「生成AIは土木業務でどのように活用できる?」「調査や設計、施工の仕事も効率化できる?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
生成AIは、入力した指示や資料をもとに、文章や表、画像、プログラムなどを作成できる技術です。土木分野でも、調査資料の要約や設計案の比較、施工計画書・工事日報の作成など、さまざまな業務に活用できます。
ただし、生成AIの回答には誤りが含まれる可能性があるため、設計や施工に関する最終的な判断は技術者が行わなければなりません。そこでこの記事では、土木調査・土木設計・土木施工に分けて、生成AIの活用アイデア9選を紹介します。
土木業務で活用できる生成AIとは
生成AIとは、入力された指示やデータをもとに、文章や画像、表、プログラムなどの新しいコンテンツを作成するAIです。代表的なサービスには、ChatGPTやGemini、Microsoft Copilotなどがあります。
従来のAIがデータの分析や予測、異常の検出などを得意とする一方、生成AIは文章の作成や情報の要約、アイデアの提案などを得意とします。
| AI・技術の種類 | 土木分野での主な活用方法 |
|---|---|
| 生成AI | 報告書や計画書の作成、資料の要約、設計案の比較 |
| 従来型AI | ひび割れの検出、危険行動の検知、需要や劣化の予測 |
| ICT・ロボット技術 | ドローン測量、建設機械の自動運転、遠隔施工 |
そのため、本記事で解説する土木×生成AIの組み合わせは、日常業務で発生する「資料作成」「データ整理」「データチェック」などに活用できるのが強みです。
この記事では、建設コンサルタントとして土木業務に携わってきた私の生成AI活用経験も交えながら、具体的な使い方をわかりやすく解説します。
また、土木業務に生成AIを取り入れるために、ツールの基本・応用から学んでいきたい方は、以下のセミナーがおすすめです。独学だと失敗しやすいプロンプトの活用方法を学べます。短期間で土木業務の導入体制を整えたい方に向いています。
| セミナー名 | 生成AIセミナー |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 29,700円〜 |
| 受講期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
土木業務で生成AIの活用が注目されている理由
土木業界では、技術者不足や長時間労働への対応に加え、調査資料や設計図書、施工計画書などの作成負担を減らすことが課題となっています。そこで注目されているのが、土木業務の文章作成や情報整理を効率化できる生成AIです。
- 書類作成や情報整理の負担を軽減できる
- 過去の資料や技術情報を探しやすくなる
- 技術者不足やノウハウ継承の対策になる
書類作成や情報整理の負担を軽減できる
生成AIを活用すれば、土木業界で作成が求められる調査報告書や施工計画書、工事日報などのたたき台を短時間で用意できます。また、長い資料の要約や複数資料の比較にも活用できるため、土木の担当者が内容を整理する時間の短縮につながります。
過去の資料や技術情報を探しやすくなる
社内の過年度資料や土木施工実績を生成AIと連携させることで、類似事例や必要な土木技術情報を探しやすくなります。蓄積された資料を再利用しやすくなり、土木の調査・設計・施工における検討の効率化が期待できます。
技術者不足やノウハウ継承の対策になる
ベテラン土木技術者の知識や過去の対応事例を生成AIで整理し、社内で共有する用途にも活用できます。若手土木技術者が必要な情報を確認しやすくなるため、生成AIは土木の教育や技術継承を支援する手段としても注目されています。
国土交通省でも、BIM/CIMに関する質問へ回答する生成AIの学習支援チャットボットや、新技術の比較を支援する仕組みなど、土木×生成AIを活用した取り組みが進められています。
(出典:国土交通省 四国地方整備局「BIM/CIM導入・運用を支援するチャットボットの役割と展望」)
土木調査の生成AI活用・使い方のアイデア3選
土木調査では、事前準備から現地確認、報告書作成まで多くの情報を扱います。
そこに生成AIを組み合わせれば、項目の洗い出しや資料整理、文章作成の効率化が可能です。
ここでは、土木調査で活用しやすい生成AIのアイデアを3つ紹介します。
調査計画書や現地確認項目のたたき台を作成する

土木の現地調査では、対象物や現場条件ごとに確認内容が異なるため、準備に時間がかかり、項目の抜け漏れも起きやすくなります。その際は、生成AIを活用して調査目的・対象物・現場条件を生成AIに入力し、調査項目を一覧化するのが効果的です。
たとえば、Googleマップの地図やストリートビューなどの画像をキャプチャし、生成AIに「〇〇業務の現地調査で確認すべき項目を、場所・内容・注意点に分けて整理して」と指示すれば、土木計画書やチェックリストのたたき台を作成できます。
実際、私も土木業務の一環として、現地踏査や現地調査に加わることがよくありましたが、経験が浅い頃には予測できないポイントなども複数出てきます。一方、生成AIは自分では気づきにくい項目も提案してくれるため、土木の知識や経験を補う手段として役立ちます。
ただし、発注仕様や現場固有の条件まですべて生成AIに反映されるとは限りません。
最終的には土木担当者が内容を確認し、必要な項目を追加してください。
地質・測量・点検資料を要約する

土木調査では、地質調査報告書や測量成果、点検記録には情報量が多く、必要な箇所を探すだけでも時間がかかります。また、複数年度にわたる土木の資料をまとめる場合には、数値や損傷状況の変化を見落とすことも少なくありません。
その際は、資料を生成AIに読み込ませ、地盤条件・測量結果・損傷状況などを項目別に要約させます。生成AIに「年度ごとの変化を比較表にして」と指定することで、土木の確認すべき箇所を絞り込めます。
ただし、生成AIは数値や土木専門用語を誤って読み取る可能性があります。
土木の重要情報は、必ず元の資料と照合しましょう。
現地メモから調査報告書のたたき台を作成する

現地調査後は、手書きメモや写真、測定結果が分散しやすく、報告書にまとめるまでに時間がかかります。また、記憶に頼って作成すると、確認内容を記載し忘れるケースも少なくありません。
そこで、調査場所・確認結果・写真番号・今後の対応を生成AIに入力し、報告書の形式に整えるのがおすすめです。生成AIは手書きの文字情報も自動で識別してくれるため、土木担当者は文章を1から考える必要がなくなり、土木調査の確認と修正に集中できます。
実際に私も、現地に印刷した平面図を持参して、その場その場で書き込む作業をすることが多くありました。ただ、それをすべて文字起こしするのは大変であるため、生成AIを組み合わせながら、文字入力の負担を減らしていました。
ただし生成AIが写真と損傷に対する土木技術的な評価を下せるとは限りません。
最終的には、生成AIが出力した情報を土木担当者が現場記録をもとに確定してください。
土木設計の生成AI活用・使い方のアイデア3選
土木設計では、設計図や計算書の作成だけでなく、基準の確認や工法比較、データ整理にも時間がかかります。生成AIは、設計判断に必要な情報を整理する補助として活用できます。
ここでは、土木設計で活用しやすい生成AIのアイデアを3つ紹介します。
設計基準や仕様書の確認を効率化する

土木設計では、多数の土木基準や仕様書から、今回の設計に関係する記載を探さなければなりません。資料を1つずつ確認すると時間がかかり、確認漏れも起きやすくなります。
その際は、使用する基準や仕様書を生成AIに読み込ませ、「適用条件・必要な検討・参照箇所を表にして」と指示します。土木設計の確認箇所を絞り込めるため、生成AIで原文の確認を効率化できます。
ただし、生成AIでは古い土木基準や誤った解釈が提示される可能性があります。
土木設計条件を確定する際には、生成AIだけに頼らず、必ず最新版の原文を確認してください。
実際、土木系の基準書などは紙媒体で販売されているケースが多く、文字起こしの段階で誤った情報が取り込まれるケースもあります。土木基準書は頻繁に更新されるため、その都度対応が必要になる点に注意しましょう。
複数の設計案と比較表のたたき台を作成する

土木の設計案を比較するときは、経済性だけでなく、施工性・安全性・耐久性・維持管理性なども検討する必要があります。このとき、検討項目が不足すると、案ごとの違いを正しく判断できません。
その際は、土木現場の条件と候補案を生成AIに入力し、比較すべき項目を洗い出します。
各案の情報を生成AIで分析して表にまとめれば、社内検討や発注者説明に使う資料のたたき台になります。
ただし、生成AIによる評価だけで採用案を決めることはできません。
根拠となる数値や条件を土木技術者が検証しましょう。
計算・データ整理用のコードや関数を作成する

土木数量の集計や単位変換などの繰り返し作業では、入力ミスが起きやすいうえ、自動化するための関数やコードを作るにも時間がかかります。
その際は、「複数のCSVを集計したい」「条件別に数量を合計したい」など、実行したい処理を生成AIに伝え、Excel関数・VBA・Pythonのコードを作成させます。手作業を減らし、集計時間や入力ミスの削減につなげられます。
実際、生成AIに指示を出すと、次のようにコードが自動生成されます。

ただし、コードが動いても計算方法が正しいとは限りません。
小数点第何までをどう扱うかなど、土木ならではの計算方法もあるため、既知の数値で検算してから使用してください。
私の場合、土木計算のなかでもさらに簡単な「数量計算に誤りがないか確認して」「概算工事費の単価を整理して」など、一部作業だけを生成AIに任せていました。土木業務のチェック作業としても便利です。
また、土木設計では生成AIとCADを組み合わせるケースも登場しています。
詳しくは以下の記事をチェックしてみてください。
土木施工の生成AI活用・使い方のアイデア3選
土木施工では、現場を管理しながら、計画書・安全書類・日報なども作成しなければなりません。生成AIを文書作成に組み合わせることで、現場の土木担当者の事務負担を軽減できます。
ここでは、土木施工で活用しやすい生成AIのアイデアを3つ紹介します。
施工計画書や作業手順書のたたき台を作成する

土木施工の施工計画書や作業手順書は、工種や土木現場条件に応じた内容が必要です。
このとき、過去の書類を流用すると、工事名や施工条件、使用土木機械などの修正漏れが起きることがあります。
その際は、工事概要・工種・施工条件・使用機械を生成AIに入力し、必要な項目や作業手順を整理させます。一から文章を作る必要がなくなり、土木現場に合わせた修正に時間を使えます。
ただし、発注者の要求や現場固有の条件が反映されているか、土木施工担当者が必ず確認してください。
KY活動やリスクアセスメントの項目を整理する

KY活動では、土木担当者の経験だけで危険要因を考えると、慣れていない作業や複合作業のリスクを見落とす可能性があります。
その際は、作業場所・作業内容・使用機械・周辺作業を生成AIに入力し、想定される危険と対策を表にまとめます。検討項目を広げられるため、KY活動やリスクアセスメントの補助に活用できます。
なお、生成AIは当日の天候や作業員の配置までは把握できません。
土木現場を確認したうえで、実際の安全対策を決定しましょう。
日報・議事録・周辺住民向け文書を作成する

土木の施工現場では、日報や議事録、通行規制のお知らせなどを繰り返し作成します。
現場作業後に文章を1から考える必要があるため、担当者にとって大きな負担です。
その際は、作業実績や打ち合わせメモ、規制日時などを生成AIに入力し、用途に合った文章へ整えます。生成AIで「発注者向け」「周辺住民向け」のように読み手を指定すれば、表現も調整できます。
注意点として、生成AIには個人情報や未公開の土木工事情報は入力しないように気をつけましょう。
また、日時や場所に誤りがないか確認してから生成AIを使用してください。
土木業務で生成AIを使うときのプロンプトのコツ
生成AIに「土木設計の計画書を作って」のような短い指示だけを出すと、現場条件に合わない一般的な回答になりやすくなります。そのため、実務で使える回答を得たいなら、以下の4項目を具体的に伝えることが大切です。
- (立場)土木設計者、施工管理者など
- (目的)調査項目の整理、計画書の作成など
- (条件)工種、現場状況、使用機械、対象資料など
- (出力形式)表、箇条書き、報告書形式など
たとえば、生成AIで安全管理の資料を作成する際には、次のように指示します。
必要な情報と出力形式を明確にすることで、回答を修正する手間を減らせます。
ただし、土木工事名や個人情報、未公開の図面など、機密性の高い情報は入力しないようにしましょう。
また、土木活用に加えて生成AIのプロンプトのコツを詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
土木業務で生成AIを活用するときの注意点(重要)

生成AIは土木業務の効率化に役立ちますが、回答が常に正しいとは限りません。
誤った情報を設計や施工に使用すると、安全性や品質に影響する可能性があるため、次の点を守って土木業務に活用する必要があります。
| 土木業務活用の注意点 | 土木業務における具体的な対応 |
|---|---|
| 生成された情報をそのまま採用しない | 数値・法令・土木設計基準・技術情報は、原資料や最新版の基準と照合する |
| 土木設計や土木施工の最終判断は技術者が行う | 生成AIは情報整理やたたき台作成に使用し、安全性や施工可否は土木の担当技術者が判断する |
| 機密情報や個人情報を入力しない | 個人名、未公開図面、契約情報、工事費などは入力せず、必要に応じて匿名化する |
| 自社で利用ルールを定める | 利用できる生成AIサービス、入力可能な土木情報、確認者、生成物の取り扱いを明確にする |
たとえば、上の画像のように法令や技術資料の情報を聞き出しても、細かな条件が出力されず判断できないケースもあります。道路勾配を確認した内容だと、実際には、横断勾配や曲線部の片勾配は道路条件などに応じて規定されているため要確認が必要です。
また、注意したいのが、公共工事や国の直轄事業で扱う土木の機密情報です。
未公開の設計図面やBIM/CIMデータ、施工計画、工事写真、入札・契約情報には、機密情報が含まれる場合があります。
一般向けの生成AIには入力せずに、契約書や特記仕様書、発注者のセキュリティルールを確認しましょう。
(出典:デジタル庁「行政の進化と革新のための生成 AI の調達・利活用に係るガイドライン」)
また、土木業務に生成AIを取り入れる際には、ツールの正しい操作方法やコツを覚えることも重要です。生成AIに触れたことがない方は、まず以下のセミナーを通じて、土木の実務に活かせる知識を身につけてみてはいかがでしょうか。
土木技術者を支援する生成AIについてまとめ
生成AIは、土木調査の資料整理や設計案の比較、施工計画書・日報の作成など、幅広い業務を効率化できるツールです。ただし、回答には誤りが含まれる可能性があるため、設計や施工の最終判断は土木技術者が行う必要があります。
機密情報の取り扱いや社内ルールにも注意し、まずは資料の要約や文書のたたき台作成など、内容を確認しやすい土木業務から活用してみてください。