手動でCADを運用をしている製造業・制御盤業界は今、図面の手戻り、部品表の不整合、属人化による品質低下といった慢性的な問題を抱えています。そして、その解決策として採用されているのが、エンジニアリングツールの「EPLAN Electric P8」です。
この記事では、EPLAN Electric P8の概要や導入するメリットをわかりやすくまとめました。
また価格情報や製品でできること、おすすめの企業も紹介しているため、電気設計を効率化する参考にしてみてください。
EPLAN Electric P8とは?

EPLAN Electric P8は、国内企業のEPLAN株式会社が提供している電気設計のすべての情報をデータベースで管理する設計基盤です。電気設計に用いられるECADのように、回路図を描くためだけのソフトではなく、電気設計をワンストップで進められる機能が備わっています。
まずは、EPLAN Electric P8の特徴をわかりやすく解説します。
- 「電気CAD(ECAD)」ではなく「エンジニアリングツール」
- なぜ世界標準の電気設計ソフトと言われるのか
「電気CAD(ECAD)」ではなく「エンジニアリングツール」
結論として、EPLAN Electric P8は図面を描くためだけのECADではなく、ECADの機能も備えた設計データを運用する汎用型のエンジニアリングツールです。
| 比較項目 | 一般的なECAD | EPLAN Electric P8 |
|---|---|---|
| 回路図 | 図として管理 | データとして管理 |
| 部品表(BOM) | 手作業 or Excel管理 | 図面と連動する(自動) |
| 端子表 | 別途作成が必要 | 自動生成 |
| 設計変更時の対応 | 手動で修正 | 自動更新 |
つまり、一般的なECADと比べて対応できる幅が広く、データ管理の効率化を実現できるのが強みです。電気設計で発生しやすい「図面は合っているのに部品図が違う」「製造側の配線が図面と違う」など、図面の整合性を高められます。
なぜ世界標準の電気設計ソフトと言われるのか
EPLAN Electric P8は公式サイトでも「世界標準」と説明されている電気設計のエンジニアリングツールです。その理由を以下にまとめました。
- Industry4.0(製造業のデジタル化)に対応
- IEC、NFPA、ロシアGOST、中国GBなど国際規格に対応
- 部品メーカー公式データ(EPLAN Data Portal)連携あり
また、当製品を活用すれば、設計→製造→保守までデータをつなげることができ、設計のワンストップ対応が可能となります。国内での電気設計はもちろん、グローバルな案件にも対応できることから、EPLAN Electric P8は世界標準と言われているのです。
他にも、EPLAN Electric P8だけでなく複数の電気CADを比較したい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
EPLAN Electric P8でできること
EPLAN Electric P8は、プラットフォームで設計情報を一元管理できることから、多様な目的で利用できるエンジニアリングツールです。
ここでは、製品が管理するデータベースを用いてできることを紹介します。
- 回路図・端子図・BOMが自動でつながる
- マクロで設計が再利用できる
- 制御盤レイアウト(EPLAN 3D)まで連携できる
回路図・端子図・BOMが自動でつながる
EPLAN Electric P8では、ひとつの設計プロジェクトを用意し回路図を描くことで、次の帳票が自動で作成されていきます。
- 部品表(BOM)
- 端子台表
- ケーブルリスト
- 接続図
個別で作成する必要がないのは、EPLAN Electric P8が回路図を「線」ではなく「構造データ」として管理できるためです。回路図のひとつひとつのデータが属性情報(種類やサイズ、設計数値など)を持っているため、作図をするだけで必要な帳票を揃えられます。
マクロで設計が再利用できる

EPLAN Electric P8では、ひんぱんに使用する回路をマクロとして登録できます。
たとえば、インバータやモーター、I/O回路などをマクロ化すれば、次のような運用が可能です。
- 仕様に合わせて必要な回路を呼び出す
- 自動で型番・定格を切り替える
- 配線を自動生成する
通常だと手作業で回路図を描かなければなりませんが、EPLAN Electric P8なら、手軽に回路図のベースを呼び出せます。一度作成したデータを設計に再利用することで、ベテラン設計者などが残している回路図を設計資産として活用できるのが魅力です。
制御盤レイアウト(EPLAN 3D)まで連携できる
通常、電気設計では、回路図を作成したうえで、新たに制御盤をレイアウトしていくのが一般的でした。これに対しEPLAN Electric P8では、回路図の作成がそのまま制御盤のレイアウトとしても活用できます。
なぜなら、EPLAN Electric P8は3Dモデルとして回路図を作成できるためです。
従来の2D対応のECADとは違い、すべての部品を3Dでレイアウト配置できるため、誤差や干渉チェックによる手戻りを防止できます。
EPLAN Electric P8の価格はいくら?

EPLAN Electric P8は、導入企業によって機能がカスタマイズされるため、一般価格が公表されていません。そのうえで、Web上の情報や口コミ評判(Redditなど)を確認したところ、おおよそ以下ほどの価格になると言われています。
- 格安の製品は2.2万円~
- フルオプションの場合は約150万円
また、EPLAN株式会社の公式ブログでは、サブスクリプションのライセンスを販売していると記載されています。カスタマイズによってトータルコストが膨らむ場合は、サブスクリプションで契約するのがおすすめです。
なお、この金額はあくまで目安です。企業の目的や対応したい電気設計の範囲によって金額が変動するため、まずは公式サイトで見積もりを取得するか、EPLAN株式会社のオンラインセミナーに参加してEPLAN Electric P8の概算金額をヒアリングしましょう。
EPLAN Electric P8を導入するメリット
EPLAN Electric P8を導入する魅力を一言で表すなら、設計品質と再現性です。
ここでは、製品を活用するメリットを紹介します。
- 設計ミスと手戻りが激減する
- 設計標準化で属人化がなくなる
- 製造・調達までデータがつながる
設計ミスと手戻りが激減する
EPLAN Electric P8は、回路図とその他のデータが連動しているため、設計時に発生しやすい次のトラブルを防止し、ミスや手戻りを最小限に抑えられます。
- 回路図とBOMが違う
- 端子番号がずれている
- 製造側の配線が図面と合わない
同一のデータベースから帳票が自動生成されることから、調整し忘れ・直し忘れを防止できるのが強みです。作図だけできるECADにはない機能であるため、EPLAN Electric P8はミスによる手戻りをなくしたい企業に最適です。
設計標準化で属人化がなくなる
EPLAN Electric P8にこれまで作成してきた次の情報をマクロ登録していけば、設計の標準化を実現しやすくなります。
- 回路パターン
- 品番ルール
- 設計思想
特に、電気設計に携わったばかりの初心者や、社外から転職してきた人材の場合、ルールが未確定なせいで、設計が属人化しやすい状況でした。対してEPLAN Electric P8は、過去の設計の進め方をテンプレートに変えられるため、経験年数に関係なく誰でも高品質な電気設計を行えます。
製造・調達までデータがつながる
データベースを用いて幅広い帳票を準備できるEPLAN Electric P8を使えば、管理しているデータを次のような目的への活用が可能です。
- 部品表を購買管理に活用
- ケーブルリストを製造業務へ共有
- 端子表を検査資料として活用
この連携は、国が推進しているDX(デジタルトランスフォーメーション)や、デジタルスレッド(設計〜製造データ連携)の考えにも合致しています。業務全体の生産性向上にもつながるため、EPLAN Electric P8を、プロジェクトの中枢に割り当てるのがおすすめです。
EPLAN Electric P8の導入が向いている企業例

EPLAN Electric P8は特に、電気設計で事業全体を動かしている企業にこそおすすめのエンジニアリングツールです。以下より、活用しやすいポイントを含め、向いている企業の特徴を紹介していきます。
- 制御盤メーカー
- 装置・FAメーカー
制御盤メーカー
特にEPLAN Electric P8の効果を実感しやすいのが、制御盤メーカーです。
制御盤の業界では、以下のようなロスが日常的に発生するため、データベースで連動できるEPLAN Electric P8の機能がミス防止に役立ちます。
- 図面と現物の不一致
- 端子・配線の手戻り
- 品番違いによる再発注
制御盤メーカーでは、EPLAN Electric P8で連携できる「端子表」「配線表」「ラベル」なども連動することから、頻出しやすいデータ管理や修正のミスを減らしたい企業におすすめです。
装置・FAメーカー
「機種ごとに少しずつ回路図が違う」「過去図面の流用が多い」などの条件にあてはまる装置・FAメーカーも、EPLAN Electric P8との相性が良い企業です。
たとえば、EPLAN Electric P8ではマクロを用いてベテラン設計者が作成した過去の回路図などをテンプレート化し、他の業務に流用できます。また、テンプレートを読み込んだのち、回路図のモジュールを調整すれば、簡単にその業務における最適な回路図の作成が可能です。
機種や電圧の違いなどを手軽に切り替えられるため、EPLAN Electric P8は多品種・少量生産が当たり前の装置・FAメーカーに最適なソフトだと言えます。
EPLAN Electric P8の導入企業の成果事例
EPLAN Electric P8は「公式サイトの説明がすごい」だけではなく、実際の製造現場でコスト削減・品質向上・工数削減を実現している点がすごいエンジニアリングツールです。以下に、制御盤・産業機械・ビルディングオートメーションの異なる業種の3社の事例を整理しました。
| 比較項目 | 業界・用途 | 導入の目的 | 効果 |
|---|---|---|---|
| IDECファクトリーソリューションズ(日本) | 制御盤・分電盤・ワイヤハーネス製造 | 設計〜加工までをデータでつなぎ、盤製造のムダをなくす | ・設計工数が約1/2に削減 ・調達管理の手作業ゼロ |
| Aggreko(英国) | 産業機械・仮設電源・空調システム | バラバラだった設計ツールを統合し、開発スピードを上げる | ・ハーネス試作回数が大幅削減 ・ケーブル長の計測が自動化 |
| Protec Technologies(ドイツ) | ビルディングオートメーション | 建物・設備・部品のデータを一元管理し、設計変更に強い仕組みを作る | ・PIコード自動生成で入力作業ゼロ ・プロジェクト期間を最大20%短縮 |
なお、3社に共通しているのは、「図面を描く」ためではなく、「設計と製造をつなぐため」に導入している点です。よって、EPLAN Electric P8は単なる電気CADではなく、「電気×3D×製造×保守」をつなぐエンジニアリングの基盤だとわかります。
EPLAN Electric P8と他の電気CADとの違い

電気設計に用いられている設計ソフトは、EPLAN Electric P8だけではありませんが、それぞれ製品の特徴に違いがあります。参考として、EPLAN Electric P8と、電気設計でよく用いられている「E3.series」「AutoCAD Electrical」「Autodesk Fusion」の違いを整理しました。
| 比較項目 | EPLAN Electric P8 | AutoCAD Electrical | E3.series | Autodesk Fusion |
|---|---|---|---|---|
| 設計の考え方 | データベース中心 | 2D図面中心 | 2D図面中心 | 3Dモデル中心 |
| 回路図 | データ(属性情報) | 線と記号 | 線と記号 | モデルと記号 |
| 部品表(BOM) | 完全自動生成・常時同期 | 一部自動 | 一部自動 | 自動 |
| 端子表 | 自動生成 | 手動 | 一部自動 | 手動 |
| 設計変更 | 全帳票が自動修正 | 個別修正が必要 | 個別修正が必要 | 個別修正が必要 |
| 価格(税込) | 要見積もり(高額) | 月額20,625円~ | 325,000円~2,283,000円 | 月額8,434円~ |
表からもわかるように、EPLAN Electric P8は「図面を描くCAD」ではなく「設計データを動かすプラットフォーム」です。そのため、E3.seriesやAutoCAD Electrical、Autodesk Fusionと比べると、設計〜製造までのつながり方が根本的に異なります。
そこで以下に、各ソフトのおすすめの条件をまとめました。
- 電気設計全体に対応したいなら「EPLAN Electric P8」
- 表作成の自動化機能が欲しいなら「E3.series」
- 費用を抑えつつ2D作図に対応したいなら「AutoCAD Electrical」
- 費用を抑えつつ3Dモデリングに対応したいなら「Autodesk Fusion」
なお、導入を検討する際には、気になるソフトの無料体験版からスタートするのがおすすめです。15日間や1ヶ月間などの体験期間中は、ソフトを無料で利用できます。
さらに、一部の3DCADソフトは無料で電気設計を行えます。
以下の記事から、導入に役立ちそうな無料の3DCADソフトを探してみてください。
AutoCAD Electricalを使いこなしたい方向けのセミナー講習

AutoCAD Electricalを電気設計に活用する場合、ベースとなるAutoCADの操作方法を理解する必要があります。
しかし、導入したばかりであり、AutoCADの操作方法や一連の使い方を知りたい方も多いはずです。それなら、セミナー講習に参加してみるのがいかがでしょうか。以下のセミナー講習では、プロ講師が操作する画面を見ながら、実務で役立つ機能や実践的な使い方を体系的に学べます。
| セミナー名 | AutoCAD基礎セミナー講習 |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 27,500円〜 |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
Autodesk Fusionを使いこなしたい方向けのセミナー講習

Autodesk Fusionを電気設計に用いたいけれど、操作方法や使い方がわからないとお悩みではないでしょうか。
それなら、以下のセミナー講習を利用して、実務的な使い方や操作方法の基礎・応用を学習するのがおすすめです。3Dモデリングからその後のCAM・CAEにつながる実践的な設計手順を学べます。
| セミナー名 | Autodesk Fusionセミナー講習 |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 41,800円〜 |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
EPLAN Electric P8についてよくある質問
ここまで紹介してきたEPLAN Electric P8について、よくある質問をFAQ形式で回答します。
EPLAN Electric P8についてまとめ
EPLAN Electric P8は、回路図を描くだけの電気CADではなく、部品・配線・端子・BOM・製造情報までを一元管理できる「制御盤設計のベース」となるエンジニアリングツールです。
設計ミスの削減、標準化、製造連携までを同時に実現できるため、制御盤メーカーや装置メーカーにとって投資対効果の高い製品だと言えます。もし製品の導入を検討しているなら、EPLAN Electric P8の無料デモや見積もりで自社の設計フローに合うかを確認してみてください。