ChatGPTの「Deep Research」にも採用された画期的技術・MCP。そのMCPの核をなす技術がMCPサーバーです。
MCPは、製造業や金融など多彩な業界で活用されていますが、「MCPサーバーはどんな役割?」「そもそもMCPとは何?」という方もいるでしょう。
この記事では、MCPサーバーについてわかりやすく解説します。MCPサーバーの仕組みやChatGPTでの活用例、おすすめのMCPサーバーも紹介するので、AI活用を検討している企業の担当者の方はぜひ参考にしてください。
MCPとは?

MCP(Model Context Protocol)は、Anthropicが2024年11月に公開した、AIと企業の内部システムを安全に連携させるための新しい通信規格です。
これまでAIは、Web上の公開情報しか扱えないことがほとんどでした。
しかし、MCPを使えば、業務システムやファイル、データベースといった社内データも、AIが効率的に利用できるようになります。
昨今、Google、OpenAI、Microsoftといった競合関係にある大手テック企業が、このMCPの技術を一斉に採用しはじめました。
普段は足並みが揃いにくい企業がMCP導入に踏み切ったという事実は、MCPがそれだけのインパクトを持つ重要な技術であることを示唆しているといえるでしょう。
ChatGPTのMCP活用

2024年6月、OpenAIはChatGPTでMCPに正式対応しました。これにより、ChatGPTでは以下のような活用が可能となっています。
- 社内文書や資料をまとめて検索
- 過去の報告書から必要なデータを素早く抽出
- Deep Research機能により詳細な分析や調査が可能
- OutlookやTeamsと連携して情報を一元的に取り扱い
- Google Drive上の資料も検索対象に含めることが可能
- 社内の業務システムと独自に接続して使用
- AIが複数の資料を横断して要約や比較を実施
例えば、社員はチャットで「最新の売上データを教えて」などと入力するだけで、必要な情報をすぐに引き出せます。
セキュリティと注意点
ただし、OpenAIは、独自に構築したMCPサーバーは事前に検証されていないため、利用には注意を促しています。
例えば、不正な指示による「プロンプトインジェクション攻撃」や、内部情報の漏洩リスクを防ぐため、信頼性が確認できないサーバーへの接続は避けることが推奨されています。
MCPについては、以下の記事で解説していますので、ぜひご一読ください。
初心者向けのわかりやすい内容で、生成AIとの関連性も詳しくお伝えしています。
MCPサーバーの仕組み

MCPサーバーとは、前述したMCPを実際に動かすソフトウェアです。
MCPサーバーは、AIからのリクエストを受け取り、外部のWebサービス、データベース、ファイルシステムといった多様なデータソースと連携し、必要な情報の取得や操作を実行します。
上記の図は、AIが外部データを利用する際の一連の流れを視覚的に示しています。ここでは、この図を参照しながら解説しましょう。
- AIからのリクエスト送信
- MCPサーバーによる処理
- 外部システムとの連携
- 結果の返却
①AIからのリクエスト送信
まず、AIがユーザーの指示を受けて、MCPサーバーにリクエストを送信します。この段階では、AIはユーザーの要求を自然な言葉で表現し、それをMCPサーバーに送ります。
指示の具体例
- 「社内のデータベースから最新の売上データを探して」
- 「先月の営業チームの成績をまとめてグラフ化して」
- 「特定商品の在庫状況を確認して」
②MCPサーバーによる処理
リクエストを受け取ったMCPサーバーは、AIの要求内容に応じて適切なシステムを選びます。そして、必要なデータを取得し、指定された操作を自動で実行します。
MCPサーバーによる処理の具体例
- 売上データを探してほしい→「社内の売上データベース」にアクセス
- グラフ化してほしい→「Power BIやスプレッドシート」にアクセス
- 在庫確認をしてほしい→「倉庫管理システム」にアクセス
③外部システムとの連携
上記②の処理の中で、MCPサーバーは外部システムとの連携を行います。MCPサーバーはこれらのシステムと直接やり取りを行い、AIの指示通りに必要な情報をまとめます。
MCPサーバーが連携する外部システム例
- Webサービス(クラウド上の販売管理ツールから最新データを取得)
- データベース(社内の顧客管理DBから特定顧客の履歴を抽出)
- ファイルシステム(社内共有フォルダにある報告書やエクセルファイルを読み込む)
④結果の返却
最後に、外部システムから取得した情報を整理し、AIが理解できる形式で返却します。これにより、AIは企業内のデータを活用した、より正確で詳細な回答をユーザーに提示できるようになります。
具体例
- 売上データを表形式に整えてAIに渡す
- グラフ化した結果を画像ファイルとしてAIに返す
- 在庫情報を簡潔な文章でまとめてAIに報告
このように、MCPサーバーはAIと企業が持つ多様なデータを安全かつ効率的に連携させる、まさに中核的な役割を果たしています。
MCPの連携について詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。身近な具体例を挙げて初心者向けにわかりやすく解説しています。
MCPサーバーの業種・業務別の活用例

続いて、業種・業務別のMCBサーバーの活用例を見てみましょう。
- 製造業における設計・開発プロセスの効率化
- 営業・マーケティング業務の自動化
- Webサイト制作・開発における生産性向上
①製造業における設計・開発プロセスの効率化
製造業の設計・開発分野では、AIがMCPサーバーを介してCADやPDMと連携することで、業務効率化・品質向上を実現しています。
例えば、AIに「この部品の設計図面を基に、強度解析シミュレーションを実施して」と依頼すると、以下の作業が自動で行われます。
- MCPサーバーが自動でCADファイルにアクセスし、解析ソフトを起動
- AIが解析結果を基に設計上の問題点を特定
- さらに修正案を提示
このように、AIとMCPサーバーの連携は、繰り返し行うシミュレーションやデータ管理の手間から解放され、製造業におけるDX推進に大きく貢献します。
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②営業・マーケティング業務の自動化
MCPサーバーは、営業やマーケティング部門の定型業務を自動化する業務改善アプリの構築に役立ちます。
例えば、ユーザーがAIに「先週の営業進捗レポートを作成し、結果をSlackに投稿してほしい」と依頼するだけで、以下の一連の作業が自動で完了します。
- MCPサーバーを経由して社内のデータベースにアクセスし、関連データを取得
- 取得したデータを基にレポートを自動生成
- 生成されたレポートを、MCPサーバーを通じてSlackに自動投稿
このように、ユーザーは自然言語で指示を出すだけで、AIが複数のツールを連携させて複雑なタスクをこなすため、手作業を大幅に削減できます。
③Webサイト制作・開発における生産性向上
MCPサーバーは、WebサイトやWebアプリ開発効率化に貢献します。
例えば、開発中にAIに「このサイトのバグを見つけて修正してほしい」と依頼すると、以下のプロセスが自動で実行されます。
- AIはMCPサーバーを経由してヘッドレスブラウザ(画面を持たないブラウザ)を起動
- サイト内をナビゲートしながらエラーや表示の不具合を検知
- 不具合を特定した後は、関連コードの修正案を自動で作成・反映
このように、開発者向けAIアシスタントの機能を向上させ、生産性を大きく向上させます。
MCPサーバーの実装例

MCPサーバーは、企業の業務システムとの連携だけでなく、簡単なツールとして自作することも可能です。PythonやTypeScript向けのSDKを使えば、比較的スムーズに進められます。
2つの数字を足し算するMCPサーバーの実装方法
ここでは、具体的な実装例として「ユーザーが入力した2つの数字を足し算するMCPサーバー」を取り上げ、その3ステップを見ていきましょう。
- ツールの名前(例:calculate_sum)を定義する
- どんな機能を持つのかを説明文として記述する
- 入力と出力の形式を JSON Schema で指定する
このサーバーをClaude DesktopのようなAIホストに登録すると、AIはユーザーから「10と20を足して」と依頼された際に、「計算ツールを呼び出せば早い」と判断し、自動的にcalculate_sumを実行して結果を返します。
Pythonでの実装例
from mcp.server import Tool, Server
from pydantic import BaseModelclass SumInput(BaseModel):
a: int
b: intserver = Server(“Example MCP Server”)
@server.tool(“calculate_sum”, description=”二つの数値を足し算するツール”)
def calculate_sum(data: SumInput) -> dict:
return {“result”: data.a + data.b}server.run()
このように、ツール名・説明・入出力を定義するだけで、AIはcalculate_sumを自動で呼び出して計算できるようになります。
おすすめMCPサーバー7選
現在、公式やコミュニティから多彩なMCPサーバーが提供されています。
ここでは特に注目度の高い7種類をピックアップし、それぞれの特徴を簡潔にまとめました。
| サーバー名 | 特徴 | 活用例 |
| Desktop Commander |
|
|
| GitHub(公式) |
|
リサーチやIssue管理の自動化 |
| Git |
|
コード生成から編集までの一連の作業効率化 |
| Context7 |
|
最新ドキュメントを参照しながらのコード生成 |
| Notion |
|
プロジェクト情報の整理・更新を効率化 |
| Playwright |
|
Webアプリの検証や自動テスト |
| Sequential Thinking |
|
マルチステップの開発タスクで活用 |
なお、GitHubは、MCPの開発元であるAnthropicの公式提供サーバーです。
GitHubは、2025年4月4日にパブリックプレビューとしてローカル版GitHub MCPサーバーを公開し、Anthropicと共同でリファレンスサーバーを書き直し、利便性を大きく向上させています。
MCPサーバーについてまとめ
ChatGPTやClaudeなどの生成AIは、MCPサーバーを組み合わせることで外部ツールとの連携や企業内データを活用できるようになります。
すでに公式・コミュニティから多彩なMCPサーバーが公開されているため、まずは簡単な実装例やGitHub公式サーバーから試してみてはいかがでしょうか。