モノづくりに必要な大量の情報を一元管理することができ、使い続けることで更なる品質向上と効率化に貢献するPLMですが、まだ導入を検討されていながらも、導入まで至っていない企業が数多くあるのが現状です。
今回、PTC ジャパンのPLM推進ディレクター 前田 智徳氏にPLM導入に関してや製造業にどのような影響を与えるのかについて詳しく解説いただきました。
PTC ジャパン株式会社
ビジネスアライアンス事業部 PLM推進ディレクター
前田 智徳
企業によるモノの設計・製造・運用・サービス改革の支援し、インターネットベースの製品ライフサイクル管理 (PLM) ソリューション「Windchill」の導入を支援しています。
PLMとは
PLMとは、Product Lifecycle Managementの文字通り、
「Plan(企画)」→「Design(設計)」→「Produce(生産)」→「Operate(運用)」→「Monitor(監視)」→「Service(サービス)」→「Inform(報告)」→「次のPlan」
という製品のライフサイクルに関する全ての情報が事業部や部署を跨いで、部品表に網羅的に紐づけて管理できます。未導入の場合、必要な情報が網羅的に管理できず、必要な情報に辿り着くまでに多くのコストがかかってしまいます。
PLMを導入するメリットとは?
メリットを端的に言うと、PLMの導入で素早く必要な情報を得られ「経営戦略の実現に必要な情報を網羅的に管理できる」ことにより、目安としては「30%コスト(時間・人員)削減できる」、「コスト削減分を別の業務・事業に生かすことができる」という事になります。
順を追って説明していきます。
まず、経営戦略の実現をするためには、現状・問題点を把握するための情報を確認し、具体的な対策を実施する事が必要です。
つまり、「経営戦略の実現に必要な情報をどのように取得・管理・活用するのか」という「デジタルデータ戦略」が重要になります。
今まで多くの企業の方のお話を聞いてきましたが、この「現状・問題点を把握するための情報の確認」に非常に多くのコスト(時間・人員)がかかっています。
この課題を解決できるのがPLMです。
PLMは「必要な情報を網羅的に管理できる」ため、全てのお客様にメリットがあります。
よくある勘違いとして、「PLMは大企業じゃないとメリットが無い」と思われている方もいますが、事業規模に関わらず、「必要な情報を網羅的に管理できる」という事は全てのお客様にメリットがあります。
また、「PLMは高額で導入できない。導入コストを回収できない」というのも間違いです。
そういった状態の時代もありましたが、現在はサブスクリプションのライセンス、クラウドシステムの活用により、初期投資金額が抑えられるため、ベンチャー企業でも導入されています。
ソフトのインストールは1日、環境構築は2、3日です。
実際の立ち上げ期間は人数や既存のデータ入力量にもよりますが、半年ほどが目安になります。
投資金額の回収は1年半~2年ほどが目安です。
PTCでは「Windchill」の導入をお客様に検討していただく際は、プリセールスの段階でヒアリングし、概算のスケジュール・金額メリットを算出させていただいています。
導入時にはバリューロードマップをベースとして、会社ごとにどのステップから始めるか、ロードマップを作成してから開始します。また、運用のサポートサービスもご用意しています。
バリューロードマップ
PLM導入失敗のケースとは?
失敗のケースは「運用ルールを守らない」、「現場がそもそも使ってくれない」といったような正しい運用がされなかった場合です。新しいシステムを入れる事で今までと違う業務フローになるので、個人レベルで拒否反応を示して、正しく運用されないというケースです。
正しく運用させるためには、小さな事でも「良い経験・成功体験」が重要と考えています。
従来は部品表をExcelで管理しており、修正も全て担当者が手作業で行っていたものの、PLMの導入によって、部品表の管理・修正が自動化されたことでスムーズに運用できたケースもあります。
他には、「正しい運用をしない担当者は人事評価を下げる」という対応までした会社もあります。もちろん、この会社もPLMが正しく運用されて多くのメリットを得ています。
このように、正しく運用されれば失敗というケースはありません。
PDMとPLMの違い
PDMは製品開発に特化したシステムです。管理するデータは、
- CADデータ
- 図面データ
- 関連ドキュメント
になります。使用対象は設計者になります。
PLMは製品のライフサイクルの管理システムです。管理するデータは、
- 企画
- 製造
- リリース
- メンテナンス
などの全体の関連データです。つまり、PDMはPLMの「製造」の部分に特化したシステムで、管理できるデータはPLMのそれの一部です。
PLMにはPDM機能も含まれているので、別途PDMを導入する必要はありません。
PDMとPLMの違いでもお話しましたが、PDMではごく一部のデータしか管理できません。
PLMでは直接の設計以外の関連するデータが全て管理できます。
例えば、企画部門の担当者はPDMの導入だけでは、企画に必要な情報が無く、製品の問題・課題を別部門の担当者に直接確認する必要があります。そのため、確認のためのコストが生じています。
PLMを導入することで、企画部門の担当者はPLMから企画に必要な情報を取得できるようになり、別部門の担当者に確認する必要がなくなります。
そのため、PDM導入済みの会社でもPLMを導入する事で一元管理でき、ワークフローなども確認できるため、「必要な情報を網羅的に管理できる」というメリットがあります。
また、PDM導入済みのお客様から「PLMを導入する際に既存のPDMシステムを継続する必要はありますか?」というご質問がよくあります。
PLMにはPDM機能も含まれていますので、既存のPDMシステムを継続する必要はありません。
既存のPDMシステムを継続してPLMと連携は可能ですが、PDMのライセンス料などのランニングコストを考えてPLMに一本化する会社が多いです。
ERPの管理する主な情報は「在庫」や「コスト」、「受発注」、「財務・会計」など会計に関わる情報です。
PLMは製造過程の情報の管理システムのため、受発注・会計管理の機能はありません。
そのため、ERPと連携させることで、より広い情報管理が行えるようになります。
PLMの価格帯
必要となる機能や要望、規模によって大きく異なります。
PTCではプリセールスの段階でヒアリングし、概算のスケジュール・金額メリットを算出させていただいていますので、お問い合わせいただければと思います。
Windchillの強みについて
Windchillの強みは3点挙げられます。
Windchillの強み1:CAD・部品表の管理が強い
PTCはCADメーカーでもあるため、CAD・部品表のノウハウも多く持っています。
そのため、CAD・部品表の管理は非常に強力です。
Windchillの強み2:安定性が非常に高く、エンタープライズでの導入実績も多い
PLMを導入しても、安定性が低いためにシステムダウンしてしまい、必要なタイミングで情報にアクセスできなければ意味がありません。
Windchillは非常に高いスケーラビリティがあり、何千何万というユーザーが世界中からアクセスしても、24時間365日安定して稼働できます。
そのため、多くのエンタープライズで導入実績があります。
Windchillの強み3:標準機能が豊富なため、多くの会社がカスタマイズ無しで運用できる
他のPLMの多くは実質的にカスタマイズ前提のものがほとんどです。
そのため、初期導入コストが上がってしまいます。
Windchillは標準機能が豊富なため、初期導入コストを抑える事ができます。
PLMに関するインタビューのまとめ
今回のインタビューで、全てのお客様にとってPLMの導入メリットがあることが分かりました。
その中でもWindchillは、「導入前に概算のスケジュール・金額メリットを算出」、「初期導入コストが抑えられる」、「導入・運用のロードマップを作成」、「運用のサポートサービス」、「高い安定性」といった、導入前から導入後・運用まで体制・フォローもしっかりしているため、導入しやすいPLMだと感じました。
少しでも「経営戦略の実現」に課題を感じている方は、問い合わせしてみるのをお勧めします。