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光造形方式3Dプリンターとは?方式・仕組み・メリット&デメリット・おすすめ機種

近年、3Dプリンターは業務用から家庭用まで使用用途が広まりつつあります。その中でも、光造形方式によるモデルの造形について次のような声があります。「そもそも光造形方式3Dプリンターで何ができる?」「光造形方式3Dプリンターのメリットとデメリットは?」「業務用と家庭用でおすすめの機種はある?」

そこで今回は、光造形方式3Dプリンターのメリット・デメリットについて解説します。また、業務用と家庭用でおすすめの機種6選も紹介するので、参考にしてみてください。

光造形方式3Dプリンターとは

光造形方式

光造形方式3Dプリンターとは、「レジン」として知られている液状の樹脂に紫外線を照射することでモデルを造形する3Dプリンターです。

光造形方式は、世界でもっとも古い造形方式で、現在では業務用から家庭用まで誰にでも使えます。光造形方式3Dプリンターで造形できるものは、フィギュアやネイル、アクセサリーが挙げられます。

滑らかな表面のモデルを造形したいときに便利です。ここでは、造形するときの仕組みとFDM方式との違いも詳しく解説します。

仕組み

光造形方式は、SLA方式とDLP方式の2種類があります。

SLA方式では、レジンを入れたトレイの下からレーザービームを照射して1層ずつ造形します。

一方、DLP方式では、樹脂を紫外線で1層ずつ固めながら積層する方法です。造形するスピードは、DLP方式が早いため、短時間で複数同時に造形したい場合におすすめです。

造形するモデルは、事前にPCで3Dデータを作成します。3Dデータを元に現物として再現可能です。

また、造形する際に層の厚さを変えられるため、薄ければ高精度の造形が可能になり、厚ければ短時間で造形ができます。光造形方式では、レジン以外にも機種によっては金属やカーボンを材料として使えるため、造形できるモデルの幅が広い特徴があります。

FDM方式との違い

FDM方式とは、熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling)を指します。熱可塑性樹脂を熱で溶かしながら層を積み上げる方式です。

FDM方式のメリットは、強度と耐熱性に優れていることです。そのため、製造業の現場でも試作品として利用されています。

しかし、光造形方式と比べて、積層痕が残ることがデメリットです。FDM方式では、ノズルから材料を吐出しながら積層するため、段差が残る場合があります。強度が高いモデルを造形するならFDM方式がおすすめですが、滑らかな表面のモデルを造形するなら光造形方式が向いています。

光造形方式は2種類の出力方法がある

続いては、光造形方式の出力方法について解説していきましょう。

SLA方式

SLA方式とは、材料のレジンに紫外線を照射することで、1層ずつ積み上げながら造形する方法です。小さい点状の紫外線をレジンに当てるため、複雑で細かいデザインのモデルの造形に向いています。

あらかじめ3Dデータで作成したとおりに出力が可能なので、見た目を重視したい方におすすめの方式です。ただし、照射範囲が狭いため、印刷速度が若干遅く感じるでしょう。

DLP方式

DLP方式は、本体の下部から紫外線を照射してレジンを積層する方法です。点状の照射が特徴のSLA方式に対して、DLP方式では面状の紫外線を照射しながら造形します。

紫外線を照射する範囲が広いため、SLA方式に比べて印刷速度が速いというメリットがあります。しかし、造形範囲が広くなると解像度にズレが生じやすいことがデメリットです。

光造形方式3Dプリンターのメリット

光造形方式3Dプリンターのメリットには、次のようなものがあります。それぞれ一つずつ解説しましょう。

  • 滑らかな表面を造形できる
  • 高透明性のモデルを造形できる
  • 短時間で造形できる

滑らかな表面を造形できる

光造形方式のメリットの一つは、滑らかな表面のモデルを造形できる点です。FDM方式と比較すると、積層痕が目立ちにくいため、表面にこだわりたい場合におすすめです。

光造形方式では、新しく硬化する層とすでに硬化された層と結合するので、層の境目にズレをなくします。フィギュアや模型のように見た目重視したい場合は、光造形方式で造形すると良いでしょう。

高透明性のモデルを造形できる

光造形方式は、高透明性のモデルを造形する際に向いています。アクリル系樹脂に対応している機種であれば、透明度の高いモデルを再現できます。

造形後に研磨やコーティング作業が必要ですが、光造形方式でないとできないことです。実際に、高透明性が求められる自動車のライトやLEDライトの試作品の造形に活用されています。

ただし、経年劣化による色落ちが生じやすいため、透明性の維持が難しくなります。光造形方式は、モデルの内部構造を可視化したり、生産モデルの試作など一時的な使用用途で造形したりする際におすすめです。

短時間で造形できる

光造形方式は、他の造形方式と比べて造形するスピードが早いメリットがあります。

特にDLP方式では、1層ずつ確実に積層できるため、一度で複数の造形ができることから効率良く生産が可能です。さらに、SLA方式と比較して照射する範囲が広いため、機種によっては大きいサイズのモデルの造形ができます。

高精度のモデルを造形できる

光造形方式では、FDM方式のように材料が高温にならないため、熱収縮が生じにくいことから、高精度のモデルの造形に向いています。

ただし、下から照射するSLA方式の場合は、大型のモデルを造形している最中に落下する可能性があります。大型モデルを造形する場合は、機種が対応しているサイズの範囲を超えないように注意が必要です。

細部までこだわった高精度のモデルを造形するなら光造形方式を選びましょう。

光造形方式3Dプリンターのデメリット

光造形方式3Dプリンターのデメリットには、次のものがあります。それぞれ詳しく解説していきます。

  • サポート材を除去した跡が残る
  • 経年劣化で色が変化する
  • 造形物によって後処理が必要

サポート材を除去した跡が残る

光造形3Dプリンターのデメリットの一つは、造形時にモデルを支えるサポート材の除去した跡が残ることです。

光造形方式では、モデルを吊り下げながら造形するため、形状によってはサポート材がなければきれいに仕上がりません。また、サポート材が不足するとトレイの中のレジンに張り付いてしまいます。

造形後は、サポート材を除去する作業が必要ですが、どうしても除去した跡が残ります。除去したサポート材は、不要になるため、捨てなければなりません。サポート材の造形に材料を多く消費してしまう点もデメリットの一つです。

経年劣化で色が変化する

光造形方式では、経年劣化による色の変化が生じます。モデルの造形後は、永続的に色を維持することが難しいため、一時的に使用する場合に向いています。

さらに、紫外線で硬化する樹脂を使用するため、太陽光に晒すと変形する特性を理解しなければなりません。モデルの完成後は、変形を防ぐために太陽光が当たらない場所で保管する必要があります。長時間、屋外でモデルを展示する場合は色や形の変化に注意しましょう。

造形物によって後処理が必要

光造形方式で造形したモデルは、サポート材の除去と洗浄など後処理が必要です。特に、洗浄はしっかり行わなければ余分な材料の跡が残った状態になります。

会社や家庭で洗浄する場合は、地域の自治体に従って適切な処理が必要です。洗浄する際は、水やアルコールを使用しますが、除去したレジンを下水に流せない可能性があります。

光造形方式は他の造形方式とは異なり、後処理が発生するため、時間とコストがかかるデメリットがあります。

カップ形状が苦手

光造形方式3Dプリンターは、高精度のモデルの造形ができる反面、カップ形状が苦手です。一般的に、ドリンクを入れる際に使用するカップ形状は、ゆがみが発生しやすくなります。

3Dプリンターで造形すると、レジンがカップに浸かるため、空気圧によっては変形してしまいます。層が薄ければ変形しやすいですが、厚くすることで変形を最小限に抑えられるでしょう。

カップ形状を造形する場合は、モデルに小さい穴を空けることで空気圧を分散できるため、きれいに仕上がります。また、造形する際に斜めに向けると空気圧が解消されるため、滑らかな表面ができますが、サポート材の処理が大変です。

おすすめの光造形方式3Dプリンター:家庭用

ここからは、おすすめの光造形方式3Dプリンターを紹介してきます。まずは、家庭用でおすすめの光造形方式3Dプリンターを紹介します。

ノーベル 1.0A

ノーベル 1.0A

画像引用元:Febmart

ノーベル1.0Aは、光造形方式の中でも安価で手に入れられる家庭用の3Dプリンターとして人気です。複雑で細かいデザインのモデルに対応しているため、高精度で印刷速度が速い特徴があります。

本体に印刷速度とレジンの残量が表示されるため、印刷中の状況を一目でわかります。ノーベル1.0Aでは、基本的に光硬化樹脂やフレキシブルレジン、キャスタブルレジンを使用できるため、ゴムのような柔軟性や滑らかさを持つ造形が可能です。

また、レジンの自動充填やサポート材の有無を自動分析ができるため、複雑な操作は不要です。

Foto8.9

Foto8.9s

画像引用元:Fabmart

Foto8.9は、特許取得済みの光源を利用したミクロン単位の印刷ができる光造形方式3Dプリンターです。開発元のFLASHFORGEの自社工場で消耗品や部品を生産しているため、必要なときに安定的な供給が可能です。

また、高解像度の4Kモノスクリーンでは、モデルのデザインの細部まで復元できるため、高精細な印刷が可能です。一般的なカラースクリーンと比べて約2,000時間の寿命と耐久性を誇ります。

Foto8.9では、スタンダードやABSライクなどのレジンに対応しているため、幅広い材料を使用できます。緻密さが求められるフィギュアや模型を造形したい場合に適しているので、趣味で光造形を始めたい方におすすめです。

Foto8.9s

Foto8.9s

画像引用元:Fabmart

Foto8.9sは、前機種のFoto8.9よりも造形の安定性が向上したことで、高解像度のモデルの造形が可能です。安定したZ軸操作と積層痕を目立たせない表面の仕上げを実現しています。

開発元であるFLASHFORGEの工学システムにより、均等なUVランプを照射ができるため、ムラを10%以下に抑えられます。また、Foto8.9には搭載されていなかったWi-Fi接続が追加されたため、電波が届く範囲であれば離れていても使用可能です。

家庭用に限らず、業務用としても利用できるため、本格的にモデルの造形をしたい場合におすすめの機種です。

おすすめの光造形方式3Dプリンター:業務用

続いては、業務用におすすめの光造形方式3Dプリンターを紹介していきます。

Foto13.3

Foto13.3

画像引用元:Fabmart

Foto13.3は、「Foto」シリーズのなかでもっとも大型造形ができる光造形方式3Dプリンターです。従来、光造形方式は大型造形に向いていないとされてきましたが、Foto13.3では幅292mm、奥行165mm、高さ400mmまでの造形が可能になりました。

LCD(液晶)パネルには、高解像度を持つ4Kモノクロパネルを搭載しているため、高精密な印刷が可能です。また、造形時のモデルとプラットフォームの付着力を高める加工が施されているため、印刷時の落下を防止できます。

印刷する前に専用のソフトを使えば、日本語対応の仮想シミュレーションを確認できるので、造形後のイメージを確認するときに便利です。Foto13.3は、大型の試作品の造形におすすめです。

Hunter

Hunter

画像引用元:Fabmart

Hunterは、造形のサイズや数にかかわらず、印刷速度が速いため、業務用として使うときに便利です。また、DLP方式として知られている一括面露光型の3Dプリンターなので、面積の広い造形物に適しています。

ミクロン単位のプリントレイヤーによる出力で、精密さが求められるモデルときれいな表面を造形できます。また、Hunterの造形台は吊り上げ式なので、トレイに入れるレジンの量を抑えられることから毎回満タンにする必要がありません。

一度に複数のモデルを造形したいときにも活用できるため、1台あれば時間とコストの節約が可能です。3Dプリンターを使い慣れていない方でも簡単に操作できるため、すぐに造形を始められます。

Form3+

Form3+

画像引用元:Febmart

Form3+は、レーザービームを利用したスポット照射による高精度の仕上がりを実現できる光造形方式3Dプリンターです。

従来の3Dプリンターでは、精度にバラつきが生じていましたが、安定性に優れたレーザービームで高品質の造形が行われます。Form3+独自の機能により、造形物に対して移動式ユニットによる垂直照射が特徴です。

ユニットは取り外しが可能であるため、いつでもメンテナンスが可能です。また、除去しやすいサポート構造を採用しているので、後処理に時間をかけずに済みます。

Form3+は、造形物の表面の質感を重視したい方におすすめです。

光造形方式3Dプリンターを選ぶときのポイント

最後に、光造形方式3Dプリンターを選ぶときのポイントを紹介しましょう。主なポイントは次のとおりです。

  • 作りたい造形物の大きさで選ぶ
  • 使用用途で選ぶ
  • 性能と価格で選ぶ

作りたい造形物の大きさで選ぶ

光造形方式3Dプリンターを選ぶ前に、作りたい造形物の大きさを決めると選びやすくなります。

機種によって造形できるサイズが異なるため、決められた最大サイズを超えての造形は不可能です。また、造形する数や使用用途によっては、材料の消費が多くなるため、予算と照らし合わせながら決める必要があります。

しかし、安すぎる機種を選ぶとサイズが小さいモデルの造形に制限される可能性があります。将来的に造形したいモデルのサイズまで想定しておくと、選ぶときに失敗しないでしょう。

使用用途で選ぶ

光造形方式3Dプリンターでは、質感が滑らかな表面のモデルを造形できるため、フィギュアや模型におすすめです。材料のレジンには、性質の異なるタイプが複数存在するため、完成後の質感や見た目も変わります。造形したいモデルに適したレジンを選ぶことも大切です。

高価な機種を購入したとしても使いこなせなかったり、後から思っていた完成形とは違うといったことになったりしないように、使用用途を明確に決めておくと良いでしょう。

性能と価格で選ぶ

光造形方式3Dプリンターは、大きく「家庭用」と「業務用」に分けられますが、価格のみで選ばずに、性能まで理解したうえで機種を選ぶと良いでしょう。

使用用途によっては、決して高価な機種で想像通りのモデルを造形できるとは限りません。しかし、安価な機種を選ぶと欲しい性能がない可能性も少なくはないため、完成形を想像しながら決めることをおすすめします。

性能では、特に印刷サイズ、積層ピッチ、使用素材の確認とランニングコストを視野に入れて検討しましょう。

まとめ

光造形方式3Dプリンターのメリットとデメリット、業務用と家庭用でおすすめの機種を紹介しました。

光造形方式は、滑らかな表面のモデルを造形したいときに便利です。機種を選ぶ際は、使用用途を明確にしてから検討すると選びやすくなります。

最近では、安価で高性能の光造形方式3Dプリンターも登場しているため、性能と価格を比較すると良いでしょう。機種の購入後は、簡単な造形から挑戦してみてください。

光造形3Dプリンター
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