最新版ものづくり白書の中で、製造業の課題や取り組みが詳しく説明されています。
デジタル技術の進展が進む今、企業は何に取り組むべきなのでしょうか。
今回は、ものづくり白書のニュースで語られている日本企業が実施すべき取り組みや、実現を目指すGX(グリーン・トランスフォーメーション)について深掘りします。他国が実施する取り組みも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ものづくり白書とは
ものづくり白書とは、経済産業省が毎年発行する「日本国内の製造・生産に関する最新技術・動向」が取りまとめられている資料のことです。現在の日本でどういった動きがあるのか、業界が目指すべき場所がどこなのかを具体的に説明されています。
そして今回、ものづくり白書の中で説明されている製造業のGX(グリーン・トランスフォーメーション)に注目が集まりました。技術革新が著しく進歩する現代において、日本企業に求められるポイントとは、いったい何なのでしょうか。
ものづくり白書で求められるGX
ものづくり白書の中でよく登場するのが「GX」という言葉です。
GXとは、世界中で推進されている脱炭素に向けて、企業全体で再生可能なクリーンエネルギーへのシフトを目指す取り組みのことです。ものづくり白書の情報によると、次のような取り組みがスタートしています。
- 再生可能エネルギー設備を導入
- エネルギーの使用量を削減
- 電力プランの再検討
- クレジット制度を活用
また、企業自らが実施する取り組みが複数あります。
日本が掲げる2050年のカーボンニュートラルを実現するため、重要課題としてGXが推し進められている状況です。
近年では、デジタル展示会といった面白いサービスも登場しています。
詳しくおすすめのサービスを知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
ものづくり白書で語られる製造業の動向
ものづくり白書では、最新技術・動向に関する情報が掲載されているのが特徴です。
そしてニュースの中では、製造業に焦点を当てて製造業の動向が語られています。
世界中で製造業の水平分業が進む
世界で、製造業の水平分業が加速しています。
水平分業とは、異なる業種の企業が協力し、得意分野を組み合わせて新たなビジネスモデルを生み出す動きのことです。例えば、ベトナム企業の「ビンファスト」は他業種と水平分業をスタートして次の計画を立てています。
独シーメンスなどが提供するサービスを通じ、自社工場に大手自動車メーカー並みの生産ラインや生産技術を導入。自動車の基盤技術を持たないビンファストが、創業から通常より半分程度の21カ月で工場を稼働した。
もともと自動車の基盤技術を持っていなかったビンファストですが、他社と協力することにより短期間で完成車事業への参入を実現しました。今後の予定として、年間50万台の自動車生産を計画しています。
欧州でCO2排出量の開示義務化がスタート
EUといった欧州諸国では、脱炭素に向けた取り組みとして、販売する製品(現在は蓄電池が対象)のライフサイクルにおけるCO2排出量を開示する独自制度がスタートしました。
欧州ではEV(電気自動車)の普及が進んでおり、CO2削減に向けた取り組みが複数実施されています。その中でもEVに搭載された蓄電池の販売状況から、国内のCO2排出削減量を換算していく予定です。
ガソリン車が生み出しているCO2と蓄電池のCO2を比較することで脱炭素を目指すほか、製品の排出量を開示しない企業に対し、販売許可を出さないといったGXを目指す取り組みが推し進められています。
国内でも徐々にデジタル技術の活用が浸透
他国と比べて製造業における環境への取り組みがやや遅れ気味の日本ですが、複数の企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)、GXに向けた技術活用をスタートしています。例えば日本では、次のような取り組みが実施されている状況です。
国内で実施されている取り組み | |
人工知能(AI)の活用 | オンライン型の部品調達を自動化 |
センサー・モニターの活用 | 熟練技術者・エンジニアのノウハウをデジタル化 |
日本では、設計~販売にかけてのプロセスをすべて社内で実施する「垂直統合型」として動くのが一般的でした。また、アナログで業務を進めるケースも数多く見受けられます。
一方、デジタル技術が発達した現代では、デジタルシフトに力を入れる企業が増えている状況です。今後の日本の発展には、いかに自社の強みを見つけて、デジタルシフトや経営資源の水平分業を進められるかにかかっています。
ものづくり白書における製造業の最新事例
ものづくり白書の中では、製造業における最新事例が複数掲載されています。
その中でも、ものづくり白書の重要ポイントとなる事例をまとめました。
自動車産業の連携プラットフォームが始動
自動車産業の技術発展のために、自動車産業のデータ連携プラットフォーム「Catena(カテナ)-X」が始動しました。
Catena-Xは、自動車メーカー・自動車部品メーカーといったサプライチェーン全体でデータを共有して、以下の要素を取り決めて管理するプラットフォームです。
- 部品の標準規格
- 3Dモデルデータ
- 最新情報の共有
主に自動車産業の標準化を目的として、海外の大手自動車メーカーなど100社以上が参加しているとものづくり白書に掲載されています。これまで個社で動くのが当たり前だった産業の改革として、注目が集まっている状況です。
国内産業向けの基盤構築プロジェクトがスタート
日本では、経済産業省を主体として国内産業全体のデータ連携を図り、基盤構築を固める取り組み「ウラノスエコシステム」がスタートしました。
ものづくり白書で説明されている当プロジェクトでは、欧州が実施しているEV蓄電池の開示義務のほかにも、各業界の以下のデータ共有を連携します。
- 物の流れ
- 人の流れ
- 金の流れ
企業ごとに動きや取り組みがブラックボックス化しやすい問題を解決できるほか、GXの実現を具体的に数値化できるのが強みです。国が主体となって新プロジェクトに取り組むことにより、各企業がGXを目指す取り組みに参加しやすい環境を整備しています。
またGXとともに実施したいのが、企業のDX化です。
具体的なDX化のノウハウを学びたい方は、次のようなオンラインセミナーに参加してみてください。
ものづくり白書に該当する現状課題
ものづくり白書では、国内外における面白い取り組み・事例が紹介されていますが、その一方でまだまだ現状課題がいくつもあるとニュースの中で取り上げられています。
蓄積したデータを活かしきれていない
経済産業省の山下隆一製造産業局長によると、日本の製造業はGX・DXとして取り組みを実施している反面、蓄積したデータを完全には有効活用しきれていないと説明しています。
ものづくり白書で説明されている取り組みには活用できている反面、改善のチャンスを逃しているポイントも多いと語られています。デジタル技術の導入はもちろん、経験とノウハウをうまく業務に取り入れることが、今の日本には欠かせません。
企業連携・スピードに後れを取っている
ものづくり白書でも良く取り上げられている「災害」において、日本企業は企業連携やスピード感で、他国よりも遅れを取っていると説明されています。
どんなに良い技術環境が揃っていても、その環境を扱える人材やノウハウが不足していては効率的な取り組みを実施できません。現代の日本にはものづくり白書で求められている熟練の人材が不足していることから、競争力の強化が必要だと考えられています。
他国連携から除外される恐れがある
大手自動車メーカーが実施しているCatena-Xといったデータ連携プラットフォームにおいて、今後日本を含むアジア諸国がデータ供給網から外される恐れがあるかもしれません。
製造業の標準化を目指すと言っても、市場の占有率が変動することは、どの企業も良しとしません。自動車メーカーとして強い位置にいる日本も同様に除外対象にあることに気を付けるべきだとニュースで語られています。
ものづくり白書で説明されている世界の動向は、いずれ日本と差がつくかもしれない要素です。
毎年発行されるものづくり白書の動向を探ることはもちろん、日本ならでは取り組みをいち早く進めることが重要だと言えます。
ものづくり白書のGX推進に向けた動き方
ものづくり白書で取り上げられてるGXに向けて、日本では今後連携や環境整備が重要だと考えられています。具体的な動き方を深掘りしてまとめました。
日本ビジネスモデルの水平分業化
日本では個社ごとにビジネスを展開しているケースが多いのですが、今後は複数企業が連携してビジネスを展開する「水平分業化」が必要だと考えられています。
例えば、海外からの輸入に依存している日本では、原料を複数企業で共同調達して、輸入・運送コストを減らすといった取り組みが必要です。少ないコストで新たなビジネスを始動できることから、ものづくり白書でも語られている分業化が欠かせません。
独禁法の課題整理
日本ではビジネスの動きが法律で厳しく取り決められています。
特に独禁法はよくニュースにも取り上げられている要素ですが、今後はデジタル技術の活用に向けて独禁法の見直しが必要になると語られています。
ものづくり白書でも、たびたび独禁法の話が取り上げられるほか、ものづくり白書の事例として取り上げられる場合があります。柔軟なビジネスモデルの展開に向けて、再度ものづくり白書の内容分析が必要になりそうです。
またGX・DXに合わせて実施しなければならないのが、従業員の健康管理です。
デジタルを活用した取り組みに興味がある方は、以下の記事を参考にしてみてください。
ものづくり白書の警鐘についてまとめ
ものづくり白書には面白い取り組みが複数掲載されている一方で、ものづくり白書の内容から、日本における課題が浮き彫りになっているのも事実です。
また、ものづくり白書に記載されている情報は、製造業を含む国内産業の動向を知る重要資料だと言えます。
「まだものづくり白書を読み込んでいない」「ものづくり白書の内容と自社サービスを比較していない」という方は、ものづくり白書に関するニュースのチェックや、ものづくり白書自体を読み込んで日本の現状を再確認してみてください。