PLM(Product Lifecycle Management)とは、製品の全ライフサイクルにおける製造・設計・保守などの情報を一元的に管理し、活用するための概念や実現するためのシステムを指します。
労働者の高齢化や少子高齢化により、労働力不足が問題視されている製造業にPLMを導入すれば製造現場の生産性を高めることができますが、具体的な手順やノウハウがわからず導入が進まずお悩みの企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では製造業に特化したPLMを解説し、機能やメリットに加えておすすめのソフトも紹介するので、製造工程への導入時の参考にしてください。
製造業のPLMとは
製造業におけるPLM(Product Lifecycle Management ※以下PLMと省略)とは、製品の企画段階から設計や製造、販売や保守、廃棄に至るまでのサイクルにわたる情報を一元的に管理し、製品に関するあらゆるデータ統合を可能にしたシステムです。
製造業は、多数のステップを経て、製品を世に送り出しているため、全てのデータを一元で管理できるPLMは、心強い存在になるでしょう。
PLMの導入により部門間の連携が円滑になり、開発期間の短縮や製造品質の向上、コスト削減や法規制への遵守など、生産性向上のためのあらゆる施策が実現されます。
製造業全体の競争力を高める上で、PLMの導入は市場の変化や顧客ニーズへの迅速な対応を可能にし、企業の競争力強化に不可欠な戦略となっているのが現状です。
PLMとPDMは比較されることがよくありますが、PDMは製品開発に直接関わるデータやプロセスを一元管理するシステムのことを指し、PLM はライフサイクル全体のデータを一元管理するシステムです。
製造業で便利なPLMの機能
製造業へのPLMの導入により、製品情報の一元管理が可能になって以下の8つの機能を有効活用できます。
機能 | 概要 |
---|---|
設計・開発管理 | 設計データの統合管理、設計変更の履歴管理など |
部品表(BOM)管理 | 設計・製造・保守それぞれのBOMを一元管理 |
変更管理 | 変更要求の提出・承認・実施・通知を体系的に管理 |
ドキュメント管理 | 図面・仕様書・マニュアルなど文書の一元管理と検索 |
ワークフロー管理 | 承認ルートの自動化、タスク進捗の可視化 |
構成管理 | 部品やソフト間の関係性と製品構成の整合性を維持 |
品質管理の連携 | 不具合情報・検査データの共有による品質改善 |
サプライチェーン連携 | 設計・調達・製造情報を社内外と共有 |
PLM導入の効果を高めるためにも、個々の機能を明確に把握して最適な導入を行いましょう。
設計・開発管理
製造業におけるPLMの設計・開発管理機能は、製品のアイデア創出から詳細設計や試作、評価に至るプロセス全体を効率的に管理します。
設計データ(CAD)や技術仕様書などを一元的に管理し、設計変更の履歴や承認プロセスを可視化して修正や変更を削減するなど、開発期間を短縮させることが可能です。
設計部門と製造部門間の連携を強化し、早期の問題発見や設計の最適化も促進できるうえに、過去の設計資産の再利用を促進して標準化を進めて開発効率と製品品質の向上も促進できます。
部品表(BOM)管理
製造業におけるPLMの部品表(BOM)管理機能は、製品を構成する全ての部品や材料、数量に関する情報を一元的に管理します。
設計BOMや製造BOM、サービスBOMなど、製品ライフサイクルの各段階で必要となる異なる種類のBOMを統合的に管理し、設計変更に伴う迅速なBOMの更新も可能です。
このような細かな管理により、部品の手配ミスや在庫管理の不整合を防ぎ、製造効率の向上やコスト削減を実現します。
さらにBOM情報をほかのPLM機能やERPなどのシステムと連携し、サプライチェーン全体における情報共有を促進し、効率的な製品開発と生産体制も構築できます。
変更管理
製造業におけるPLMの変更管理機能は、製品ライフサイクル全体にわたる設計変更や製造プロセス変更、文書変更などを体系的に管理する仕組みです。
変更要求の提出や影響範囲の評価、承認ワークフローの設定や変更の実施と記録、関連部門への通知といった製造プロセス全体をデジタル化します。
この機能により変更による修正や手間を最小限に抑え、製品品質の維持やコスト抑制、および法規制も遵守できます。
さらに変更履歴を追跡してトレーサビリティを確保し、今後の問題発生時の原因究明や対策立案に役立てることも可能です。
ドキュメント管理
製造業におけるPLMのドキュメント管理機能とは、設計図面や技術仕様書、取扱説明書や品質管理文書、法規制関連文書など製品に関するあらゆる文書を一元的に保管・管理する機能です。
製造工程で使用される作業指示書や製造マニュアルなども対象となるため、正確な工程管理に大きく役立ちます。
ドキュメント管理機能は、バージョン管理やアクセス権限設定、検索機能などを備えて必要な情報を迅速かつ正確に共有することを可能にします。
このような機能により、部門間の情報共有の効率化や設計変更に伴う文書の整合性・製造履歴のトレーサビリティの確保、監査対応の迅速化など多岐にわたる管理が可能です。
ワークフロー管理
製造業におけるPLMのワークフロー管理機能は、製品開発や変更管理などのさまざまな業務プロセスを定義して自動化する機能です。
タスクの割り当てや承認ルートの設定、進捗状況の可視化などを通じて業務の標準化と効率化を図ります。
例えば設計変更の承認プロセスを自動化して関係者への迅速な情報共有と意思決定を促進し、変更に伴う工数増加の削減も可能です。
ワークフロー管理機能により各担当者のタスクと期限も明確になり、プロジェクト全体の進捗もスムーズになって遅延のリスクも低減します。
構成管理
製造業におけるPLMの構成管理機能は、部品や文書、ソフトウェアなど製品を構成する全ての要素間の関係性を明確にし、製品ライフサイクル全体を通してその整合性を維持する機能です。
製品のバージョンやバリアント(派生型)を正確に管理し、どの部品がどのバージョンに適用されるのかなどの情報を一元的に管理できます。
構成管理機能により、設計変更が製品全体に与える影響を正確に評価し、不具合の発生を未然に防ぐことも可能です。
製造や保守、サービスなどの後工程においても正確な製品構成情報を参照にして適切な作業を支援し、製品の品質と信頼性を高めます。
品質管理の連携
製造業におけるPLMの品質管理連携機能は、製品ライフサイクル全体で発生する品質情報をPLMシステムに統合し、設計や製造、保守などの各部門で共有して品質向上を図る機能です。
設計段階での不良予測やシミュレーション結果、製造段階での検査データや市場からの不具合報告などをPLM上で一元的に管理し、関連部門が早期に問題点を把握して対策を立案できます。
このような品質管理連携機能により不良の未然防止や歩留まりの向上、顧客満足度も向上させることも可能です。
サプライチェーンの連携
製造業におけるPLMのサプライチェーン連携機能は、製品ライフサイクル全体にわたる情報をサプライヤーやパートナー企業などの社内外の関係者と共有し、協調的な製品開発や調達、製造・生産体制を構築する機能です。
設計情報や部品表(BOM)、調達情報や品質情報などを共有することで、サプライヤーとの連携を強化して部品の早期調達やコスト削減、リードタイムの短縮や品質向上を図ります。
サプライチェーン全体での変更管理の円滑化によりリスクを低減し、PLMとサプライチェーンマネジメント(SCM)システムとの連携により、市場の変化に迅速に対応できる体制を構築することも可能です。
製造業のPLMにおすすめのソフト

これまでに紹介してきたように、製造業にPLMを導入すれば作業効率を向上させて生産性を高めることができますが、導入すべきソフトが明確にならない企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこでおすすめのソフトが高機能CADとPLMを一体化した、クラウド連携型高機能CADの決定版である「NX X」です。
高機能CADとPLMを一体化した「NX X」は、設計データと製品ライフサイクル全体に関わる情報、製造工程に必要な各種情報を単一の環境で直感的に管理できる次世代CADソリューションです。
NXがこれまでに培ってきた高いモデリング性能やデザイン性を保持したうえで、ジェネレーティブデザインやスカルプティングなどの最新技術も搭載した高精度なモデリングを実現しています。
API連携によるコマンドの統合やほかのソフトとの連携も可能なうえに、複数のアドオン製品をチームで共有できるトークン型のライセンス、「VBA」によりさまざまなオプション製品をシェアできるのもメリットです。
「NX X」はクラウド型のサービスで、Webに接続できればどこでもアクセス可能で、クラウド化によるセキュリティ対策も万全なので、PLMの導入を検討中であればぜひお試しください。
製造業におけるPLMのメリット
製造業におけるPLMの導入のメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 開発期間の短縮
- コスト削減
- 品質向上
製造業へのPLMの導入のメリットを把握し、自社に最適な導入方法を検討してください。
開発期間の短縮
製造業へのPLM導入により、製品情報の一元管理と部門間の連携強化が実現され、開発期間が短縮されるのもメリットです。
設計データや部品表の共有による修正の削減、設計変更や承認プロセスの迅速化など、導入により多岐にわたる製造の工期短縮が実現されます。
PLMの導入により、設計と製造の連携が強化されて早期の問題発見や製造性を考慮した設計も可能になり、最終的には開発期間の短縮につながります。
コスト削減
製造業にPLMを導入すれば、生産におけるコスト削減にもつながります。
PLMの導入により設計変更の効率化による修正が削減され、部品の共通化や標準化による部品コストの低減、不良発生の抑制による品質コストの削減、情報共有の円滑化による業務効率の向上など、相対的なコストを削減することも可能です。
PLMの導入による設計から製造までのリードタイム短縮により、間接コストの削減にもつながるなど、PLMによる製品ライフサイクル全体の最適化で生産ロスを削除し、企業の収益性向上に貢献します。
品質向上
PLMの導入によって製品に関するあらゆる情報を一元管理し、設計や製造、品質管理部門間の連携を強化して、製品品質を向上できるのもメリットの1つです。
PLMの機能による設計段階でのシミュレーションや解析の活用、過去の不具合情報の共有による未然防止、製造段階での品質データ収集と設計へのフィードバックなど、多様な機能が製品の信頼性と安全性を高めます。
PLMによる変更管理の厳格化により、設計変更の影響範囲を正確に把握して品質維持、向上につなげることも可能です。
製造業のPLMで生産性を高めよう
本記事では、製造業におけるPLMの概要や導入するメリットなどについて多岐に渡って解説しました。
製造業へのPLMの導入に成功すれば、生産における省人化や作業効率を向上させ、結果として自社の収益性も高めることもできます。
今後自社の生産にPLMの導入を検討中であれば、本記事を参考にして最適な導入に成功して生産性を高めてください。
