製品開発において情報管理が重要視されている中で、製品ライフサイクルの管理ができるPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)システムが注目されています。PLMシステムが備えられている「Teamcenter」を導入することで、製品開発の円滑化が期待されています。
しかし、PLMシステムについて知識が薄い企業にとっては、導入に抵抗を感じるでしょう。
今回は、Teamcenterの特徴や対応できるCADについて解説します。
最後まで読んでいただくことで、導入後のイメージが明確になるでしょう。
PLMについて深く理解したい方は、こちらの記事を参照してみてください。
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Teamcenter(チームセンター)とは
Teamcenter(チームセンター)とは、アメリカに本社を置くシーメンスPLMソフトウェア社が開発した製品ライフサイクル管理を行うシステムです。特別な専門知識がない人でも直感的な操作が可能なインターフェースや製品開発を可視化できます。
Teamcenterを活用できれば、CADデータやBOM(Bill Of Materials:部品表)、文書管理が一元化されるため、業務改善につながります。特に、設計担当者の業務負担を大幅に改善できることで期待されています。
他にも、コストの最適化や品質管理などの機能が充実しているため、製品開発の課題解決に役立つでしょう。
Teamcenterの特徴
Teamcenterに分散されたデータを集約することで、一つのシステムからあらゆるデータを一元管理ができる特徴があります。たとえば、社内で複数の異なるCADを使用していても、データをTeamcenterに集約すると、関係者への共有が容易になります。
メールで情報共有したり口頭で報告したりしても、人間は必ずミスをする生き物です。
特に、製品開発にかかわる人は、一つでもミスを発見すると、関係者全員に修正を依頼することになります。
設計者は図面の修正を行い、製品を組み直し、部品の追加発注など時間とお金がかかる作業が発生します。Teamcenterですべての情報管理を行えば、手作業によるミス防止につながります。
リアルタイムで業務の進捗状況を社内で共有できるため、結果的に業務の効率化による作業時間の短縮が可能です。
Teamcenterの機能
Teamcenterには、製品開発において次の便利な機能が備えられています。
- 無駄な作業を削減できるデータ管理機能
- 必要なときに参照できる検索機能
- BOMの統合管理機能
- Microsoft Office連携機能
それぞれ詳しく解説していきましょう。
無駄な作業を削減できるデータ管理機能
Teamcenterでは、業務プロセスにおいて無駄な作業を削減可能なデータ管理機能があります。
一般的に、PDM(Product Data Management)と呼ばれている製品データ管理機能は、製品に関するCADデータやBOMと工程管理の一元化が可能です。TeamcenterのPDMを活用すると、複数のアプリケーションとの連携やチームでデータにアクセスができるため、業務上のニーズを必要なときに満たせます。
Teamcenterを社内全体に導入することで、今後の製品開発やグローバル展開に必要な基盤を固められます。
多くの製造業では、未だに紙の図面や文書を正式なものとする文化が根強く残っています。
ITが普及していない頃からの慣習として教えられる人も多いでしょう。
しかし、承認サインやファイリングを必要とする業務は、近年のリモートワークに伴い、担当者が出社しなければならないことで問題視されました。Teamcenterで正式な文書を電子化することで、電子署名やリリースをオンライン上で完結できます。過去のデータをTeamcenterに蓄積していれば、今後の製品開発で再利用したり、参考資料として役立ったりするでしょう。
必要なときに参照できる検索機能
Teamcenterを活用すると、インターネットに接続できる環境があれば、いつでも必要なデータにアクセスができます。また、Teamcenterには、検索機能や分析機能が備えられており、製品ライフサイクル管理に関するデータを迅速に参照が可能です。ITの知識が少ない現場の人でも操作しやすいため、便利なデータの倉庫として役立ちます。
検索結果が組織や用途別に表示されるので、必要な情報に辿り着けます。さらに、Teamcenterの分析機能には、複数のデータソースから自動生成された課題解決に便利なソリューションが備えられています。
Teamcenterでデータを一元化すると、製品開発で発生する課題の解決が円滑に進むでしょう。
BOMの統合管理機能
TeamcenterのBOMの統合管理機能では、製品開発に必要な情報を一元化して社内全体に共有することで、業務プロセスの可視化を実現することができます。
従来のBOMは、少数の関係者の間でExcelのフォーマットに記載された部品情報を共有していましたが、Teamcenterで管理することで第三者から閲覧が可能になります。
ExcelのBOMは、メールに添付して送信する工程があるため、送信漏れと送り先を間違えたときに情報漏洩のリスクを抱えています。TeamcenterのBOM管理機能を活用すれば、製品の理解や今後の製品構成の参考材料として使用できるでしょう。
Microsoft Office連携機能
TeamcenterとMicrosoft Officeのアプリケーションと連携機能を使用すれば、直接資料の作成や編集が可能になります。逆に、Microsoft OfficeのアプリケーションからTeamcenterの作業フォルダの参照も可能です。Teamcenterに登録されているデータを参照しながら、文書作成を効率的にできます。
業務上で要件定義を適切に管理するためには、製品ライフサイクルと結びつけ、要件の設計が必要です。Teamcenterでは、Microsoft Officeと連携することで設計した要件をもとに製品構造に割り当て、文書を生成してプロセス管理を行います。
また、製品開発に必要なテストや証拠、履歴から要件の検証と確認を実施します。
さらに、コンプライアンスを製品開発に取り入れることで、製品ライフサイクルにおいて顧客のニーズに応えられる価値の提供が可能です。
Teamcenterに対応できるCAD
Teamcenterに対応できるCADは数多く、機械系や電気系、建築系のCADデータと連携が可能です。一つのシステムで複数のCADデータの管理や計測が可能なので、CADを触らない利用者も簡単に確認できます。
また、Teamcenterの「CADインテグレーション」を利用すると、CADデータのプロパティや構成情報まで保持できるため、設計業務以外でも役立つでしょう。
ここでは、Teamcenterに対応できる代表的なCADと機能を紹介します。
NX
NXは、機械系の3DCADで、精密部品や金型設計で利用されています。
Teamcenterと連携することで、製品情報をリアルタイムで共有ができます。
蓄積されたデータは、企業の資産として管理が可能です。また、Teamcenterの製品ライフサイクル機能では、従来のCADデータ管理だけでなく、要件や技術文書から情報を取得しています。
システム上で管理するため、国内外の設計チームが1つのハブデータ、もしくは地域のサイトからインストールして使用すると、情報の一元管理を実現できます。NXと連携できる「NX Check Mate」を活用することで、Teamcenterの構成ルールを適用した部品構成の読み込みと設計要件の検証が可能になります。また、「マルチCADアセンブリ」に部品情報を入れると、再利用に役立ちます。
CATIA
CATIAは、製造業でよく使用されている主要なCADの一つで、自動車の設計で広く採用されています。
TeamcenterにおいてCATIAのデータは、設計から製造までの業務プロセスを一つの情報として管理ができます。従来の市場に投入するまでの期間を大幅に短縮できるため、業務の効率化に適したシステムです。特にカスタマイズを必要とせず、CATIAで作成したデータの管理とチーム設計が可能です。
また、Teamcenterで作成したBOMをCATIAに登録すると、トップダウン設計により、部品を作成していく流れにできます。Teamcenterと連携することで、開発時間の短縮や部品調達から消費までの一連を管理できるため、情報の分散による業務漏れの防止に役立つでしょう。
Auto CAD
Auto CADは、製造業や建築業でも広く使われているAutodesk社のCADです。
Teamcenterと統合することで、関係者への情報共有が円滑に進みます。具体的には、製品開発のプロセスを一つのシステムで共有すると、設計に必要な時間短縮が可能になります。
「Teamcenter Autodesk PDM」では、設計チームが地域的に分散していても、1つのデータベースにアクセスするだけで、必要な情報を参照できます。情報取得の時間短縮や工数の削減につながるため、設計業務に費やす時間の確保につながります。さらに、最新の設計情報を確認できる機能を活用すれば、チーム内の認識のズレを防止できるでしょう。
Creo
リアルタイムシミュレーション機能が特徴のCreoとTeamcenterを連携することで、国内外に分散している設計チームとの情報を一元化できます。
Teamcenterでは、バージョン管理とアクセス制御が行われるため、アクセスできるデータの管理ができます。また、特定の場所に限定せずに複数のサイト展開が可能なので、Teamcenterのデータの取り扱いや他のユーザーとの共有が行われます。
また、Creoで作成したデータに基づいたBOMの管理と可視化に役立ちます。Teamcenterの「マルチCADアセンブリ」にコンポーネント設計を取り入れると、リアルタイムで共有や今後の設計で再利用が可能です。
SolidWorks
SolidWorksは機械設計ができる3DCADの一つです。Teamcenterと連携すると、一つのシステムでデータをまとめて管理できるため、設計チームと製造チームとの情報共有が円滑になります。「Teamcenter PLM」を活用すると、SolidWorksに登録している部品や図面の検索が可能になるため、検索や共有に費やす時間を削減できます。
構造化されたワークフローと変更管理機能で、最新の設計情報を参照しながら作業を進められます。Teamcenter自体が、SolidWorksの環境に組み込まれているため、CAD機能と一緒にPLMの機能を使えます。
SolidEdge
SolidEdgeはモデリングが可能な3DCADの一つで、Teamcenterと同様に、シーメンスPLMソフトウェア社が提供しています。
SolidEdge専用のソフトウェアとの連携を行うと、製品に関する情報とプロセスデータを一元管理が可能になります。また、設計に費やす時間を大幅に短縮して製品ライフサイクル管理が最適化されます。
SolidEdgeで作成したCADデータを迅速に検索できたり、データの再利用に費やした時間を確保したりします。さらにBOMでは、部品に関連する図面との関係性を一覧表示されるため、欲しいデータを探す手間がなくなります。
Teamcenterを導入するメリット
続いては、Teamcenterを導入するメリットについて解説しましょう。主に次の3点が挙げられます。
ライフサイクルを可視化できる
製品開発においてライフサイクルに関する情報管理は、もっとも重要な要素の一つです。
製品ライフサイクルの情報を一元化することで、業務時間を大幅に短縮できます。
従来の紙ベースの文書を持ちながら情報共有すると、印刷に必要なコストや配布する時間が発生します。しかし、TeamcenterのPLMを使えば、社内全体が一つのシステムで情報共有と確認が可能になります。関係者以外の人物にも共有できることから、ライフサイクルの可視化に役立つでしょう。
コスト削減が期待できる
PLMシステムでは、余分なコストを可視化できるため、社内全体のコストの最適化が期待されています。しかし、製品開発の企画から廃棄までに余分なコストが発生しても、気づかない可能性があります。PLMシステムの導入に抵抗を感じている企業も少なくはありません。
Teamcenterでは、スモールスタートで導入が可能です。
まずは特定の部門で小さな効果を実感しながら、導入の範囲を広めるのがおすすめです。
最初から大規模に導入すると、機能の使い方に困る可能性があります。
「Teamcenter Rapid Start」であれば、安いコストで導入が可能です。
生産性が向上する
顧客のニーズを満たした製品を作るためには、製品開発の高度化と複雑化への対応が求められています。今まで以上の高度な品質検査や品質管理が必要になるため、現場の人間に負担をかけてしまいます。
Teamcenterの機能を活用することで、製品の要件管理や環境規制への対応、取引先との連携などの業務が円滑になります。人によって管理方法が異なると、業務上でトラブルを招く可能性があります。Teamcenterで情報を一元管理できれば、円滑な業務進行が期待できます。
Teamcenterの導入企業事例
最後に、Teamcenterを導入している企業の事例を紹介していきましょう。
株式会社山田製作所
四輪自動車のオイルポンプとウォーターポンプの開発を行う株式会社山田製作所では、従来の紙図面を正式な文書として採用していました。しかし、出図管理に限界を感じ始めたことがきっかけに、設計関連データの一元化を検討しました。
以前は、フォルダでデータを共有していましたが、Teamcenterの導入により、出図と図面の一元管理に成功しています。同じ部品を取り扱うCADデータが複数存在する場合は、設計担当者に正しい図面の確認を取る必要がありました。
今ではTeamcenterのCADデータ管理機能で、迅速に参照が可能になり、工数の削減を実現しています。
パナソニック株式会社 エコソリューションズ社
パナソニック株式会社エコソリューションズ社では、住宅建設に必要な設備機器や建材の開発から販売まで行っています。
従来では、住宅の設計において顧客の要件を整理しきれない問題がありました。また、製品開発を円滑に進めるためのシステムがなかったので、情報の分散にリスクがありました。
途中で変更が生じた場合の手間と時間を減らすためにTeamcenterを導入したことで、情報の一元管理による業務の効率化に成功しています。また、販売システムとの連携による開発プロセスの自動化を進め、営業と製造の連携を実現しています。
おすすめの高品質PLMソフトウェア
最後に、PLMにおすすめのソフトウェアを紹介します。
PTC:Windchill(ウィンチル)
Windchill(ウィンチル)とは、PTC(パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション)社が提供する製造業の製品開発において必要な情報管理を行うシステムです。正式には「PTC Windchill」とも呼ばれています。
製品の企画から生産までのワークフローや部品表、コスト管理、品質管理ができる機能が備えられています。Windchillの導入によって、後戻りのない設計や開発が可能になるため、生産性の向上を期待できます。
Windchillには次のような機能があります。
- 製品データの一元管理機能
- CADとBOMの連携機能
- キーワード検索機能
- 文書管理機能
- 閲覧機能
- CADデータ集約機能
- 変更管理機能
- 工程管理機能
Windchillでは、製品開発に関するデータの一元管理や文書の電子化の実現による業務改善が期待できます。さらに、コストの最適化による無駄な経費の発見と削減に役立ちます。
これからPLMシステムの導入を検討されている方は、この機会にWindchillの導入を考えてみてください。
まとめ
Teamcenterの特徴や、対応できるCADと導入するメリットと導入企業の事例を紹介しました。
Teamcenterでは、数多くのCADに対応しているため、図面管理やバージョン管理に適しています。また、情報の一元管理による業務の効率化と生産性の向上が期待できます。
これからPLMシステムの導入を検討している企業は、スモールスタートしてみると良いでしょう。
なお、PLMについて深く理解したい方は、こちらの記事を参照してみてください。