製品ライフサイクルの管理や業務プロセスの改善を検討している企業の中には、PLMシステムの導入を考えている企業も多いでしょう。しかし、PLMシステムには、さまざまな種類があるため、自社に適したシステムを決められないことも少なくありません。
そこで今回は、PLMシステムを備えたENOVIA(エノビア)の特徴や導入するメリットについて解説します。また、企業の導入事例を見ていただくことで、導入後のイメージが膨らむでしょう。
ENOVIAの特徴
ENOVIAの強みは、製品の企画から廃棄までの業務プロセスで発生する成果物の一元管理を行い、常に最新の情報にアクセスできる点です。
業務漏れを防ぐことでグローバル展開の支障にならないため、国内外の設計チームとの情報共有が円滑になり、共同設計が可能になります。さらに、ENOVIAでは、規模や業種を問わずに自社の希望に沿ったシステムの拡張に優れています。
ENOVIA(エノビア)を導入することで、従来の製品ライフサイクルにおける各工程の進捗管理をリアルタイムで共有が可能になります。また、年々厳格になる法規制への準拠に適合したワークフローを活用できるため、市場における優位性の獲得につなげられます。
ここでは、ENOVIAで得られる効果について詳しく解説しましょう。
生産性の向上が期待できる
ENOVIAの体系化されたシステムを活用すると、ノウハウの共有や品質向上、コストの削減まで実現可能です。ENOVIAに備えられているポートフォリオでは、企業の規模に関わらず、部門同士の分断による課題を解消できるため、社内全体の生産性の向上に役立ちます。
また、ENOVIAでは、顧客や市場のニーズを細分化した情報を要件として登録ができます。要件の有効性を確認するために、テスト項目に関連したデータ管理を行うことで、要件を満たした製品開発を進められます。
複数のチームが一つのシステムで業務プロセスとプロジェクト計画を作成できるため、進捗状況の確認や最新の情報提供がスムーズになります。
情報収集・分析時間を短縮できる
ENOVIAの機能を活用することで、情報収集や分析にかかる時間を短縮できます。部門ごとに異なる管理システムを使用している場合は、製品開発に必要な情報収集に無駄な時間をかけてしまいがちです。情報収集のための会議やメールでのやり取りでは、製品開発における工数を増やしてしまいます。
また、従来の製品開発では、作成した図面データをもとに試作を行うと、必ず設計変更による図面の修正が発生します。試作は製品開発において必要な工程ですが、分析に時間がかかるため、後戻りのない設計が求められます。
ENOVIAのバーチャルシミュレーションを活用することで、手作業による試作の排除を実現できます。結果的に工数とコストの削減ができるため、市場への投入までの時間の短縮に役立つでしょう。
ENOVIAの機能
ENOVIAは、PLMシステムにもとづいた機能が豊富に備えられています。これからPLMシステムの導入を検討している企業は、特にBOMの作成機能、CADデータ連携機能、購買部門との連携機能に注目するといいでしょう。ここでは、ENOVIAの機能について詳しく解説します。
BOMの作成
ENOVIAのBOM作成機能では、部品に関するデータや技術文書の作成から廃棄までの作業がシンプルになります。部品の標準と企業の属性を収集したデータを使用することで、設計の参考資料として再利用が可能です。
また、細分化されたBOMの管理機能により、製造番号とメーカーの追跡が容易になります。ENOVIAのユーザーは、BOMに関連するデータを簡単に検索してトレースに費やす時間を短縮できます。
従来のBOMの管理では、複数の異なるアプリケーションを利用するケースが多いですが、最新の情報を確認するためにコミュニケーションコストがかかります。
ENOVIAでは、Microsoft Officeなどのアプリケーションと連携が可能なので、一つの場所でBOMの作成と管理が完結します。また、複数のBOMをまとめて比較できる機能を活用すると、相違点を明確にできるため、部品点数の確認で役立つでしょう。
CADデータとの連携
ENOVIAでは、CADデータとの連携ができる機能が備えられています。たとえば、設計BOMと3Dで確認できる形状を関連付けて管理が可能です。
多くの企業では、複数のCADを導入しているため、CADデータの一元管理が課題として挙げられています。従来のCADデータは、紙ベースで管理されるケースが多く、正式な文書として取り扱われています。
しかし、部門ごとにCADデータが分断されているため、担当者が不在になると情報共有ができないリスクを抱えています。ENOVIAでCADデータを管理することで、人に依存しない情報共有が実現します。
また、CADソフトからENOVIAへアクセスができるため、直接データの参照や修正も可能です。ENOVIAでCADデータを集約すると、ユーザーによる設計レビューが容易になるため、問題の特定と対策を行いながら確実に設計を終わらせることができます。
購買部門との連携
製品開発の工程において、電気BOMで構成されている部品を取引先から購入するケースが多くあります。電気BOMの管理システムと購買システムとの連携が重要になります。
しかし、異なるシステムを使用する場合は、重複入力や入力漏れが多発します。ENOVIAと既存の購買システムを連携させることで、設計部門は購買システムを気にせずに状況確認が可能です。ENOVIAから直接確認できるため、業務の効率化に役立ちます。
また、ENOVIAでは、購買依頼と見積依頼のデータ作成と複数の仕入先の対応が可能です。ENOVIAの在庫管理機能では、プロジェクトごとに要求番号や枝番、発注単位で受け入れを行います。
ENOVIAを導入するメリット
ENOVIAを導入することで、主に次のメリットがあります。
- 後戻りのない製品開発ができる
- 手作業によるミスを削減できる
- バーチャルシミュレーションで試作を減少できる
- セキュリティのトラブルをなくせる
- プロジェクトの遅延を防止できる
それぞれ詳しく解説しましょう。
後戻りのない製品開発ができる
ENOVIAでは、社内外の関係者に製品情報をリアルタイムで共有できるため、後戻りのない製品開発ができます。また、製品を市場に投入するまでにかかる時間を短縮することで、付加価値を生み出すタスクに時間を費やせます。
さらに、環境への影響を配慮した持続可能な目標設定が可能です。ENOVIAと設計に関連する業務を連携できるため、常に最新の情報にもとづいた製品定義の作成に役立ちます。
変更が生じた際には、社内共通の変更ルールに沿って変更管理が可能なので、ENOVIAによるルールの統一化が実現します。
一つの製品を市場に投入するまでに、複数の部門との連携が必要になります。しかし、従来の製品開発では、重要なデータの共有方法や管理方法が分散されているため、業務の非効率化を招くデメリットがあります。
ENOVIAを導入することで、社内全体の情報を一元管理して製品開発で発生するコストの削減や認識のズレを防止できます。
手作業によるミスを削減できる
ENOVIAでは、手作業によるミスを削減できる機能が用意されています。紙ベースの文書管理では、印刷して手作業による業務が一般的ですが、人的ミスが多発するデメリットがあります。
ミスしないように気をつけていても人間は必ずミスをしてしまうため、製品開発に影響を及ぼす可能性が高くなります。ENOVIAを活用して紙ベースの文書をデジタル化することで、業務の可視化が可能になるので、ユーザーによるレビューが容易になります。
また、他のCADソフトやシステムとの連携により、画面一つで最新の情報を把握しながら作業を進められます。また、ENOVIAの全文検索機能では、膨大なデータから迅速に必要なデータにアクセスできるため、早期に設計変更の反映や複数のBOM管理、製造の段階で検証を実現します。
今後、複雑化する製品開発において、従来の手作業では追いつかない可能性があるため、PLMシステムの必要性が高まるでしょう。
バーチャルシミュレーションで試作を減少できる
ENOVIAのバーチャルシミュレーションで実体験に近い試作ができるため、現物の試作が不要になります。設計や解析担当者は、バーチャル設計された製品の検証が容易になるため、試作を行う手間がなくなります。
社内で部門をまたがる共同作業を行い、リアルタイムで情報共有ができるので、結果的に業務プロセスを短縮できます。また、ENOVIAがあれば、すぐに起動したいCADソフトなどのアプリケーションにアクセスできるため、評価環境が整った状態で作業が可能です。
開発期間の短縮は、技術の最先端を行く海外企業との競争において重要な要素になります。紙の図面を出力してから業務を行うと、工数を増やす要因になり、ニーズへの対応が遅れる可能性があります。
ENOVIAはインターネットの環境さえあれば、場所を問わずにチームとのデータ共有が可能になるため、現実的なグローバル展開を実現します。
セキュリティのトラブルをなくせる
ENOVIAでは、部材調達から顧客による消費までの連鎖やシステムによって生じるセキュリティ問題を解消できます。ENOVIAがあれば、地理的に分散されたチームから出る新たなアイデアを共有しながら作業が可能になります。
企業の知的資産をセキュリティのリスクに触れることなく、関係者にデータを確実に譲渡できます。一つのプラットフォームで重要なデータを管理して実績のある戦略を利用しながら、自社に適した戦略の創造が可能です。
また、ENOVIAでは、グローバル展開を行う企業のニーズと課題に対応できるPLMシステムを提供しています。予測できないニーズに迅速に対応するためには、業務プロセスの改善と調整できる機能が必要不可欠です。
ENOVIAのアプリケーションでは、特定のユーザーを限定とした情報公開を制御できたり、アクセス権限の付与により不正開示を防止したりできます。
プロジェクトの遅延を防止できる
複数のプロジェクトが同時進行している場合は、工数や日程、予算、課題、成果物などのデータ管理が重要になります。
ENOVIAでは、プロジェクトの進捗状況を可視化できる機能があるため、次の工程が一目で確認できます。関係者に限定した情報共有やアクセス権限を付与することで、安全なセキュリティ保護のもとで作業を進められます。
また、エラーの発生を防止するために、常に最新情報にもとづいた作業ができる環境を提供しています。重要な意思決定を行う場面において、正確な情報収集を行い、決定後の影響を事前評価できます。製品への影響を理解したうえで、問題解決に取り組めるので、意思決定の一助となるでしょう。
さらに、ENOVIAの「インビジブル・ガバナンス」を活用することで、リアルタイムで成果物のステータスを把握できるので、潜在的なリスクを特定できます。設計コストを抑えながらプロジェクトの遅延防止に役立つでしょう。
ENOVIAの導入企業の事例
ENOVIAを導入している企業は、多く存在します。最後に、国内の企業の導入事例について、導入に至った背景から成果まで紹介しましょう。
日本特殊陶業株式会社
日本特殊陶業株式会社は、自動車用センサーの開発を支援するために、図面管理システムを導入しています。
しかし、管理されている図面情報と他のシステムとの連携が上手くいかずに、グローバル展開に支障をきたすようになりました。さらに、自動車の販売数やアプリケーションの拡大に伴うビジネスの規模が大きくなるにつれて、生産地別で迅速な図面発行が求められました。
特に、図面とBOMの分散や作図履歴の再利用ができずに、作業時間がかかり、生産現場との連携に問題点がありました。また、部品の変更に伴う図面データの変更を行うためには、新たなシステムの導入が必要だったため、ENOVIAの導入に至りました。
同社で使用しているCADとの親和性が高いENOVIAを導入したことで、設計情報の一元管理と海外拠点への図面共有が容易になりました。複数のCADデータやファイル形式が異なる資料をENOVIAに集約したため、一つのシステムで関係者への情報共有と文書のデジタル化に成功しています。
株式会社竹内製作所
株式会社竹内製作所は、世界初のミニショベルやクローラーローダーの開発に成功したことで知られています。
顧客の多様なニーズに応えるために、短期間で複数の製品開発を進めることが求められていました。今まで以上に高性能な製品を生産するためには、迅速に市場へ投入できる環境構築の必要に迫られていました。
同社では、2D図面をベースに製品開発を行い、BOMは別のシステムで作成されていたため、既存のシステムでは限界がありました。従来の2D図面では、全体像の把握が難しく、トラブルが発生する度に手戻りが繰り返されるので、非効率的な業務を行っていました。
短期間でかつ、市場の変化に合わせた対応を行うためにENOVIAの導入に至りました。ENOVIAで設計データとBOMデータの一元管理を行い、新規開発の製品を市場に投入するまでの時間短縮に成功しています。また、今まで以上に厳選された部品数で、短期間の製品開発を実現しています。
アルプスアルパイン株式会社
電子部品やカーナビの開発を行うアルプスアルパイン株式会社では、業務改善のために複数のデータベースを作ったことで設計者の負担が問題視されていました。
同社では、一つのプラットフォームですべての情報を一元管理できるシステムを求めていたため、ENOVIAの導入に至りました。ENOVIAに情報が集約されたことで、設計に関するデータへのアクセスが容易になっています。
結果的に設計者の負担軽減に成功したため、効率的に作業を進められています。現在では、顧客や市場から求められるニーズに適合した要件管理の統合により、製品の流通経路の追跡を実現しています。
また、地理的な制約を排除した社内の業務プロセスとデータの再利用による設計のスピードが改善されたことで、グローバルにおけるコミュニケーションが円滑になりました。
おすすめの高品質PLMソフトウェア
最後に、PLMにおすすめのソフトウェアを紹介します。
PTC:Windchill(ウィンチル)
Windchill(ウィンチル)とは、PTC(パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション)社が提供する製造業の製品開発において必要な情報管理を行うシステムです。正式には「PTC Windchill」とも呼ばれています。
製品の企画から生産までのワークフローや部品表、コスト管理、品質管理ができる機能が備えられています。Windchillの導入によって、後戻りのない設計や開発が可能になるため、生産性の向上を期待できます。
Windchillには次のような機能があります。
- 製品データの一元管理機能
- CADとBOMの連携機能
- キーワード検索機能
- 文書管理機能
- 閲覧機能
- CADデータ集約機能
- 変更管理機能
- 工程管理機能
Windchillでは、製品開発に関するデータの一元管理や文書の電子化の実現による業務改善が期待できます。さらに、コストの最適化による無駄な経費の発見と削減に役立ちます。
これからPLMシステムの導入を検討されている方は、この機会にWindchillの導入を考えてみてください。
まとめ
ENOVIAの特徴から導入するメリットと企業の導入事例について解説しました。
ENOVIAでは、分散されたデータの一元管理や製品開発の時間短縮に役立ちます。また、紙ベースで管理していた文書のデジタル化により、業務プロセスの改善が期待できます。
これからPLMシステムの導入を検討している場合は、ENOVIAの機能を理解したうえで、選択肢に入れると良いでしょう。
なお、PLMについて深く理解したい方は、こちらの記事を参照してみてください。