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【2026】量子コンピュータとは?もたらすメリットや従来のコンピュータの違いを徹底解説

日本IBMは、2024年10月に耐量子計算機暗号の標準化に関する発表を行いました。この発表では、量子コンピュータの進展に伴い、従来の暗号システムが抱える脅威と、その対策として注目されている耐量子計算機暗号について説明されました。

量子コンピュータは、従来のコンピュータでは解読が困難とされていた暗号を高速解読できると言われているため、実用化されれば、現在のインターネットのセキュリティ基盤が脅かされる可能性が非常に高いと言えるのです。

今回は、量子コンピュータがもたらすメリットやデメリット、従来のコンピュータとの違いを詳しく解説します。

量子コンピュータとは

量子コンピュータは、量子力学の不思議な性質を活かして、従来では解くのに時間がかかる問題を短時間で解く可能性を持つコンピュータです。重ね合わせと量子もつれという現象を利用し、多くの計算を同時に処理することで、革新的な計算能力を実現しようとしています。

量子コンピュータには「量子ゲート方式」と「量子アニーリング方式」が存在します。

量子ゲート 量子アニーリング
計算 重ね合わせ 量子もつれ
内容 一つの粒子が、複数の状態を同時に取り得る 強い結びつきがある複数の粒子が離れていても一方の状態が他方に瞬時に影響を与える

量子コンピュータの概念は1980年代に提唱されて以来、Googleなどの大手テクノロジー企業や、世界中の研究機関によって盛んに研究開発が進められてきました。様々なアプローチや技術が開発され、量子コンピュータの実用化に向けた研究はますます活発化しており、新薬開発や材料設計、人工知能など、今後の科学技術の発展に大きな影響を与えることが予想されています。

量子コンピュータと従来のコンピュータの違い

量子コンピュータと従来のコンピュータの違い

量子コンピュータと従来のコンピュータの違いにはどのような違いがあるのでしょうか。従来のコンピュータは、情報を「0か1」のいずれかとして処理しますが、量子コンピュータは「0と1の両方の状態を同時」に処理できます。

量子コンピュータ 従来のコンピュータ
情報の単位 0と1の両方 0か1
処理能力 一度に複数 一度に1つ

この量子ビットの性質により、量子コンピュータは膨大な量のデータを並列に処理することが可能になり、従来のコンピュータでは解くことが困難だった複雑な問題を高速で解くことができるのです。

量子コンピュータの種類

量子コンピュータは、主に3つの種類に分類することができます。

  • 万能量子コンピュータ
  • 非万能量子コンピュータ
  • 非古典コンピュータ

それぞれの特徴を以下で詳しく説明します。

​​万能量子コンピュータ

万能量子コンピュータとは、任意の数の量子状態を別の任意の数の量子状態に変換できる量子コンピュータです。最小単位の量子(量子ビット)を、限りなく増やすことで、従来のコンピュータでは不可能な複雑な計算を可能にすることが期待されています。

ただし、量子ビットを増やすことで、計算中にエラーが生じる確率も高まってしまいます。エラー耐性と呼ばれるエラーを自動的に修正する仕組みがありますが、現在の技術では、量子ビットを無限に増やしつつ、同時に高いエラー耐性を実現することは困難です。

そのため、真の意味で万能な量子コンピュータは、まだ実現されていません。量子ビットの数を増やし、エラー耐性を高めるための研究が世界中で盛んに行われており、今後の発展が期待されています。

非万能量子コンピュータ

現在では、量子ビットを大量に安定して動作させることが非常に難しく、量子ビットの数を増やすことはできません。そこで、量子ビットの数をある程度に抑え量子力学の特性を活かした計算を行う、非万能量子コンピュータが開発されています。

非万能量子コンピュータは、量子ビットの数が少ないため、外部からのノイズの影響を受けにくく、比較的安定して動作することができます。大規模な計算には不向きですが、従来のコンピュータに比べると、特定の計算問題は高速で解けるでしょう。

非古典コンピュータ

非古典コンピュータは従来のコンピュータと比べ、明確な優位性がまだ見出されていないものです。量子的な性質を一部利用していますが、計算性能などにおいて、従来のコンピュータを凌駕するような具体的な成果は、現時点では得られていません。

そのため、非古典コンピュータがどのような点で優れているのか、どのような分野で活用できるのかは、今後の研究によって解明されることが期待されています。

量子コンピュータにおけるメリット

量子コンピュータにおけるメリット

量子コンピュータは、以下のようなメリットをもたらします。

  • 複雑な問題が解けるようになる
  • 処理速度の高速化ができる
  • 電力消費が少ない

それぞれのメリットを以下で詳しく見てみましょう。

複雑な問題が解けるようになる

量子コンピュータは、従来のコンピュータでは不可能な並列計算が可能です。重ね合わせを活用することで、膨大な数の計算を同時に行うことができ、複雑な問題を短時間で解くことが期待されています。

ただし、現在の量子コンピュータは、量子ビット数の限界があるため、その能力は十分に発揮されていません。しかし、量子ビット数を増やし、エラーを自動で修正できる技術が開発されれば、より複雑な問題への応用が期待できます。

処理速度の高速化ができる

従来、膨大な時間とリソースを要していた複雑な計算も量子コンピュータを使えば瞬時に実行できるようになるため、研究開発やビジネスの効率化に大きく貢献することが期待されています。例えば、新薬開発における分子シミュレーションや人工知能の学習など、膨大な計算量を必要とする分野において、量子コンピュータは強力なツールとなるでしょう。

また、量子コンピュータは、膨大な数の処理を並行して行うことで、広範囲な問題に対応できる可能性も秘めています。そのため、ビッグデータの解析やAIの学習など、現代社会においてますます重要性を増している大規模なデータ処理を、より短時間で効率的に行うことが可能になるかもしれません。

人工知能の学習方法については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

AI構築の基本ステップ!注意点も確認しよう

電力消費が少ない

従来のスーパーコンピュータの中には、極低温環境で動作し、大規模な冷却装置が必要なものも存在しますが、量子コンピュータは少ない消費電力で処理できるため、大規模な冷却設備は必要ありません。電力効率の高さは、量子コンピュータの大きなメリットです。

量子コンピュータにおけるデメリット

電子コンピュータは多くのメリットをもたらしますが、同時に見過ごせないデメリットも存在します。以下で詳しく解説します。

データ盗難の恐れがある

量子コンピュータの性能が向上するにつれて、私たちのデジタル社会の根幹を支えるセキュリティシステムに対する脅威がますます高まっています。量子コンピュータの利用で、現在広く利用されている暗号化技術が簡単に破られてしまう可能性があるためです。

企業が日々扱う重要なデータは、不正アクセスや盗難などのリスクに常に晒されており、量子コンピュータの台頭によって、これまでのセキュリティ対策が通用しなくなる日が来るかもしれません。そのため、私たちは技術の進歩に合わせて、セキュリティ対策のあり方を根本から見直す必要があります。

製造業のセキュリティリスクについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】製造業のセキュリティリスクとは?おさえるべき5つの対策方法やポイント

計算させることが容易ではない

量子コンピュータを用いた計算は、潜在的な能力の高さが期待される一方、従来の古典コンピュータとは異なる計算方式を必要とするため、容易ではありません。量子コンピュータで問題を解くためには、量子ゲート方式や量子アニーリング方式など、量子コンピュータに適した形式に問題を定式化しなおす必要があるのです。

しかし、この定式化の過程は非常に複雑であり、任意の計算問題を直ちに量子コンピュータで解ける形に変換できません。量子コンピュータは、問題の性質や量子アルゴリズムの開発状況など、様々な要素に依存しており、気軽に利用できる段階には至っていないのです。

実用的な量子コンピュータにするためには、ハードウェアの性能を向上させるだけでなく、量子アルゴリズムの開発や古典アルゴリズムから量子アルゴリズムへの変換を効率的に行うための研究が必要になります。

従来のコンピュータに比べてコストが高い

量子コンピュータは、従来型のコンピュータと比較して、その高い処理能力から期待が寄せられていますが、現時点では、コスト面や技術的な課題から、大規模な導入には至っていません。まず、量子コンピュータは、極低温環境など特殊な条件下で動作させる必要があり、そのための設備投資が膨大となるため、コストが非常に高額です。

そのため、現時点では、国や大企業などの研究機関や量子コンピュータ技術の開発に力を入れている一部の企業に限って導入が進んでいる状況です。また、従来型のコンピュータでは解くことが困難な大規模な計算問題を抱えている企業は、現時点ではそれほど多くはありません。

そのため、多くの企業にとっては、量子コンピュータを導入するメリットがまだ十分に感じられていないという現状もあります。

量子コンピュータの活用例

量子コンピュータの活用例

最後に、量子コンピュータを導入するとどのようなことができるのか、活用例をいくつかご紹介します。

​​気候変動予測

量子コンピュータは、その並外れた計算能力によって、気候変動予測の分野に新たな可能性をもたらすと期待されています。従来のコンピュータでは膨大な時間とリソースを要した複雑な気候パターンのシミュレーションが、量子コンピュータを用いることで飛躍的に高速化される可能性があります。

そのため、気候変動のメカニズムを解明し、将来の気候変動をより正確に予測することが可能になるかもしれません。

交通状況の最適化

都市の交通状況を最適化するためには、膨大な量のデータを処理し、複雑な分析を行う必要があります。量子コンピュータは、その高い計算能力によって、より効率的なルートを特定し、渋滞を減らすための最適化計算を飛躍的に高速化することが期待されています。

データ分析やAIの進化

量子コンピュータは、その並外れた計算能力によって、データ分析や人工知能の分野に新たな可能性を開いています。大量のデータを従来のコンピュータよりもはるかに高速に処理し、複雑な問題に対するより正確な予測モデルを構築することが可能になるため、これらの分野の研究開発を飛躍的に進展させることが期待されます。

量子コンピュータの進歩に注目が集まっている

今回は、量子コンピュータがもたらすメリットやデメリット、従来のコンピュータとの違いを解説しました。量子コンピュータは、今まさに飛躍的な発展を遂げようとしている最先端技術です。コンピュータに携わる方だけでなく、そうでない方にとっても、仕組みや特徴、未来への可能性を理解することは、これからの社会を生きる上で重要になるでしょう。

量子コンピュータは、まだ研究段階であり、性能や信頼性といった課題も残されています。しかし、世界中の研究機関や企業が、この革新的な技術の実用化に向けて日々努力を重ねています。

もし、量子コンピュータが実用化され、様々な分野で活用されるようになったら、人類が抱える多くの問題を解決するための新たな道が開かれるかもしれません。この技術の進歩に今後も注目していく必要があります。

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