製造業における設計・開発の高度化が求められる中で、「複雑な製品設計を効率化したい」「1つのツールで製品開発に必要な機能を揃えたい」といった悩みを抱えている企業は少なくありません。
そんな課題を解決するツールとして注目されているのが、Siemens社が提供するハイエンドCAD「NX」です。
本記事では、NXの基本的な特徴や他のCADツールとの違い、実際の導入企業の事例を交えながら、どのように業務改善できるのかをご紹介します。
NXとは?
NXとは、ドイツのSiemens社が提供するハイエンド3DCAD/CAE/CAMソリューションで、製品設計から製造、解析までの開発プロセス全体を効率化するソフトです。
シンクロナスモデリングとパラメトリックモデリングの両方に対応し、設計者の意図に沿った柔軟な設計が可能です。
NXは、大規模アセンブリへの対応や高度な解析機能を備え、自動車、精密機器、家電業界など幅広い分野で採用されています。製造前のエラー発見やコラボレーションの促進に優れ、設計の無駄を削減しながら高品質な製品開発を実現できるのが特徴です。
NXの価格
NXの価格は「要問い合わせ」となっており、価格は公開されていません。
ただし、NXのクラウド版として知られる「NX X」の価格は表示されているため、「NX X」の価格をまとめています。参考程度にご覧ください。
| ソフト名 | 価格 | 特徴 |
| NX X Design Standard |
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NX X Design Standardを使用して、一般的な3D部品やアセンブリなどの設計を作成し編集 |
| NX X Design Advanced |
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NX X Design Advancedの拡張設計機能による設計効率と品質の向上 |
| NX X Design Premium |
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NX X Design Premiumの高度な機能により、最も複雑な設計課題を克服 |
「NX X」は他のCADソフトに比べると、価格は比較的高いと言えるでしょう。
しかし、機能や使いやすさといった点は他のソフトに比べると非常に高いと言えます。
また、クラウドベースの「NX X」は30日間の無料プランも用意されているため、実際に使用してみましょう。
NXは無料で使用できる?
NXは基本的に有料のソフトですが、学生向けには「NX X Design Premium」や「NX X Value Based Licensing」といった高機能プランを無料で利用できます。
また、一般のユーザー向けには30日間の無料トライアルが提供されており、NXの全機能を試すことが可能です。
無料トライアルを利用するには、公式サイトからアカウントを作成し、必要情報を入力してインストーラーをダウンロードするだけで、簡単に導入できるため、使用してみてください。
NXを無料で使用する方法は以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
NXが注目される4つの特徴

NXは大きく注目を集めている理由は主に以下の4点です。
- 独自のルールでチェックが可能
- 2D機能が充実
- 効率を重視した機能
- 解析や分析が得意
特徴①独自のルールでチェックが可能
NXは、設計プロセスの精度と一貫性を保つために、ユーザー独自のルールを設定し、自動で設計チェックを行える機能を備えています。
ルールベースチェックにより、設計ミスや規格違反を早期に発見し、修正の手間やコストを削減できます。例えば、寸法の誤差、干渉、部品の欠落など、設計者が気づきにくい問題点も自動的に検出することができます。
企業独自の設計基準や業界規格に基づいたルールを適用することで、品質管理の厳格化が可能になるということです。
特徴②2D機能が充実
NXは、3DCADとしての高度な機能に加え、2D設計においても機能が充実しています。
直感的なスケッチ作成や詳細な寸法記入が可能で、製造現場や設計チームとのコミュニケーションを円滑に。
また、2Dと3Dデータのシームレスな連携が可能で、設計変更の際にも即座に2D図面へ反映されるため、手戻りが少なく効率的です。
特に、既存の2Dデータを活用した設計が求められる業界において、NXの2D機能は精度と柔軟性の両方を備えている製品と言えるでしょう。
特徴③効率を重視した機能
NXは、設計から製造に至るまでのプロセス全体を効率化するために様々な機能が搭載されています。シンクロナスモデリングによる設計変更や大規模アセンブリのスムーズな処理、高度な自動化ツールを活用することで、設計作業のスピードを飛躍的に向上できるのです。
さらに、クラウドベースのデータ共有機能を活用することで、設計チームやサプライヤーとのリアルタイムなコラボレーションを実現し、設計プロセスの無駄を削減します。
その結果、プロジェクトのリードタイム短縮とコスト削減が可能になるのです。
特徴④解析や分析が得意
NXは、構造解析、流体解析、熱解析など様々なシミュレーション機能を搭載しています。
これにより、製品の強度、振動、熱特性などを事前に予測し、設計段階で問題点を洗い出すことが可能です。
また、解析結果をもとに設計を改善することで、製品の性能を向上させ、開発期間を短縮。設計データから様々な統計情報を抽出・分析する機能も備えており、製品開発プロセス全体の効率化が期待できるでしょう。
解析結果を視覚的に把握できるインターフェースを備えており、設計者自身が即座に課題を発見し、改善に取り組めるのも魅力です。
NXを導入している企業事例

ここからはNXを導入し、業務の効率化や売上を向上した企業の事例について紹介します。
- La Nordica-Extraflame
- Wright Medical Technology, Inc.
- スクーデリア アルファタウリ
事例①La Nordica-Extraflame
La Nordica-Extraflameグループは、木材およびペレット燃焼暖房器具を専門とするストーブメーカーです。
NXとTeamcenterを導入することで、200種類以上の製品を管理し、業界標準に迅速に対応できるようになりました。特に、設計変更や関連データの管理が効率化され、部門間の情報共有が円滑になったことで、製品開発のスピードアップと品質向上を実現。
NXによる3D設計とTeamcenterによるデータ管理の統合により、設計から製造、アフターサービスまでの製品ライフサイクル全体を社内で一元管理できるようになり、企業全体の生産性向上が実現したのです。
事例②Wright Medical Technology, Inc.
「Wright Medical Technology, Inc.」は、整形外科用医療機器の設計・製造を行う企業で、関節インプラントや骨移植代替材料を開発・販売しています。
同社は、製品開発の迅速化やFDA規制への準拠を目的に、SiemensのNXとTeamcenterを導入しました。導入によって、設計の効率化やコンプライアンス対応が向上し、MICRONAIL髄内固定インプラントの市場投入を記録的な速さで実現。
また、NXの活用により、設計承認時間が数日から数時間へと短縮され、開発プロセス全体のスピードと品質が飛躍的に向上しました。
Wright社は、デジタル化によるデータの再利用や可視化、迅速なコンプライアンス対応を通じて、競争力を強化し、市場シェアの拡大を実現しています。
事例③スクーデリア アルファタウリ
スクーデリア・アルファタウリは2006年にレッドブル・レーシングの支援を目的に結成されたチームです。2022年の新F1規則に対応するため、シーメンスのNXやSimcenterを活用し、F1マシンの開発プロセスを大幅に改善しました。
具体的には、NXのシンクロナスモデリング機能を活用することで、シャーシの設計期間を3か月から1ヶ月に短縮。Simcenterによる構造解析やFibersimによる複合材設計シミュレーションにより、マシンの強度、剛性、軽量化を両立させ、高いパフォーマンスを実現したのです。
また、NXの機能を用いて、ドライバーの体型に合わせたカスタムシートを設計し、ドライバーのパフォーマンス向上に貢献しました。
NXと他CADソフトとの違い

NXは他のCADソフトとどのような違いがあるのかについて詳しく解説します。
比較するソフトは以下の2つです。
- SOLIDWORKS
- AutoCAD
①SOLIDWORKS
NXは高精度な設計が可能なCADソフトに対して、SOLIDWORKSは直感的な操作で扱いやすい点が特徴です。
また、NXは航空宇宙や自動車産業向けのハイエンドCADで、大規模アセンブリ設計や高度なシミュレーションに優れ、複雑な製品開発に適しています。
一方、SOLIDWORKSは一般機械設計や教育用途にも対応するミドルレンジCADで、使いやすさとコストパフォーマンスが特徴。価格面ではNXが高価である一方、SOLIDWORKSは手頃な価格設定です。
NXは多様なデータ互換性や柔軟なモデリング機能を備え、SOLIDWORKSは設計効率とスムーズなワークフローに注力しています。
SOLIDWORKSとの違いについて詳しく知りたい方は以下の記事も参照ください。
②AutoCAD
AutoCADは世界でもトップクラスのシェアを誇るCADソフトです。
NXとの大きな違いは機能面です。AutoCADは汎用性の高い2D作図と3Dモデリングに特化したCADソフト。特にAutoCAD Plusは専門分野向けのツールセットを備えています。
以下はAutoCADの操作画面です。

AutoCADは2D作図に特化されていると思われがちですが、3Dモデリングも簡単にできます。
例えば、四角形を作成する際に左のソリッドから「直方体」を選択すると、カーソルをドラッグまたは数値を入力するだけで簡単に作成が可能です。

以下が完成形の画面です。

また、価格面ではNXが高価であるのに対し、AutoCADはサブスクリプション方式で手頃な価格設定で、特に短期利用や導入コストを抑えたい場合に適しています。
NXを導入するメリット

最後にNXを導入するメリットについて紹介します。メリットは主に3つです。
- 1つのソフトで3つの機能が使用可能
- 規模の大きい設計にも対応
- クラウド型サービスも提供
メリット①1つのソフトで3つの機能が使用可能
NXは、CAD、CAE、CAMの製品開発における3つの機能を1つのソフトウェアに統合しています。これにより、設計からシミュレーション、製造までのプロセスをシームレスに繋げることが可能になり、設計変更による手戻りを最小限に抑え、製品開発の効率化が実現。
例えば、設計段階で作成した3Dモデルをそのまま解析に利用でき、解析結果に基づいて設計を修正することも行えます。また、解析結果をもとにNCプログラムを生成し、直接製造に繋げることも可能です。
メリット②規模の大きい設計にも対応
NXは、大規模なアセンブリや複雑な形状のモデルに対しても高い処理能力を搭載しています。
自動車や航空機など、数万点もの部品からなる製品の設計にも対応でき、大規模な製品開発でも効率的かつ精度高く設計が可能です。
また、シンクロナスモデリング技術により、既存の設計データの変更も容易に行うことができ、設計変更にともなう作業量を大幅に削減できます。
メリット③クラウド型サービスも提供
NXは「NX X」というクラウド型のサービスも提供しており、場所やデバイスを選ばずに設計作業を行うことができます。これにより、リモートワークやチームでの共同作業が容易になります。
また、クラウド上に設計データを保存することで、データのバックアップや共有も可能。
クラウドサービスを利用することで、ソフトウェアのインストールやメンテナンスの手間を省くことができ、業務負担を軽減することもできます。
NXについてのまとめ
NXは、製品開発の設計から製造、解析までのプロセスをシームレスに繋ぐ、高機能な3DCADソフトウェアです。特に、自動車や航空機など、高精度な製品開発が求められる業界において、NXは最適なツールと言えるでしょう。
また、シンクロナスモデリングによる柔軟な設計、大規模アセンブリへの対応、高度な解析機能など、幅広い機能を備えています。NX導入により、設計ミスを減らし、製品開発のスピードアップ、品質向上が期待できるため、導入を検討してみてください。