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【2025】土留め工事とは?メリットや費用を解説

近年、日本では地震や大雨による土砂崩れなど自然災害も多く、早急な対策が求められています。中でも土留め工事は自然災害の被害を軽減する上で重要な対策の一つです。

しかし、普段土留め工事を行う人でも重要性や正しい施工方法を詳しく把握しているという人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では土留め工事の概要をはじめ、実施するメリットや工法、業者に依頼する場合の費用など詳しく解説します。土留め工事についての基礎知識がわかる記事となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

土留め工事とは?

土留め工事とは、土砂の崩壊や流出を防ぎ、土地の安定を確保するための工事です。
主に傾斜地や斜面、盛土部分に設置される構造物や住宅を対象にした崩れやすい地盤の強化や安全対策として行われます。

土留めにはコンクリートブロック・擁壁・石積み・木材などが使われ、場所や用途に応じて工法が異なります。例えば住宅地では庭や駐車場の整備に、農地では畑や排水路の保護に利用されます。

また、土留めは法令で高さや構造が制限されており、規定を超える場合は計画段階での確認や届け出が必要です。建築基準法では高さが2mを超える擁壁は工作物として扱われるため、建築確認申請を提出する必要があります。

一方、DIYでも小規模な花壇や家庭菜園での土留めは可能ですが、耐久性や排水機能を考慮しなければいけません。土留め工事は見た目の改善や土地の有効活用だけでなく、自然災害への備えとしても重要な役割を担っています。

擁壁との違い

以下の表は土留め工事と擁壁の違いです。どちらも地面を安定させるために行うものですが、違いを知っておきましょう。

土留め工事 擁壁
目的 土砂の崩落や流出を防ぎ、土地を安定させるための工事 傾斜地や段差のある土地で、高低差を支えるための壁状の構造物
工法と構造 ブロック積み、石積み、木材、杭打ちなど コンクリート造が主流で、鉄筋を入れて強度を高めた重力式擁壁や逆T字型擁壁など
使い分け 比較的簡単な補強や景観目的、短期的な整備に適している 斜面や土地の高低差を支え、安全性を確保するために用いられる

簡単に言えば、土留め工事は土砂の崩落を防ぐための工事全般を指し、その中でも特に強度が必要な高低差の支えには擁壁が用いられます。擁壁は一般人で行うことはできず業者に依頼する必要があります。

土留め工事は比較的小規模工事ですが、トラブルがないわけではありません。考えられるトラブルや対処法については以下の記事を参照ください。

小規模工事とはどのような工事?具体例やおこりえるトラブルも紹介!

土留め工事のメリット

土留め工事のメリット

土留め工事のメリットは主に以下の3点です。

  • 土砂崩れの防止
  • 防犯効果が期待できる
  • 隣接した土地との境界をはっきりさせる

メリット①土砂崩れの防止

1つ目のメリットは地盤の安定を図り、土砂崩れや地盤の崩落を防止できる点です。特に雨が多い地域や急な斜面がある土地では、地中の水分が増えると土壌が緩み、崩落のリスクが高まります。こうした斜面に土留めを設置することで、地面を支えて豪雨や台風といった自然災害にも備えられます。

また、住宅地や駐車場整備の際にも地盤の崩れを防ぎ、安全性の高い土地を維持することが可能です。土留め工事は住宅などに使用されることが多く、住宅自体も安定するため寿命が長くなります。

メリット②防犯効果が期待できる

不法侵入や不審者の進入を防ぐ防犯効果も土留めでは期待できます。特に高低差のある場所にコンクリートブロックや擁壁を設けると、敷地の外周に障壁ができるため、侵入のハードルが高くなり空き巣などに狙われにくくなるでしょう。

また、擁壁やフェンスと組み合わせることで、夜間でも目立ちにくい場所への進入を防ぎます。土留め工事は防犯カメラを取り付けるための土台としても有効で、防犯性と景観の両立が可能です。

メリット③隣接した土地との境界をはっきりさせる

近隣住民とのトラブルで多いのが「どこからどこまでが私有地なのか」という問題です。特に段差のある土地では、境界が曖昧だとトラブルの原因になることがありますが、土留めを設置することで視覚的にも明確な区分が生まれます。

境界を明確化できれば、土地の管理や権利関係をはっきりさせるうえで重要です。住宅地や農地、商業施設においても、境界の明示はトラブル防止に役立つでしょう。

土留め工事の種類と工法

土留め工事の種類と工法

土留め工事の種類は様々ですが、主に使用される下記4つの工法を紹介します。

工法 特徴
鋼矢板工法 鋼矢板は強度があり、長期間にわたり地盤を保持することができるため、特に地下水位が高い場所でも効果的。
ゼロパイラー ゼロパイラーは振動や騒音を抑えた工法であるため、周辺環境への影響が少なく、都市部での施工に適している。
ダウンザホールハンマー工法 ハンマーを使用して岩や硬い土を効率的に掘削することができるため、硬質地盤での作業に適している。
油圧バイブロ工法 振動を利用した施工方法であるため、周辺地盤への影響が比較的少なく、周囲の構造物を守りながら施工可能。

工法①鋼矢板工法

鋼矢板工法は、鋼鉄製の板(鋼矢板)を地中に打ち込んで土留めを行う工法で、特に強度が必要な場所や地下水の遮断が求められる現場で使用されます。鋼矢板同士をかみ合わせることで高い耐久性と防水性を確保でき、河川の護岸工事や掘削工事の土留めによく用いられます。

耐腐食性が高く長期的に安全性を確保できますが、一方で施工には騒音や振動が伴うため、周辺環境への配慮が必要です。

工法②ゼロパイラー

ゼロパイラーは、狭い場所や制限された空間で鋼矢板を打設するための無振動工法です。従来の工法と異なり、周囲に振動や騒音を与えないため、都市部や住宅密集地での施工に適しています。

クレーンが使えない狭い場所や地下構造物の近接工事にも対応可能です。

工法③ダウンザホールハンマー工法

ダウンザホールハンマー工法は、空気圧を利用して掘削機の先端ハンマーを打撃させ、硬い地盤や岩盤を掘削する工法です。深い地中まで掘り進めることが可能で鋼管杭や基礎工事、地下構造物の設置に適しています。

ハンマーの振動を直接地面に伝えるため、掘削効率が高く、硬い地盤や傾斜地でも安定した作業ができます。ただし、空気圧設備が必要なため、施工コストが高くなる傾向にあります。

工法④油圧バイブロ工法

油圧バイブロ工法は、油圧式のバイブロハンマーを使用して杭や矢板を地中に振動で打ち込む工法です。
振動で地盤を緩めながら杭を挿入するため、施工効率が高く短時間で作業が完了します。

電動式よりも振動や騒音が小さいため、都市部や騒音規制の厳しい場所でも使用され、周囲への影響を抑えられるのポイント。また、柔らかい地盤からある程度硬い地盤まで対応でき、基礎工事など幅広い用途で活用されます。

さらに、「オーガ併用油圧バイブロ工法」という方法では、リーダレス型機械にアースオーガーの硬質ヘッドを装着し、回転力で地面を削孔した後、油圧バイブロに切り替えて杭を打ち込むことでより効果的な施工が可能です。

土留め工事の費用相場

土留め工事の費用相場

土留め工事の費用相場は、採用する工法や施工する長さ、現場環境によって大きく異なります。

例えば、土留めブロックを4段積み(高さ80cm)し、基礎工事も含めた場合、1mあたりの費用は40,000円~が一般的です。一方、全体的な工事費用の目安は30万円~となりますが、重機の使用可否や運搬車の進入が可能かどうかといった条件も費用に影響します。

様々な要因により、相場の費用より増減することがあるため、施工範囲や予算に応じた工法の提案を業者に依頼しましょう。また、1社から見積もりを取るのではなく、複数社から見積もりを取るのがおすすめです。

あわせて施工箇所で崩れがないかなど、異常を早期に検知することも重要です。手軽に設置できる山留めウォッチャーのようなシステムを導入すると、スマホを使い遠隔地からでもリアルタイムな状況確認が可能。安全管理を怠ると想定以上のトラブルになってしまうこともありますから、ぜひ監視システムもあわせて検討されてみてください。

土留め工事を行う際の注意点

土留め工事を行う際の注意点

土留め工事を行う際は以下の3点に注意しましょう。

  • 周辺環境への影響を確認する
  • 安全対策を徹底する
  • 土地に合った最適な施工方法を行う

注意点①周辺環境への影響を確認する

土留め工事では、施工時の振動や騒音が周囲に与える影響を事前に確認し、適切な対策を行いましょう。特に住宅地や商業エリアでは、騒音や重機の稼働による振動が近隣住民や店舗に迷惑をかける可能性も。

また、大規模な工事となれば工事に伴い地盤が緩むことで、隣接する建物や道路に影響を与える危険性もあります。周辺環境を調査・把握し、想定できる事故やトラブルを防ぐ対策方法を明確にしておきましょう。

以下の記事では騒音に関するトラブルの対処法について詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

建設工事に係る騒音・振動の規制を理解して苦情を回避しよう!

注意点②安全対策を徹底する

土留め工事では、施工現場の安全管理を徹底しましょう。工事現場は重機や高所作業が伴うため、作業員の安全を守るためのヘルメットや安全帯の着用はもちろん、崩落防止のための仮設フェンスや足場の設置も行うのが良いです。

また、重機の操作ミスや地盤の崩壊による事故を防ぐため、作業計画をしっかり立て日々の点検や作業員への安全教育も必須。施工の安全性が高まり、工事の遅延や事故を防ぐことができます。土留め工事を行う際は天候も確認しておきましょう。

注意点③土地に合った最適な施工方法を行う

土留め工事では、施工する土地の質や地形に応じた適切な工法を選ぶことが重要です。

例えば、柔らかい地盤では杭を打ち込む工法が有効ですが、硬い地盤では掘削が必要となることもあります。また、周囲の景観や用途に合わせたデザイン性も意識しなければいけません。

工法の選択を誤ると、施工後に地盤沈下や崩落のリスクが高まる可能性があるため、事前に専門家に調査を依頼し、最適な工法を提案してもらうことが重要です。土地に合った施工を行うことで、安全性と耐久性が高まるでしょう。

土留め工事についてのまとめ

土留め工事は、土地の安定と安全性を確保するために欠かせない工事です。

地盤の崩落防止に加え、境界の明確化や防犯効果といった効果も期待でき、住宅地や商業地、農地など幅広い用途で活用されています。ただし、工法の選定や法規制への対応は現場の状況や用途に応じて慎重に行う必要があります。

本記事を参考に安全かつ適切な土留め工事を行いましょう。

土留め工事とは?メリットや費用を解説
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