製図に利用するCADは、毎年のように技術発展が進んでいます。
また、新技術の登場によって、さらにCADを活用する場面が増えつつある状況です。
この記事ではCADの最新トレンドとして、押さえておくべきポイントをわかりやすくまとめました。トレンドを理解してCAD導入を考えていきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
CADとは
CADとはコンピュータを用いて、図面を作成するデジタル技術のことです。
線や面、数値情報を含むデータとしてCADを保存でき、機能の異なるCAD製品が各種メーカーから提供されています。
またCADは、平面上に製図する2DCAD、立体的なデータを作成する3DCADという2パターンを利用するのが特徴です。直近のトレンドとしては、3DCADを活用する傾向が強まっています。
CADのトレンドとは別に、概要や機能を知りたい方もいるでしょう。
トレンド以外の情報については、以下の記事をチェックしてみてください。
国の動きから見るCADの最新トレンド
CADを利用する際にまず押さえておきたいのが、国土交通省が進める最新のトレンド情報です。CADといったツールは技術関連の業務で利用されているため、国が主体となってルールなどを取り決めることがよくあります。
参考として、具体的なトレンド情報を整理しました。
設計業務委託の単価の上昇が続く

近年のトレンドとして、CADを利用する業務の技術者当たりの単価が上昇し続けている状況です。過去の最低値と比べると1.5倍もの単価上昇が起きており、今後CADオペレーターや設計技術者の人員が増えていくのではないかと考えられています。
また単価というトレンドの背景には、CADを利用する土木・建築・機械に関連する業界の人手不足が関わっています。インフラの維持を推し進めるため、国が主体となり今後も賃上げが続いていくでしょう。
電子納品のガイドラインが改定される
業務納品に関わるトレンドとして、CADデータの納品時に用いる「電子納品要領・ガイドライン」が改定されました。当ガイドラインには納品時のデータ形式や名称の設定等がまとめられており、国が推進する最新トレンドに合わせて細かな変更が加えられています。
特に大きな改定のポイントがCADとBIMのデータの取り決めについてです。
具体的な変更点を以下にまとめました。
改定前 | 改定後 | |
用語の定義 | BIM関連の具体的な用語なし | BIMに関連する3次元モデル、点群データといった名称が追記 |
納品フォルダの構成 | BIMに関する具体的な記述なし | フォルダわけの条件・ルールが追記 |
フォルダ命名規則 | CADのみ決定済み | BIMに関する命名規則が整備 |
CADのトレンドを調べる際には、同時にBIMに関するトレンドにも注目しなければなりません。今後もBIM関連のトレンドが大きく動く可能性があるため、国が公開する資料については適宜確認が必要になると覚えておきましょう。
企業の動きから見るCADの最新トレンド
国が推進するCAD関連のトレンドに合わせて、企業でもさまざまな動きがスタートしました。
特に注目されているポイントを3つ紹介します。
CADシミュレーションの同時並行化
CADで作成したデータは、耐久性といった情報を分析するために、構造解析を実施しなければなりません。しかし、従来の動き方は「図面作成→解析」という流れで進むため、解析中にCAD作業が一時停止するのがネックでした。
対してこれからは図面作成・解析を同時並行して実施できる仕組みを作るべきだという考えが、CADメーカー等で話題になっています。時間のかかる設計作業の期間短縮を目指すため、メーカーが中心となり設計者が解析を行える環境を整え始めています。
CADにAIの技術を導入
CADおよび最新トレンドとして押さえておきたいのがAIを活用した設計業務の適用です。
機械学習を行った人工知能を用いることにより、次の効率化を実現できると期待が集まっています。
- 図面の自動生成
- 合理的デザインの提案
- 解析の効率化
今までは人間の判断で構造やデザインを決めてきましたが、AIを用いることにより最終的な判断を除いて、図面作成を自動化できるのが魅力です。AI活用は紹介するトレンドの中でも期待が集まる項目であり、すでに一部のメーカー製品にはAIが搭載されています。
CADトレーニングへの投資
ここまでメーカーを中心としたトレンドを紹介しましたが、企業側でもCAD関連の大きな動きがあります。特に多くの企業がスタートしているのが積極的なCADトレーニングへの投資です。
CADの技術が向上しているほか、新たにBIMといった作図スタイルが主体になっていることから、従業員の能力を高めることが企業にとって欠かせないトレンドとなりつつあります。従業員のスキルを高めることが、直接的に設計業務の効率化につながるのです。
CADトレーニングに関するトレンドを抑えたいのなら、オンラインセミナーを利用するのもひとつの選択肢だと言えます。最新トレンドを把握するきっかけにもなるため、次のようなセミナーに参加してみてはいかがでしょうか。
実務に見るCADの最新トレンド
建設・建築・機械業界では、すでにCADを用いた設計業務を複数実施しています。
その中でも、実務目線で企業がどのようにCADを活用しているのか、具体的なトレンド情報を整理しました。
BIMを活用した業務効率化
企業トレンドとして、原則導入が推進されている「BIM」を業務に適用する企業が増えつつあります。BIMは3次元図面を用いながら、数値情報などを組み込める設計業務のトレンドと言える製図ツールです。
配置したデータすべての材質や強度といった情報を付与できるほか、配置した構造物をもとに、構造解析を実施できます。
設計者自身が図面を見やすくなるのはもちろん、納品先である発注者へのイメージ共有として役立つのがトレンドであるBIMの魅力です。導入するためにはハイスペックなパソコンが必要になりますが、続々と企業が導入を進めています。
VR技術の活用
設計業務のトレンドとして、CAD・BIMといった製図ツールに合わせてVR技術を活用する企業が増えています。
VRとは疑似的に作成した3Dモデルのデータを人目線で体験できる便利な技術です。
設計業務との相性も高く、仮想世界の3Dモデルを確認しつつ設計検討を実施できます。
またVRの技術を活用すると、次のような項目が可能となります。
- 3Dモデル上を移動しながらチェックできる
- デザインや圧迫感など意匠部分を疑似体験できる
最近では、打ち合わせの際にVRを利用する企業も増えている状況です。
設計業務のトレンドに対応したいのなら、VRゴーグルを導入してみるのも良いでしょう。
3次元測量による時間短縮
CADで利用する測量データの取得方法にも大きな変化が生まれています。
特にトレンドとして注目されているのが、レーザー測量や写真測量により取得できる点群データです。
点群データは上画像のように地形に合わせて点のデータを取得してあるデータのことを指します。これまで測量と言えば、人が現地に向かい1点ずつ測量して確認するのが一般的でした。対して3次元測量には次のメリットがあります。
- 短時間で数万~数百万点を取得できる
- 樹木などを透過して地形だけを取得できる
またCADに反映する前の準備として、点群データをキレイに整える点群処理ソフトもトレンドとして覚えておきましょう。時間のかかる測量業務の短縮化に役立つことから、土木・建築・機械業務の生産性向上に役立つ技術だと言えます。
CADソフト人気トレンド一覧
CAD関連のトレンドを理解した後に重要となるのが、導入するCADソフトを選ぶことです。
しかし、どういったCADソフトを選ぶべきか悩む方も多いでしょう。
参考として、人気トレンドを押さえた有名なCADソフトを一覧にまとめました。
気になるソフトがないかチェックしてみてください。
CADソフトの名称 | 無料or有料 | 提供メーカー | 対応範囲(CAD・BIM) |
AutoCAD | 有料(無料体験版あり) | Autodesk | CAD |
Revit | 有料(無料体験版あり) | Autodesk | CAD・BIM |
Archicad | 有料(無料体験版あり) | Graphisoft | CAD・BIM |
GLOOBE | 有料(無料体験版あり) | 福井コンピュータアーキテクト | BIM |
TREND-ONE | 有料(無料体験版あり) | 福井コンピュータアーキテクト | CAD |
また、メーカーごとに建設向け、建築向け、機械向けなど個別で製品やプランが異なります。
海外大手企業のAutodesk、Graphisoftのほか、国内ソフトを提供する福井コンピュータ等が人気です。
もしCAD関連ソフトの選び方がわからないとお悩みなら、トレンドを押さえた製品の導入を検討してみるのはいかがでしょうか。以下の記事でCADを学べるeラーニングサイトも紹介しています。あわせてチェックしてみてください。
CAD関連のトレンドチェックのポイント
CAD関連のトレンドを押さえ続けたいと考えている人は、以下の情報媒体を定期的にチェックするのがおすすめです。
- 国(国土交通省・建設省など)
- CADメーカー
- 大手企業
時間と手間のかかるCADは、今後大きく改善し、自動化やAI導入が進んでいくと予想されます。トレンドをチェックを実施することで競合他社に負けない施策を生み出しやすくなるでしょう。
CADの最新トレンドについてまとめ
CADのトレンドとして押さえておくべきなのが、国の最新動向と各種CADメーカーのソフトに関する情報です。トレンドの中ではAIやVRの活用、設計業務の効率化といったポイントがありました。
トレンドの理解は、これからCADを導入する方はもちろんCAD導入後も継続的に実施すべきポイントです。業界として有利な知識を身に付けるためにも、日常的にCADのトレンドを追ってみてください。
