国が推進するDX化を進めたいけれど、自社だけで推進できないとお悩みの方も多いでしょう。
その場合には、業務の進め方や意思決定のあり方まで見直せるDXスキルを身につけられる「DX研修」を利用するのがおすすめです。
この記事では、DX研修とはどのようなサービスなのか、どのような目的で利用できるのかについてわかりやすくまとめました。「企業が学ぶべきカリキュラムとは?」「失敗しない選び方とは?」など複数の疑問を解決する参考にしてください。
DX研修とは「人材育成×組織変革」を同時に進める教育
DX研修とは、デジタル技術の習得に加えて、業務プロセスや意思決定の方法を見直し、組織全体で変化に対応できる状態をつくるための教育です。
単なるIT研修ではなく、データを活用して課題を捉え、改善ではなく変革まで進めることが求められます。経済産業省が策定したデジタルスキル標準でも、全社員に必要なDXリテラシーと、推進人材に求められる専門スキルが整理され、段階的な人材育成の重要性が示されています。
そのため、DX研修を導入する際には、自社の現状と目指す姿の差を整理し、どのレベルの変化が必要かを明確にすることが重要です。現場の業務を洗い出し、どこを変えるべきかを言語化することからスタートしましょう。
DXとは何をすることか(初心者向け)
DX研修の題材となるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ビジネスの進め方や価値提供の方法を変える取り組みです。
たとえば、データをもとに意思決定を行い、顧客のニーズに合わせてサービスや業務を最適化していきます。総務省の「令和7年版 情報通信白書」では、日本企業の約5割がDX人材不足を課題としており、海外と比較しても人材確保が遅れている状況が指摘されています。
このような状況では、ツールを導入してもDXは進みません。
DXを進めるには、理解を深めた人材を社内に揃えることが不可欠です。
DX研修の目的(なぜ今すぐ必要なのか)
DX研修の目的とは、DXを推進できる人材を育成し、外部に依存せずに変革を進められる体制をつくることにあります。
まず、多くの企業がDXの必要性を認識している一方で、実行できる人材が不足しているのが現状です。さらに、情報処理推進機構(IPA)のDX動向でも、多くの企業が「DXを推進できる人材がいない」ことを課題に挙げており、スキル不足がDX停滞の大きな要因とされています。
これに対し、DX研修を導入すると、企業は次のように変化します。
- 社内で共通言語が生まれ、意思疎通がスムーズになる
- データに基づいた判断ができるようになる
- 属人化していた業務を標準化できる
- 自社で改善施策を実行できる
DX人材の育成を実現すれば、単なる知識習得ではなく実務に直結した変化が生まれます。
まずは自社の課題を整理し、どのレベルの研修が必要かを明確にすることが重要です。
もし、自社向けのDX施策や取り組みを学びたい方は、導入企業数1万件を超える「DX研修・人材育成プログラム」で、自社に合うカリキュラムをカスタマイズするのがおすすめです。現状の把握・計画の立案・教育の実施や管理・定着などをトータルサポートしています。
DX研修の主な内容・カリキュラム

DX研修のカリキュラムは経済産業省が策定した2つの指標にもとづいて設計されることが一般的です。まず「DXリテラシー標準(DSS-L)」とはすべての社員が理解すべき知識やノウハウのことであり、「DX推進スキル標準(DSS-P)」とはDXを推進する人材が習得すべきスキルのことです。
この指標では、DXを推進するために必要な知識やスキルを体系的に整理しており、全社員向けのリテラシーから専門人材向けのスキルまで段階的に学べる構成になっています。
以下より、主な研修の内容を項目に分けて紹介します。
DX基礎・リテラシー(全社員向け・DSS-L)
DX基礎・リテラシーとは、DXがなぜ必要とされているのかを学ぶパートです。
AIやクラウドといった言葉の意味だけでなく、自分の業務と結びつけながら理解できる内容になっています。難しいDX知識を覚えるというより、「仕事のやり方がどう変わるのか」をイメージできる状態をつくります。
データ活用・分析(全社員〜推進人材・DSS-L+DSS-P)
データ活用・分析とは、DXの基本となるデータを見て判断する力を身につけるパートです。
まずは数字の見方や簡単な分析から始め、慣れてきたら「なぜこの結果になったのか」を考えられるようにします。最終的には、データをもとに改善案を考え、実際の業務に活かせるようになることを目指します。
また、DXを推進する中心となる人材は、課題に対して必要なデータの選び方や分析の進め方、結果をもとにした改善案の立て方まで、実務に直結する内容を学びます。
IT・AI・クラウドなどの技術理解(全社員向け・DSS-L)
IT・AI・クラウドなどの技術理解とは、AIやクラウドなどの仕組みを学び、「どんなことができるのか」を理解するパートです。
専門的な知識を深く学ぶ必要はなく、自分の業務で使えるかどうかを判断できることが重要です。どの作業をデジタルに置き換えられるかを考える視点を身につけます。
マインドセット・変革力(全社員向け・DSS-L)
マインドセット・変革力とは、これまでのやり方にとらわれず、より良い業務の進め方を考える姿勢を身につける知識やスキルのことです。
DXを推進する際には、新しいことに挑戦する意識が欠かせません。
小さな改善でもいいので、自分で気づいて動くことが重要であることから、日々の業務の中で「変えられること」を見つける力を育てます。
DX推進スキル・プロジェクト実践(推進人材向け・DSS-P)
DX推進スキル・プロジェクト実践とは、DXを実際に進める人向けの内容です。
課題の見つけ方や改善の進め方、関係部署との調整など、実務に直結するスキルを学ぶのが特徴であり、知識だけで終わらせず、プロジェクトとして形にし、現場で成果を出せる状態を目指します。
階層別のDX研修の内容の違い(経営層・管理職・現場)

DX研修は全社員が同じ内容を学べばよいわけではなく、役割に応じて学ぶべき内容を変えることが重要です。
特に、経営層・管理職・現場それぞれで必要なスキルが違うため、階層ごとに最適なカリキュラムを設計しなければなりません。ここでは、どの層に何を学ばせるべきかの目安をまとめました。
経営層向け(戦略・意思決定)
経営層はDXの方向性を決める立場であり、技術の詳細ではなく「どこに投資し、どのように変革するか」を判断するための知識が求められます。研修では、次のような内容を学びます。
- DX戦略の立て方
- 投資判断と優先順位の決め方
- データを活用した意思決定
- 企業全体の変革シナリオ設計
これらを理解すれば、場当たり的な施策ではなく、一貫したDX推進が可能になります。
管理職・推進リーダー向け
管理職や推進リーダーは、経営の方針を現場に落とし込む役割を担います。
そのため、DXの取り組みを実行に移すための調整力と推進力について、次のような内容を中心に学びます。
- 業務課題の整理と改善設計
- 部門間の連携と調整方法
- DXプロジェクトの進め方
- KPI設計と進捗管理
これらを研修で身につければ、現場に根付くDX施策を実行できるようになります。
全社員向け(リテラシー)
企業に属するすべての社員はDXを「使う側(理解して対応する側)」として、基本的な知識と活用力を身につけることが必要です。DXの基礎を身につけるためにも、日常業務の中でどう使うかを学べる以下のような研修を利用しましょう。
- DXの基本知識と目的理解
- 業務で使うデジタルツールの基礎
- データの基本的な扱い方
- 業務改善の考え方
これらを習得すれば、現場レベルでの改善が進みやすくなります。
もし社内だけでDX研修を実施してみたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
DX研修の実施方法

DX研修は、目的や対象者によって最適な実施方法が違います。
コストや学習効果、社内への定着度にも影響するため、自社の状況に合った形式を選ぶことが重要です。主な実施方法の違いを以下にまとめました。
| 研修形式 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 集合研修 (ワークショップ型) |
対面で議論や演習を行い、実践的に学べる | 全社導入・意識改革・チーム連携が必要な企業 |
| オンライン研修 | 場所を選ばず受講でき、効率よく学習できる | 拠点が分かれている企業・短期間で学びたい場合 |
| eラーニング | 自分のペースで学習でき、コストを抑えやすい | 基礎学習・全社員向けのリテラシー教育 |
集合研修(ワークショップ型)
集合研修やワークショップ型の研修とは、対面でディスカッションや演習を行いながら進める実施方法です。実践的に知識やスキルを習得できるため理解が深まりやすく、組織全体での意識統一にもつながります。
実際の業務課題をテーマにしたワークも多いことから、実践的に学びたい企業や、DXを全社的に推進したい場合に向いています。
オンライン研修
オンライン研修とは、Web会議ツールなどを利用して参加できる受講方法です。
パソコンやスマホさえあれば利用できるため、場所や時間の制約を受けにくく、効率的に学習できます。
DX研修は主要都市でのみ開催されていることが多いため、全国に拠点がある企業や、移動の手間をかけずにDXの知識を習得したい場合に適しています。一方で、参加者から話をすることが少なく受け身になりやすいため、目的を明確にして受講することが重要です。
eラーニング
eラーニングとは、動画や教材を使って自分のペースで学習できる形式です。
コストを抑えながら全社員に教育を展開できるため、DXの基礎知識を広く浸透させたい場合に適しています。学ぶだけで終わりになりやすいため、実践力を高めるには他の研修と組み合わせるのがおすすめです。
DX研修の費用相場
DX研修の費用は、eラーニングであれば比較的低コストで導入できる一方、オンラインや集合研修、そのほか伴走支援を受けられるコンサルティング型の研修は高額になりやすい傾向があります。
目安としては、基礎研修で数万円〜、実践型や伴走支援付きの場合は数十万円以上になるケースもあります。費用だけで判断するのではなく、研修後にどの程度実務に活かせるかを基準に選ぶことが重要です。
DX研修で使える助成金・補助金
DX研修は費用がかかるため、国や自治体の助成金を活用してコストを抑える企業も増えています。条件を満たせば研修費用の一部や受講中の人件費が補助されるため、導入のハードルを下げることが可能です。
- 人材開発支援助成金(最大75%)
- 地域の補助金制度
たとえば、厚生労働省が実施している人材開発支援助成金では、DX研修を含むリスキリングに対して補助が行われており、企業の人材育成を後押ししています。
また、研修を実施した後にデジタル化やITツールの導入を進める場合には「デジタル化・AI導入補助金」などを活用して、コストを抑えることも可能です。
これらの制度は申請条件や対象が細かく定められているため、事前に確認しておくことが重要です。研修を検討する段階で活用できる制度を調べておくことで、無理のない予算でDX人材の育成を進められます。
DX研修の成功例・失敗例
DX研修は実施するだけでは成果につながらず、設計や運用次第で効果が大きく変わります。
ここでは、実際によくある成功例と失敗例を整理します。
| 成功例 | 失敗例 |
|---|---|
| ・自社の業務課題に合わせて研修内容を設計した ・階層ごとにカリキュラムを分けて実施した ・研修後に実務で使う機会を用意した |
・目的を決めずに研修を導入した ・全社員に同じ内容を受講させた ・受講後のフォローを行わなかった |
成功例の取り組みを実施した場合には、学びが定着し、業務改善や意思決定のスピード向上につなげやすくなります。一方、失敗例と近い行動をとった場合には、知識だけで終わり、現場で活用されなくなるため注意しましょう。
DX推進の失敗を回避するためにも、導入前に目的と活用イメージを明確にし、研修後に実践する環境まで整えることが重要です。
DX研修の後悔しない選び方
目的に合わないDX研修を選ぶと、受講しても現場で使えず、時間と費用が無駄になるケースもあります。そこで重要なのは「何を学ぶか」ではなく、「自社の課題に対してどこまで解決できるか」で判断することです。以下に、後悔しない選び方のポイントをまとめました。
- 研修の目的が自社の課題と一致しているか
- 全社員向けか、推進人材向けかなど対象が明確か
- 実務で使える内容(ワーク・演習)が含まれているか
- 研修後のフォローや実践支援があるか
- 導入実績や事例が公開されているか
これらを基準に選ぶことで、受講して終わりではなく、実際の業務改善につながるDX研修を選べます。まずは自社の現状を整理し、どのレベルの人材を育成したいのかを明確にしたうえで、適切な研修を選びましょう。
DX研修のおすすめサービス3選

DX研修は「基礎から学びたいのか」「実務まで落とし込みたいのか」によって選ぶべきサービスが変わります。参考として以下に、実務に役立つDX研修サービスを整理しました。
| 研修名 | カリキュラム | 料金 | 期間 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|
| 製造業・建設業向けDX無料オンラインセミナー | 製造業・建設業向けのDX成功事例や実践方法、人材育成について学べる | 無料 | 30分程度 | 製造業・建設業従事者 |
| 3D設計のDX化・設計変更の高速化無料オンラインセミナー | iCADを用いた3D設計者向けの高速化の方法や事例を学べる | 無料 | 1時間程度 | 機械・製造業の設計担当者(iCADの経験者) |
| DX研修・人材育成プログラム | 企業が取り組みたいDXの施策に合わせてカリキュラムを構築できる | 要見積 | 要相談 | 自社に最適なDXの学習や人材育成法の提案を受けたい企業 |
DX研修サービスは数多くありますが、重要なのは「知識だけで終わらないか」です。
まずは無料のDX研修からスタートし、そのうえで研修内容をカスタマイズできる有料の研修に進むと、DXの全体像を把握しやすくなります。
おすすめの研修サービスをさらに比較したい方は、以下の記事がおすすめです。
DX研修についてまとめ
DX研修は、デジタル技術の習得だけでなく、業務や組織のあり方を見直し、変革を進めるための人材を育成する取り組みです。
その際に重要なのは、目的や対象に応じて内容や実施方法を選び、学びを実務に結びつけることです。まずは自社の課題と育成したい人材像を整理し、それに合った研修を導入することからスタートしましょう。