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製造業のデジタル化はなぜ進まない?進めるためにはどうすべき?

近年、様々な業界で業務のデジタル化が進んでいますが、製造業界は他業界と比べてデジタル化が遅れ気味です。デジタル化を阻害する要因は多数ありますが、慢性的な人手不足や高騰する人件費への対応、そして製品の品質向上のためにも、デジタル化の推進は必要不可欠です。

今回の記事では製造業のデジタル化が進まない理由と、それでも進める方法、具体的な導入事例などを解説いたします。製造業のデジタル化をお考え方の方は参考にしてください。

製造業のデジタル化とは

製造業のデジタル化とは

製造業のデジタル化とは、従来は人力で行なっていた作業や紙で行っていた情報管理をデジタル技術で代替することにより、生産性を向上させたり、経費を削減したりする取り組みのことです。具体的には

  • 熟練の技術者のノウハウを可視化・共有し、若い技術者が習得しやすいようにする
  • 紙で管理していた情報をデジタルデータに変換して取り扱う
  • IoT技術の活用により、生産状況を容易に把握できるようにする
  • ロボットによる省力化を行う

などが該当します。

製造業の今のトレンドについてさらに知りたいという方は、こちらの記事もご覧ください。

【2024】製造業のトレンドは?今後の動向や対策をチェックしよう

製造業のデジタル化のメリット

製造業をデジタル化するメリットは多数ありますが、中でも一番大きなメリットは技術者・作業員の業務負担を軽減できることです。負担の軽減は労働時間の短縮などの生産性向上、離職率の低下にも繋がります。その他、

  • 生産体制を安定させられる
  • 顧客への対応が迅速にできるようになる
  • 製品の不良率が低下する
  • 休暇・休日を増やせる

などのメリットもあります。

製造業のデジタル化のデメリット

上記の通り製造業のデジタル化には様々なメリットがありますが、一方でデメリットも無視できません。一番のデメリットとして、デジタル技術の導入がそもそも難しいことがあげられます。デジタルに詳しい人材が不足している現場では、そもそもどのようにデジタル化を進めればいいのかがわからない事自体が問題となります。また、現場から反発が生まれる可能性も考えなければなりません。

デジタル化とDXの違い

デジタル化と似た概念にDXがあります。デジタル化は上記の通り、デジタル技術を用いて業務改善を行うことです。一方、DXはデジタル技術を用いて業務改善するだけでなく、製品、サービス、価値の創り方、ひいては社会のあり方をも変革するという考え方のことです。デジタル化が主に社内の改善を重視するのに対して、DXはその先にある顧客、社会にも目を向けています。

DXについてさらに詳しく知りたいという方は、こちらのセミナーも参考にしてください。

製造業のデジタル化の事例

製造業のデジタル化の事例

ここでは、実際に製造業のデジタル化を進め、工数の削減・経費の削減・売上の向上などのメリットを得ることに成功した事例をいくつか紹介いたします。

IoTソリューションの導入で工数の大幅削減を実現

株式会社日立産機システムの工場は、毎月の手動の棚卸による現場の負担の重さ、製造部品欠品による製造ラインへの影響などを課題として抱えていました。そして、それらの問題を解決するため、発注を自動化するIoTソリューション「スマートマットクラウド」を導入。

その結果、在庫数が閾値を下回った場合にアラートが届くシステムを通じて品薄を事前に確認できるようになり、欠品の発生頻度や現物確認の手間を大幅に削減できるようになりました。

3Dデータの活用で高品質・納期短縮・量産を実現

自動車用プレス金型鋳物等を製造する株式会社木村鋳造所は、複雑な部品の鋳造の際に人手で模型を作っており、そのため模型の再利用ができず、製造に多大な時間やコストがかかるという課題を抱えていました。

そして、それらの問題を解決するために、市販CADを導入し自社でカスタマイズし、顧客から預かった2Dデータを3Dデータ化し、模型の製造、測定、加工を自動化する取り組みを開始。

その結果模型の製造時間は従来の1/4にまで短縮し、さらに模型製造に関するクレームはほぼ0%になりました。

締結工具のIoT化で機械工具製造の作業精度が大幅に向上

自動車整備用工具などを製造する京都機械工具株式会社は、作業精度や作業管理が職人の勘やコツに過度に頼りすぎている状況を変えるために、レンチにデジタルメーターを敷設した「デジラチェ」を開発。

デジラチェは締結作業ごとにデータを管理することができるため、若い技術者でも高精度な作業が可能になったほか、従来の手書きやPC入力などの手間が大幅に省けるようになりました。

製造業のデジタル化が進まない理由

製造業のデジタル化が進まない理由

上記の通りデジタル化によって業務改善に成功した企業は複数ありますが、製造業は他業界と比べてデジタル化があまり進んでいないというのが現状です。一体なぜでしょうか。

属人化している業務が多い

製造業の世界には、限られた人にしかできない属人化した業務が多く存在します。重要な業務の手順、状況などは優秀な一握りの技術者の中でのみ共有されており、企業全体に行き渡っていません。このような環境下でデジタル化を進めるのは容易ではありません。

費用がかかる

デジタル化には、当然費用がかかります。どのようなIT機器やロボットを導入するかにもよりますが、中小企業の場合はそもそもデジタル化を実現するための費用が確保できないというケースも少なくありません。

下記の記事で製造業の補助金についても解説していますので、費用の確保に悩んでいる方は参考にしてください。

製造業が使える補助金7選!各補助金の特徴や内容を徹底比較

人材不足

優秀なデジタル人材はただでさえ数が少ない上、その多くがIT業界などの他業種に流れていってしまっています。そのような環境で製造業界がデジタル人材を確保するのは容易ではありません。

製造業がデジタル化を進めるために必要なもの4選

上記の通り製造業界にはデジタル化を阻害する様々な要因がありますが、だからといってデジタル化を放棄してはこの先の競争に勝ち残ることができません。ここでは製造業界でも通用する具体的なデジタル化の進め方を紹介いたします。

現状や課題を洗い出し、現場の理解を得る

デジタル化を進めるうえで最初にやるべきことは、現場でどのような問題が起こっているか、どのような要因が業務効率化を妨げているかを十分に把握することです。何が問題なのかわかっていない状況でデジタル化を進めようとしても、現場の負担が大きくなるだけです。

また、デジタル化を進めるときは、なぜそれが必要なのか、それを行うことによって現場にどのようなメリットがあるのかを共有しなければなりません。どんな素晴らしいアイデアも、現場の協力が得られなければ絵に描いた餅に過ぎません。

人材及びツールの確保

現場の理解が得られたら、デジタル化を推進するための人材、およびツールを確保します。人材については社員や現場の人から選ぶという手もありますが、基本的にはデジタルに関する高度な専門知識を持つ外部のサポートやコンサルタントに頼ったほうがいいかと思います。

現場とデータの結びつきの確認

デジタル化を進めるうえで大切なことは、現場とデータをしっかりと結びつけることです。どんなに素晴らしい人材を雇い、素晴らしいシステムを導入しても、運用ルールが守られなかったり、ツール同士の連携が取れなかったりすると、かえって現場が混乱します。

少しずつ現場をデジタルに慣らしていく

一度に製造現場をすべて変革しようとすると混乱や抵抗で頓挫する可能性が大きいです。まずは業務の一部をデジタル化し、次第にその領域を大きくしていく、というのが角も立たない賢いやり方です。

製造業のデジタル化についてまとめ

製造業のデジタル化についてまとめ

製造業の世界においてデジタル化を進めるのは簡単ではありませんが、だからといっていつまでも旧態依然とした体制を放置し続けていると、激化する競争にいずれついていけなくなってしまいます。業務改善を真に望むなら、早めにデジタル化に取り掛かりましょう。

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