DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り組みたいけれど、そもそもDXが何なのかよく理解できていない方も多いのではないでしょうか。また、自社に取り組むメリットがあるのか疑問視している方もいるはずです。
そこでこの記事では、DXの特徴や目的、効果といった基礎知識ついてわかりやすくまとめました。おすすめの入門本や役立つ資格も紹介しているので、ぜひ基礎学習の参考にしてみてください。
DXとは?基礎知識をわかりやすく解説

DXとは、ITツールを導入することにあわせて、ビジネスや組織のあり方をデジタルで再構築する取り組みです。つまり、単なる業務の効率化だけではなく、企業全体の仕組みを抜本的に変えることを目的として推進します。
なお、DXは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略であり、次のような変革をつくり出すのが特徴です。
- 紙ベースの受発注から、クラウド型の自動処理へ移行する
- 顧客管理のアナログな属人化を、CRMといったツールで一元化する
- 店舗販売のみのビジネスを、ECサイト・アプリでWeb対応へと強化する
IPAが公開している「DX動向2024(データ集)」によると現在、国内企業の約3割がDXに取り組めていない状況です。DX化に取り組む競合他社との差が広がっていることから、DX化をスタートできていない企業は、早期に基礎知識を身につけることが重要となります。
基礎として欠かせない「DXリテラシー」を図解付きで簡単に解説

DXの基礎を学ぶうえでの重要となるのが、DXリテラシーの理解です。
DXリテラシーとは、デジタル技術を理解し、業務改善や組織改革に活かすための最低限の知識・スキルのことであり、IPAが定める「DXリテラシー標準(DSS-L)」に、次の基礎リテラシーをもつべきだとまとめられています。
- デジタル技術の基礎知識(AI・クラウド・IoTなど)
- 業務プロセスの可視化と改善意識
- データ活用やセキュリティへの理解
なぜDXが必要なのか、どのようなデータがDXに活用されているのか、どういった技術を活用すべきなのか、という3つの基礎を身につけることでDXに取り組みやすくなる指標です。はじめてDXの基礎を学ぶ方は、リテラシーの部分から学習をスタートすると良いでしょう。
DX化に取り組むメリット・効果
基礎を理解したうえでDXに取り組めば、業務効率化やコスト削減だけでなく、売上の拡大や顧客満足度の向上などを実現しやすくなります。以下より、取り組みをスタートするメリットや効果をまとめました。
生産性が上がり人手不足でも業務が回る組織になる
人手不足や属人化に悩む企業がDXの基礎を理解したうえで推進をスタートすれば、次の業務標準化・デジタル化を実現しやすくなります。
- バラバラだった書類・データ管理をひとつのシステムに集約化できる
- 担当者の急な退職や引き継ぎにも即座に対応できる
- 業務のマニュアル化により新人教育が効率的になる
- 工程の可視化でミスの原因分析が容易になる
少ない負担で、膨大な業務を回せるようになることから、人手不足に悩む企業でも経営を安定させられるのがメリットです。
顧客満足度・売上が向上する仕組みをつくれる
DXの基礎を理解して取り組めば、次のようにサービスの提供先である顧客体験の向上にもつながります。
- チャットボットの導入で24時間対応が可能になる
- アプリでのクーポン配信で来店頻度が向上する
- 顧客データ活用でユーザーニーズに合わせたアプローチが可能になる
DXは社内だけではなく、提供するサービスの品質向上にも良い効果をもたらします。
売上アップにもつながるため、DXの基礎学習が今後の経営を大きく変えるかもしれません。
わかりやすいDXの導入事例
「DXでは実際にどのようなことをやるべきなのかイメージできない」という方向けに、IPAが公開しているDX白書(2023)の情報をもとに、わかりやすい例を整理しました。
企業名 | DXの取り組み | 効果 |
---|---|---|
株式会社IHI | 時代の変化とともに、事業環境変化とデータ活用の機会が増加したため、DX人材の確保に努める | 約180名のDX人材を確保し、AI講座などを自社提供してリテラシー向上を実現した |
株式会社山本金属製作所 | 少子化・高齢化による労働力減少のために、デジタル推進室を設立した | デジタル技術の導入により、経験頼りの「暗黙知」から「形式知」に業務を変換できた |
東京センチュリー株式会社 | 2025年の崖問題を見据えて、DXに強いスタートアップ企業との連携を図る | 自社システムのDX対応など、基幹システムの改良が実現した |
主に大手企業の事例となりますが、人材確保から施策の立案という流れでDX化を進めているのが特徴です。もしDXに取り組むなら、人材確保の前段階としてDXの基礎学習からスタートしてみてはいかがでしょうか。
またDXの事例を詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
DXを推進する基礎導入ステップ
DXは、基礎知識や正しい手順を理解したうえで取り組まなければ、失敗に終わることも少なくありません。そこで以下より、5つのステップに分けて基礎的な導入の流れをまとめました。
- DXの基礎を学ぶ
- 自社の現状把握と課題を洗い出す
- 改善したい業務プロセスを選定する(優先順位を決める)
- ITツールやベンダーを比較する
- 試行導入とPDCAサイクルに取り組む
DXの基礎を学ぶ
まず重要なのが、DXの基礎を学ぶことです。
基礎知識がなければ、何もアクションを越せないほか、まったく方向性の違う施策を講じてしまうかもしれません。
そのため、入門本などで独学をするか、セミナー講習などに参加してDXの全体像を理解することからスタートしましょう。
自社の現状把握と課題を洗い出す
DXの基礎を学んだら、自社が今どのような業務をどう行っているかを把握しましょう。
たとえば、次のようなポイントを洗い出すことで、どこに改善余地があるかが明確になります。
- 業務が属人化している箇所
- 紙での作業が多い工程
- 時間がかかっている作業
課題の洗い出しは、これまで蓄積してきたデータの傾向を見る方法や、現場でのヒアリングなどが有効です。
改善したい業務プロセスを選定する(優先順位を決める)
前述した課題をすべてまとめて実施するのは、費用的にも手間的にも現実的ではないため、取り組むべき改善項目に優先順位を決めましょう。以下に優先順位決めのポイントをまとめました。
- コスト縮減につながるプロセス
- 取引先に影響を与えやすい課題
- ミスが起きやすい工程
プロセスの影響力と改善にかかるコストのバランスを考えながら、何を最優先するか決めることがDXの基礎として重要です。
ITツールやベンダーを比較する
取り組むべきDXの方向性が明確になったら、導入すべきITツールや、相談する外部ベンダーを探しましょう。
このとき重要なのが、業種特化型ツールや国の支援制度対象ツールなど、選択肢を広く検討することです。近年ではサブスプリクション形式でツールを提供している企業などが増えているため、確実に費用対効果を生み出せるものを選ぶことが欠かせません。
また補助金の対象になるのかを調べておくと、コスト削減に役立ちます。
試行導入とPDCAサイクルに取り組む
実際にITツールなどを導入したら、小規模なチームをつくりスモールスタートから開始しましょう。
また、運用する際には何度もPDCAを回すことが重要です。
参考として、段階的に確認・改善すべき項目を整理しました。
- 使い勝手や操作性に問題はないか
- 現場の混乱や抵抗感はないか
- 効果は定量的に出ているか
PDCAは何度回しても問題ありません。
改善に改善を積み重ねることで、より高いDXの効果を生み出しやすくなります。
DXの基礎を学べる入門本一覧
独学でDXの基礎を学びたい人向けに、おすすめの入門本を整理しました。
入門本の名称 | 価格(税込) | おすすめの理由 |
---|---|---|
1冊目に読みたいDXの教科書(なるほど図解) | 1,540円 | 図解付きなので内容をイメージしやすい |
今すぐ知りたいDXの基礎 | 2,505円 | 専門用語がほとんどないため挫折しにくく、ハイレベルなDXの基礎を学べる |
DXの基礎知識:具体的なデジタル変革事例と方法論 | 3,520円 | DXの基礎はもちろん、手法や方法論まで詳しく解説されている |
各種、DXの基礎学習に最適です。
業種に関係なく学びやすい本ばかりですので、気になる1冊を手に取ってみてください。
DXの基礎スキルを証明できる資格一覧
DXの基礎知識・スキルがあると証明したい方は、以下の資格取得を目指してみてください。
資格名 | 必要な知識 | おすすめの人 |
---|---|---|
DX検定 | DXの基礎全般 | DXの初歩を学んだ人 |
データサイエンティスト検定 | ビッグデータの分析 | データ分析・活用などのDXに取り組みたい人 |
ITパスポート | IT知識全般 | IT系の業種で働く人 |
G検定 | AI・機械学習の知識 | AI活用を検討している人 |
AWSクラウドプラクティショナー | クラウド管理 | クラウドサービス利用者 |
より詳しくDX人材向けのおすすめ資格を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
DXの基礎についてよくある質問
DXの基礎についてまとめ
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なるITツール導入ではなく、業務の変革・組織の進化・顧客満足の向上といった要素を実現する重要な取り組みです。
大手企業の事例が多くありますが、中小企業や自治体でも「スモールスタート」から始めれば、無理なくDX化を実現しやすくなります。とはいえ、まずは基礎知識・スキルを身につけることが重要です。独学やセミナー講習を利用して、基礎を身につけてみてはいかがでしょうか。
