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【2025】医療IoTを導入する際の注意点は?事例やメリットもくわしく紹介

米国会計検査院(GAO)は、医療分野におけるIoTとOTのサイバーセキュリティ対策に深く関心を寄せています。

保健福祉省や食品医薬品局に対し、IoTやOTのセキュリティに関する報告書や勧告を繰り返し発出し、これらの機関が推奨事項をどのように実行に移しているかを監視しています。

GAOの動向は、今後の医療IoTのセキュリティ基準や規制のあり方に大きな影響を与える可能性があり、医療従事者やIT担当者は、これらの動向を注視していく必要があります。

今回は、医療IoT導入の注意点や得られる6つのメリット、活用事例を詳しく解説します。

医療IoTとは

医療IoTとは

医療IoTとは、医療機器や設備をインターネットに接続し、得られた情報を活用することで、より高度な医療サービスを実現する技術です。

IoT(Internet of Things)が様々なモノをインターネットにつなげるように、医療IoTはIoMT(Internet of Medical Things)とも呼ばれます。

例えば、医療IoT導入による患者のバイタルデータのリアルタイムモニタリングや遠隔地からの医療相談などが挙げられます。

IoTの技術により、医療現場の効率化が図られ、患者はよりきめ細やかな医療サービスを受けることが可能になるのです。

さらに、AIや機械学習などの技術との連携によって、膨大な医療データを分析することで、疾病の早期発見や効果的な治療法の開発に貢献することも期待されています。

AIの投資対効果を最大化するポイントについては、以下の記事で解説しています。

【2025】AIの投資対効果を最大化する7つのポイントとは?評価する際の注意点

医療IoTで得られる6つのメリット

医療IoTで得られる6つのメリット

医療IoTの導入は、以下のような恩恵をもたらすと期待されています。

  1. サービスの質が向上する
  2. 自宅にいながら診察を受けられる
  3. 医療におけるミスを防げる
  4. 医療データの活用ができる
  5. コストを削減できる
  6. 医師や看護師の負担が軽減される

以下で、その主なメリットを様々な観点から詳しく解説します。

①サービスの質が向上する

IoTによって患者の状態をリアルタイムでモニタリングできるため、従来よりも早期に異常を検知し、迅速な対応が可能です。

例えば、ウェアラブルデバイスを用いて患者のバイタルデータを24時間体制で収集し、異常があれば医師や医療機関にアラートを送ることが実現されます。

ウェアラブルデバイスは、手首や指などに装着することで、体温、血圧、心拍数、血糖値、睡眠などの生体情報を手軽に測定し、データを収集することができます。

これらのデータを活用することで、患者は自身の健康状態をより深く理解し、医師はより適切な治療計画を立てることが可能になります。

特に、高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、医師の診察だけでは十分な管理が難しいケースがあるため、ウェアラブルデバイスを用いて、患者の日常的な行動や生理データを収集することで、より精度の高い健康管理が可能となります。

また、医療機器の稼働状況を常時監視することで、トラブルの発生を未然に防ぎ、医療の安全性と信頼性を向上させることも期待できます。

医療機器の故障や不具合は、患者の生命に関わる重大な問題となり得ますが、IoTを活用することで、このようなリスクを最小限に抑えることが可能です。

患者のカルテや検査データなどをクラウド上に一元管理することで、医療従事者は必要な情報をいつでもどこからでもアクセスできるようになるため、医療の質向上だけでなく、医療機関の経営効率化にも繋がるでしょう。

②自宅にいながら診察を受けられる

新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、オンライン診療料が新たに設けられたことで、医師と患者の間で遠隔診療の活用が広がっています。

IoTが医療現場に浸透することで、へき地や離島にお住まいの方々も適切な医療にアクセスしやすくなると期待されており、病気や老齢、障害などの理由で医療機関への通院が困難な方々にとっても有益な手段となります。

医療IoTデバイスはインターネットに接続されているため、患者は自宅や外出先など、どこからでも医療データを取得し、医療従事者に送信することができます。

病院への移動が困難な患者も適切な医療サービスを受けることができ、医療アクセスの向上が期待できると共に、医療資源が限られた地域でも、高度な医療を提供することが可能となります。

③医療におけるミスを防げる

ウェアラブル端末を活用した患者データに基づく診療は、判断や治療・投薬のミスなどの医療過誤のリスクを低減する上で重要です。

特に、薬の飲み合わせや処方量については、医師の経験や知識に加えて、ビッグデータやAIを活用することで、より正確な医療を提供することが可能になるでしょう。

また、薬剤投与に関するインシデントやアクシデントの防止に繋がる、電子処方箋も有用です。

電子処方箋管理サービスに医師が処方箋を登録し、薬局が処方箋を取得することで、従来の紙の処方箋によるやり取りが不要になります。

電子版のお薬手帳を用いることで、薬剤師は重複投薬の有無を容易に確認でき、災害時の処方においてもスムーズな対応が可能です。

さらに、RFID(Radio Frequency Identification)の活用も薬剤の誤投与リスクを低減する上で有効です。

RFIDとは電波でRFタグのデータを非接触で読み取り、効率的に識別・管理を行うシステムで、薬剤チェックや患者認証の際に役立ちます。

④医療データの活用ができる

医療IoTの登場により、従来、紙媒体で行われていた診療データや検査データは、デジタル化されネットワーク上で共有されるようになりました。

これにより、複数の医師や医療機関間での情報連携が円滑になり、患者へのより迅速かつ正確な医療提供が可能です。

医療データのデジタル化は、データ分析や可視化を容易にし、ビッグデータの活用による新たな知見の創出も促しています。

例えば、パーキンソン病や心臓病などの慢性疾患の研究や新薬開発、臨床試験など、様々な医療分野において、IoTデバイスから得られた膨大なデータが活用されています。

個人レベルでは、PHR(パーソナルヘルスレコード)という個人の健康に関する以下のようなあらゆる情報を一元的に管理するシステムの普及が注目されています。

  • 血圧、体重、体温、歩数などの記録
  • 食事の内容と摂取したエネルギー量
  • 服薬情報
  • 健康保険に紐づく健診データ
  • スマートフォンなどに記録された運動量や心拍数、睡眠時間などのデータ
  • 手術歴
  • 予防接種履歴
  • 検査結果など、

このような多岐にわたるデータを網羅しており、情報を医師や看護師、薬剤師などが共有することで、患者一人ひとりに最適な医療を提供できるようになり、転院時などにもスムーズなデータ移行が可能です。

⑤コストを削減できる

IoT機器を活用することで、患者のモニタリングや見守りを自動化するため、人件費の削減だけでなく、医療従事者の労働時間短縮や業務効率化を実現し、働きやすい職場環境を構築することができます。

IoTを活用することで、医療機器の稼働状況や場所に関するデータを収集・分析し、最適な配置や台数を決定することができるため、医療機器の利用効率を高め、コスト削減に繋がります。

また、ベッドの稼働実績を把握することで、診療報酬の請求漏れを防ぎ、収益の向上も期待できるでしょう。

医療IoTの導入には初期費用がかかりますが、組織の課題や目的に合ったシステムを構築・運用することで、中長期的に見てコストを上回るメリットが期待できます。

IoTを活用した質の高い医療サービスを提供することで、医療機関のブランドイメージ向上に繋がり、新規患者の獲得や既存患者の定着を促進し、持続的な収益拡大を実現できるでしょう。

⑥医師や看護師の負担が軽減される

リモート会議やリモートカンファレンスといった技術は、すでに広く普及していますが、現在ではIoTの利活用がさらに進化しています。

例えば、在宅医療においては、訪問診療と遠隔診療を組み合わせることで、患者の経過観察頻度を高めながら、医師の負担を軽減することが可能になります。

また、様々な診療科で不可欠な画像診断をAIが支援することで、読影時間の削減や業務効率化を目指した技術開発も活発に進められています。

さらに、先述したRFIDを医薬品ボトルに埋め込むことで、三点確認を瞬時に行えるようになり、看護師の業務負荷軽減に繋がります。

三点確認とは、患者、薬剤、医療従事者の3つの要素を照らし合わせ、間違いがないかを確実に確認する作業を指します。

患者 薬剤 医療従事者
誰に どういった医薬品を 誰が投与するか

この確認作業は、患者の誤認や薬剤の誤投与といった医療事故を未然に防ぐ上で非常に重要な役割を果たします。

タスクシェアやタスクシフトを推進すると同時に、IoTを活用することで、医療現場の負担を軽減し、結果的に人材不足の解消にも繋げられると期待されています。

医療IoT導入における注意点

医療IoT導入における注意点

医療IoTの導入は、より安全で効率的な医療サービスの提供に貢献することが期待されています。

しかし、医療IoTの導入には様々な注意点があります。以下で、医療IoT導入における具体的な注意点について、解説していきます。

導入コストがかかる

IoTを導入するにあたって、システム構築にかかる費用は、求める機能や構成によって高額になる可能性があります。端末本体や端末に搭載するセンサー、SIMも同様です。

IoT機器で得られる膨大なデータを蓄積するクラウドやサーバーの費用負荷の範囲、導入したIoT機器を活用するためのトレーニングにかかる費用と期間も、あらかじめ協議する必要があるでしょう。

IoTシステムの立ち上げにかかるのは、経済的なコストだけではありません。セキュリティポリシーや障害発生時の対応方針など、各事項の取り決めにかかる時間的・作業的なコストも見込む必要があります。

サイバー攻撃への備えが必要である

医療IoTは患者の疾患や生活状況など、秘匿性の高い情報を扱います。これらの情報は生命に直接関わるものも含まれるため、データの安全管理が重要です。

データ管理システムへの不正アクセスやハッキングによる情報漏洩、数値の改ざんなどは、深刻な医療事故に繋がる可能性や内部職員の不用意なデータ管理による情報流出も起こりえます。

そのため、十分な安全性を備えたシステム構築・運用に加え、セキュリティ対策の徹底、職員のITリテラシー教育など、データを保護するための体制構築が不可欠です。

IoTは常時インターネットに接続される仕組みであるため、サイバー攻撃への備えは常に万全でなければなりません。

先述したPHRなどを含む個人情報が一度でも漏洩すると、社会的な信用を大きく損なう事態となります。

しかし、日々巧妙化するサイバー攻撃への対策を常にアップデートするのは容易ではないため、適切なサードパーティーにセキュリティ面も含めた保守・運用を依頼することも検討されるべきです。

サイバーリスク管理については、以下の記事で詳しくご紹介しています。

【2025】サイバーリスク管理とは?その流れや実現に向けて抱えやすい課題

導入が困難な分野もある

IoT機器は、統一された通信プロトコルが存在しないため、新たなIoT機器を既存システムと連携させる際に、設計・構築の難易度が高くなるケースがあります。

遠隔地からの外科手術など、将来的には可能になると期待されているものの、現在では技術的に困難な領域も存在するのです。さらに、IoTは無制限に活用できるわけではありません。

厚生労働省が発表している「オンライン診療の適切な実施に関する指針」などを踏まえて、適切に導入を進める必要があります。

この指針では、遠隔診療は対面診療と適切に組み合わせることが基本であり、遠隔診療のみで処方すべきでないとされている医薬品もあります。

参考:オンライン診療の適切な実施に関する指針|厚生労働省

患者の同意が必要不可欠である

医療分野におけるIoT活用は、様々なデータを容易に共有できますが、医療データは患者にとって非常に機密性の高い情報であり、その取り扱いには細心の注意が必要です。

多くの患者は、自身の治療情報や病歴などが複数の医療機関や医師の間で共有されることに不安を感じる可能性があります。

そのため、IoTを活用して医療データを共有する際には、患者への丁寧な説明と同意が不可欠となります。

IoT導入にあたっては、データの使用目的や共有範囲、プライバシー保護の方法について、患者にわかりやすく説明して理解を得る必要があります。

IoT人材が不足している

IoTの技術に関する高度な知識やスキルを持つ人材の需要は急速に拡大していますが、高度なスキルを備えたIT人材の絶対数は限られています。

IoT機器のアーキテクチャ設計から運用・保守までを行うには、高度なスキルを持つIT人材の確保が必須です。

しかし、組織が自力で高度なIT人材を採用・育成することは、時間的にもコスト的にも大きな負担を伴うでしょう。

医療IoT導入における活用事例をご紹介

最後に、医療IoT導入の活用例を以下でご紹介します。

検査データの共有

訪問医療や訪問介護の現場では、超音波診断装置で測定した検査データをリアルタイムに医療機関と共有することが可能です。

これにより、これまで訪問医療や訪問介護において課題とされていた情報共有のタイムラグが解消され、適切な医療を迅速に提供することが可能になります。

医療システム導入による効率化

電子カルテシステムやWeb予約システムなどの導入は、医療現場の効率化に貢献しています。

医療従事者の負担を軽減すると同時に、待ち時間の短縮やオンライン予約など、より利便性の高い医療サービスを提供することが可能です。

医療システムの導入は、医療従事者の業務効率化と患者の利便性向上を同時に実現する有効な手段と言えるでしょう。

服薬のサポート

患者が薬を忘れずに服用できるよう、IoT技術を活用した服薬サポート機器も開発されています。

例えば、設定された服薬時間になるとライトが点灯し、患者に薬を飲むタイミングや服薬状況を家族に自動で通知する機能を持つ機器も登場しています。

さらに、患者の服薬履歴をスマートフォンで手軽に確認できるシステムも構築されており、調剤薬局や医療機関での服薬指導に役立てることができ、よりきめ細やかな服薬管理をサポートします。

医療機関での指導だけでなく、患者が自宅でも継続的かつ確実に服薬できるようになり、治療効果の向上に貢献することが期待されています。

医療IoTの導入で業務のデジタル化を進めよう

今回は、医療IoT導入の注意点や得られる6つのメリット、活用事例を解説しました。

医療IoT導入は、医療サービスの質を向上させ、コスト削減にも繋がるなど、多くのメリットをもたらします。

医療IoTを実現するための第一歩として、まずは院内業務のデジタル化を推進することが重要です。

この技術を積極的に活用することで、医師や看護師の業務負荷を軽減し、医療の質を向上させることが期待されています。

セキュリティやコストなど解決すべき課題も存在しますが、より質の高い医療サービスを効率的に提供するために、IoTの導入は今後医療業界全体で進んでいくでしょう。

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