住宅などの建築設計に欠かせないCAD。初心者の人は機能についてわからない部分があったり、ソフトウェア選びで迷ってしまうのではないでしょうか。
今回は住宅の設計に使用されるCADについて、種類・操作・ソフトウェアの選び方を解説し、合わせておすすめの住宅設計向けCADソフトもご紹介します。
住宅の設計に使用されるのは建築CAD
建築CADとは、パソコンやタブレット上で建築の設計図を作成するソフトウェアです。
手描きと比較して、住宅など建造物の平面図や立面図を効率的に作成できるため、建築設計では必須のツールです。
建築CADのおかげで設計者はアイデアを素早く図面化でき、配管や電気配線の配置も正確に表記できます。そのため施主や施工業者とのやり取りもスムーズに行え、スピーディーに建物を建造できるようになりました。
また、デジタルデータとして図面を管理できるため、関係者間でデータを共有し、プロジェクト全体を効率的に進められる点も良い部分でしょう。
建築CADの種類
住宅設計に使用される建築CADは大きく分けて、
- 汎用CAD
- 専用CAD
- 機械用CAD
の3種類があります。それぞれの建築CADの用途を解説します!
汎用CAD
汎用CADは、建築や機械設計など幅広い目的で使用できる万能型のCADソフトウェアです。2D・3Dの両設計に対応しており、住宅設計でも使用されているCADです。
汎用CADの最大の魅力は、豊富な機能と使いやすさにあります。直線や円などの基本的な作図機能から、寸法線の配置、図面の縮尺変更まで、設計に必要な一通りの機能を備えており、幅広い設計業務に活用できます。
専用CADと比べ、導入コストを抑えられる点も特徴です。多くの汎用CADには無料版や体験版が用意されており、初心者でも気軽に始められます。ユーザー数も多いため、オンライン上で操作方法を学べる機会も豊富な点も魅力でしょう。
また、汎用CADは標準的なファイル形式に対応しているため、他のCADソフトとのデータ互換性も高く、設計事務所間でのデータ共有しやすい点も良い部分です。
専用CAD
専用CADは、特定の分野に特化したソフトウェアです。
建築分野に特化したCAD(建築CAD)の場合、壁や窓、扉などの建築部材があらかじめ用意されているため、これらの部材を組み合わせ効率的に建築設計を進められます。
また、平面図を作成すると自動的に立面図や断面図が生成される機能も用意されており、設計に必要な入力作業を短縮できる点も良い部分でしょう。
近年では、設計・施工・維持管理まで一貫した情報管理が可能なBIM機能を搭載した専用CADも増えており、建築業務をより効率的に進められるようになっています。
専用CADは高度な機能を備えているため導入コストは高めですが、住宅などの建築設計の生産性を大幅に向上させることができます。
実務で本格的に使用する場合は、専用CADの導入を検討することが望ましいでしょう。
機械用CAD
機械用CADは、主に工業製品や機械部品の設計に使用されるソフトウェアです。建築設計の現場でも設備や配管の設計に活用されています。
機械用CADは、精密な寸法指定と干渉チェック機能があり、住宅を含めた建築設計においても空調設備や給排水設備の配置検討に効果を発揮します。
3Dモデリング機能を使用することで、設備同士の干渉を事前に確認できます。
シミュレーション機能も備えており、建築設計では主に設備配管のレイアウトや構造部材との取り合い確認に活用されています。
2D・3Dの用途の違い
住宅設計向けの建築CADのタイプには2D・3Dがあり、それぞれ用途が異なります。
ここでは、2D・3Dそれぞれの用途や目的の違いについて解説します。
2Dの用途や目的
2D CADは、平面図・立面図・断面図を作成するツールで、寸法線や注釈の記入が効率的に行えます。壁厚や開口部の幅を指定でき、建具や設備機器の配置も細かく調整できます。
作図内容も自由に修正できるため、設計変更にも柔軟に対応できます。
2D CADで作成された図面は視覚的にわかりやすく、クライアントや施工業者との間での情報共有しやすいことも特徴です。
2D CADは、紙やタブレットで持ち運ぶための平面図や、簡単な設計図を作成する際に適しており、特に初期の住宅設計で効果を発揮します。
3Dの用途や目的
3D CADは、立体的なモデルで建築物の設計図を作成するため、完成後の住宅のイメージを把握しながら作図できるツールです。外観はもちろん、窓の配置による採光の様子や家具のレイアウトなど室内空間も把握できるため、完成イメージを施主と共有できる点もメリットでしょう。
BIM対応の3D CADでは、建物の様々な情報を一元管理できます。壁や床の仕上げ材、設備機器の仕様など、建物に関する情報をモデルに組み込むことで、数量積算や概算見積りを行うこともできます。
また、VRやウォークスルー機能を使用すれば、住宅内を疑似的に歩き回ることができます。立体空間として建物内をチェック可能なため、設計の早い段階で問題点を見つけることができます。
3D CADは、特に複雑な形状や細かな設計が必要な場合に機能を発揮し、住宅デザインにおいても活用できます。
住宅向け建築CAD共通の操作
次に住宅設計向けの建築CADの基本操作について表を用いてご紹介します。ソフトウェアごとに特徴的な機能は異なりますが、下記の基本操作は共通しています。
建築CADソフト共通の操作
建築CADソフト共通の操作 | ||
インターフェイス | ワークスペース |
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メニューバー |
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作図の基本操作 | 線や図形の描画 |
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寸法 |
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レイヤー |
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エクスポート |
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その他 | 保存、クラウド機能など |
住宅向けの建築CADの選び方
初心者の場合、どの建築CADを使ったらよいのか迷ってしまうのではないでしょうか。結論から言いますと、住宅設計向けのCADを選ぶ際は、業務内容・規模・予算などを考慮し、目的に合ったソフトウェア選びが重要です。
例えば住宅の設計から施工、維持管理を一元管理したいケースなら、RevitやArchiCADなどのBIM機能のあるソフトウェアが適しています。
これらのソフトウェアは1つのツールで業務全体を管理しつつ、関係者がデータを共有しながら作業できるため、効率的にプロジェクトを進められます。
一方、シンプルな2D図面を必要とする場合は、AutoCADやJw_CADなどの汎用CADが適しているでしょう。特にJw_CADは日本の建築業界で広く使用されている無料ソフトウェアで、コストを抑えつつ基本的な製図機能を利用できる点が魅力です。
2D CAD・3D CADは役割が違いますので、それぞれを使い分けて設計を効率化できる点も考慮し、建築CADを選定しましょう。
おすすめの住宅向けCADソフト【5選】
ここからは、住宅の設計でよく使用されている建築CADソフトを5つご紹介します。
それぞれ特徴がありますので、目的に合った建築CADを見つける参考にしてみてください。
- AutoCAD
- Revit
- ArchiCAD
- SketchUp
- Jw_cad
AutoCAD
AutoCADは建築設計業界で特に普及している汎用CADです。2Dから3Dまで幅広い機能を備え、住宅などの建築図面の作成に必要な基本機能が充実しています。
初心者でも扱いやすいインターフェースを採用しており、作図コマンドはツールバーから直感的に選択できます。
DWG形式の採用により、他のCADソフトとのデータ互換性も高く、設計事務所間での図面のやり取りがスムーズに行える点も魅力でしょう。
住宅設計にも使える建築専用ツールセットも用意されており、壁や窓、ドアなどの建築部材を効率的に配置できます。
他にも、クラウド連携機能により関係者同士で共同作業が行えたり、モバイル端末からのアクセスも可能になっています。
月額約8,800円から利用でき、学生や教育機関向けの無料ライセンスも用意されているため、学習用途での利用がしやすくなっています。
Revit
Revitは、BIMに特化した建築専用CADです。3Dの機能を活かした立体的な設計が可能で、住宅建造の企画から維持管理まで総合的にサポートします。
機能の特徴としては、設計変更が関連図面すべてに自動反映される機能です。
例えば平面図で壁の位置を変更すると、立面図や断面図、3Dモデルにも自動的に反映されるため、設計変更の手間を大幅に削減できます。
エネルギー解析やコスト計算など、高度なシミュレーション機能も搭載しています。
複数の関係者が同時に共同作業できる共同設計機能も、大規模プロジェクトで重宝されるでしょう。
価格は月額57,200円(税込)からとなっており、主に設計事務所や建設会社で採用されています。一部機能を制限し、2D作図に特化したLT版は月額約11,000円(税込)から利用可能です。
Jw_cad
Jw_cadは、日本の建築設計現場で広く使用されている無料の2D CADです。シンプルな機能と軽い動作が特徴で、平面図・立面図・断面図の作図で必要な機能を備えています。
機能は日本の建築基準に対応しており、法規制の確認に欠かせない日影図や天空図の作成も可能です。
建具や設備機器など、日本の規格に準拠した部品ライブラリも豊富に用意されており、無料とは思えないほど機能が充実しています。
無料ソフトながら商用利用も可能なため、特にコストを抑えて導入したい場合におすすめのソフトウェアです。
ArchiCAD
ArchiCADは、建築専用のBIMソフトウェアとして高い評価を得ている建築CADです。直感的に操作できるインターフェースと豊富な建築部材ライブラリにより、効率的に住宅設計を行えます。
3Dモデルからの自動図面生成の機能では、平面図を作成しながら3Dモデルが形作られ、立面図や断面図が自動的に生成されるため、2Dの製図も同時進行できます。
BIMクラウド機能により関係者とリアルタイムで共同作業が可能で、プレゼンテーション機能も充実しています。
高品質なレンダリングやVRウォークスルーにより、施主との意見のすり合わせをスムーズに進められる点が大きな魅力でしょう。
価格はArchiCAD Collaborateが月額62,040円(税込)、Solo版は月額44,220円(税込)となっています。サブスクリプションではなく、一括購入も可能です。
SketchUp
SketchUpは、操作性の良さで人気の3Dモデリングソフトです。住宅デザイン初期の設計の計画・検討、クライアントへのプレゼンテーションで特に効果を発揮します。
機能では、マウス操作だけで簡単に3Dモデルを作成できる点が特徴です。建物の外観デザインやインテリアレイアウトを素早く作成し、様々な案を比較検討することができます。
「3D Warehouse」を活用し、家具や設備機器などのモデルを簡単に配置できる点も良い部分でしょう。
用途に応じてソフトウェアを選択でき、無料版のSketchUp Freeからプロフェッショナル向けのSketchUp Proまで用意されています。
Pro版では2D図面の作成機能も備えており、基本設計から実施設計まで対応しています。
価格はSketchUp Goは年間119ドル、SketchUp Proは年間349ドル、SketchUp Studioは年間749ドルとなっています。
また、学生や教職員向けの特別価格も提供されており、該当者は通常よりも安価に購入できます。
住宅向けCADとは? まとめ
今回は住宅設計に使用されるCADについて、種類や2D・3Dの違いを解説し、おすすめのCADもご紹介しました。
住宅向けのCADとは建築CADを指しており、汎用CAD・専用CAD・機械用CADと3種類あります。さらに2D・3Dはそれぞれ機能が異なり、用途も違います。
そのため建築CADを選ぶ際は、実務での使用や資格取得など用途をはっきりさせるようにしましょう。
無料体験版が用意されているソフトウェアもありますので、実際に操作して確認してみることもおすすめします。
