近年では様々なCADソフトが提供されていますが、なかでも大きく注目を集めているのはSiemens社(シーメンス)が提供するクラウド型CADソフトの「NX X」です。
製品エンジニアリングをクラウドで実現するNX Xは、IT要件を簡素化し、場所を問わず高い柔軟性を提供するのが特徴です。
本記事では、NX Xの利用を検討している方を対象に概要をはじめ、主な機能や使用メリット、活用例について詳しく解説します。
NX Xの魅力や特徴について理解できる記事となっていますので、最後までご覧ください。
NX Xとは?
NX Xとは、Siemens社が提供するクラウドベースの3DCADです。
クラウドベースの産業用CADである「Siemens Xcelerator as a Service」の要とも言える「NX X」は、製品エンジニアリング機能をSaaSとして提供されています。
また、同社が提供しているNXとは異なり、「NX」ソフトウェアの機能や一元化したストレージ、複数人での共同作業を可能にするツールを1つのサービスにまとめて提供しているのが特徴です。
デスクトップに直接インストールするか、AWSクラウド経由で遠隔地からストリーミングすることができ、どこにいてもインターネット環境さえあれば誰でも柔軟に利用できます。
なぜクラウドベースが求められている?
これまでに様々な3DCADソフトが発売・提供されていますが、クラウドベースの3DCADソフトが現代において求められる理由としては以下が挙げられます。
- 利便性
- コスト削減
- 拡張性
- 高いセキュリティ
- リアルタイムでの共同編集が可能
クラウドベースが求められる理由としては、どこからでもアクセスできる利便性や設備管理、コスト削減、利用量に応じた柔軟な拡張性など現代のニーズに対応していると言えるためです。
また、プロバイダーによる高度なセキュリティや自動バックアップがデータ保護を強化し、リアルタイムでの共同作業が可能なため、業務効率化と安全性の両立が図れるのも理由の1つと言えるでしょう。
そもそもSaaSとは?
NX XはクラウドベースのSaaSパッケージとした3DCADと先述しましたが、「そもそもSaaSとは?」と疑問に思う方もいるでしょう。
SaaSとは、「サービスとしてのソフトウェア」を意味し、インターネットを通じて提供されるクラウドベースのソフトウェア利用形態のことです。
従来のようにソフトウェアをPCやサーバーにインストールするのではなく、SaaSを利用することでブラウザを通じてすぐにアクセス・使用が可能です。
SaaSはインフラやソフトウェアの管理が不要で、コストと手間が削減されるため現在において需要が高まっているのです。
NX Xの主な機能
ここからはNX Xの主な機能について以下3つ紹介します。
- クラウド上でのハイエンドCAD
- リアルタイムで編集可能
- 大規模なシミュレーションや複雑な解析可能
機能①クラウド上でのハイエンドCAD
NX Xは、クラウドベースで動作するハイエンドのCADソリューションで、企業の複数拠点にわたる設計業務の効率化を実現。
従来のデスクトップ版と同様の高度な3D設計機能に加え、データアクセスをクラウドに一元化することで、リモートワーカーも含めた全てのメンバーがシームレスにどこでも編集できるようになっています。
データの完全性を強化しつつファイルのやり取りの手間も削減され、ITのインフラ管理負荷が軽減されます。また、NX XはTeamcenter Xとの統合が可能で、製品ライフサイクル管理(PLM)にも対応しているため、企業のニーズをクラウド上でサポートします。
機能②リアルタイムで編集可能
NX XはクラウドベースのCADソフトであるため、インターネット環境さえあればどこでもリアルタイムで編集が可能です。
従来のCADソフトはデスクトップにインストールして使用するのが一般的で、メンバーが別々の場所にいる場合、データの共有や更新作業に時間がかかっていました。
しかし、NX Xではクラウド上にデータが保存されているため、最新のデザインを即座に共有し、メンバー全員が同じデータにアクセス可能です。
複数人での同時編集がスムーズに行え、プロジェクトの進捗を迅速に把握できるだけでなく、ミスや遅延を防ぎ、設計効率が向上します。
機能③大規模なシミュレーションや複雑な解析可能
NXは、Simcenter 3Dの技術に基づいた高度なシミュレーション機能を統合しており、大規模な設計データを用いた複雑な解析が可能です。
製品の構造性能やモーション解析、熱解析、さらにはヒューマンモデリングによる人間との相互作用まで、設計段階から包括的に検証することができます。
また、統合されたシミュレーションツールにより、設計の初期段階から設計代替案を迅速に比較でき、製品の最適化と品質向上を実現。
技術変更オーダや製造上の欠陥を早期に検出し、コスト削減や生産スピードの向上が期待できるのです。大規模なシミュレーションは、より詳細な解析が必要な場合「Simcenter 3D」への拡張も可能で、設計の信頼性を向上させるでしょう。
NX Xを使用するメリットは?
NX Xを使用するメリットは以下の3点です。
- 管理負担が軽減する
- ネット接続さえあれば使用可能
- 必要に応じて機能を実装できるお得なプランがある
メリット①管理負担が軽減する
NX Xを利用することで、ITの管理負担が軽減されます。
NX Xは完全管理型クラウドサービスで、ソフトウェアのインストールや定期的なアップデート、データのバックアップなど、必要な運用が自動化されているため、ユーザー企業が自社でインフラストラクチャを維持管理する必要がありません。
専任のIT人材や複雑なシステムに依存することなく、少ないコストで最新のNX X機能を活用可能です。従来必要だったIT資源や時間を他の重要なエンジニアリング業務に振り向けられ、効率的に革新的なプロジェクトへ集中できるようになります。
メリット②ネット接続さえあれば使用可能
NX Xはクラウドベースで提供されているため、インターネット接続があれば場所やデバイスを問わず利用できるという利便性があります。
リモートワークや多拠点での共同作業が円滑に行えるほか、各ユーザーが常に最新バージョンのNX Xにアクセスできるため、バージョン管理やアップデートの負担が少なくなるのも特徴の1つです。
さらに、クラウド環境ではセキュリティやバックアップも強化されており、企業が自社で高額なサーバーを維持管理する必要がありません。
従来のソフトウェア導入と比較してITリソースの負担が軽減されるのも魅力と言えるでしょう。
メリット③必要に応じて機能を実装できるお得なプランがある
NX Xでは、コスト効率に優れたパッケージプラン「NX X Value Based Licensing」を提供しています。
このプランでは、必要な機能を利用する際にトークンを消費する仕組みとなっており、1つの製品コードで包括的なトークンプールにアクセスできます。
トークン機能を利用することで必要な機能を柔軟に追加できるライセンス体系が整っており、追加のコストはかかりません。トークン数の範囲内で、100を超えるアドオン製品から必要な機能を選択・使用できるため、プロジェクトに応じた機能の取捨選択が可能です。
たとえば、機械学習を活用した「NXコマンド予測」やレンダリングの「NXアピアランス管理」、干渉チェックの「NXアセンブリ・パスプランニング」、BOMの「NXコーティング」など、多岐にわたるアドオンを追加費用なしで活用できます。
なお、トークンは使いきりではなく、使用済み分は上限まで戻るため、無駄なく利用可能です。
NX Xの価格
NX Xの価格は以下の表を参照ください。
プラン名 | 価格 | 特徴 |
NX X Design Standard | 1,079,901円/年 | 一般的な3D部品やアセンブリなどの設計を作成し編集。 |
NX X Design Advanced | 1,402,948円/年 | 拡張設計機能による設計効率と品質の向上。 |
NX X Design Premium | 1,790,605円/年 | NX X Design Premiumの高度な機能により、最も複雑な設計課題を克服。 |
NX X Value Based Licensing (50トークン) |
1,611,879円/年 | 様々な機能を必要に応じてトークンを消費する形で使用できる。 |
NX Xの活用事例
最後にNXの活用事例について紹介します。紹介する業界は以下の2つです。
- 製造業界
- 航空業界
製造業界
製造業界では、NXがDXを支える重要な役割を果たしています。
たとえば、整形外科デバイスで世界的に知られる「Zimmer Biomet社」は、NXを活用して複雑な医療機器の開発プロセスを効率化。
NXと社内のワークフローを統合することで設計の反復回数を減らし、試作品の開発期間を短縮しています。
その結果、製品の市場投入までの時間を短縮し、患者に合わせたカスタマイズが容易になっています。また、NXの導入により、Zimmer Biomet社はデザインから製造までの各段階を最適化し、精度や法規制への対応を強化しています。
航空業界
航空業界では、ウクライナの航空機メーカー「Antonov」がNXとTeamcenterを活用し、An-178貨物機の設計・製造を効率化しています。
Siemensとの協力により、Antonov社はペーパーレスなデジタル設計プロセスを実現し、文書作成にかかる時間と製造コストを大幅に削減しました。
NXの先進的なCAD機能を導入することで、An-178の初飛行までの期間を大幅に短縮し、競争力の向上に成功。また、設計の柔軟性を向上させるだけでなく部門間のデータ管理や協力も強化し、業務全体の効率化にもなっています。
NX Xについてのまとめ
本記事ではSiemensのクラウド型3DCADソフト「NX X」について紹介しました。
NX Xは製品エンジニアリングを新たな次元へ引き上げる革新的なツールと言えるでしょう。
クラウドベースの利便性、リアルタイムでの共同編集、大規模なシミュレーションが可能な機能などにより、業務の効率化やコスト削減を実現。
SaaSモデルの採用により、管理負担が軽減され、最新の機能を手軽に活用できるのも大きな魅力です。
3DCADソフトの中でもトップクラスの性能を誇る「NX X」の使用を検討してみてはいかがでしょうか。
