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コイワイが金属3Dプリンター技術の向上を狙う!宇宙事業への活用や将来性を解説

鋳物技術を活用し、技術的なプロジェクトに数多く参画している株式会社コイワイが、新たに金属3Dプリンター技術を向上を宇宙事業に活用すると発表しました。コイワイは、金属3Dプリンターを活用してどのように貢献するのでしょうか。

今回はコイワイが導入している金属3Dプリンターの宇宙事業活用のニュースをもとに、企業情報や事業内容、3Dプリンターを活用した事業事例を詳しく深掘りします。金属3Dプリンターを使った新技術情報も解説しているので、金属3Dプリンターの最新動向を知る参考にしてください。

コイワイが金属3Dプリンターの技術を宇宙事業に展開

鋳物(金属などの液体を流し込んで固めるための型)の製造を提供している株式会社コイワイ(以下、コイワイ)が、所有する金属3Dプリンター技術を活用した事業展開に向けて準備をスタートしました。

従来、コイワイは自動車メーカー向けの鋳物試作を手掛ける企業ですが、新たに宇宙事業へと進出する予定です。

宇宙事業では、精密かつ耐久性に優れる金属製品の製造が欠かせません。
コイワイは宇宙事業でも活用できる製品製造に取り組むため、自社導入している金属3Dプリンターの技術向上を目指して、将来の宇宙関連市場への参入に備えだしました。

コイワイが宇宙事業に乗り出した背景

自動車メーカーを対象にサービスを提供しているコイワイが新しく宇宙事業への参画に動き出したのは、スウェーデンの3Dプリンター事業を展開する「アーカム」の金属3Dプリンターを導入したのがきっかけです。

当初、金属3Dプリンターは、以下に示すコイワイの社長コメントの通り、自社で提供している鋳物試作の効率化を図るために導入されました。

設備導入の狙いは、鋳物を扱う現場の労働環境の改善を想定したもので、小岩井社長は「鋳物を金属プリンターの技術に置き換えたかった」と語る。

引用:ニュースイッチ「宇宙事業を新たな柱に…コイワイ、金属3Dプリンターで技術に磨きかける」

しかし後から、欧州の宇宙事業で同じ金属3Dプリンターが活用されていると聞き、偶然に近い理由からコイワイによる宇宙事業への参画がスタートしました。実際にJAXA(宇宙航空研究開発機構)から依頼を受けるなど、コイワイは徐々に金属3Dプリンターの技術を向上させています。

コイワイの事業概要

コイワイは「型にはまらない鋳物」というキャッチフレーズのもと、職人による鋳物製造、3DCADといった制作ソフトウェアを活用しながら鋳物製造を提供している企業です。

主に自動車メーカーを対象とした鋳物製造を手掛けており、長い歴史と技術継承により、コイワイでしかつくれない高精密な複雑な鋳物を製造しています。

企業名 株式会社コイワイ
創立年 1973年4月1日
資本金 3,500万円
従業員数 110名

コイワイが導入した金属3Dプリンターとは?

コイワイが導入した金属3Dプリンター

コイワイが導入した金属3Dプリンターは、スウェーデンで3Dプリンターの機器製造を提供する「アーカム社」の製品です。

その名のとおり金属材料を3Dプリントができる精密機器であり、ステンレス鋼や銅、チタン合金などを設計したデータのとおりに造形してくれます。

一般的な樹脂材料の3Dprinterとは違い本体価格が高額ですが、その分超精密な造形にも対応できるのが金属3Dプリンターの魅力です。従来人の手でつくられていた鋳物を自動で製造できることから、コイワイでは鋳物製造を完全に金属3Dプリンターに置き換える目的で導入されました。

また3Dプリンターの概要を詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
おすすめの3Dプリンター情報を紹介しています。

3Dプリンターとは?基礎知識とおすすめ3Dプリンターを紹介

コイワイが提供する金属3Dプリンターの活用事例

コイワイはすでに金属3Dプリンターを活用して、複数の依頼に対応しています。
参考として、金属3Dプリンターを活用した事業事例を整理しました。

月面着陸に利用する衝撃吸収材の開発

コイワイは金属3Dプリンターを導入してすぐに、JAXA(宇宙航空研究開発機構)から、宇宙探査機の月面着陸時に利用する衝撃吸収材の開発を依頼されました。

衝撃吸収材はスポンジ状の柔らかい構造、そして衝撃から機体を守る強度が必要です。
そこでコイワイは軽量かつ高強度のアルミニウムや鉄を活用した鋳物製品の製造に乗り出しました。

実際にコイワイが導入した金属3Dプリンターにより開発された鋳物は、月着陸実証機「スリム」に実装されています。

高付加価値ブレーキキャリパーの製造

コイワイは自動車業界のアフターマーケット(交換部品等)の市場参入を目的に、金属3Dプリンターを用いて自動車用のブレーキキャリパーの製造に対応しました。

ブレーキの利きを調整してくれる重要なパーツであり、複雑な形状をしていることから、人の手で製造するためには長い経験が欠かせません。対してコイワイが導入した金属3Dプリンターがあれば、緻密な形状とデザインを自動で製造できます。

空洞を設けた精密デザインをまとめて製造できることはもちろん、コイワイのロゴを載せるなどオリジナリティのある製品を製造できるのが金属3Dプリンターの魅力です。

コイワイの金属3Dプリンターに期待されること

金属3Dプリンターに期待されること

コイワイが新たに導入した金属3Dプリンターは、鋳物製造を大きく変えるツールとして期待が寄せられています。参考として、金属3Dプリンターの魅力を3つ紹介します。

人手不足の解消

コイワイが導入した金属3Dプリンターは、少子高齢化の影響で減り続ける技術者の補填に役立ちます。

従来、製造の工程はすべて人が作業しなければなりませんでした。
対して金属3Dプリンターがあれば、製造作業が減り、ひとりあたりの作業負担を削減しやすくなるのが魅力です。

また、金属3Dプリンターがあれば、人手不足に伴う技術継承の問題が発生しにくくなります。
経験と技術力が必要な部分を機械に置き換えられることから、少子高齢化の状況でも人手不足倒産が起きない状況を構築できるのが魅力です。

製造業務の効率化

コイワイが導入した金属3Dプリンターがあれば、製造業務の効率化を図りやすくなります。

例えば、時間がかかる製造業務について、モデル設計以降の作業を3Dプリンターに任せられるのが魅力です。鋳物系の製造には1製品あたりの制作時間が長いことから、どうしても製造数に限界がありました。

対してコイワイが活用する金属3Dプリンターを導入すれば、製造作業が機械化し従業員の負担が減ります。業務リソースが浮く分、新たな案件にチャレンジできるなど、新規事業や業務展開に貢献しやすくなるのが金属3Dプリンター導入の魅力です。

製造ロスの削減

コイワイが導入したような3D金属プリンターがあれば、鋳物の製造品質の振れ幅が減り、製造ロスの削減につなげられます。

まず従業員が鋳物製造をする場合には、担当する従業員の経験や技術力によって製品の品質が変わるのが一般的です。金属の場合、鋳物の型が崩れたり中に気泡が溜まっていたりすると、製品として使えず再製造となります。

一方でコイワイが活用するような3D金属プリンターは、型崩れや気泡といった問題を起こさずに製造が可能です。製造の品質が安定することから、従業員の技術力の影響を受けず製造ロスを防止しやすくなります。

もし3Dプリンターの製品に興味をお持ちなら、まずはどのような製品があるのかチェックしてみてはいかがでしょうか。相談内容やニーズにぴったりの最適な産業用3Dプリンターを提案します。

金属3Dプリンターを活用する業種

金属3Dプリンターの活用

コイワイが導入した金属3Dプリンターですが、鋳物事業のみならずさまざまな業界で活用が始まっています。参考として、金属3Dプリンターを活用する業種を整理しました。

自動車部品メーカー

自動車には複雑な形状の金属製品が数多く使用されており、それぞれのパーツを複数の製造工場に依頼して自動車を構築しています。

コイワイを含め、そういった自動車部品の製造を担う自動車部品メーカーでは、金属3Dプリンターを導入して、生産速度の向上や複雑パーツの製造、コスト削減など、さまざまな課題を解決しています。

特に製造が複雑な、パーツに複数の空洞がある製品や、曲線などが多い金属製品などには3Dプリンターの活用が最適です。自社独自のカスタムパーツも製造できることから、競合他社よりも素早く高品質な製品を製造できるようなってきています。

医療業界

コイワイが導入している金属3Dプリンターの技術は、医療業界で次のような使われ方をしています。

  • インプラントの製造
  • 義手・義足の製造

人によって骨格やサイズが異なるインプラントや義手等を自動で製造できることから、モデルの設計さえ済ませてしまえば、製品ひとつひとつを職人に製造してもらう手間がかかりにくくなります。

また、設計図通りに製品をつくり出せるため、人の体に馴染みやすいインプラントを用意しやすくなるほか、製造コストを抑えやすくなるのが魅力です。

建築業界

自由な形状の金属を生成できる3Dプリンターの技術は、コイワイのような鋳物事業を展開する企業だけでなく、建築業界の意匠設計でも活用されています。

従来、直角に組むことが多い建築部材ですが、金属3Dプリンターを活用すれば、高耐久を誇る幾何学的な構造の部材を生成できます。木材同士を複雑に組み合わせるジョイント(接合部)を製造できることから、意匠設計デザインの幅が大きく広がっています。

海外のインフラ事業として、運河にかけるための歩道橋をすべて金属3Dプリンターで製造するなど、すでに実用化に向けた活用がスタートしている状況です。

また3Dプリンターで製造できるものについて詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。製造アイデアについて詳しく解説しています。

3Dプリンターで作れるもの6選!初心者におすすめの作りやすいアイテムは?

コイワイが提供する金属3Dプリンター技術についてまとめ

コイワイが鋳物事業の効率化のために導入した金属3Dプリンターは、自動車メーカーへの提供という枠を超え、宇宙事業にまで発展しようとしています。

すでにJAXAからも依頼を受け、宇宙探査機の一部として導入されている状況です。
コイワイは宇宙事業のさらなる貢献のため、金属3Dプリンターの技術向上を狙うと発表しています。

コイワイ金属3Dプリンターのアイキャッチ
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