製造の現場ではデジタル技術の導入や活用によって、製造体制や競争力を強化する動きが強まっています。その潮流の中でひと際注目を集めているのがシーメンスのPLMソフトウェアです。
この記事ではPLMとは何かを解説した上で、シーメンスのPLMソフトウェアの活用事例やメリットを紹介します。
PLMの導入に興味がある方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
まずPLMとは?
PLM(Product Lifecycle Management、製品ライフサイクル管理)は製品を販売する企業の「Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)」を改善するために生まれました。PLMとは、製品ライフルサイクルを一元で管理できるシステムやソフトウェアを指します。
製造業における製品の企画から廃棄までの工程(規格・設計・生産・販売・廃棄)における情報を一元管理することで、QCDのバランスを整えます。PLMの導入によって、企業は製造における開発力や企業競争力の向上が期待できるでしょう。
例えば、品質の高い製品をより低コストで作成したり、環境の変化があっても迅速に市場に適した製品を提供する、といったことが可能になります。
PLMについてもっと詳しく知りたい人は下記記事も参考にしてください。
シーメンスのPLMソフトウェアの特徴
シーメンス(Siemens AG)とは、ドイツにある電機機器メーカーです。
シーメンスは現在では情報通信・交通・防衛・生産設備あるいはシステム開発など幅広く活動しており、シーメンスのPLMソフトウェアは、シーメンスデジタルファクトリー事業本部が提供しています。
シーメンスのPLMソフトウェアは、「PLM Components」とも呼ばれている製品ライフサイクル管理を主にした、デジタルプラットフォームです。
製造過程の管理を完全にデジタル化させるだけでなく、製造過程におけるイノベーションに対応するために必要な能力を与えてくれるシステムです。
導入によって、製品ライフサイクルを一括管理するだけでなく、組織全体でQCDを最適化します。
さらに単一の記録システムを用いることで、情報を適切なデータ形式で各部署と共有することが可能です。
また、ポートフォリオを組んだ製品のライフタイムを最適化し、再現性の高いプロセスを作りあげ、製品の利益率を向上させます。
シーメンスのPLMの活用事例
シーメンスのPLMソフトウェアは、製品製造の現場を中心に注目を集めています。実際にどのように使われているのか、その活用事例を紹介します。
情報の一元化で労力をカット!自動車業界における活用事例
自動車を生産するには、膨大な数の部品の製造・組立・検査が必要です。それぞれの過程で使われる機器類も膨大な数におよぶため、自動車業界では早くからデジタル化に着手する企業が多く、PLMも比較的早い段階から用いられてきました。
トラック生産事業で知られるH社では、シーメンスのPLMソフトウェアを導入しています。H社ではソフトウェアを使うことで、開発部門と設計部門を一元管理することに成功しました。シーメンスのPLMソフトウェアが導入される以前のH社では、各部門で使われるCADの情報がバラバラで、それぞれの部署において設計データが管理されていました。そのため、部品の設計変更などがあるたびに、異なる部門での情報のすり合わせをしなければなりません。社内作業だけで、多大な労力や時間を費やしてきました。
シーメンスのPLMソフトウェアは、これらの情報を統合し、誰もがアクセス可能な情報にすることに成功しています。最新のデータを各部署で素早く入手できるようになったことで、情報のすり合わせに浪費されていた時間や労力が大幅にカットされました。これは開発時間の短縮や製品品質の向上にも影響を与えています。なお、自動車業界ではH社以外にも、多くの有名企業がPLMソフトウェアの導入を進めており、開発過程の合理化、品質向上、コスト削減などに成功しています。
情報管理で作業時間の短縮に!食品業界における活用事例
ビール製造販売大手で知られるK社は、酒類から清涼飲料水まで数多くの飲料品を製造しており、それらの情報管理の手法に問題を抱えていました。K社では管理表を社内システムで共有していたものの、それぞれの情報を各部門が更新しなければならず、さらに関連情報の照会も各部署に逐次問い合わせをする必要がありました。しかし、これでは情報管理が煩雑になるだけでなく、情報の正確性を保つのが困難です。表示されている情報が新しいという保証もありません。そのため、K社では管理効率化をはかるためにシーメンスのPLMソフトウェアを導入しました。
シーメンスのPLMソフトウェアの導入によって製品情報の一元管理ができるようになり、情報の正確性が向上し、常に最新の情報を各部署で得られるようになりました。これは副次的にさまざまなメリットをK社にもたらしています。
例えば、商品パッケージの規格や産地表示といった情報表記も、PLM導入によって直ちに反映されるようになりました。従来のように各部署に情報を持ち回り、規格変更する手間がかかりません。他社に商品規格書を提出する際も、各社で異なるフォーマットに合わせる必要はありません。PLMによって最適なフォーマットに転記する作業が自動化されるからです。このような副次的なメリットは、K社の業務に大幅な作業時間短縮をもたらしました。
シーメンスのPLMソフトウェアを使う3つのメリット
シーメンスのPLMソフトウェアの導入は、QCDにおけるQuality(品質)・Cost(費用)・Delivery(納期)の3つの面を改善させるというメリットが期待できます。それぞれ以下で解説します。
①Quality 製品の品質向上
高度に生産技術が成長した現代では、どのような製品であっても優れた品質が求められます。しかし、企業が生産能力や利益を追及すると品質は低下しやすくなります。生産能力や利益を維持したまま高品質な製品を生産するには、企画から廃棄までの、生産過程全般の見直しが求められるでしょう。シーメンスのPLMソフトウェアを導入すれば、生産過程のデータが一元管理できるので、より効率的な生産が可能になります。これによって、生産能力や利益を維持したまま品質を高めていけるでしょう。
②Cost コストを削減し利益率を向上させる
国内外に競合他社がひしめく現代では、製品コストの削減は利益に直結する、非常に重要な問題です。仮にコストが高くて品質のよい製品では、競合他社が多い中ではなかなか販売につなげることは容易ではないからです。シーメンスのPLMソフトウェアを導入すれば、生産に関わる各プロセスの情報が簡単にピックアップできるので、問題点の洗い出しが容易になります。その結果、製造における作業効率をアップさせられます。
③Delivery 納期や生産過程の短縮化
シーメンスのPLMの導入によって作業フェーズごとに適切なフィードバックが行えることです。仕様変更や改良にかかる時間を大幅に短縮することが可能です。納期や生産過程の短縮が期待できるでしょう。調達や販売時期などの情報を元に、製造までのスケジュールを逆算することで、市場参入までにかかる時期を計算することもできます。
また、PLMを使えば、他部署の情報をフィードバックした判断も難しくなくなるため、市場からの撤退時期を決定するといった使い方もできます。現代はユーザーの嗜好が多様化しているため、どれだけ高品質の製品を製造できたとしても、市場参入の時期やタイミングを失っては広く販売するのが困難です。市場導入から撤退のタイミングを、さまざまな部署の情報から計測できるのも、シーメンスのPLMソフトウェア導入の大きなメリットといえます。
シーメンス以外のおすすめPLMソフト
それではシーメンス以外にどんなPLMソフトがあるのか、他のおすすめソフトを紹介していきます。
シーメンス以外のPLMも気になる人はこちらも参考にしてみてください。
PTC:Windchill(ウィンチル)
Windchill(ウィンチル)とは、PTC(パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション)社が提供する製造業の製品開発において必要な情報管理を行うシステムです。正式には「PTC Windchill」とも呼ばれています。
製品の企画から生産までのワークフローや部品表、コスト管理、品質管理ができる機能が備えられています。Windchillの導入によって、後戻りのない設計や開発が可能になるため、生産性の向上を期待できます。
Windchillには次のような機能があります。
- 製品データの一元管理機能
- CADとBOMの連携機能
- キーワード検索機能
- 文書管理機能
- 閲覧機能
- CADデータ集約機能
- 変更管理機能
- 工程管理機能
Windchillでは、製品開発に関するデータの一元管理や文書の電子化の実現による業務改善が期待できます。さらに、コストの最適化による無駄な経費の発見と削減に役立ちます。
これからPLMシステムの導入を検討されている方は、この機会にWindchillの導入を考えてみてください。
PLMの導入方法が分からない方は下記記事も参考にしてください。
シーメンスのPLMで「QCD」を改善させよう
シーメンスのPLMソフトウェアは製品ライフサイクルを一元管理できる、デジタルプラットフォームです。大手企業も導入によって成果を挙げています。
企業競争力強化を目指すならシーメンスでPLMの導入を検討してみてはいかがでしょうか。