facebook

【2025】日本の半導体復活のカギを握る技術とは?競争力を高めるポイントも解説

1980年代半ば、日本の半導体は世界を席巻し、日本の製造業を牽引する存在でしたが、現在ではその輝きを失い、多くの半導体製品を海外に依存する状況となっています。

この状況は、日本の製造業全体に深刻な影響をもたらしています。2020年以降の半導体不足は、自動車や家電製品だけでなく、給湯器などの一見関係のなさそうな製品の生産にも大きな支障をきたし、私たちの生活に身近なところでその影響を実感させられました。

今回は、日本の半導体生産が衰退した理由や持っている強み、競争力を高めるポイントを解説します。

日本の半導体生産が衰退した理由

かつて世界を席巻した日本の半導体産業が、なぜその地位を失ってしまったのでしょうか。かつての栄光を誇った日本の半導体産業が、なぜこのような状況に陥ったのか、その要因を詳しく見ていきましょう。

半導体については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

半導体とは?不足している理由や種類・仕組み・作り方をわかりやすく解説

日米半導体協定を結んだため

1980年代、日本の半導体産業は目覚ましい発展を遂げましたが、その一方で、日本の半導体産業の成長を快く思わない国も現れました。

特に、アメリカとの間では貿易摩擦が激化し、半導体産業もその影響を大きく受けており、日本の半導体産業の急成長を脅威と捉え、日本に対して強い圧力をかけてきました。

その結果、日本とアメリカは「日米半導体協定」を結ぶことになりました。日米半導体協定は、半導体分野での貿易摩擦を解決するための条約です。

しかし、この協定は日本にとって非常に不平等なもので、日本市場における外国製半導体の比率を20%にするという購買義務が課されるなど、日本の半導体産業の成長を抑制する内容だったのです。

半導体マーケットが変わったため

かつての半導体市場は、通信機器や大型コンピュータが主な需要源でした。日本の半導体は、こうした機器向けに長寿命で高品質な製品を提供することで高い評価を得てきましたが、PCの普及に伴い、半導体市場は大きく変化しました。

PCは、数年間使用できれば十分というユーザーが多く、高品質よりも低コストな製品が求められるようになりました。

この変化に、日本の半導体メーカーは長年培ってきた高品質志向の製造体制を、短期間で低コスト生産に転換することが難しかったのです。

一方、韓国や台湾、中国などのアジア諸国は、政府の強力な支援を受け、積極的に低コスト生産体制を構築し、日本の半導体メーカーが撤退した市場に参入し、急速にシェアを拡大していきました。

このように、半導体市場の構造変化と、それに伴う各国間の競争激化が、日本の半導体産業の衰退の一因となったと言えるでしょう。

半導体の市場の動きについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

半導体の基礎知識を初心者向けにわかりやすく解説!よく出る専門用語の意味とは?

投資不足だったため

日本の大手半導体メーカーは、総合電機メーカーの一部門であることが多く、経営トップ層が半導体ビジネスに精通しているとは限りませんでした。

そのため、半導体市場の変動に対応した柔軟な戦略策定が難しく、不況期には投資を控え、景気回復後に売上を伸ばすなどの短期的な視点に囚われた経営がしばしば見られました。

また、日本の企業は、新技術の開発よりも既存製品の品質向上を重視する傾向が強かったことも、衰退の一因と言えるでしょう。

特に、半導体部門が総合電機メーカーの一部門に過ぎなかったことから、大規模な投資は抑制されがちでした。

一方、海外企業は、国を挙げて新技術開発に巨額の資金を投じ、急速な成長を遂げました。日本の企業もこの状況を認識しつつも、業界再編など抜本的な対策を講じることができず、結果として市場を席巻するような画期的な製品を生み出すことができませんでした。

このように、外的な圧力と国内企業の内部的な要因が複雑に絡み合う中で、日本の半導体産業は徐々にその地位を失っていったのです。

デファクト品を作ることができなかったため

日本の半導体産業の衰退は、利用者の多い標準的なデファクト品を生み出せなかった点も大きな要因の一つです。

デファクト品とは、国際的な機関が定めた公式な規格ではなく、市場において実際に多くの人々に利用され、以下のような事実上の標準として認識されている製品や規格のことを指します。

PCのOS Windows
ビジネスシーンのソフト Microsoft Office
SNS LINE

特に、電子機器の心臓部ともいえる最先端のロジック半導体の製造拠点が国内に存在しない現状は深刻です。

この分野において、日本は他の国々に10年の遅れを取っているとの見方もされています。日本の半導体産業が再び世界をリードするためには、優れた技術を持つ海外企業との連携が欠かせません。

自動車産業や産業機器・工作機械など、日本が強みを持つ産業とのシナジー効果も期待できます。半導体分野の強化は、日本の総合的な競争力向上に繋がるでしょう。

日本が半導体分野で持つ強みとは

日本が半導体分野で持つ強みとは

日本の半導体業界は、かつての輝きを失いつつあるものの、特定の技術分野においては卓越した技術力を有しており、世界的に高い評価を受けています。

以下で、日本が半導体分野で持つ強みを解説します。

半導体製造装置における技術力

過去30年ほどの間に、日本の半導体メーカーはかつての圧倒的な地位を失い、世界シェアは10%程度にまで減少しました。

しかし、半導体製造装置の分野では、日本企業が依然として高い競争力を維持しています。半導体製造装置とは、半導体の製造に不可欠な現代産業の根幹を支える重要な装置です。

近年、AIやIoTの進展に伴い、半導体の性能向上に対する要求はますます高まっており、半導体製造装置の技術革新は日夜進められています。

東京エレクトロンやアドバンテストなどの企業が代表例であり、リソグラフィ装置やエッチング装置など、高精度な製造設備において世界をリードしています。これらの装置は、半導体の微細化が進むにつれて、ますますその重要性が増しています。

センサー技術

日本のセンサー技術は世界をリードしており、特にイメージセンサーや圧力センサー、温度センサーなどにおいて高い評価を得ています。

これらのセンサーは、スマートフォンや自動車、ヘルスケア製品など、私たちの生活に身近な製品に幅広く活用されています。

例えば、ソニーのCMOSイメージセンサーは、高画質と高速な画像処理能力から、世界中のスマートフォンやデジタルカメラに採用されています。

また、自動車分野では、デンソーなどが開発したセンサーが先進の安全運転支援システムに採用されており、自動車事故の減少に大きく寄与しています。

このように、高精度なセンサーは、現代社会において欠かせない存在であり、日本の技術力が世界を牽引していると言えるでしょう。

パッケージング技術

パッケージング技術は、半導体チップを外部から保護し、電気的に接続するための重要な技術です。日本企業は、この分野において特に3D ICパッケージングやWLPといった高度な技術で世界をリードしています。

スマートフォンやコンピュータの小型化、高性能化を実現するためには、このパッケージング技術が欠かせません。

村田製作所や日立化成など、日本の多くの企業が、高密度パッケージング技術の開発に取り組んでおり、その成果は世界中の電子機器に活かされています。

日本の半導体産業が競争力を高めるポイント

日本の半導体産業が競争力を高めるポイント

日本の半導体産業がかつての輝きを取り戻し、世界シェアを拡大するためには、以下のような多角的な戦略を立て、実行していく必要があります。

研究開発への投資を増やす

日本の企業と政府は、半導体分野における研究開発を強化し、次世代の技術革新を牽引していく必要があります。

微細化技術や新素材の開発など、最先端の研究分野への投資を拡大することで、日本の半導体産業の競争力強化が期待されるでしょう。

国際的なパートナーシップを強化する

国際的な協力とパートナーシップを強化し、他国との共同研究やプロジェクトを推進することで、新たな技術や知見を獲得することができます。

これにより、国際市場における競争力を高め、自社の製品やサービスの付加価値を高めることが可能です。

さらに、最新技術を積極的に導入することで、より革新的で高品質な製品の開発が可能となり、顧客のニーズに応えることができるでしょう。

多様な市場に進出する

日本の半導体企業は、日本の半導体企業は、スマートフォンやPCなどの従来の市場だけでなく、自動車や医療、産業用機器など、より多様な分野へ積極的に進出することで、事業の多角化を図り、新たなビジネスチャンスを創出していく必要があります。

特に、人々の生活を豊かにするような製品に搭載される半導体に注力することで、長期的な成長が見込まれる市場を確立し、日本の半導体産業の競争力強化に繋げることが重要です。

人材育成を行う

半導体産業のさらなる発展のためには、高度な専門知識と技術を持つエンジニアや研究者の育成が重要です。

企業においては、若手研究者の育成や以下のような講座受講を積極的に行う必要があります。

これらの取り組みを通じて、半導体分野における専門家を育成し、国際競争力を強化することができるでしょう。

3次元CAD利用技術者試験2級対策講座

3次元CAD利用技術者試験2級対策講座

CAD利用技術者試験は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会が主催するCADの操作スキルを測る資格試験です。この試験は、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 平面上での図面作成を主に扱う「2次元CAD利用技術者試験」
  • 立体的な3Dモデルを作成する能力を評価する「3次元CAD利用技術者試験」

この資格を取得することで、半導体設計エンジニアとしての技術力があることを客観的に証明できます。企業によっては、採用選考の際にこの資格を優遇する場合もあり、転職活動においても有利に働くことがあります。

ProSkilllの3次元CAD利用技術者試験2級対策講座は、わずか8時間で実務に役立つスキルを習得できる講座です。オリジナル教材には、小テストや模擬試験が多数収録されており、試験直前の対策にも最適です。

eラーニング形式なので、時間や場所を選ばずPCやスマートフォン、タブレットで学習を進めることができます。

日本の半導体産業は競争力を高める工夫が鍵となる

今回は、日本の半導体生産が衰退した理由や持っている強み、競争力を高めるポイントを解説しました。

日本の半導体産業は、かつて世界を席巻し、その高度な技術力と高品質な製品で知られていましたが、激しい国際競争や経済状況の変化、貿易規制などの影響を受け、そのシェアを大きく失うこととなりました。

現在、日本の半導体産業は、特定の分野においては依然として高い競争力を維持しており、新たな成長の機会を探っています。

再び世界的な地位を回復するためには、研究開発への積極的な投資、国際的な連携の強化、優秀な人材の育成、多様な市場への進出が重要な戦略となります。

半導体産業は、私たちの社会を支える基盤となる技術であり、今後もその重要性はますます高まることが予想されます。企業と政府が一体となって、イノベーションを加速させ、国際競争力を強化することで、日本の半導体産業は再び世界をリードする存在となるでしょう。

日本の半導体復活のカギを握る技術とは?競争力を高めるポイントも解説
最新情報をチェックしよう!