自由なデザインで立体的なモデルを作成できる3Dプリンター。
3Dプリンターといえば部品やプロトタイプ(試作品)を作る機器というイメージが強いですが、実はネイルやジュエリーなどのアーティスティックな作品にも活用されています。
今回は、3Dプリンターを使った美しいネイルアート作品、おすすめ3Dプリンターを紹介します。
3Dプリンターとは
3Dプリンターは、樹脂やフィラメントなどの素材を堆積させて、立体的な造形物を作る機器です。一般的には、3DCADソフトを使用するか、立体物を直接スキャンして3Dデータを作成し、そのデータをもとに造形します。
3Dプリンターの主な活用例
3Dプリンターはネイル作成だけではなく、さまざまな用途で活用されています。
ここでは、3Dプリンター活用例を一覧表にして紹介します。
分野 | 活用例 | メリット |
医療 | 手術用シミュレーションモデル | 手術成功率向上 |
教育 | 人体模型などの立体的な教材 | 生徒の理解促進 |
建築 | 建築模型 | 設計の確認や共有の簡易化 |
アート | 彫刻、ジュエリー | 複雑な形状の作品を作成 |
アパレル | 衣類、シューズ | 縫製技術にとらわれず作成 |
食品 | フードプリンター | 食品の見た目を楽しめる |
その他 | 補装具 | 高フィットな義手・義足作成 |
3Dプリンターを活用したネイルの魅力
3Dプリンターを活用すると、従来のネイルでは表現が難しかった精緻な曲線美や個性的な装飾パーツなど、オリジナリティあふれるアートを自由自在に造形できます。
立体的なモチーフはもちろん、指先への抜群なフィット感は3Dプリンターネイルならでは。
一般的なネイルよりも強度や耐久性に優れているため、日常使いで破損しにくいのも魅力です。
3Dプリンターによるネイルは、樹脂や金属など従来のネイルには見られない素材の質感や光沢を生かせることで、ネイルアートの可能性と表現の幅を大きく広げました。
3Dプリンターを使ったネイルアート作品
従来のネイルでは表現できなかった繊細な造形や複雑なデザインも表現できる3Dプリンター。
その魅力を存分に味わえるのが、Tomoya Nakagawa氏の独創的な作品です。
以下では、Tomoya Nakagawa氏が手掛けた3Dプリンターネイル作品を紹介します。
Tomoya Nakagawa氏の経歴や活動
Tomoya Nakagawa氏は異色の経歴を持つネイルアーティストです。
彼は漁師として働いた経験から、海の生き物をモチーフにした魅力的なネイルアート作品を多く手掛けています。
作品制作には、Formlabsの光造形3Dプリンター・Form3+やForm2、そしてクリアレジンを使用。クリアレジンは光造形3Dプリンター専用の素材で、優れたコストパフォーマンスとクリアな輝きが特徴です。造形後の研磨でさらに透明度が高まります。
Nakagawa氏はアメリカのシンガーソングライター・ビョーク、KPOPアイドルのIVEやNewJeans、日本のミュージシャンのあのちゃんなど有名アーティストの作品も手掛けており、今後はネイルアート以外の分野にも進出する予定です。
Tomoya Nakagawa氏のネイルアート作品と特徴
Nakagawa氏のネイルアート作品の最大の特徴は、「繊細でアーティスティックな海の造形」です。これは、彼が漁師時代に培った海の生き物への造詣の深さが由来となっています。
Nakagawa氏は3Dプリンターの技術を駆使し、ファンタジーとリアリティの絶妙なバランスで、海洋生物の躍動感や生命力を見事に再現しています。
特に、波間に煌めく魚や貝殻の光沢感、サンゴ礁の流線美や複雑な構造など、海洋生物のディテールを表現した作品群は圧巻です。
Nakagawa氏はクリアレジンならではの透明度を生かし、緻密なネイルデザインの繊細さを一層際立たせています。3Dプリンター・Form3+やForm2の高い造形安定性により、以下のような複雑で滑らかな形状のネイルを可能にしています。
引用元:i-MAKER
完成後は研磨を施し、さらにレジンコーティングを重ねて、高い透明度を表現しました。
ネイルの一部に施された彩色は、Nakagawa氏が調色した塗料をエアブラシで塗装しています。
光造形方式3Dプリンターならでは特性を生かしたクリアで繊細、滑らかな質感を持つネイルアートこそがNakagawa氏の持ち味といえるでしょう。
このように、Nakagawa氏は、海洋生物への深い愛情と3Dプリンター技術を融合させることで、他に類を見ない独創的なネイルアート作品を生み出し続けています。
3Dプリンターを使ったネイルの制作方法
続いて、3Dプリンターを使ったネイルの制作方法をステップごとに解説します。
- STEP1.3Dデータ作成
- STEP2.データ準備・スライシング
- STEP3.3Dプリンター選定
- STEP4.3Dプリンター造形
- STEP5.研磨、後加工
STEP1.3DCADデータ作成
3Dプリンターを使ったネイル制作は、まず3Dデータの作成から始まります。
手順は以下の通りです。
- 3DCADを使ってアイデアや装飾デザインを具現化
- 自分の爪の形を採寸
- 3DCADでデータを作成
その他、3Dスキャナーで自分の指先をスキャンし、データを編集してネイルチップの形に調整することも可能です。
3DCADを使いこなすには練習が必要ですが、デザインの細部まで自分の意図通りにカスタマイズできるなどのメリットがあります。
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STEP2.データ準備・スライシング
3DCADで作成したネイルのデータは、3Dプリンターで出力できる形式(STLデータ)に変換する必要があります。
変換後、スライスソフトを使ってデータのチェックと造形時の設定を行います。
積層ピッチや支えの有無、造形方向などの細かい調整を行い、本番の造形に備えましょう。
STEP3.3Dプリンター選定
続いて、3Dプリンターを選定します。
ネイルアートには、高い解像度と精密な造形が求められるため、光硬化樹脂などの樹脂を使用できる光造形方式の3Dプリンターが最適です。
滑らかに造形できる光造形方式は、ネイルに求められる繊細なデザインを見事に表現できます。
選定の際には、造形サイズ、積層ピッチ、使用樹脂の種類なども考慮しましょう。
STEP4.3Dプリンター造形
利用する3Dプリンターが決まったら造形に進みましょう。
まずは、光造形3Dプリンターに3Dデータを送信します。
その後、紫外線などの光で液状の光硬化樹脂を硬化させながら積層造形を行ってください。
一層ごとに硬化させる工程を繰り返し、最終的にネイルの型取りを完成させることが重要です。
この手順で3Dプリンターを使うと積層ムラが少なく、繊細なネイルもスムーズに造形できます。
STEP5.研磨・後加工
3Dプリンターで出力された造形物は、積層による段差が生じます。
そのため、最終段階として、この段差を除去するための研磨や塗装、装飾を行います。
具体的な手順は以下の通りです。
- サンディングで段差を消して表面を滑らかにする
- ベースカラーを塗布する
- レジンやラメ、スタッズなどで装飾を加える
- 手作業によるブラシワークで模様を描く
- レジンコーティングなどの保護コーティングを施す
デザインの魅力を十分に引き出すためにも、各工程の作業は細かく丁寧に行いましょう。
ネイル作成におすすめの3Dプリンター
先述したように、ネイル作成に適しているのは光造形式3Dプリンターです。
以下では、ネイルアーティスト・Tomoya Nakagawa氏が使っている3Dプリンター「Form3+」も紹介するので、3Dプリンターでネイルアートをしたい方はぜひ参考にしてください。
- Form3+
- Figure 4
Form3+
Form3+は、ネイルアート制作に最適な卓上型の光造形3Dプリンターです。
業界最高水準の精度と安定性を誇り、クリアレジンなどの高機能な光硬化樹脂を使用し、繊細でディテールに富んだネイルデザインを実現。「光造形方式の3Dプリンター」といえば真っ先に名が上がるほど多くのユーザーに指示されています。
プリント前の準備から造形後の後処理までのワークフローが効率化されており、初心者でも容易に高品質のネイルが完成。材料の交換も簡単で、ほとんどロスなく素早く切り替えられます。
透明度、耐熱性、耐候性など、ネイルに求められる多彩な機能を備え、自動化ツールを活用すれば、24時間連続稼働による大量生産も可能です。
Figure 4
Figure 4は、ネイルアートに最適な機能を搭載したな光造形3Dプリンターです。
創業者チャック・ハル氏が開発した画期的な技術を搭載し、IT活用による生産工程の効率化・高度化を実現します。
100ミクロン以下の高精度により、表面が滑らかで寸法精度が高いのが特徴で、その仕上がりは一貫した品質を持つ「射出成形品」に匹敵するほどです。
さらに、3Dプリンターの「面」を使って幅広くUVを照射するため、造形が非常にスピーディ。
単数・複数問わず造形速度は同じなので、ネイルチップをまとめて造形することも可能です。
その他にも、ネイルやジュエリー製作に適している3Dプリンターは数多くあります。
以下の記事で紹介している「Artist-D」もその一つです。
家庭用の手軽な3Dプリンターなので、ぜひあわせて読んでみてください。
3Dプリンターを使ったネイルアートについてまとめ
3Dプリンターは、ネイルに自由なアイデアを表現する革新的なツールです。
3Dプリンターでネイルチップを作るためには、まずデザインを3Dデータにする必要があります。
3Dデータの作成には、3DCADソフトがおすすめです。
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