シーメンスが提供しているNX関連のソフトに興味があるけれど、CAEの機能がどれに含まれているのかわからないとお悩みではないでしょうか。また、どのような解析ができるのかイメージできずにいる人も多いはずです。
そこでこの記事では、NX CAEの概要や機能の位置付け、活用シーンについてわかりやすくまとめました。製品・製造設計の効率化を検討している方は、導入の参考にしてみてください。
NX CAEとは
NX CAEは、シーメンス社が提供する高度な統合型シミュレーションソリューションです。
設計から解析までをシームレスに連携させることで、開発時間を最大70%短縮できます。
また、製造業務で発生するマルチフィジックス解析(異なる場を組み合わせて解析すること)にも対応しているため、より現実に近い製品性能を把握可能です。
まずは、NX CAEを含めたシーメンス製品を見ていきましょう。
なお、NXとは何なのか、機能や導入事例から知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
NXのCAD・CAM・PLMとの違い
NXはCAD・CAM・PLMなど幅広い製品群をもっています。
NX CAEはそのなかで「解析専用」の役割を担っているのが特徴です。
| 主な目的 | 対象範囲 | 主な利用者 | |
|---|---|---|---|
| NX CAD(設計) | 3Dモデル設計・製図 | 形状や構造の設計 | 設計エンジニア |
| NX CAM(製造) | 加工データ作成 | 加工・組立工程 | 製造エンジニア |
| NX PLM(管理) | 製品情報の一元管理 | 設計〜製造〜保守の全体管理 | プロジェクトマネージャ(PM) |
| NX CAE(解析) | 性能解析・シミュレーション | 構造・熱・流体・機構などの性能評価 | 解析エンジニア |
上表より、NX CAEは、CADやCAMで生み出された設計を「実際の条件でどう機能するか」を検証する役割があります。
また、PLMと連携して製品ライフサイクル全体の品質を支え、製品としての価値(強度や安全性など)を維持するために活用されます。
なおNX CAEのほか、CAD・CAM・PLMの機能は、シーメンスが提供している単体の製品のほか「NX CAD」「NX X」というプランに複合されています。NX Xについて詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
NX NASTRANやSimcenterとの違い
まず、NX CAEは、シーメンスの解析プラットフォームであり、モデリング、メッシュ作成、荷重・境界条件設定、結果の可視化など「シミュレーション実行」が可能です。複数のソルバー(アドイン機能)を統合し、設計データを用いて効率的に解析できます。
対して、NX NASTRANは、NX CAEに搭載される高性能ソルバーです。
世界標準の汎用構造解析ソルバーであり、応力・振動・座屈・熱・空力弾性など高度な構造解析を計算する中核エンジンとして機能します。
また、SimcenterはNX CAEから発展して生まれた解析ソフトウェアの新ブランドです。
システムレベルで製品性能を予測・最適化でき、NX CAE後継の新ブランドとして機能拡張中となります。流体+熱+応力のような複合的な解析にも対応可能で、NX CADやNX Xのソフト内で利用できます。
NX CAEでよく用いる解析機能

以下に、NX CAEに搭載されている解析機能のなかで、設計段階でよく用いる機能とその概要をまとめました。
NX CADやNX Xといったシーメンス製品を導入するにあたり、必要な解析機能が揃っているか確認してみてください。
線形および非線形構造解析|応力・座屈・ひずみ評価
NX CAEは、静的・動的応力、固有値、座屈といった線形解析、そして大変形や非線形材料を考慮した高度な解析が可能です。
摩擦を含む接触解析や積層複合材の挙動シミュレーションに対応しており、設計段階から強度・剛性・変形のリスクを正確に把握できます。安全性と耐久性を担保した最適設計を実現できるのが特徴です。
耐久性・疲労解析|寿命予測とリスク回避
NX CAEでは、製品の長期使用を想定した疲労解析を実施することで、繰り返し荷重への耐性や寿命予測に対応できます。
無限寿命モデルと有限寿命モデルの両方を解析できるほか、単軸・二軸の応力サイクルや、実際の測定データを用いた荷重履歴の解析も可能です。製品の破損リスクを早期に把握し、設計段階で信頼性や安全性を確保できます。
熱解析|伝導・対流・放射による温度管理
NX CAEの熱解析は、定常・非定常解析における、伝導・対流・放射といった多様な熱伝達を正確に再現可能です。
また、高度な放射解析や環境加熱条件の設定にも対応しており、電子機器の冷却設計や宇宙機器の温度制御など幅広い分野で活用できます。解析をすることで熱変形や性能劣化を防ぐことができるのはもちろん、長期的な製品の安定性を確保できるのが強みです。
流体解析(CFD)|冷却・空力性能の最適化
NX CAEの流体解析では、層流・乱流、圧縮性・非圧縮性流体の挙動を高精度で予測できます。
また、次のような特殊条件にも対応しており、冷却効率や空力性能を解析することで燃費改善や熱暴走防止を実現します。
- 二相流
- 非ニュートン流体
- 結露現象 など
設計段階から流体の影響を考慮できるため、他社よりも安全性や安定性に優れた製品を設計しやすくなります。
機構解析|制御システムとの連成シミュレーション
NX CAEには、機械の運動を解析する「キネマティクス」「マルチボディダイナミクス」を用いた機構解析が搭載されています。
剛体・フレキシブルボディの動作解析に加え、Matlab/Simulinkなど制御システムとの連成シミュレーションにも対応しているのが特徴です。
制御アルゴリズムとメカ構造の相互作用を考慮した精密なシステム検証が可能であり、開発初期段階から性能の最適化を図れます。
製造設計におけるNX CAEの位置付け

製造設計の現場では、製品の形をつくるだけでなく「つくってから問題が起きないか」を事前に検証しなければなりません。そこで役立つのが、次のような解析を実施できるNX CAEです。
- 設計初期から性能が確保されているか
- 製造工程をスムーズに進められるか
- 製品販売後の安全性や安定性を維持できるか
解析のステップは、製造設計を実施するにあたり、必ず登場する工程のひとつです。
NX CAEには、試作前に製品の性能や安全性を確かめる、また製造後の手戻りを防ぐという目的で欠かせない役割があります。よって、解析ツールを更新する場合や設計全体の作業効率化をする際には、CAEの機能が統合されたシーメンスの「NX CAD」「NX X」があると便利です。
NX CAEの活用シーン

NX CAEを含む「NX CAD」「NX X」を導入した後、どのように業務に活用できるかイメージできないお悩みの人も多いでしょう。
ここでは、実際の業務イメージを紹介しつつ、NX CAEの活用シーンをわかりやすく解説します。
新製品開発の軽量化設計
NX CAEでは「トポロジー最適化」などの機能を使って、製品の強度を保ちながらムダな素材を省いた設計(軽量化設計)が可能です。
たとえば、新製品を開発する初期段階では、できるだけ軽くて強い形を見つけることが欠かせません。
特に自動車やドローン、ロボットの部品などを設計する場合には、製品の軽量化などに取り組む必要があるため、NX CAEを用いながら「どこを削れば軽くなるか」をシミュレーションする場合もあります。
機器の熱・流体解析による安全性確保
NX CAEは「熱解析」「流体解析(CFD)」機能を使って、空気の流れや部品の温度分布を確認できます。
特に、電気製品やモーターの設計では、熱がこもらないようにする工夫が必要です。
例として、ノートパソコンを設計する場合には、内部で熱がどこに集中するかを調べ排熱の対策を施さなければなりません。対して、NX CAEで解析を実施すれば、現実と同様のクオリティでファンや放熱フィンの配置を最適化できます。
複雑な機械・制御システムの動作検証
NX CAEでは「機構解析」「制御連携(Simulink連携)」などを使って、実際の動きや制御動作を仮想空間で確認できます。
たとえば、ロボットの腕がどんな順番で動くか、車のサスペンションがどう反応するかなどを、実物をつくる前に検証できることから、手戻りの削減が可能です。
製品の試作前には「ちゃんと動くかどうか」を確かめる必要があることも含め、品質確保という面でもNX CAEが活躍します。
NX CAEを導入する方法

NX CAEを導入する際には、機能が統合されたソリューションである「NX CAD」「NX X」のどちらかの導入が必要です。基本的に、次の2つの方法で導入を進められます。
- シーメンスの代理店を通じて購入する
- 公式サイトで直接購入・契約する
初めてCAD・CAM・CAE・PLMの複合ツールを導入する場合や、導入準備に不安がある場合には、代理店の利用がおすすめです。
NX CAEについてよくある質問
NX CAEについてまとめ
NX CAEは、設計段階から高度なシミュレーションを可能にする統合型のCAE環境です。
構造解析や熱・流体解析、耐久性評価、制御システムとの連成など幅広い機能を備えており、実際の条件に近い検証を効率的に行えます。NX CADやNX Xを契約することで、設計業務に活用できるため、まずは公式サイトやベンダー問い合わせを利用するのがおすすめです。