製品設計から自動車設計まで広い分野で活用されている3DCADソフトが「ライノセラス」です。使用感の柔軟性と操作性の高さから、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーに愛用されています。
しかし、多くの機能を持つライノセラスを使いこなすためには、どうすべきかわからない方も多いでしょう。そこで、ライノセラスを使いこなすために必要な基本操作や導入時の注意点について解説します。
3DCADソフト「ライノセラス」の概要
製品設計をする方やジュエリーデザイナーに人気のCADソフトがライノセラスです。
ライノセラスとは
ライノセラスは、英語の製品名「Rhinoceros」を日本語読みしたものです。「ライノセラス」という場合は、株式会社アプリクラフトが国内向けに販売する3DCADソフト名を指します。
ちなみに、ライノセラスはパソコンにダウンロードして使える製品です。ソフトを通じて、立体的なデザインや設計・モデリングデータを作成できます。
ライノセラスの特徴
ライノセラスの主な特徴は、3DCADソフトの中でも「曲線」の造形・設計に優れていることです。NURBSという数学的なモデルを使用して、複雑な曲線を描くことができます。
一般的に、3DCADソフトを使用しても、精密なデザインになるほどカーブや曲面の再現が難しくなるものです。しかし、ライノセラスは数学的に複雑な再現を成し遂げます。例えば、飛行機の精密なパーツの設計や宝飾の細工デザインなどが挙げられます。
以下の記事で、ライノセラスの特徴をより詳しく解説しています。
ライノセラスのソフトの種類
ライノセラスでは2024年11月現在、「Rhinoceros8(Rhino 8)」の最新ソフトを出しています。初回購入では「Rhinoceros8 商用版」(187,000円・税込)と「Rhinoceros8 トレーニング版」(39,600円・税込)の2種類です。
それから旧バージョンを所有する場合には、更新用の「アップグレード商用版」(110,000円・税込)と「アップグレード教育版」(19,800円・税込)があります。
バージョン | ソフトの種類 | 価格 |
Rhinoceros8(Rhino 8) | Rhinoceros8 商用版 | 187,000円(税込) |
Rhinoceros8 トレーニング版 | 39,600円(税込) | |
旧バージョン | アップグレード商用版 | 110,000円(税込) |
アップグレード教育版 | 19,800円(税込) |
どちらも商用版は営利目的で使用が可能です。
一方、トレーニング版は商用利用は不可で、研究や教育学習用として安く提供されています。また、「ラボラトリーライセンス」なら30人までの複数ライセンスが可能となるため、組織的な利用を考えている方にはおすすめです。
ライノセラスでおすすめの使い方12選
画像出典元:ライノセラス公式サイト
ライノセラスを初めて使う方は、画面の配置やアイコン、基本の使い方として簡単な設計の仕方や断面図の作成などを覚える必要があります。そこで、以下におすすめの使い方12選を紹介します。
- 画面の見方を知る
- ビューの拡大と拡大ビューを戻す
- メニュー表示と保存
- コマンド履歴の活用
- アイコン対応のツールバーの使用
- タブとツールバー
- パネル画面でレイヤーやヘルプを使う
- ステータスバーのオン・オフの活用
- マウスのドラッグ
- モデリングを2Dから設計する
- 複雑な曲面形状をプログラムツール補助で設計
- 断面図を作成する方法
使い方1.画面の見方を知る
まず、ソフトを起動させたときに表示されるトップ画面の確認からです。左側と上側にバーがあります。
中央には、4分割画面でさまざまな方向の視点から確認できる表示です。例えば、上からの視点、真正面からの視点、横からの視点、そして自由な視点です。このように、4つのモデルを同時に確認できます。
使い方2.ビューの拡大と拡大ビューを戻す
拡大表示をする際は、中央画面の左上「ビューポートタイトル」をダブルクリックするか、▼マークから「最大化」を選択します。拡大ビューを戻すときは、同じようにダブルクリックor▼マークの選択です。
他にも、斜め上視点など細かく表示を変えられます。そのため、作業の度に必要なビューを切り替えることができます。
使い方3.メニュー表示と保存
ライノセラスでは、さまざまな項目をメニューバーの上に用意しています。これらのメニューを使って、ファイル保存や編集、ビューのチェック、ツール使用ができます。
ちなみに、保存をする際は「ファイル」の項目一覧にある「名前を付けて保存」「上書き保存」で容易に可能です。
使い方4.コマンド履歴の活用
ライノセラスではコマンドの使用が重要です。「メニュー」のすぐ下にコマンドが一覧となったウィンドウ表示があります。よく使うコマンドはここから選択することで手順を省略することができます。この場所にコマンドを入れるだけで実行ができます。
使い方5.アイコン対応のツールバーの使用
ライノセラスでは、左側に表示されているツールのアイコンをクリックして実行することができます。ツールは、機能を実行するためのボタンです。
特にアイコン右下の▲マークをクリックすることで、サブツールが表示されます。そこからさまざまな機能のサブアイコンを使うことができます。
使い方6.タブとツールバー
コマンド履歴の下にあるタブとバーは、表示設定を変えることができるサブメニューのことです。タブとツールバーを必要に応じて変更することで、画面左に表示されるアイコンのツールバーも対応するように表示が変わります。
使い方7.パネル画面でレイヤーやヘルプを使う
ライノセラスの画面右に表示されるバーが「パネル」です。パネルでは、選択済みのモデルを詳しく確認できます。また、レイヤー設定することが可能です。
さらに、使い方に迷った際は「ヘルプ機能」を参照します。このパネルをヘルプの項目でクリックすることで解決方法を見つける機能です。初心者の方には、作業途中で使えると便利です。
使い方8.ステータスバーのオン・オフの活用
ステータスバーは、画面の下に表示されるバーのことです。例えば、「カーソル表示位置」や「環境単位」、「スナップ設定」などです。
また、チェックを入れる・外せる一覧があります。代表的なのは「直行モード」や「グリッドスナップ」という機能です。上手く活用することで、簡単にビュー画面の表示を細かく調整することができます。
使い方9.マウスのドラッグ
ライノセラスでは、マウスで対象物をドラッグして動かすことができます。マウスのホイール機能を使えば、3Dの拡大・縮小をすることも簡単です。過去に3DCADソフトを使用したことがある方にとっては手慣れた操作です。元の拡大率に1回で戻したいときは、ショートカットキーのZSで全体表示にすぐ切り替えられます。
使い方10.モデリングを2Dから設計する
ライノセラスの自由曲面モデリング機能を使えば、曲面のある滑らかな形状のデザインを設計・作成できます。
使い方は、最初に基本のポリラインやスケッチを描きます。ツールアイコンの「Polyline」「Curve」からスケッチを作成して、下地となる線を描きます。作成した線を「Loft」「Sweep1」コマンドで3D形状に変換する手順です。それをもとに「スイープ」「ロフト」コマンドを使って3D形状を生成します。
次に、「ポイント編集」「サーフェス編集」で形状を細かく調整します。「サブDモデリング」を使用することで、さらに細かな編集が可能です。全体を確認し、必要なら「Fillet Edge」「Chamfer」でエッジの部分を精密に仕上げることもできます。
使い方11.複雑な曲面形状をプログラムツール補助で設計
ライノセラスでは「Grasshopper」というビジュアルプログラミングツールを併用すると設計が簡単になります。具体的には、形状のパラメータを変更するだけでデザイン全体を簡単に調整可能です。
使い方は、まず基本となる線形を2Dまたは3Dで作成します。このとき、ごく簡単な円などの図形を用意します。ツール補助のGrasshopperをライノセラス内で起動し、パラメトリックのためのコードを書く手順です。
Grasshopper内では、形状の幅、高さ、細部をコントロールするスライダーや入力情報を設定できます。そのため、形状がリアルタイムで変化します。デザインを調整しながら形状の構成や繰り返しパターンを作成しましょう。最後に、全体のデザインを確認して完了です。
使い方12.断面図を作成する方法
ライノセラスの寸法ツールを使用すれば、正確な寸法や断面図を簡単に作成できます。まず、3Dモデルをライノセラスで作成します。次に、パーツの配置を確認して、「Section」コマンドを使って必要な箇所の断面を作ります。
その後、「Dimension」ツールで各部の寸法を指定し、長さや角度、大きさを測定し、図面に配置します。その際に、レイアウト機能を活用して図面を整理することもできます。これは、製造現場でも使える精密な断面図の作成方法です。
ライノセラスの使用上の注意点
ライノセラスを使用する場合には、気をつけるべき注意点があります。初心者の方は特に、導入時の注意点についても確認することです。
無料試用期間は90日
ライノセラスには、製品のライセンスを購入する前に、「評価版」を無償でダウンロードして使うことができます。条件として1人につき1回限りです。
90日まで無償期間を継続できるようになっています。ただし、その期間が過ぎると購入が必須となります。ライセンス購入しない状態では、CADソフトのプラグインを使用することができません。
ライノセラスの価格について、以下の記事で詳しく解説しています。
パソコン環境に高い要件がある
ライノセラスのCADソフトは、稼働に十分なリソースが求められます。そのため、Windows版とMac版でそれぞれソフト利用の環境要件が決まっています。
まず最新の「Rhino 8 for Windows」では、PCのOSがWindows10とWindows11の64bit版が要件です。
「Rhino 8 for Mac」では、OSにmacOS15 ~macOS12.4が必要です。そして、IntelかApple Macのパソコンが必要です。
直感的操作は基本できない
ライノセラスでは、1から製図やモデリングをする際に、直感的操作がデフォルトで備わっていません。
ただし、変更時の作業は直感的に限りなく近づくように機能が最新版でリニューアルされています。作業平面の高性能化や移動・回転の直感的操作がこれに該当します。そのため、旧バージョン(Rhino 7以下)では、直感的な操作ができません。
ライノセラスの使い方まとめ
ライノセラスは、設計・モデリングするのに向いた3DCADソフトです。宝飾や飛行機パーツなどのデザイン・設計にも使われており、幅広い用途に導入することができます。
導入時は注意点に気をつけながら、基本的な使い方をマスターしましょう。
