リアルな表現をしたい場合、CGを用いるケースが大半です。
CGでよりリアリティのある作品を作成したい場合、いかにレンダリングを上手くおこなえるかが重要です。
では、CGのレンダリングはどのように実施すれば良いのでしょうか。
本記事では、レンダリングの方式や手順、そしておすすめのソフトウェアについて徹底解説します。
CGレンダリングとは?
レンダリングとは、コンピュータ上にあるデジタルデータをプログラムを用いて演算して、画像として可視化できるように変換してディスプレイ上に表示可能な状態とすることを指します。
レンダリングのベースとなる情報には、以下があります。
- 物体の形状
- 物体を捉える視点
- 物体表面の質感
- 光源
- 光源の位置から影を表現するための処理
物体の形状を作成することをモデリング、それを映像の形で描写することをレンダリングと呼びます。さらに、動きを付けることをアニメーションと呼び、それぞれのステップを経て最終的に一つの作品が完成するのです。
CGレンダリングにおける5つの方式
CGレンダリングをおこなう方法として、以下5つの方式があります。
- スキャンライン
- トゥーンレンダリング
- ラジオシティ
- レイトレーシング
- Zバッファ法
各方式によってメリットとデメリットがあるため、最適な方法を選択してレンダリングする必要があります。
ここでは、各方式の特徴などを詳しく解説します。
スキャンライン
スキャンラインとは、スクリーンを横1行の単位で分割して奥行きを算出する方法です。
レンダリングが短時間で可能となり、スキルがあれば陰影を微細に表現できるメリットがあります。
スキャンラインの場合、光の屈折を計算できないためレイトレーシングやラジオシティと比較するとクオリティは低いです。
特に、金属素材を表現する際に周囲の物体が鏡のように写り込む表現をスキャンラインで表現するのは難しいデメリットがあります。
完成版ではなく、仮データを作成して周囲に披露したい場合はスキャンラインのデータを用いられる場合が多いです。
トゥーンレンダリング
トゥーンレンダリングとは、CGを意図的に2Dのように表現する方法です。
3Dの方が立体的でよりリアリティがある表現が可能ですが、セル画アニメ調の表現をしたい場合に最適な方式となっています。
よって、多くのアニメーションがトゥーンレンダリングにより作成されており、手書きでは困難な動きも表現できるメリットがあります。
トゥーンレンダリングは2Dに近い表現となり単純に見える一方で、ポリゴン数などはほぼ変わらないため容量は同等レベルとなってしまう点は考慮しなければなりません。
トゥーンレンダリングは、ほかにもトゥーンシェイド、シェルシェーディング、トゥーンシェーディングなどとも呼ばれています。
ラジオシティ
ラジオシティとは、一般的には各物体の表面間で交換される熱エネルギーをベースに、物体の明るさを計算する方式です。CGのレンダリングでは、光がオブジェクトに反射することで発生して反射光を表現す方法となります。
ラジオシティの場合、照明で照らされていない箇所が反射によりぼんやりとした表現が得意です。よりリアリティのある表現方法となる一方で、レイトレーシングと比較すると複雑な計算が必要になり、処理時間が長くなるデメリットがあります。
レイトレーシング
レイトレーシングとは、画素単位でカメラに届く光線を逆方向に辿って、光線と最初に交差するモデルについて描写するレンダリング方式です。
これにより、光の反射や陰影などを実体に近い形で表現可能です。
現実に近い表現が可能であり、特にスポーツゲームなどよりリアリティを表現したい場合にレイトレーシングが多用されています。なお、レイトレーシングの「レイ」とは日本語では光という意味となり、光線追跡法と呼ばれる場合もあります。
よりリアリティのある表現が可能である一方で、計算処理に時間がかかるのが難点です。
Zバッファ法
Zバッファ法とは、ピクセル単位で奥行きを表現するための情報を入れて、カメラの可視範囲だけを計算するレンダリング方法です。
カメラで写らない部分の処理をカットすることで、より短時間でレンダリングできる点が魅力的な方式です。
Zバッファ法では、透明と半透明のオブジェクトが混在する場合、前後の情報が混ざる関係上適用できないデメリットがあります。
また、奥行き情報が追加されるため、メモリ消費量が多い点も懸念されます。
CGレンダリングできるソフトウェアを紹介
CGをレンダリング際に、どのソフトウェアを使用して処理するかによって、仕上がりや完成までの時間が大きく異なります。
CGレンダリングできるソフトウェアとしては、特に以下4つがおすすめです。
- Adobe Substance 3D
- Cinema4D
- Maya
- Blender
各ソフトウェアの特徴や、おすすめポイントを詳しく解説します。
Adobe Substance 3D
Adobe Substance 3Dは、モデリングからテクスチャの作成、レンダリングまで対応できる、直感的なエコシステムを採用しています。
レンダリングとしては、複数の光源を配置して光の反射や影などを表現し、よりリアルな作品を作り出せる点が魅力的です。
リアルタイムレンダリングが可能な点も評価でき、すぐに微修正できるので効率よくレンダリングできるメリットもあります。ドラッグ&ドロップの形式で、シーン内にオブジェクトやライトを配置できるので、初心者でも使いやすいソフトウェアです。
大ヒットした映画「アナと雪の女王2」や、人気ゲーム「フォートナイト」なども、Adobe Substance 3Dを利用して開発されたことで有名です。
Adobe Substance 3Dは、数あるCGのレンダリングの中でもおすすめのソフトウェアと言えます。
Cinema4D
Cinema4Dは、ドイツに本社を構えるMAXON Computer社が公開している統合型3DCGソフトウェアです。レンディングだけでなく、3DCGを制作するための全工程をカバーしているため、Cinema4Dだけで魅力的なCG作品をクリエイトできます。
実際に、3Dアートやゲーム開発、映像作成などのジャンルで幅広く活用されているのです。
なお、MAXON Computer社はレンダラーとしてRedshiftも開発しており、レンダリングについては強みのあるソフトウェアです。
高速なレンダリングが可能であり、より高いクオリティの作品を作成する際には大幅な時間短縮が可能となります。また、ユーザーインターフェースはモダンなものを採用しているので、使いやすく直感的に操作できるメリットがあります。
Maya
Mayaは、オートデスク社が開発しているハイエンドな3DCGアニメーションソフトウェアです。
Mayaを用いて作成されたアニメ作品は、原作の絵がそのまま動いていると評判になるほど、圧倒的なクオリティの高さを誇ります。
MayaはCG業界では標準のソフトウェアとなっていて、多くの洋画作品はMayaで制作されている状況です。また、CGの分野だけでなく機械系CADのデータ形式も対応しており、幅広い分野で活用されています。
Mayaは高性能でありながら動作が軽く、さらにWindowsとMac両方に対応している点も魅力的です。ただし、年間ライセンス料が286,000円とほかのソフトウェアと比較して非常に高く、個人が利用するのはまず困難です。
Blender
Blenderは、オープンソースの総合3DCGソフトウェアとして人気です。
Blenderの開発には、マイクロソフトやApple、Google、Adobeなどのメジャーな企業が開発基金のメンバーとなっています。
PCにダウンロードするだけで、基本的に複雑な設定は不要で誰でも簡単に使用できるメリットがあります。さらに、Blenderは無料で利用できるという点も魅力的です。
レンダリングだけでなく、モデリングからシミュレーションまで幅広く対応しており、特に大きな弱点はなくプロのクリエイターからも評価されています。
CG業界内ではまだ主流とはなりきれておらず、ファイルの互換性が低い課題がありますが、今後シェアが拡大すればスタンダードになる可能性を秘めています。
CGのレンダリングをおこなう際の注意点
CGのレンダリングは、ソフトウェアを使用すれば初心者でも比較的簡単に作業可能です。
ただし、以下のような注意点があることを理解しておく必要があります。
- ソフトウェアによっては高スペックなPCの準備が必要
- レンダリングに時間がかかる
- 費用がかかる
各注意点についての詳細は、以下のとおりです。
ソフトウェアによっては高スペックなPCの準備が必要
CGのレンダリングをおこなう上で、ソフトウェアと同時にハードウェアの性能にも大きく左右されます。レンダリングの処理は主にCPUが担当するため、低スペックのパソコンでは処理に大幅に時間がかかったり、場合によってはフリーズするなどの症状が発生したりする場合があるのです。
最低でも、CPUはCore i7を、メモリも32GB以上あると基本的なレンダリングに対応できます。
レンダリングに時間がかかる
高スペックなパソコンを用意したとしても、レンダリングはどうしても時間がかかる作業となります。レンダリング方法にもよるものの、最低数時間はかかり場合によっては1日かかる場合もあるのです。
レンダリング処理している間は、パソコンが占有されてほかの作業ができないため注意してください。
費用がかかる
レンダリングをおこなう際には、高スペックなパソコンだけでなくソフトウェアの準備も必要です。レンダリングに対応しているソフトウェアは無料で利用できるものもありますが、よりクオリティの高い作品を作るためには有料ソフトウェアを選定しなければなりません。
レンダリングに対応した有料ソフトウェアの大半が、サブスクリプション形式で課金されます。
よって、継続的にランニングコストがかかる点を考慮して、最適なソフトウェアを選定する必要があります。
CGレンダリングのまとめ
CGのレンダリングをおこなう際には、具体的にどのようなレンダリングが必要であるのかの構想を練っておく必要があります。
そのうえで、どの方式を利用するのか、それに合ったソフトウェアを選定するのかを決めなければなりません。
本記事で紹介した内容を参考にして、CGのレンダリングを楽しんでみましょう。