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【2024】Mastercamとは?機能・使い方&基本操作・価格・導入企業事例

近年の製品開発において、従来の紙図面からデジタル図面に移行を始めている企業が増えています。その中で、CADとCAMの機能を兼ね備えたMastercam(マスターキャム)が注目されています。

Mastercamは、世界中のユーザーが使用しているソフトウェアですが、実際にどのような機能やメリットがあるのか気になる方も多いでしょう。そこで今回は、Mastercamの概要や機能、使い方、企業の導入事例などを紹介します。これからシステムの導入を検討している方は、参考にしてみてください。

Mastercam(マスターキャム)とは

Mastercam(マスターキャム)

画像引用元:株式会社ゼネテック

Mastercam(マスターキャム)は、CADとCAMの機能を持つソフトウェアです。

CAD機能には、ソリッドとサーフェスの融合型システムが導入されているため、デザインや寸法を重視した形状の作成が可能です。また、CAM機能を使用すると、同時5軸加工や複合加工のNCデータの作成ができるため、加工方法や業種関係なく対応できます。

Mastercamでは加工に必要な機能を選べるため、必要に応じてオプションを追加することで複雑な加工を実現します。Mastercamのツールパスを活用すれば、高送りと深い切り込みで切削時間の短縮が期待できるでしょう。

価格

Mastercamの価格は、企業の課題や仕様条件によって変動するため、開発元や国内の代理店に問い合わせる必要があります。下記の価格は、国内代理店の税別価格です。

Mastercam Mill 1,680,000円
Mastercam Mill 3D 3,500,000円
Mastercam Lathe 1,400,000円
Mastercam Wire 1,400,000円
Mastercam Multi-axis 980,000円

推奨スペック

実際にMastercamを使用するためには、動作環境の条件を満さなければなりません。PCと周辺機器のスペックが劣ると、システムを導入しても作業が停滞するでしょう。Mastercamの導入を検討する前にスペックの確認が必要です。

OS Windows 10 (バージョン20H2以降) 64bit Professional
メモリ 32GB
CPU Intel あるいは Xeon® E3、Kaby Lake以降、3.2GHz 以上
ビデオ 4GB 以上の専用メモリを搭載したNVIDIA Quadro® 、AMD FirePro™ / Radeon Pro カード
ストレージ NVMeドライブ(空き容量20GB以上)
モニター 解像度1,920×1,080デュアル モニター
ドライブ ダウンロード、DVDドライブ
その他 3Dconnexion 3Dマウス

最低動作環境

Matercamの推奨スペックを満たしていない場合でも、必要最低限の動作環境があれば、作業ができます。使用状況によっては、新たにPCや周辺機器の買い替えが必要になる可能性があります。自社のPCと以下の動作環境を照らし合わせてみてください。

OS Windows10 (バージョン20H2以降) 64bit Professional
メモリ 8GB
CPU IntelかAMDの64ビットプロセッサ(2.4GHz以上)
ビデオ 1GB

Open-GL3.2とOpenCL1.2をサポート

ストレージ NVMe ドライブ(空き容量20GB以上)
モニター 解像度1,920×1,080
ドライブ ダウンロード、DVDドライブ

Mastercamの機能と使い方・基本操作

Mastercamの主な機能は次のとおりです。

  • 3次元サーフェス・ソリッドモデリング機能
  • 旋盤加工機能
  • ロボットティーチング機能
  • 2軸・2.5軸・3軸加工機能
  • 複合加工機能
  • ワイヤー加工機能
  • 複合面3軸加工機能
  • マルチタスキング加工機能
  • レリーフ加工機能
  • 多軸加工機能
  • 木工加工機能

それぞれの使い方と基本操作について解説します。

3次元サーフェス・ソリッドモデリング機能

Mastercamの3次元サーフェス・ソリッドモデリング機能では、自由曲面や回転、押し出しを直観的な操作でモデリングが可能です。他のシステムから取り込んだソリッドモデルの編集機能を搭載しているため、設計変更の際に役立ちます。

サーフェスの形状に対して、カーブの角度変更やすき間の埋め込みの編集に対応しています。迅速に不要な図形部分を除去する機能を活用すれば、ポインタをドラッグするだけでトリムが可能です。さらに、ソリッドモデルにおける向きの変更や編集作業、ソリッド面の選択による突き出し量の変更が容易になります。

旋盤加工機能

Mastercamの旋盤加工機能では、ワイヤーフレームやソリッドモデルから荒取り・仕上げなどの旋削ツールパスを作成できます。

具体的には、3次元サーフェスモデリングと旋盤加工を使用できるため、多様な加工パターンに対応可能です。切削素材や機械構造物を定義することで、工具の干渉チェックやエアカットを低減したツールパスの作成に適しています。

加工する場面では、内側に向かって徐々に切削が行われるので、材質の切削効率の向上が期待できます。さらに、刃先チップ面全体の旋削により、工具寿命の延長が可能です。工具メーカーが提供している3DCADデータから、旋削工具の作成と干渉チェックも同時にできます。

ロボットティーチング機能

Mastercamのロボットティーチング機能では、各ロボットメーカーに対応したロボットプログラムの作成やシミュレーションが可能です。

従来のオンラインティーチングでは、時間と手間がかかりますが、ロボットティーチング機能を使用することで無駄な作業を省けます。たとえば、マウスの操作のみでロボットの動作線をエラー領域から回避させられるため、複雑な操作を必要としません。

2軸・2.5軸・3軸加工機能

2軸・2.5軸・3軸加工機能では、ワイヤーフレームやソリッドモデルから2軸加工の作成、高速加工向けのツールパスに対応しています。同時に、複合面サーフェス並行切削機能によるワークの大量除去の他に迅速な仕上げを実現する加工が可能です。

3Dモデルから2軸加工と穴加工の加工領域を自動検出することで、割り付けた加工パターンによるツールパスの作成ができます。3DCAD・CAMでありながら、輪郭・ドリル・円弧切削に対応した2軸加工ができるため、さまざまな加工の場面で活躍するでしょう。

複合加工機能

Mastercamの複合加工機能では、複雑な系統プログラムを合理化することで、複合加工のパフォーマンスと安全性の向上が期待できます。複合加工機能を活用すると、段取り替えに費やす時間を削減できるため、現場の業務改善に役立ちます。

使用実績のあるツールパス計算アルゴリズムが使用されているため、独自のシミュレーション機能やプログラムの管理機能でデータ作成が可能です。

ワイヤー加工機能

ワイヤー加工機能は、放電加工におけるNCプログラムを迅速に作成できるソリューションです。2軸と4軸のワイヤーパス作成機能が搭載されており、ワイヤーの動作や角度などの要素を制御できます。

ワイヤー加工に必要なダイ形状やパンチ形状に適応した設定とコーナー処理まで可能です。また、切削くずを除去する手間を省けるコアレス加工にも対応しています。

複合面3軸加工機能

複合面を対象に同時3軸加工ができる機能が搭載されており、荒取りや仕上げなど多様な加工パターンに対応しています。また、2軸・3軸専用の高速加工ツールパス作成機能が用意されているので、迅速な加工ができるでしょう。

具体的には、独自のダイナミックモーションにもとづき、サーフェスやソリッドモデルから高速加工向けのツールパスを生成します。高送りと切り込みを行い、1回あたりの切削量を増やすことで、工具寿命の向上を図ります。

マルチタスキング加工機能

マルチタスキング加工機能では、絵的な設定画面による旋削とミーリング加工から同期加工が可能です。通常の複合加工プログラムの作成には時間がかかりますが、マルチタスキング加工で作成時間を大幅に短縮します。刃物台の加工情報をオペレーションツリーで簡単に同期動作を作成できます。

メリットは、複雑な操作を必要とせずに、作業工数を削減できる点です。また、タイムラインを表示することで刃物台の同期情報などの機械動作を管理できるため、干渉を考慮した加工データの作成が可能です。干渉チェックを行う際は、シミュレーション機能を使うことで、視覚的に検証ができます。

レリーフ加工機能

レリーフ加工機能では、イラストや写真をシステムに取り込むことで、レリーフの作成が可能です。ジュエリーや看板にもレリーフ加工ができるため、多様な用途に合わせられます。具体的には、CADで使用できるワイヤーフレームに変換することで、膨らみを持たせた立体感を生み出します。難しい操作を必要としないため、レリーフとして使用するデータがあれば、簡単に加工が可能です。

多軸加工機能

多軸加工機能では、複雑で高度な多軸形状に対して、同時5軸のツールパスを作成できます。特に豊富な軸の設定が可能であるため、細かい動作の作り込みに適しています。

たとえば、深堀りで工具が届かない場合は、2軸・3軸加工で作成したツールパスを5軸加工に変換可能です。システムから出力されるNCデータは、工作機械におけるメーカー型式と制御盤に対応しています。また、面の曲線やエッジ部分に法線方向のツールパスを作成できるので、面の向きを統一するときに役立つでしょう。

木工加工機能

木工加工機能では、NCルーター加工機に対して木工用の加工パスを作成できます。2軸・2.5軸加工に加えて、同時3軸加工に対応しているため、費用対効果の高いモジュールとして期待できるでしょう。

他にも、複雑な自由曲面に対するツールパスの作成機能が充実しており、丸ノコやブロックドリルなどの加工内容にも適しています。特に、エアカットを少なくする同時5軸の荒取りツールパスの作成ができるため、工数の削減による時間短縮が可能です。

Mastercamを導入するメリット

Mastercamを導入するメリットは、主に次の3つです。一つずつ解説していきましょう。

  • 時間とコストの削減ができる
  • 費用対効果が上がる
  • 業務の効率化を図れる

時間とコストの削減ができる

Mastercamを導入する大きなメリットは、開発にかかる時間とコストを大幅に削減できる点です。加工に必要なNCデータを工作機械に流し込む前に、シミュレーション機能で検証を実施できるため、後から手戻りが少なくなるでしょう。

検証データはシステム上で管理できるため、導入することでペーパーレス化に移行する機会になります。多くの企業では、人的なミスや属人的な作業になることも少なくはありません。ある程度の加工の知識があれば、Mastercamの習得が可能です。

費用対効果が上がる

Mastercamのモジュール構成は、多様なニーズに対応できるため、導入コスト以上に費用対効果が期待できます。具体的には、CAD機能や多軸加工機能を活用することで、手戻りやミスを最小限に抑えられるので、納品までの時間短縮が可能です。

Mastercamの機能を組み合わせることで、複雑な形状に対する加工を実現できます。導入後は、必要に応じて機能の拡張が可能であるため、あらゆる加工条件に対応できることから費用対効果を大きく実感するでしょう。

業務の効率化を図れる

Mastercamでは、エアカットによる削り残しや干渉のチェックを自動的に行うため、スムーズに適切なツールパスを作成できます。また、従来の2D機能では、確認しづらい部分を3D機能で視覚的に把握できるので、曲面形状の設計に役立つでしょう。

Mastercamには、CAD・CAMの機能が備えられているため、従来の設計プロセスを大幅に改善できる効果があります。製品開発における設計と加工は、途中で変更や修正が発生すると納期遅れの原因になりがちです。業務改善を図る目的で、Mastercamの導入を進める企業も多く存在します。

Mastercamの勉強方法

Mastercamの使い方を習得するには、ある程度の時間が必要になります。初めてMastercamを導入する場合は、操作方法や機能を理解しなければなりません。

ここでは、体験版の使用と講習会に参加して勉強する方法について紹介しましょう。

無料体験版で勉強する

Mastercamは、正式に導入する前に無料体験版で学習用として使用できます。開発元のCNC Software社を始め、以下の国内代理店の公式サイトからダウンロードが可能です。

CNC Software社 https://www.mastercam.com/downloads/
株式会社マクロス https://www.macros-cad.co.jp/download/index.html
ジェービーエムエンジニアリング株式会社 https://www.jbm.co.jp/contact/form/demo.php
株式会社ゼネテック https://www.mastercam.co.jp/mastercam2022_demodownload/

ダウンロードができる体験版によって、使用できる期間や機能が異なるため、事前に必要な機能を明確にしてから使うと良いでしょう。

体験版を提供している企業によっては、ダウンロードを行う前にフォームにて申込が必要になります。CNC Software社が提供する「Mastercam Home Learning Edition」では、動作環境が満たされていれば、自宅でも操作が可能です。工作機械の制御ができないといった制限はありますが、基本的な操作の習得に向いています。

講習会に参加して勉強する

経験者に操作方法や機能を教えてもらいながら勉強したい場合は、定期的に開催している講習会に参加して勉強する方法があります。2Dの作図やツールパスの作成など実務で使用する機能を学べるため、マニュアルだけではわかりづらい部分を解消できるでしょう。

数日間にわたって基礎を習得するカリキュラムが用意されているため、時間に余裕がある場合は受講をおすすめします。

Mastercamの企業導入の事例

最後に、Mastercamを導入している企業の事例を紹介します。

株式会社多賀製作所

株式会社多賀製作所は、バネ製品の製造で高い技術力とノウハウを持ち、自動車関連の部品製造を行っている企業です。同社では、Mastercamを導入してから次のような実績を出しています。

  • 加工時間を導入前と比較して45%の短縮に成功した
  • 曲面加工したときの傷跡をなくせた

Mastercamを導入する前までは、加工時間の短縮や効率向上を期待していませんでした。しかし、Mastercamの荒取り加工機能の活用によって、時間とコストの削減に成功しています。加工が困難であった複雑な形状に対応できるようになったことで、加工品目の増加による受注の幅を広げられました。

また、従来の加工方法と比較すると、大幅の時間短縮を達成しており、結果的に内製化と外注コストの削減につなげられています。特に曲面加工した際に、作業者のスキルのバラつきによる傷跡が課題でした。

Mastercamにて、切削条件を標準化したことで、きれいな面に仕上げられる加工を実現しています。今後は、加工比率の向上と切削条件の最適値の模索に活用するようです。

株式会社由紀精密

株式会社由紀精密は、半導体や航空宇宙など多分野における精密機器の加工を行っている企業です。同社でMastercamを導入した結果、次のような実績を出しています。

  • 従来のプログラム作成時間を15分に短縮できた
  • 作業の分担化が可能になった

Mastercamを導入する前までは、NCデータを手作業で直接入力されていたようです。ミスのリスクを抱えながら作業に1時間ほどかけていました。

Mastercamの導入後は、過去に加工したものと似た形状であれば、最短15分でプログラムの作成ができるようになったようです。また、社内で確立されている加工工程を複数人で使用できるため、作業の分担化とスキルの向上に貢献しています。

特定の機械を担当していた作業者が、別の機械に触れるようになったことも大きな成果のようです。

有限会社峰友技研

有限会社峰友技研では、半導体関連の部品製造を行っています。Mastercamの導入を決めたきっかけは、微細加工への進出を決めたときでした。同社がMastercamを導入してから、次のような実績を出しています。

  • 不良品の発生率が激減した
  • 次の工程に移行しやすくなった

Mastercamの導入後は、作成したツールパスが正確に反映されるため、プログラムのミスが解消されたことで、不良品の発生率が激減したようです。

従来では、すべて手作業で入力と計算を行っていましたが、ミスをしないという精神的なプレッシャーから解放されました。同社では紙図面を扱う機会が多いため、従来の方法では時間を費やしていましたが、Mastercamを使用することで加工までの流れがスムーズになったようです。

同社では、Mastercamに対して、2次元的な加工に強い印象を持っています。今後は、微細加工の幅を広めていくようです。

安価に3DCAMを導入するならFusion 360がおすすめ

3DCAMは大きく分けて「ハイエンド」「ミドルレンジ」「ローエンド」3つの価格帯で分類されています。
MasterCAMは100万円~400万円価格帯のミドルレンジCAMに位置付けられるため、導入コストが高くなる傾向があります。
そのため、価格を抑えつつ、業務で使える高機能3DCAMを導入されたい方におすすめの3DCAM「Fusion 360 CAM」をご紹介します。

Fusion 360 CAM:オートデスク社

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概要
Fusion 360 CAMは、クラウドベースで作られており、 2軸加工、3軸加工、穴加工、旋盤加工、5軸加工(オプション)までの加工に対応可能です。
Fusion 360 CAMは、HSMWorksやInventor HSM™で実績のあるカーネルを使用しています。

主な機能
低価格でありながら、3DCADの機能から3DCAMの機能までひと通りを利用できますので、業務で利用する方はもちろんのこと、初心者や、個人利用者にも非常に扱いやすいものとなっています。
2軸、2.5軸、3軸の機能すべてがクラウド上で動作し、データもクラウドストレージ上に保存するようになっています。
さらに、加工材を基に切削領域を自動で認識するため無駄なツールパスを省き、加工時間の短縮を実現します。
また、工具やフォルダの干渉チェックがCAM上で行えるためドライランの時間を短縮できます。
3Dプリンタ用のデータを直接生成できるユーティリティーも利用できるため、手軽に3Dモデルの作成が可能です。

価格
年額71,500円(税込)、月額8,800円(税込)(個人利用なら無料でも利用可)
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まとめ

Mastercamの機能やメリットを導入事例とともに紹介しました。Mastercamは、次のようなタイミングで導入を検討した方が良いでしょう。

  • 手作業による時間とコストを削減したい場合
  • 加工技術を標準化にしたい場合
  • 正確にあらゆる形状を加工したい場合

Mastercamを導入している企業からは、時間とコストの削減や加工技術について評価されています。必要な加工に応じて機能を組み合わせられるので、従来の技術では困難な形状にも対応可能です。これからMastercamの導入を検討する場合は、無料体験版や講習会を活用してみてください。

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