります。業種問わず、設計と技術に関わる課題解決に役立ちます。今回は、Aras Innovatorの特徴を2つにわけて詳しく解説します。

導入前に費用不要で評価ができる

Aras Innovatorでは、ライセンス費用が不要なので、高額な初期費用をかけずに導入が可能です。

他社のPLMシステムでは、ライセンスを購入しなければならないため、導入に引け目を感じる企業も少なくはありません。Aras Innovatorは、本格的に導入する前から無料で評価と検証を体験できるため、スモールスタートで効果を実感できます。

さらに、ユーザー数は無制限で、アップグレードに必要な費用を含めたサブスクリプション制で利用できます。他社では真似できないビジネスモデルを採用することで、ライセンス費用の削減に成功しているPLMシステムは、Aras Innovatorが代表的です。

製品ライフサイクルの関連データの紐づけができる

Aras Innovatorでは、製品ライフサイクルに関連するデータを一元管理できるため、業務上で生じる認識のズレや無駄なコストの削減を実現します。従来の管理方法では、作成したデータを独自のルールで管理しながら、紙ベースの資料を正式な文書として取り扱います。

しかし、変化の激しい市場や顧客のニーズに対応するためには、スムーズなコミュニケーションと情報共有が求められます。紙ベースのデータを出力する工程は、業務のスピードを落とす要因となります。

特に、グローバル市場に参入する企業にとっては、スピーディーな対応を求める海外企業との取引に支障をきたす可能性があります。Aras Innovatorを導入することで、後戻りのない高品質な製品開発と企画から市場投入までの時間短縮が期待できます。

今後10年先までの成長には業務のデジタル化が必要不可欠です。Aras Innovatorは、PCにインストールを必要としないクラウドで利用できるため、面倒なシステムの構築は不要です。インターネットとPCがあれば、場所に関係なく必要な情報にアクセスができます。

Aras Innovatorの機能

Aras Innovatorには、主に次の機能が備えられています。

  • 要件管理機能
  • 製品に関わるデータ管理機能
  • 電子部品のデータベース管理機能
  • 品質管理機能
  • 製造プロセス計画のアプローチ
  • メンテナンス管理機能
  • プロジェクト管理機能
  • 技術文書作成機能

それぞれ詳しく解説しましょう。

要件管理機能

近年の製品開発において、製品構成の背景や意図を踏まえた要件管理が求められています。Aras Innovatorの要件管理機能では、設計の詳細から検証までのプロセスの追跡が可能です。多くの製造業の要件管理は、一般的にMicrosoft Office、メールで行われています。

しかし、市場の急速な変化や厳格化を増す規制に対応するためには、従来の要件管理の変化が必要です。結果的に、手戻りが生じたり、無駄なコストが増加したりすることで、利益の減少を招きます。

Aras Innovatorでは、要件管理に関する課題を解決するために、独立したアプリケーションとの連携による情報の一元管理が役立ちます。

製品に関わるデータ管理機能

従来のデータ管理では、製品のBOMデータを分散させることで、十分な情報共有ができないため、製品開発に影響を及ぼすデメリットがあります。図面の修正や変更、設計のやり直し、納期の遅延による顧客との取引中止で失敗に終わるケースは珍しくありません。高度で複雑な製品を市場に投入するためには、BOMの管理が重要になります。

Aras InnovatorのBOM管理機能では、一元管理されたデータベースで有効なソースに関連した正しい情報を適切に管理します。Aras InnovatorにおけるBOM管理は、製品ライフサイクルにおける各工程で必要な業務が可能になります。

データ管理機能を活用することで、企画から保守までの変更管理が容易になります。

電子部品のデータベース管理機能

新たに電子部品を開発するためには、企画の段階から適切なデータ管理が求められます。開発に関連するデータの管理がおろそかになると、無駄なコストがかかり、遅延の原因になりかねません。

製品開発において、電子部品の選定からコンプライアンスまでのプロセスをシンプルにすべきです。担当者にしか理解できないルールでは、業務の属人化を招くため、トラブルの発生時に社内共有が困難になります。

Aras Innovatorのデータベース管理機能を活用すれば、企画から市場に投入するまでの時間短縮を期待できます。また、既存の部材のデータを再利用する際に役立つので、開発に費やす時間とコストを削減します。Aras Innovatorを利用するユーザーにリアルタイムの情報を共有することで、常に新しい情報を取得しながら業務ができるため、結果的に遅延防止につながります。

品質管理機能

Aras Innovatorの品質管理機能では、独自のプラットフォームで設計、製造、変更管理に関するデータをユーザーに提供できます。各地に分散された設計チームの複雑化やシステムの分断、変化を続ける規制環境は、市場と顧客のニーズに合わせた製品開発の妨げになります。

Aras Innovatorを活用することで、製品ライフサイクルの各段階で高品質で信頼性の高い情報管理が可能になります。特に競争力の激しい海外市場に進出する企業にとっては、必要不可欠のPLMシステムとして注目されています。

世界的に知名度が高いPLMシステムを採用することで、情報に対する信頼度が高まります。逆に、国内だけで知られているPLMシステムでは、情報の信用性において海外企業からの評価が低下するでしょう。

また、開発の途中で不適合と判断された場合は、Aras Innovatorで是正措置が行われるため、迅速に設計変更が可能になります。製造の現場に共有されるまでに高品質の状態で納品ができるため、現場故障の割合が低下して最終的に顧客満足度が向上します。

製造プロセス計画

製造業に欠かせないBOMの取り扱いには、十分に注意しなければなりません。特に、電気BOMから機械BOMへの変換作業は、容易ではないため、時間と手間がかかります。

従来の方法では、手作業によるミスが多く、運用管理も大変です。MPPと呼ばれるAras Innovator独自の製造プロセス計画では、電気BOMを機械BOMへ変換を行い、製造現場で必要な組み立て手順に落とし込みが可能になります。

製造現場では、設計部門から共有された手順書をもとに製品を組み立てるため、常に最新の手順書が必要です。設計変更が行われた際に、MPPを活用すると手順書と同期されるので、製造時間の短縮につながります。

また、外部のアプリケーションを必要としないワークフローの作成により、統一化された業務プロセスの可視化が実現します。基本的にシステム上で管理されるので、紙ベースで行われてきた承認作業やファイリングが不要になります。

メンテナンス管理機能

製品開発においてメンテナンスは、必要不可欠な要素の一つです。メンテナンスでは、製品を販売した顧客へのアフターサービスや在庫管理、発注管理を行います。

製品ライフサイクルを円滑に回すためには、消耗品の補充や老朽化した機器の修理や入れ替えが必要です。メンテナンス業務をおろそかにすると、トラブルへの対応が遅くなり、顧客満足度の低下を招きます。

Aras Innovatorには、急なシステムの停止を防ぐメンテナンス管理機能が備えられています。PLMシステムをベースに業務を行う企業にとっては、システムのダウンを回避したいところです。

システム上で管理しているデータは、企業の資産になるため、セキュリティの強化や運用状況の把握を定期的に行う必要があります。従来のメンテナンスは、外部の事業者や担当の部門が行いますが、Aras Innovatorの機能を活用することで今後のメンテナンスの要件と予定の特定が可能です。

プロジェクト管理機能

顧客の要件を定義したとしても、繰り返し仕様の要求や設計変更は必ず発生します。また、技術面の課題やコストを抑えながら遅延を防止するプレッシャーが常にあるでしょう。

製品開発において、プロジェクトに関連するデータの管理は重要視されています。製造業界を先導する企業では、プロジェクト管理と新規企画から市場投入までを管理する国際標準のステージゲート法、そして全体のリスク管理を総合的に組み合わせて成果を出しています。特に、プロジェクトのマネジメントでは、グローバル的な協力体制が必要です。

Aras Innovatorでは、複雑化するプロジェクトの工程管理が可能です。一つのシステムで、成果物を業務プロセスと紐づけることで、スケジュールの可視化に役立ちます。業務における責任が明確になるため、製品開発の時間短縮とリスクの低減により、コストの削減を実現します。

Aras Innovatorを導入することで膨大なデータの一元管理が可能になるため、データの再利用による業務の効率化が期待できます。

技術文書作成機能

Aras Innovatorには、技術文書作成機能が備えられているため、顧客ごとの要件に合わせた資料作成が可能です。

たとえば、カタログのような技術文書を作成するときに、一般的な文書作成システムでは、複数のアプリケーションを参照することが多いでしょう。しかし、手作業によるミスや作業時間がかかるため、非効率的な工程として問題視されています。

Aras Innovatorの技術文書作成機能を活用すると、データベースで管理されている情報を直接利用できるため、効率的な作業を実現します。

Aras Innovatorに向いている企業

これからPLMシステムの導入を検討している企業にとっては、自社の業務プロセスとAras Innovatorとの相性を確認する必要があります。ここでは、Aras Innovatorに向いている企業の特徴について解説しましょう。

部門ごとに異なるCADを使用している

製品開発において常に最新のデータにもとづいて業務を行うため、情報共有にかかる手間や必要なデータを探すための時間は非常にもったいないでしょう。

一つの製品を設計する際には、複数の部門にまたがって情報を取り扱うため、社内のネットワークでは限界があります。情報のアップデートを行うためには、担当者がいなければできないため、業務の属人化が発生します。

多くの製造業では、複数のCADを使用しているケースが見られますが、部門ごとにCADの種類が異なるため、CADデータの管理が複雑化しています。さらに、設計担当者の独自のルールによるデータ管理が行われるため、社内のルール統一化を遠ざけています。

Aras Innovatorの機能は、CADデータやBOM、図面などのデータを一元管理できることで評価されています。また、一つの企業で製造する製品の数は一つではないため、各製品に関連する複数のデータを紐づけた管理が可能です。さらに、データのバージョン管理やユーザーのアクセス権の設定ができます。

設計BOMと製造BOMが連携していない

社内で開発している製品のBOMデータは、複数の部門をまたがって共有されるケースが多くあります。しかし、複数の部門に共通するBOMデータに修正が入ると、更新のタイミングが異なるため、最新のデータの把握が難しくなります。

特に、設計BOMと製造BOMの連携が取れていない企業が多く、業務プロセスに支障をきたすことも珍しくはありません。複数の拠点を持つ企業でデータの共有を行う際に、時間がかかるメールや電話を使用すると、リアルタイム性に欠けてしまいます。また、情報漏洩のリスクが潜んでいるため、従来の情報共有が懸念されています。

Aras Innovatorを導入すると、複数のBOMデータに関連する更新はリアルタイムで同期されるため、常に最新のデータを把握できます。データの一元化による検索性の向上により、迅速な既存データの再利用がスムーズになるでしょう。

トラブル発生時の対応が遅くなりがち

製品の品質管理において、ワークフローの厳守が重要視されています。しかし、複雑なワークフローでは、第三者が見たときに理解ができない可能性があるため、守れないケースも多くあります。

特に、トラブルが発生した際に、複雑な仕組みでは対応も遅くなりがちです。企業の信用に直結するため、迅速なトラブルの解決を実現する仕組み作りが重要になります。

Aras Innovatorの機能を活用することで、社内でワークフローの可視化と標準化が可能になります。製品開発において不透明な業務プロセスにより、予測しないトラブルは必ず発生するため、明確な情報の可視化が必須です。

企業の信頼を維持するためには、トラブルの原因究明に努め、不測の事態を起こさない仕組み作りが重要です。

Aras Innovatorの導入企業の事例

実際にAras Innovatorを導入した企業の背景と成果について紹介します。

富士フイルム株式会社

X線診断システムや内視鏡などの医療機器の開発をグローバル展開している富士フイルム株式会社では、各国の法規制や規格に適合した製品開発が求められています。

各国の認証機関の監査に対応するためには、既存のシステムでは追いつかず、新たなシステムの構築が求められていました。最新の医療機器の販売に必要な法律に適合させるために、製品情報の一元化が可能なAras Innovatorの導入に至りました。

従来では、設計変更の履歴を紙ベースで管理していたため、業務の非効率化が問題視されていました。

人に依存する業務では、製品の状況を正確に把握できないため、ワークフローのデジタル化により、業務の属人化の排除に成功しています。また、顧客からのクレームに迅速な対応を行い、顧客満足度の向上が実現しています。

エアバス

オランダに本社を置くエアバス社は、航空宇宙機器の分野でグローバル展開を行うトップクラスの企業です。エアバス社は、自社に最適なPLMシステムとしてAras Innovatorを採用したことでも注目されました。

当時のエアバス社は、製品ライフサイクルに関するデータ管理やカスタマイズのサポートを必要としていました。Aras Innovatorの導入に至った理由として、初期費用を排除したサブスクリプション制と独自のPLMシステムがありました。

Aras Innovatorの導入後は、製品開発におけるリスクとコストの削減や流通経路の追跡を行うトレーサビリティの向上などに成功しています。また、情報のアップグレードが容易になり、複雑な業務プロセスの改善を実現しています。

川崎重工株式会社

川崎重工株式会社でロボットビジネスを展開している部門では、自動車業界や電機業界を中心に、溶接や組立、塗装用などのロボットを開発しています。

同社の既存システムでは、使い勝手の良い仕組みが構築されていました。しかし、当時は2Dの図面が主流だったため、3DCADのデータは簡易的に管理されていました。

近年の3D化に伴い、3Dのデータ管理の必要性が迫られたため、Aras Innovatorの導入に至りました。Aras Innovatorをベースに技術文書の管理を進めたことで、図面データに関連する重要なファイルの流出の防止に成功しています。

設計進捗の可視化による設計品質の向上と開発のスピードアップが可能になりました。社内の既存システムからの円滑な移行も評価されています。

まとめ

Aras Innovatorの特徴や企業の導入事例について紹介しました。

製造業において業務のデジタル化が迫られている昨今、PLMシステムの導入が有効とされています。今回紹介したAras Innovatorでは、膨大で複雑なデータを一元管理することで、変化の激しいニーズへの対応が期待されています。

これからPLMシステムの導入を検討されている場合は、Aras Innovatorの機能を理解したうえで選択肢に入れると良いでしょう。

なお、PLMについて深く理解したい方は、こちらの記事を参照してみてください。

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