高度な切削加工・フライス加工を実現したい場合に導入すべきなのがCAMソフトです。
特に、5軸加工や2次元加工、3次元加工、複合加工など幅広い加工に対応する必要がある場合には、専門性の高いCAMソフトを活用することが必要不可欠です。
高度な加工を実現するソフトウェアは多岐に渡りますが、中でもOPEN MINDが手掛けているhyperMILLを活用するのがおすすめです。
今回は、hyperMILLの概要や主な機能、おすすめする理由などを紹介します。
hyperMILLでできることの事例についても詳しく解説するので、導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
hyperMILLとは?
引用元:hyperMILL
hyperMILLとは、OPEN MINDによって開発されたCAMソリューションです。
2.5D、3D、5軸、複合加工、穴あけ加工など幅広い加工に対応できます。
また、加工における費用対効果向上、品質担保、プロセスの安全性を意識したソフトとなっており、正確かつ完全な加工が可能です。
hyperMILLの動作環境
hyperMILLを提供する代理店が多く存在しています。シミュレーション機能である「VIRTUAL Machining Center」を活用し、PC上で工作機械の動作を再現、プログラムのチェックを行います。
動作の確認を事前に行えるため、実装後に効果が得られないという問題に発展することはありません。また、多軸加工機においては動作が不安定になりやすいため、現地調査を行うとともに、ポストプロセッサーの調整も行います。
hyperMILLの販売実績
hyperMILLは全世界で20,000ライセンス、7000社以上の販売実績があるCAD/CAMソフトです。
航空宇宙・自動車・半導体・医療・金型など、幅広い業種で使用された実績があります。
また、それらの実績を駆使してプログラム作成の自動化を実現しているため、作業工数を大幅に削減可能です。
hyperMILLの価格
hyperMILLは2軸から3軸の加工に対応するもので、費用は1,800,000円(税別)からです。
また、多重加工機を使用する場合には追加料金がかかります。
hyperMILLをおすすめする理由
hyperMILLには特筆すべきポイントが5つあります。
ここでは、hyperMILLをおすすめする理由を5つ紹介します。
同時5軸まで対応できる
1つ目のメリットは、同時5軸加工まで対応していることです。
hyperMILLの5軸は「自動モード」によって実行されます。
自動モードには、主に次のような特徴があります。
- 干渉しない工具の方向と指定した範囲で角度が自動決定される
- 自動干渉回避機能によって角度が自動調整される
- スピードを上昇できる回転軸を変化させることで加工を実行する
- 5軸すべてを使用しない場合は無駄な軸の動作を抑制する
- スムージング機能によって滑らかに加工機が動作する
現状のCADソフトでは5軸加工の品質が悪い場合や、5軸加工に必要なノウハウを持つ人がいない場合にはhyperMILLがおすすめです。
プログラム作成の自動化ができる
2つ目のメリットは、プログラム作成の自動化ができることです。
hyperMILLのフィーチャー/マクロ機能を活用すれば、3Dモデルから穴やポケットを自動認識し、ツールパスを作成したり加工工程を割り当てたりできます。
3DモデルからCAM用にプログラムを作り直す必要がなく、自動的に加工を行えるため、知識が浅い人でも簡単に利用できるでしょう。
2軸加工をシンプルに操作できる
3つ目のメリットは、2軸加工をシンプルに操作できることです。
2軸加工に特化した3Dモードを活用すれば、初めてCAD/CAMを使用する人でも比較的素早くプログラム作成を行えます。
また、ツールパスを作成するための作図作業が必要なく、3Dモデルから直接加工したい面やエッジを選択するだけでツールパスを作成可能です。非常に精度の高いカットパスを作成できる他、常に3Dモデルと工具の干渉を確認するため、安全性も担保されています。
バレル工具専用のデータを簡単に作成できる
4つ目のメリットは、バレル工具専用のデータを簡単に作成できることです。
バレル工具は、Rを加工面に押し当てながら大きく切り込みを入れて加工を行います。
そのため、加工にかかる時間を大幅に短縮できるメリットがあります。しかし、通常のCAMソフトではバレル工具がサポートされておらず、安全に切り込むことが難しいケースもあります。
ところが、hyperCAMであれば、自動でバレル工具用のデータを作成します。そして、安全性にも配慮されているため、はじめてバレル工具を活用する方でも安心して利用できるでしょう。
シミュレーション機能で確実な施工ができる
5つ目のメリットは、シミュレーション機能で確実な施工ができることです。
搭載されている「VIRTUAL Machining Center」のシミュレーションを活用すれば、PC上で工作機械の動作を再現しプログラムが正常に動作しているかをチェックできます。
工作機械はもちろん、工具やホルダーの干渉チェック、オーバートラベルなどの検出にも役立ちます。
hyperMILLの主な機能
hyperMILLには主に6つの機能があります。
ここでは、それぞれの機能について詳しく解説します。
2軸加工
2軸加工機能によって、ドリル加工や2.5軸穴あけ加工、ポケット加工などさまざまな加工方法を用いることが可能です。また、干渉チェックを行いながら自動で加工パスを作成してくれるため、工具同士がぶつかってしまうことはありません。
また、加工時に工具に最適なカットパスラインを作成してくれるため、工具を傷めつけず効率的にカットでき、長期間長持ちさせられるでしょう。
加えて、過去の工具データベースとマクロデータページによってフューチャ認識を行うため、2軸加工の自動加工を容易に構築できます。
3軸加工
3軸加工では、次のような機能が搭載されており、より精密な製品を製造できます。
- 仕上げ加工:走査線仕上げ加工機能と等高線仕上げ加工
- 削り残り部加工:削り残り部品の精密加工
- 等高線最適化加工:電極や機構部品の加工
- フリーパス加工機能:筋彫り加工やエッジ加工
- リワーク加工:加工干渉回避のツールパス作成機能
- 3次元ピッチ加工:急勾配を持つモデルの加工に対応
- 荒削りCADデータ加工:任意のストックモデルを定義
このように、3軸加工に強い機能が多数存在しているため、3次元加工でも質の高い加工が実現できます。
汎用同時5軸加工
5軸加工においては、金型だけでなくさまざまな加工に対応可能です。2〜3軸加工と同様に、少しの項目を数値入力するだけで5軸加工ができるというメリットがあります。
加えて、無駄な軸の動作を最小限に抑えて高品質な加工が可能。加工にかかるタイムロスを防げるとともに、工具の消耗も軽減できるため、工具を交換する必要がありません。
5軸特殊加工対応
5軸特殊加工対応では、以下のようなモジュールが用意されているため、さまざまな加工に適用できます。
マルチブレード加工
- マルチブレードドリル荒加工
- マルチブレード荒加工
- マルチブレードハブ仕上げ加工
- マルチブレードポイント加工
- マルチブレードフランク加工
- マルチブレードエッジ加工
- マルチブレードフィレット加工
ブレード加工
- 3Dストック荒加工
- 5軸ブレードヒール加工
- 5軸ブレードスワーフ加工
- 5軸ブレードフィレット加工
チューブ加工
- 5軸チューブ荒加工
- 5軸チューブ仕上げ加工
- 5軸チューブ削り残り部加工
タイヤ加工
- 5軸ヒール加工
- ストック荒加工
- 5軸削り残り部分加工
- 5軸輪郭加工
- 5軸スワーフ加工
このように、さまざまな加工のモジュールが用意されていることによって、hyperMILLLは幅広い分野で活躍するCAMソフトとなるでしょう。
高速加工
MAXX Machining Bundle(高能率加工オプション)を導入すれば、加工形状に応じてスパイラル状とトロコイド状をツールパスごとに切り替えるため、効率の良い荒削り加工が行えます。
また、MAXX Machining Bundleは3軸加工や5軸加工にも活用できるため、あらゆる現場での加工作業にかかる時間を大幅に短縮できます。
トランスレーター機能
トランスレーター機能とは、他のCADソフトからのデータを扱えるように変換する機能のことを指します。Solid WorksやautodeskInventorなどで活用できます。
具体的には、ダイレクトインターフェースにより、CATIA V4、CATIA V5、PTC Creo、Siemens NX、SolidWorksからのデータをシームレスに読み込めるうえ、IGES、STEPのような標準のインターフェースも活用可能です。
hyperMILLでできること
続いて、hyperMILLでできることを3つに分けて解説しましょう。
データの自動修復が可能
3Dモデルの中で意図せずに穴が空いた部分を自動認識し、形状、位置、角度など必要な情報を収集・修正できます。また、認識された情報を元に自身でカスタマイズしてデータ修復を行うことも可能です。
特に、自動化機能はこれまでにhyperMILLが蓄積してきた情報を元にデータを作成するため、非常に精度の高いシステムを利用してプログラム作成時間を短縮できます。
加えて、これまでに使用されてきたツールパスの情報を元にデータベースが構築されているため、加工時にツール同士が衝突したり、削りすぎてしまったりすることはほとんどありません。
エッジを出したい部分や滑らかに削り取りたい部分は負荷の少ないカットパスが自動的に適用されるため、ツールのことを考えて加工を施すことができます。
CADと完全結合しオールインワンで加工までできる
CADと完全連携し、オールインワンで加工ができることも特徴です。
hyperMILLはCADソフト「SolidWorks」と完全連携して利用できるソフトウェアです。SolidWorksのソフトウェア内でCAD/CAM機能を活用できるため、これまでにSolidWorksを活用していた方であれば、操作性を変えることなくhyperMILLの機能を駆使できます。
また、連携することで、SolidWorksの機能を踏襲した上でhyperMILLの機能を利用し、モデリングとCAE操作を一度に行うことができます。
連携性の少ないソフトウェアだと、外部ソフト用にデータを書き換える必要がある上、ソフト間のUIが異なるため、どうしても操作性が低くなってしまいがちです。
しかし、hyperMILLではそのような心配はありません。
3軸加工同様に5軸加工ができる
通常のソフトウェアを活用する場合、3軸加工と5軸加工のデータを分けて制作する必要があり、エンジニアの手間と多くのコストを必要とします。しかし、hyperMILLの同時5軸加工機能では、通常の3軸加工に追加で2つの機能を組み合わせるだけで加工が完了する「自動モード」が搭載されています。
具体的には、工具の傾斜角度、干渉回避角度の2つを入力するだけで複雑な5軸ツールパス加工が実現できるため、データを複数作るよりも効率的に作業できます。
また、5軸加工にもhyperMILLのノウハウが凝縮されているため、制作オペレーターの力に依存することなく、求めている5軸加工が実現できます。
hyperMILLを活用し実現できる具体例
最後に、hyperMILLを活用して実現できることを紹介します。公式サイトで紹介されているものなど、よりリアルな具体例を公開するので、ぜひ参考にしてみてください。
切削加工におけるヘルメット製造
hyperMILL公式サイトで紹介されているヘルメット加工の事例です。
1/1のヘルメットをマシンでカッティングするプロジェクトであり、5軸加工の「クランプ以外を自由に加工できる」という特性を上手く生かして加工が行われています。
同社が数あるCAMソフトの中からhyperMILLを活用しているのは、10年来培った圧倒的な干渉回避能力と操作性が高いという理由からだそうです。2009年に行われた実験ですが、非常に高い精度の加工が実現できており、実際の現場でも問題なく活用できるほどの精度を担保できているといいます。
半導体装置の製造
スマートフォンやパソコン、電気自動車など多岐にわたって用いられるのが「半導体」です。
この半導体の開発にも、hyperMILLなどのCAMソフトが必要不可欠です。
特に、半導体の製品クオリティはミクロンレベルの高い精度が必要とされます。
少しずれていただけで故障してしまう恐れもあるため、精密な加工が求められています。
半導体の製造を行う上で、CAMが保有しておくべき性能は3つあります。
- 高速加工:多くの製品を作成する必要があり、大量加工できることが求められる。
- 2軸加工:半導体は平面加工が多く、2軸加工が主な加工方法となる。一方で、5軸加工に対応していればより少ない数で効率よく加工が行える
- プログラム作成:素早く加工するプログラムを構築できるソフトがあると良い。特に、5軸加工のプログラムを効率的に行えるものは重宝する。
このようなツールを探すのが良いのですが、そういった場合にhyperMILLの活用が非常に役立ちます。
hyperMILLは加工に必要なデータを作成するのが容易であり、2〜3軸加工のデータに追加項目を付帯させるだけで5軸加工に対応するプログラムを作成可能です。また、加工時の干渉や精密度においてもしっかりと配慮されており、半導体製造に必要なクオリティを十分満たせると考えられます。
さらに、データに欠損があった場合、自動で情報を取得し、プログラムを作成します。データのエラーをスピーディーに調整できることも大きなメリットです。
こういった観点から、半導体の加工にはhyperMILLをおすすめできるのです。
モーターハウジングの切削加工
電気自動車の動力源となる「モーターハウジング」は自動車における電気系統の重要な役割を担っているパーツです。量産加工では金型を使って鋳造しますが、試作品の段階ではマシニングセンターや5軸加工機などを駆使して削り出し加工を施します。
モーターハウジングの製造においては、次の2つのポイントが重要な項目となります。
- 5軸加工に強いソフト:モーターハウジングは複雑な形状をしているため、5軸加工プログラムに強いと作成にかかる時間を大幅に短縮できる。
- 短時間で加工ができること:自動車産業においてモーターハウジングは重要なパーツであり、大量生産が必要不可欠。製造スピードに追いつくツールを導入する必要がある。
hyperMILLは5軸加工に強く、試作品だけでなく金型加工にも活用できます。また、2〜3軸のプログラムを少し改変するだけで加工が行える特徴からも、hyperMILLの導入が非常におすすめです。
CAMソフトなら「Fusion 360」もおすすめ
hyperMILLと導入を比較するなら「Fusion 360」もおすすめです。
Fusion 360はCAMとCAEも利用できるので、加工の衝突検出や切削シミュレーションも1つのソフトで行うことができます。これにより実際の加工前に自作したプログラムの確認をすることができて、CAMの精度を向上させることが可能です。
hyperMILLと比較するなら下記ページから無料体験ができるので、ぜひこの機会にFusion 360を試してみてください。
まとめ
hyperMILLの概要や主な機能、おすすめである理由などを解説しました。
hyperMILLは2、2.5軸、5軸など幅広い加工に強みを持つソフトです。
また、2軸加工のプログラムをベースとして5軸加工まで行うことができるため、プログラムを複数作成する必要がないなど、工数削減のメリットもあります。
加えて、hyperMILLに付属している「VIRTUAL Machining Center」はPC上で工作機械の動作を確認できるため、製品を作る前段階で加工のミスを確認できます。
CAMを導入したことがない企業から、システムを統合し、より効率化を進めていきたいと考えている企業まで幅広いニーズを満たしてくれるソフトです。
今回お伝えした内容も参考に、hyperMILLの導入を検討してみてください。