分散分析は、ビジネスでの意思決定を役立てるために欠かせない手法です。エクセルでは、この分散分析を簡単に実行できる機能が備わっており、データのばらつきを視覚的に把握できます。
本記事で、エクセルで使える分散分析の種類と、その具体的な使い方について確認していきましょう。
エクセルで求められる分散とは
エクセルで求められる「分散」とは、3群以上のデータのばらつきを示す統計指標です。
具体的には、各データポイントが平均値からどれほど離れているかを数値化したもので、データがどの程度広がっているかを評価する際に利用されます。
分散が大きいほどデータのばらつきが大きく、小さいほどばらつきが少ないことを示します。
エクセルでは、データ分析ツールを使って簡単に分散を計算することが可能です。
エクセルの分散分析が活用されるケース
エクセルの分散分析は、主に以下のようなケースで活用されています。
- 品質管理
- リスク管理
- 市場調査
エクセルの分散分析が活用されるこれらのケースについて見ていきましょう。
ケース①品質管理
品質管理では、製品のばらつきを評価するために分散分析を用います。
分散は、製品の品質がどれだけ一貫しているかを数値で示し、製造工程の安定性を確認するのに役立つでしょう。
ばらつきが小さいほど、品質が安定していることを意味します。この分析により、問題のある工程を特定し、改善策を講じることができます。
ケース②リスク管理
投資などのリスク管理にも分散分析は活用されます。投資対象のリターンのばらつきを分散で計算することで、投資のリスクを評価可能です。
ばらつきが大きいほど、リターンの変動が激しく、リスクが高いことを示します。投資のポートフォリオ全体のばらつきを分析することで、リスクを分散し、安定したリターンを目指す戦略を策定できるでしょう。
ケース③市場調査
市場調査では、消費者の嗜好や行動に関するデータのばらつきを分散を活用して分析します。これにより、ターゲット市場の傾向を把握できます。
例えば、分散が小さい場合、消費者の嗜好が似通っていると判断でき、逆に分散が大きい場合、年齢や性別などの要因によって嗜好が異なっていると判断できるため、マーケティング戦略の策定に役立つでしょう。
エクセルで使える分散分析の種類
エクセルで使える分散分析には以下の種類があり、元データによって使う種類は異なります。
- 一元配置分散分析
- 二元配置分散分析
これらの特徴について確認しておきましょう。
種類①一元配置分散分析
一元配置分散分析は、分析したい要因が一つだけの場合に使われる手法です。
例えば、各クラスのテストの点数にばらつきがないかを調べたいとき、分析したい要因はクラスごとの違いのみなので、一元配置分散分析が使われます。
種類②二元配置分散分析
二元配置分散分析は、分析したい要因が二つある場合に使われる手法です。
例えば、月ごとの気温のばらつきを調べたいとき、月以外にも地域でも差があるのかを調べたい場合、分析したい要因は月と地域の二つが当てはまるので二元配置分散分析が使われます。
また、エクセルで使える二元配置分散分析には「繰り返しあり」と「繰り返しなし」の2種類があり、これらの違いは以下の表のとおりです。
繰り返しあり | それぞれのカテゴリーに属するデータが複数ある場合に使用される。 |
繰り返しなし | それぞれのカテゴリーに属するデータが一つしかない場合に使用される。 |
分析するデータによって、繰り返しのありとなしは使い分ける必要があります。
また、エクセルではデータのばらつき具合を可視化できる標準偏差を求める関数が用意されています。
以下の記事では、エクセルで標準偏差を求める方法や、算出した標準偏差をグラフ化する方法について解説しています。
ぜひこちらもあわせてご覧ください。
エクセルで分散分析をするために必要な設定
エクセルは、デフォルトの状態で分散分析はできません。まず、以下の手順で分散分析をするための設定を行いましょう。
- Altキー→Tキー→Oキーの順番でキーボードを押す
- 「Excelのオプション」ダイアログボックスが開いたら左のメニューから「アドイン」を選択する
- 画面下に表示されている「設定」ボタンをクリックする
- 「アドイン」のダイアログボックスが開いたら「分析ツール」にチェックをつけてOKボタンで閉じる
上記の手順を行うことで、データタブに「分析グループ」が追加されて、「データ分析」を行えるようになります。
エクセルで一元配置分散分析をする方法
今回は、テストの点数がクラスによって有意差があるのかを分析します。エクセルの一元配置分散分析を使う方法について見ていきましょう。
1.「分散分析:一元配置」を選択する
上記のようにクラスごとにテストの点数が入力された表を用意しました。
続いて、データタブの「分析」グループから「データ分析」をクリックします。
表示されたダイアログボックスから「分散分析:一元配置」を選択し、OKボタンを押しましょう。
2.詳細な設定をする
一元配置のダイアログボックスが開いたら、入力範囲にカーソルを合わせて、作成している表を見出しまですべてドラッグで選択します。
「先頭行をラベルとして使用」にはチェックを入れておきましょう。データ方向は、縦方向のデータなので「列」を選択します。
確率的に偶然ではなく意味があることを示す「有意差」の水準を表すaの値は、デフォルトの「0.05」のままにしておきます。
最後に出力オプションから「出力先」をアクティブにして、入力欄には結果を出力したいセルを選択しましょう。
3.結果を確認する
詳細な設定ができたら、指定したセルに分析の結果が表示されます。「概要」と「分散分析表」の項目が出力されますが、注目したいのは分散分析表のp値です。
p値は詳細設定の「a」の値で設定している0.05よりも低い場合は有意差があり、高い場合は有意差がないと判別できます。
今回のp値は0.9で0.05よりも大きいので、クラスによって点数の有意差はないことがわかります。
エクセルで繰り返しのある二元配置分散分析をする方法
今回は、繰り返しデータがあるときの50m走タイムの有意差を分析します。エクセルで繰り返しのある二元配置分散分析を使う方法について見ていきましょう。
1.「分散分析:繰り返しのある二元配置」を選択する
上記のように50m走を測った人物と、屋内と屋外で複数回計測したタイムの結果が入力された表を用意しました。続いて、データタブの「分析」グループから「データ分析」をクリックします。
表示されたダイアログボックスから「分散分析:繰り返しのある二元配置」を選択し、OKボタンを押しましょう。
2.詳細な設定をする
繰り返しのある二元配置のダイアログボックスが開いたら、入力範囲にカーソルを合わせて、作成している表を見出しまですべてドラッグで選択します。
「1標本あたりの行数」は、データの数に合わせて3にしておきましょう。aの値は、デフォルトの「0.05」のままにしておきます。
出力オプションは「出力先」をアクティブにして、入力欄には結果を出力したいセルを選択したら、OKボタンで設定画面を閉じます。
3.結果を確認する
指定したセルに分析の結果が表示されます。一元配置分散分析のときと同様に、分散分析表のp値に注目しましょう。
分散分析表には「標本」「列」「交互作用」の3項目が表示されています。
標本は室内と室外による有意差を、列は人物による有意差、交互作用は2つの指定した要因による組み合わせによって有意差が生じるかを確認可能です。
今回のケースでは、標本と交互作用のp値が0.05以上なので、有意差はないことがわかりますが、列には桁が大きな数字が入っていることを表すe表記が入っているので、p値は0.05以下になります。そのため、この結果から人物にのみ有意差があるとわかります。
エクセルで繰り返しのない二元配置分散分析をする方法
今回は、気温が月と地域によって有意差があるのかを分析します。
エクセルで繰り返しのない二元配置分散分析を使う方法について見ていきましょう。
1.「分散分析:繰り返しのない二元配置」を選択する
上記のように地域と月ごとの気温が入力された表を用意しました。
続いて、データタブの「分析」グループから「データ分析」をクリックします。
表示されたダイアログボックスから「分散分析:繰り返しのない二元配置」を選択し、OKボタンを押しましょう。
2.詳細な設定をする
繰り返しのない二元配置のダイアログボックスが開いたら、入力範囲にカーソルを合わせて、作成している表を見出しまですべてドラッグで選択します。
「ラベル」にはチェックを入れておきましょう。
aの値は、デフォルトの「0.05」のままにしておきます。
出力オプションは「出力先」をアクティブにして、入力欄には結果を出力したいセルを選択しましょう。
3.結果を確認する
OKボタンで詳細設定を確定したら、指定したセルに分析の結果が表示されます。一元配置分散分析のときと同様に、分散分析表のp値に注目しましょう。
今回のp値はe表記が入っていて0.05よりも小さいので、月と地域によって気温の有意差があることがわかります。
また、エクセルではデータ分析に役立つグラフである「ヒストグラム」の作成も可能です。
以下の記事では、用意したデータをヒストグラムに変換する方法について解説しています。
ぜひこちらもあわせてご覧ください。
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エクセルの分散についてのまとめ
今回は、エクセルで利用できる分散分析の種類や、実際の使い方について解説しました。
分散分析は品質管理やリスク管理、市場調査など、さまざまな分野で役立つため、ビジネスでは欠かせない指標です。
データのばらつきを理解し、適切な分析を行うことで、より精度の高い意思決定ができるようになるでしょう。
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