図面作製で利用する機会の多いCADでは、平面的なデザインしかできないため、より視覚的に分かりやすく表現したい場合があります。
そこで、レンダリングという手法でビジュアル的に分かりやすくする場合があります。
最近では、CADのスキルだけでなくレンダリングスキルも問われる傾向にあります。
本記事では、レンダリングの概要や目的、重要性などについて解説します。
CADにおけるレンダリングとは?
CADにおいて、レンダリングの役割を知る上で、CADとレンダリングの意味を正しく理解する必要があります。CADとレンダリングの用語を解説すると、以下のようになります。
CADとは?
CADは「Computer Aided Design」の略称となり、日本語ではコンピュータ支援設計という意味となります。実際には、コンピュータを用いて設計図を作成したり編集したりする技術や、それを実現するソフトウェアのことを指します。
CADを使用することで、コンピュータで2次元や3次元の図面を作成可能です。
CADが誕生したのが1960年代のことであり、「Sketchpad」というCADの原型となるシステムが誕生しました。
そして、Sketchpadをベースとして開発されたのが、初のCADシステムである「CADAM」となります。その後、1982年に「AutoCAD」が登場し、現在でも高いシェアを誇っています。
レンダリングとは?
レンダリングとは、主に3DやCGをモデリングするソフトで使用される単語です。
ソフトを使用して制作したモデルをデータを処理もしくは演算することを指し、パソコンで作成したデータが現実世界に飛び出したかのようなクオリティで出力可能です。
3DCGで制作した映像を実写とマッチングさせると、現実世界では実現できないような表現が可能となります。また、普段使用しているWebブラウザがHTMLにより表現したテキストを、視覚的に分かりやすく変換して表示させることも、レンダリングと呼ぶ場合が多いです。
CADによるレンダリングとは?
CADとレンダリングは、それぞれ別のソフトウェアであったものが、徐々に両方ともに対応できるものが増えつつあります。
たとえば、CADがレンダリングを取り入れられており、3DCGソフトでは制作したモデルを2Dの図面に出力することができるようになったのです。
2DCADを用いて図面を書く場合、従来であれば2DCADで3つの面図を作図して、これを元にイラストを別途作成する必要がありました。
これが、2DCADにレンダリング技術が応用されたことで、リアルに忠実な3DCGを1枚の図面から制作できるようになったのです。
比較的手軽に作成できる2Dの図面をさまざまなジャンルで活用できるようになったため、CADでレンダリングできるニーズが高まっています。
CADでレンダリングする必要性や得られる効果
CADを用いてレンダリングがなぜ必要なのか、どのような効果を得られるのかを理解することも重要です。ここでは、CADでレンダリングする必要性や得られる効果を紹介します。
レンダリングの必要性
レンダリングがなぜ必要になるのかを言えば、相手に製品説明する際に、より鮮明で具体的な製品イメージが共有できるためです。
社内や顧客に対してのプレゼンテーションをおこなう際に、ただ図面を見せてもイメージが付きにくく説得力がないものです。
そこで、レンダリングによりイメージを具現化すれば、よりリアルに近いイメージを伝えられます。レンダリングの代表的な例としては車のカタログが挙げられ、一見すると写真のように見えるものが実はレンダリングにより作成されている場合が多いです。
レンダリングにより得られる効果
レンダリングにより得られる効果として、イメージを共有しやすいという点が挙げられます。
製品のイメージを3次元化して、より実物に近いデータを作成することでまるで製品が手元にある状態でイメージを共有できます。
実際に、製品のプロトタイプを作成したり建築のビジュアルシミュレーションなどにも活用されているのです。特に、製品設計のフェーズにおけるレンダリングはクライアントに対してより効果的に伝えることができるツールとして活用されています。
CADでレンダリングする3つの手段
実際にCADでレンダリングするためには、どのような方法を用いておこなえば良いのでしょうか?ここでは、CADでレンダリングをおこなう3つの方法を紹介します。
レンダリング機能がある総合型ソフトウェアを使用する
使用するCADによっては、レンダリング機能がない場合もあります。
また、3Dレンダリングに対応していないなどの場合は、CADで作図した後に総合型ソフトウェアで処理して、3DCGを作成します。
総合型ソフトウェアの場合、2DCADを用いて作図したものをインプットして、3DCGで表現できる機能が実装されている場合が多いです。
よって、普段使い慣れた2DCADで作図して、総合型ソフトウェアを用いてスピーディーにレンダリング可能です。
レンダラーを使用する
総合型ソフトウェアのほかにも、レンダラーと呼ばれるレンダリングに特化したソフトウェアを用いてレンダリングする方法もあります。
ただし、一般的には総合型ソフトウェアで図面を読み込ませて3DCGを作成し、レンダラーでレンダリングする形となります。
手間がかかる一方で、レンダラーを使用するとより質の高いレンダリングが可能なメリットがあります。
外注を利用する
自分でレンダリングすることが難しい場合、CG制作会社などに外注する方法もあります。
外注を利用すれば、2DCADで作図した図面を渡してイメージを伝えるだけで、より理想に近いレンダリングが可能となるメリットがあります。
ただし、ほかの方法と比較して費用面では高くなるのが難点です。
CADでレンダリングするならAdobe Substance 3Dがおすすめ
CADで作成した図面からレンダリングする方法を紹介しましたが、Adobe Substance 3Dを用いたレンダリングが特におすすめです。
ここでは、Adobe Substance 3Dの概要や特徴などを詳しく解説します。
Adobe Substance 3Dとは?
Adobe Substance 3Dは、Adobeが提供するソフトウェアです。
レンダリングだけでなく、モデリングやテクスチャ作成なども含め、3Dコンテンツを作成できるソフトウェアとして有名な存在です。
元々は、Substance 3Dという、名称でAllegorithmic社が提供していましたが、2019年からはAdobeからリリースされるようになりました。
世界中のCG制作会社で採用されるなど、プロのクリエイターからの評価も高いソフトウェアです。
Adobe Substance 3Dがおすすめの理由
Adobe Substance 3Dが多くのクリエイターに愛されている理由として、以下が挙げられます。
- リアルタイムで3Dモデルのテクスチャを作成できる
- 誰でも簡単にリアルな3D表現をおこなえる
- 対応している3Dデータの種類が多い
各理由について、詳しく見ていきましょう。
リアルタイムで3Dモデルのテクスチャを作成できる
Adobe Substance 3Dでは、3Dモデルに対して直接テクスチャをペイント可能な点が魅力的です。3Dモデルに対してペイントしたり加工したりする作業が、2Dの画像編集と同じような感覚でおこなえます。
これにより、効率的かつよりリアルな表現を実現できるメリットがあります。
誰でも簡単にリアルな3D表現をおこなえる
Adobe Substance 3Dを使用すれば、画像データをソフトにドラッグ&ドロップしてフィルターをかけるだけで、3Dモデルに貼付できる高品質のテクスチャを簡単に作成可能です。
直感的な操作で、誰でも簡単にフィルターをかけて高品質な3D表現をおこなえます。
対応している3Dデータの種類が多い
Adobe Substance 3Dは、対応しているデータの種類が多い点も魅力的です。
主要なデータ形式だけでも、以下をインポート可能です。
- FBX
- OBJ
- PLY
- GLTF
- 3DS
- DXF
- STL
- 3DM
- ASM
- CATPART
また、プラグインを使用することで3ds MaxやRhino、MayaなどでAdobe Substance 3Dで作成した素材を容易にレンダリングできます。
Adobe Substance 3Dのレンダリングを活用した事例
Adobe Substance 3Dでは、実際に多くの企業などで使用されています。
ここでは、実際にAdobe Substance 3Dのレンダリングを活用した事例を2つ紹介します。
ミズノ株式会社
ミズノ株式会社は、ミズノのブランド名で有名なスポーツブランドです。
一般的に、シューズを開発する際に数多くの実物サンプルを何度も製作し商品検討を繰り返すのが一般的です。
そこで、ミズノでは試作工程のバーチャル化を実現するためにAdobe Substance 3Dを活用しています。特に、シューズの素材の質感を表現したり、ステッチワークをデザインしたりする上で、Adobe Substance 3Dが大活躍しています。
株式会社隈研吾建築都市設計事務所
株式会社隈研吾建築都市設計事務所は、世界的に有名な建築家である隈研吾さんの設計事務所として有名です。株式会社隈研吾建築都市設計事務所では、作品に込められた設計者の想いを、プレゼンテーションの資料内でリアルに表現したいため、Adobe Substance 3Dを導入しました。
実際に、熊本県人吉市にある青井阿蘇神社で、2020年の豪雨被害の復興プロジェクトの茅葺をイメージした屋根をAdobe Substance 3Dでレンダリングした事例があります。
これにより、建築の価値を伝えることで、クラウドファンディングを成功に導いたのです。
CADレンダリングのまとめ
今回は、CADのレンダリングについて簡単にご紹介してみました。
レンダリングを使いこなせるようになると、さらにデザインの幅が大きく広がります。
特に、プレゼンテーション時にレンダリングにより作成したサンプルが容易できれば、より相手とのイメージの共有が可能となるでしょう。
キャリアアップを図るためにも、CADでレンダリングするスキルをマスターしてみてはいかがでしょうか?