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半導体産業はどう変わる?SEMICON Japan 2023の注目ポイント

2023年12月13〜15日にかけて東京ビッグサイトで開催されたSEMICON Japan 2023。
日本における今後の半導体産業についての発表があり、ニュースをはじめ数々のメディアが取り上げた話題です。

今回は、SEMICON Japan 2023で発表された「今後の半導体産業の動向」について紹介します。要点を押さえて解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

SEMICON Japan 2023とは?

SEMICON Japan 2023のイベントイメージ
出典:SEMICON Japan 2023公式サイト

SEMICON Japan 2023は、半導体産業を中心にDX時代を支える企業・団体が今後の目標を発表する産業イベントのひとつです。

SEMIジャパンが主催となり、東京ビッグサイトで2023年12月13~15日の3日間にかけてイベントが開催されました。例えば、イベントの中では次のような項目が発表されています。

  • 5G・6G高速通信技術
  • AI・機械学習
  • 自動運転
  • メタバース
  • メドテック(医療技術)

大手企業はもちろん、大学や官公庁も参加している一大イベントです。
本記事では、イベント内で発表された注目ポイントをわかりやすく解説していきます。

国内で開催された他の製造業向けイベント情報を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。

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半導体産業を含む19ヵ国・961団体がイベント参加

SEMICON Japan 2023は、世界中の国々を含め、19ヵ国・961団体がイベントに参加しました。来場者数は3日間でトータル6万人を超え、前年度に開催されたSEMICON Japan 2022の1.6倍の会場規模でイベントが開催されています。

例えば、施設内ブースで次のイベントが開催されました。

ブース 概要
Advanced Packaging and Chiplet Summit(APCS) 半導体産業の最新動向・パッケージング業界などを展示
FLEX Japan シリコン半導体・エレクトロニクスを組み合わせたハイブリッド技術を展示
Workforce Development 半導体産業の技術資料や学習体験施設、ワークショップを提供
総合ゾーン 地域別の半導体産業の状況や最新技術・製品を紹介

どのブースも賑わいを見せ、学生から企業担当者まで多くのユーザーがあふれていました。
世界最大手の半導体産業「TSMC」が日本の熊本に第二拠点を設けたことも含め、日本でも半導体産業への注目が集まっていることが伺えます。

半導体産業への補正予算2兆円を発表

SEMICON Japan 2023のオープニングセレモニーでは、経済産業大臣の西村康稔氏が登壇し、2023年度補正予算案について発表がありました。参考として半導体産業に関わるポイントを以下にまとめました。

  • 半導体産業・AI産業に約2兆円の支援を計画している
  • 日本が世界をリードしてサプライチェーンの強化を目指す

日本の2023年度における補正予算は13兆1,992億円であり、そのうちの1割近い費用がすべて半導体産業に割り当てられている状況です。

半導体はパソコンや精密機器、工場機器といった幅広い製品に利用する媒体であることから、日本国民を含め、半導体産業の今後の動向に期待が寄せられています。

今後の半導体産業への投資予定

SEMICON Japan 2023の最終日、経済産業省の半導体戦略室長の清水英路氏より、2023年の補正予算に留まらず、今後も継続して半導体産業に投資していきたいと発表がありました。また、次のような発言もあり、半導体産業の成長に期待が集まっています。

大臣が変わっても、半導体への積極投資は止めない
引用:TechFactory「産官学が語る半導体産業の重要性」

半導体産業の世界市場規模は2023年までに1兆ドルに達すると予想されています。
他国に差をつけられないように対策すること、日本でも半導体シェアの市場を獲得することを目標として、補正予算の2兆円をきっかけとし、今後も大規模な支援が実施される予定です。

半導体産業の将来課題

半導体産業の将来課題

日本の半導体産業はまだスタートしたばかりであり、他国に比べてまだ市場規模が小さい状況です。ただ、TSMCの熊本拠点開発に伴い、世界と肩を並べる土台が整いました。

しかし、半導体産業にはまだ複数の将来課題があるとイベント内で説明されています。
具体的な半導体産業の課題をポイントに分けてみていきましょう。

半導体産業の人材不足

日本国内の人材不足が叫ばれる中、新たに半導体産業に若い人材をと入れなければならないことが課題だと、イベント内で発表がありました。

半導体産業の分野は、世界各国で素晴らしい成果を出していることから、いち早く若い人材確保と、人材育成に取り組まなければなりません。SEMICON Japan 2023では、2030年を目標として人材確保・育成に取り組んでいくと発表されています。

業務を俯瞰できる人材の育成不足

半導体産業を育てるためには、ただ専門性を持つ人材を確保するのではなく、業界全体を俯瞰的に見渡せる人材が必要であると発表がありました。

ただ若い人材を集めるだけでなく、半導体について指導する教員や指導者側の育成も必要です。今後、半導体産業の効率的な人材育成を含め、産学官連携による高品質なアプローチを実現していくべきだと、説明されています。

産学官の連携力不足

現在の日本は産学官の連携力が不足しており、他国と比べて業界の成長スピードが遅いとイベント内で発表がありました。

国や自治体を含めた効率的な投資・支援を実施することはもちろん、産学官で連携してより多くの人々から半導体産業への理解や興味を集めるべきです。また、国内だけで連携するのではなく、すでに半導体産業が発展している他国から意見を聞くことも重要だと発表がありました。

新技術導入・DX活用に対する従業員教育を実施したいのなら、セミナーに参加するのも効果的です。例えば、次のセミナーに参加してみるのはいかがでしょうか。

半導体産業における他国の動向

半導体産業の世界動向

日本の半導体産業の成長を促すために重要なのが、他国の動向を探り分析していくことです。
参考として、イベント内で発表された他国における半導体産業の動向をまとめました。

アメリカが半導体産業の生産基盤強化を実施

半導体産業で多くのシェアを獲得するアメリカでは、2021年に30億ドルの補助枠を設けたほか、2022年に半導体産業への投資に税額控除を設けるなど、経済面で半導体産業が成長しやすい土台作りに力を入れています。

日本が実施している半導体の先端パッケージングにも補助を開始しており、生産基盤の強化で多くのシェア獲得を狙っていると発表されている状況です。

中国・インドが大規模予算を確保

半導体世界シェア1位を獲得する中国は、最大20兆円規模の支援が計画されています。
また半導体製造工場の売上に応じてインセンティブ制度を設けるといった動きもあり、世界シェアを維持する仕組みづくりに注力している状況です。

また現状で半導体産業の基盤のないインドでも、参入の計画がスタートしています。
市場拡大のための外資誘致はもちろん、支援制度を整備しているなど、IT企業として強い力を持つインドも、今後の市場競争に大きく影響すると予想されているようです。

台湾・韓国も半導体産業への投資をスタート

日本の隣国である台湾・韓国でも半導体産業への参入がスタートしています。
日本ほどの補助金は整備されていませんが、毎年1万人近い人材確保に注力するなど、市場規模の拡大が予想されている状況です。

EUでは半導体世界シェア20%目標を宣言

EU諸国では、2030年を目標として半導体の世界シェア20%を確保すると発表がありました。
もともと10%近い目標を立てていたEU諸国でしたが、2倍近いシェア率獲得のため徐々に歩みを進めている状況です。

ただし現在のEUが定めた計画は抽象的なものであり、具体的な戦略が寝られているわけではありません。今後の動き方によっては日本を含む他国よりも出遅れがあるのではないかと予想されています。

半導体産業の目標

日本における半導体産業の動き

SEMICON Japan 2023では、現状の課題に合わせて、今後の実施方針や目標が発表されました。今後大きな動きを見せるポイントを2つ紹介します。

材料調達を2030年までに60%UP

今後の半導体産業の発展を目指すべく、Rapidusシリコン技術本部長の石丸一成氏が次のように発表しました。

現状で国内調達ができる材料は全体の25%だといい、量産開始以降は速やかに50%まで引き上げ、2030年までには60%まで引き上げる
引用:TechFactory「産官学が語る半導体産業の重要性」

海外とのサプライチェーンを整備し、現在国内で集められる材料の調達率25%を2030年までに60%まで高める予定です。

半導体の生産は2024年からスタートする予定であり、今後国内企業と海外のつながりを強め、今まで以上に半導体の材料を集めやすい環境を整えると発表されました。

世界最速のサイクルタイㇺを目指す

イベント内では、半導体産業の生産性向上のために、AI技術の活用が重要だと発表がありました。発表された内容の中では、次の方法で生産性向上が目指される計画です。

  • 生産工程のパフォーマンス向上
  • 先進技術・DXの導入
  • 徹底した品質管理
  • パッケージングの自動化

例えば、精算時に必要となる消費電力の削減のためにAIの力を活用するほか、効率よく半導体の製品を提供するシステムづくりを重視すると説明がありました。また、上記の項目を反映し、他国に類を見ない「世界最速のサイクルタイム」で製品提供をしたいと目標が掲げられています。

また製造現場においては、DX化の取り組みが盛んです。
詳しくは以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

製造現場のDXとは?解決すべき課題・導入手順・企業事例を紹介

半導体産業についてまとめ

日本の半導体産業は、熊本へのTSMC誘致に伴い規模を増しています。
また、国からの補正予算が下りるなど、今後さらなる技術発展が予想されている状況です。

半導体産業は世界を制するとも言われており、世界中の先進国が半導体産業のシェア率確保に力を入れています。本記事で紹介した国内イベント「SEMICON Japan 2023」をはじめ、今後さらに魅力的な情報が登場するでしょう。

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