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【2024】Nastranとは?価格・解析機能・使い方を解説

製品開発の上流工程は、生産において非常に重要な工程であるため、高精度の解析が求められます。しかし、膨大なコストと時間がかかることから、業務改善を検討されている企業も多いでしょう。

設計の段階から精度の高い解析ができれば、試作回数を減らせる可能性があります。今回は、世界的なシェアを誇るNastran(ナストラン)の機能から導入するメリットまで解説します。

Nastran(ナストラン)とは?

Nastran

Nastran(ナストラン)とは、NASAで開発されたプログラムをもとに汎用として改良した構造解析ソフトウェアです。主に航空宇宙や自動車の分野で広く活用されているため、高い信頼性と実績を持ちます。

有限要素法による解析機能を使用することで、複雑な形状や性質の挙動の予測が可能です。Nastranの基本モジュールには、線形静解析や非線形解析、熱伝導解析など必要な機能が搭載されています。

推奨スペック

実際にNastranを使用する場合は、一定のPCスペックが必要になります。Nastranの種類によって、若干の違いがあるため、それぞれ自社のPCと照らし合わせて確認しましょう。

MSC Nastranの推奨スペック

OS Windows 10

Linux RedHat 7.7 / 7.5 / 7.3

Linux SUSE 12

CPU Intelプロセッサーおよび互換機
メモリー 1GB以上
HDD 250GB以上

Autodesk Nastranの推奨スペック

OS Windows 10
CPU RedHat、CentOS 7、7+、glibc 2.17、 2.17+

libstdc++/compat-libstdc++ 5.3.1、 5.3.1+

メモリー 8GB
HDD 250GB以上

NX Nastranの推奨スペック

OS Windows 7 64-bit

Windows 8.x、Windows 8.x Pro 64-bit

Windows 10.x 64-bit

CPU Intel x 86互換64bit CPU (Intel 64, AMD 64)
メモリー 8GB
HDD 500GB以上

価格

Nastaranの価格は、ソフトウェアの種類や機能によって異なるため、開発元や国内の代理店へ問い合わせる必要があります。一部のNastranの価格は、企業の公式サイトで公表されているので、下記の価格表を参考にしてみてください。

Autodesk Inventor Nastranの価格

3年契約 1,367,300円(税込)
1年契約 479,600円(税込)
1ヶ月契約 60,500円(税込)

フリーで使える?

Nastranのリリースを行う企業の中には、体験版を用意している場合があります。正式に導入する前から体験できるため、比較検討したいときにおすすめです。

以下のNastranでは、無料体験が可能です。それぞれ必要事項を入力とダウンロードして入手しましょう。

Nastranで何ができる?

幅広い分野で使用されているNastranでは、次のようなことが可能です。

  • 複数の構造解析ができる
  • 独自のアルゴリズムで設計の最適化を図れる
  • 解析にかかる時間を短縮できる

それぞれ詳しく解説します。

複数の構造解析ができる

Nastranでは、複数の構造解析を得意としているため、一つのソリューションで製造における問題を解決します。線形・非線形領域における動的や静的の解析に使用されるケースが多く、高度な解析機能による作業の時間短縮が可能です。

また、一つのプラットフォームで疲労解析や挙動の評価ができるため、再現が難しい環境条件から必要な解析結果を得られます。

独自のアルゴリズムで設計の最適化を図れる

Nastranの有限要素解析では、独自のアルゴリズムを統合することで、設計の最適化を実現します。

従来の有限要素解析では、膨大な時間とコストがかかるため、迅速かつ高精度の解析機能が必要です。Nastranは、航空機や自動車などの大規模なシステム解析を得意とするため、技術者の負担軽減と作業時間の短縮につながります。

解析にかかる時間を短縮できる

Nastranのスーパーエレメント機能を活用すれば、大規模なモデルを分割して解析するため、計算負荷の軽減による時間短縮を実現できます。

従来の解析機能では、一度にモデル全体を計算するため、結果が出るまでに一定の時間が必要です。一つのモデルを全体的に解析するよりも、Nastranで計算時間を大幅に短縮できるため、効率的な解析が可能です。

Nastranの主な解析機能・使い方

Nastranには、次の解析機能が備えられています。

  • 線形解析機能
  • 非線形解析機能
  • 動解析機能
  • 熱伝導解析機能
  • 疲労解析機能
  • 陽解法解析機能

それぞれの機能と使い方について紹介しましょう。

線形解析機能

線形解析機能は、次のようなケースで使用します。

  • ガラスやFRPなど弾力材料の実現象を予測したい場合
  • 解析結果の値が比例関係にあることを仮定して解析したい場合

線形解析では、線形材料として使われるガラスや繊維強化プラスチックで物理現象を想定した解析を行います。

具体的には、荷重をかけたときの力と変形の比例関係を仮定して解析することで、モデルの強度や剛性の評価が可能です。一度計算するだけで、つり合いの確認ができるメリットがあります。

非線形解析機能

非線形解析機能は、次のようなケースで使用します。

  • 過去に解析したモデルを再処理・データとして残したい場合
  • 塑性・クリープ・超弾性などの非線形材料を解析したい場合

非線形解析では、実現象を想定して非線形材料のひずみや応力を解析します。過去に解析した結果からプログラムの再処理と保管ができるため、解析データの管理が便利です。

また、非線形材料に生じる問題の原因や性質を実現象と照らし合わせて正確に解析できます。

動解析機能

動解析機能は、次のようなケースで使用します。

  • 時間の経過とともに変動する現象を解析したい場合
  • 荷重で生じる応力やひずみなどの現象を検証したい場合

動解析では、モデルの位置や速度のバランスが取れている状態で、時間と現象の解析が可能です。連続する変動で生じる動的荷重を検証することで、応力やひずみ、共振現象との関係性を可視化できます。

逆に、静的荷重に対する解析機能もNastranに含まれているため、必要に応じて活用しましょう。

熱伝導解析機能

熱伝導解析機能は、次のようなケースで使用します。

  • 時間に依存していない状態の温度分布を求めたい場合
  • 温度が時間に依存している状態の温度分布を求めたい場合

Nastranの熱伝導解析方法には、定常熱伝導解析と非定常熱伝導解析の2種類があります。定常伝導解析では、時間に依存せずに熱の流入や内部の温度勾配を解析します。一方で、非定常熱伝導解析では、時間に依存した温度分布を条件設定して応力の算出が可能です。

疲労解析機能

疲労解析機能は、次のようなケースで使用します。

  • 静的な応力解析では予測できない疲労を解析したい場合
  • 応力と疲労解析のプロセスを統合したい場合

Nastranの疲労解析では、連続する荷重において生じる疲労破壊を予測できるため、通常の応力評価では検証できない解析が可能です。

従来の応力と疲労の解析は、別個で行われていましたが、2つのプロセスをNastranで統合することで中間ファイルを削減できます。応力と疲労の統合は、軽量化部品の最適化に役立ちます。

陽解法解析機能

陽解法解析機能は、以下のようなケースで使用します。

  • 非線形で生じる動的問題に対応できる解析がしたい場合
  • 現状の運動方程式を直接的に解決したい場合

陽解法解析では、衝撃による荷重や複数の面が接触する非線形性が強い動的問題の解析が可能です。材料物性とメッシュの大きさから自動的に計算できるため、収束が難しい非線形の問題への対処が容易になります。陽解法解析を活用すれば、計算時間の短縮や解析精度の向上が期待できるでしょう。

Nastranを導入するメリット

Nastranを導入するメリットは、主に次のとおりです。

  • 製品価値の改善ができる
  • 市場投入までの時間を早められる
  • 物理的な試作を削減できる

それぞれ具体的に解説していきましょう。

製品価値の改善ができる

Nastranを導入することで、精度の高い解析による品質の担保により、製品価値の改善が期待できます。Nastranの線形解析機能を活用すれば、自動計算が行われるため、短時間で正確な解析が可能です。動的・静的問題を洗い出すことで、課題の発見と解決ができるため、製品価値の向上に役立つでしょう。

市場投入までの時間を早められる

Nastranの機能を活用することで、業務プロセスの改善が可能であるため、市場投入までの時間を短縮できます。

独自のアルゴリズムを用いた自動計算により、作業工数を大幅に削減できます。実現象をシステムで再現することで、モデルへの荷重や変化の検証が行われるので、設計における問題点の解消が期待できるでしょう。

物理的な試作を削減できる

Nastranは、設計の段階から高精度の解析を繰り返すことで、試作回数を削減できるメリットがあります。

高度な線形解析や熱伝導解析により、起こりうる問題を明確にできるため、不要なコストと時間の節約が可能です。複数の解析を得意としているので、従来の設計プロセスにおける工数を低減します。

Nastranをベースとした他社製品の特徴

NASAが開発したNastranの機能をベースに、複数の他社が次の製品を開発しています。

  • MSC Nastran
  • NX Nastran
  • Autodesk Inventor Nastran

代表的な製品の特徴について紹介していきましょう。

MSC Nastran

MSC Nastranは、MSCソフトウェア社が開発したオリジナルのソフトウェアです。MSC Nastranの特徴は、次のとおりです。

  • 複数のベンダーによる構造解析プログラムへの依存を削減できる
  • 従来の疲労解析に費やす時間を大幅に短縮できる

NASAで開発されたプログラムを最初に用いたことで知られています。一つのプラットフォームで線形解析や非線形解析を実行できるため、複数の構造解析プログラムへの依存を削減できます。また、独自の疲労解析技術により、通常の疲労寿命の測定の時間短縮が可能です。

NX Nastran

NX Nastranは、シーメンス社が開発と管理を行うソフトウェアです。NX Nastranの特徴は次のとおりです。

  • 物理的な検証を行う前に設計の問題点を見つけられる
  • 開発コストの削減と製品の品質の向上ができる

NX Nastranは、有限要素解析で高度なシミュレーションが可能であるため、試作機による物理的なテストを有効にできます。

具体的には、試作を行う前に実現象と近い解析ができるため、設計の段階で問題点を解消します。解析機能を活用すれば、膨大な開発コストをかけずに短期間で高度な解析により、短期間で高品質の製品開発が可能です。

Autodesk Inventor Nastran

Autodesk Inventor Nastranは、オートデスク社が開発したソフトウェアです。Autodesk Inventor Nastranの特徴は次のとおりです。

  • 連続する荷重における影響の解析で保証問題を低減できる
  • 早期に解析を繰り返すことで市場投入までの時間を短縮できる

Autodesk Inventor Nastranの解析機能にて、線形材料の静的応力と疲労解析を行うことで、継続的な荷重による影響を把握できます。結果的に、製品の品質保証における問題を減らせるメリットがあります。設計の段階で頻繁に解析を行えば、試作回数を削減できるため、時間とコストの節約が可能です。

まとめ

Nastran(ナストラン)の機能や導入するメリットについて解説しました。Nastranの導入は、次のようなケースで検討すると良いでしょう。

  • 試作の前に高精度な解析で効率良く業務を進めたい場合
  • 開発コストと時間を大幅に減らしたい場合
  • 有限要素解析で自在に荷重の条件を変えながら解析したい場合

Nastranの解析機能を活用すれば、上記の課題解決に役立ちます。

Nastranは、世界的に航空宇宙や自動車の分野で多くの実績を出していることから、信頼性の高い解析ソフトウェアとして導入するメリットは大きいでしょう。大型から精密なモデルまで対応しているため、解析技術の幅を広げられる可能性があります。

今後、Nastranの導入を検討している場合は、自社の課題を明確にして無料体験版を活用しながら決めると良いでしょう。

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