製品開発において、CADで作成したデータを機械加工用のプログラムに書き換えられるCAMは必須のツールです。
すでにCAMを導入している企業が存在している中で、これからCAM TOOL(キャムツール)の導入を検討している企業もあるでしょう。
しかし、CAM TOOLを導入するにあたって自社の課題解決に対する具体的なイメージが湧かないという声も少なくはありません。
そこで今回は、CAM TOOLの特徴から企業の導入事例について解説します。
CAM TOOLとは
画像引用元:CAM-TOOL 製品トップ
CAM TOOLとは、株式会社C&Gシステムズが開発しているCAMソフトウェアです。金型モデルの形状評価や編集機能が搭載されているため、製品開発の時間短縮に貢献してくれます。
CADとCAMを一体化しており、CADデータとの連携や機械加工に必要なNCデータの出力まで可能です。独自のサーフェス演算ロジックにより、高精度の加工を実現しています。
また、厚みのない表面を作成できるサーフェスモデラーを採用しているため、曲面処理機能による金型モデル特有の形状処理が可能です。
一般的なCAMシステムは、受け取ったデータをポリゴンに変換してから演算を行います。
一方、CAM TOOLのサーフェス演算では、独自の演算ロジックにより、工具の接触を曲面形状に行うため、高精度の面品位に仕上げます。
他にも、未加工領域を自動検出するストック演算や5軸加工における切削面の品質を高めるスムージング機能が便利です。
CAM TOOLの評判
CAM TOOLは、世界中のエンジニアが使用しているソフトウェアですが、実際にユーザーとして活用している人の評判も気になるでしょう。
一部のユーザーからの評価には、次のようなものがあります(引用元:G2、一部抜粋)。
このソフトを10年以上使用していますが、ほとんどのNCコードを編集する必要はありません。
作業コストが安い。ボタンで操作は可能なので、ややこしいですが、すぐに慣れます。
ユーザーの評価によると、業務の効率化とミスの削減に役立っているようです。
製品の複雑化に対応できるCAMとして導入後の効果に期待できるでしょう。
CAM TOOLの特徴
製品開発における業務の効率化が期待されているCAM TOOLの特徴は次のとおりです。
- 高精度な曲面形状を制御するサーフェス演算
- 工具の片刃当たりを防ぐ荒取り加工
- 未加工領域を自動認識するストック演算
- 高品質の加工面を実現するスムージング機能
- 国内主要メーカーの工具カタログの標準搭載
それぞれ詳しく解説します。
①高精度な曲面形状を制御するサーフェス演算
CAM TOOLのサーフェス演算では、高精度な曲面形状の制御が可能です。
データを近似ポリゴンに変換する工程を除くことで、曲面形状に工具を接触させる独自のCAM演算が使用されています。
CAM TOOLでは、サーフェス演算を採用しているため、高速加工による時間短縮が期待できます。
また、サーフェス演算は独自の高精度加工に特化しており、滑らかな加工動作と面品位を実現しています。製品の面品位を高めることで、作業時間の短縮や業務の標準化が可能になります。
また、工具に対する負荷を低減するため、工具寿命の延長につながります。
②工具の片刃当たりを防ぐ荒取り加工
CAM TOOLでは、工具の片刃当たりを防止する荒取り加工が可能です。
高硬度加工用の高送りラジアスを使うことで、効率的に荒取りを行う機能が搭載されています。
形状輪郭を埋め合わせる通常の等高線とは異なるため、工具の片刃当たりによる欠損を防ぎます。工具本来の性能を最大限に活かした加工が強みです。
また、フラット系工具の刃長による駆け上がり加工で、効率的な荒取りができるため、加工時間の短縮に役立ちます。サイズの大きいモデルの加工では、高送りカッターを使用して工具の摩耗を防ぎ、切削距離の短縮や工具の特性を考慮した高品質の仕上がりを実現します。
他にも加工における数値を変数としてパラメータ化することで、データベースの簡素化による加工工程の作成が容易になります。
③未加工領域を自動認識するストック演算
CAM TOOLには、未加工領域を自動認識するストック演算が搭載されています。
CAM TOOLのストック演算は、他のCAMにはない高精度の加工が特徴的です。
ストック演算を活用すると、完成形状と加工途中の形状との差異から取り残しを自動検出することで、パスの出力が可能です。
自動検出された未加工領域は、複数の方向から認識されるため、5軸加工を行う際に活用できます。従来の方法で把握しにくい領域を自動検出するストック演算は、CAM TOOL特有の機能です。加工後に未加工が発覚した際の手戻りを防止したいときに役立つでしょう。
④高品質の加工面を実現するスムージング機能
CAM TOOLにおけるスムージング機能では、高品質の加工面を実現できます。
直線軸X・Y・Zの3軸と回転傾斜軸の2軸を追加した5軸加工において、工具軸の変化は、切削面の品質に影響を及ぼします。工具姿勢が変化しやすい部分においては、傾斜と旋回軸を緩やかに変化させるスムージング機能を使用します。
スムージング機能でテーブルを滑らかに回転させることで、高精度の面品位を得られます。
また、自動干渉回避機能が同時に稼働するため、傾斜軸と旋回軸に対する制御の干渉を回避できます。
⑤国内主要メーカーの工具カタログの標準搭載
CAM TOOLには、加工機能のみならず、国内主要メーカーの工具カタログを管理するデータベースが搭載されています。カタログデータのダウンロードを行うことで、簡易的な登録が可能です。
具体的な工具とホルダの形状が描かれた図形も取り込めるため、データベースを参照する際にイメージがしやすくなります。従来では、カタログを目視で探す手間が発生しますが、CAM TOOLのデータベースを活用すれば迅速に参照できます。
CAM TOOLの便利な機能と使い方
CAM TOOLの機能は、次のとおりです。
- モデルデータの検証・編集機能
- 金型モデリングの曲面処理機能
- 3軸加工機能
- 5軸加工機能
- 5軸加工機能
それぞれ詳しく解説します。
①モデルデータの検証・編集機能
CAM TOOLの基本モジュールには、インポートしたモデルデータの検証と編集機能が搭載されています。
また、工具選定の際に必要なデータをCAMの作業工程との連携が可能です。モデルの加工方向からの傾斜を容易に確認できるため、工具の突き出しや柄の形状の選定に役立ちます。
さらに、サーフェスの曲率と角度をカラーマップでシェーディングによる立体感を表現できます。シェーディングを行うことで、形状評価を容易にします。
CAM TOOLの自動延長機能では、複数面を指定すると曲面やトリム面の延長が可能です。
延長した結果は、プレビュー表示で確認と自動修正ができるため、整合性や不正を検出します。
他にも、拡張オプションとして、金型形状や積層形状から取り込まれたポリゴン形状の検査・修正・編集機能を追加できます。CADシステムとの連携により、高度なデータ変換が可能になります。
②金型モデリングの曲面処理機能
CAM TOOLは、金型モデリングの曲面処理を得意としています。優位性のある独自のサーフェスモデラーを採用しているため、金型モデル特有の形状処理が可能な機能を搭載しています。
直彫りの際に必要不可欠なモデリング処理を迅速に行うため、作業時間の短縮を実現します。
曲面に複数の半径を指定することで、イメージ通りの曲面を作成できます。
他にも、ぼかし面やコーナーR曲面、テーパー面の作成に対応しています。
拡張オプションを追加すると、ソリッド系CADと同等のモデリング作業や複数曲面のトリム、フィル曲面の作成機能が使えます。サーフェスの処理機能により、手間のかかる金型用モデリングの負担軽減につながります。
③3軸加工機能
CAM TOOLでは、高品位で効率的な切削が可能な3軸加工機能が搭載されています。
安定した精度で高硬度材への拘束直彫りを始め、金型モデルの作成を実現しています。
また、削り残しを防ぐエアカット削除などの加工機能で安全で高品質の仕上げに役立ちます。
さらに、工具カタログのデータベースに紐づいた形状や干渉部分をアニメーションで確認したり、切削負荷に応じて速度を自動調整したりすることも可能です。
前工程の加工モデルを自動認識することで、無駄を省いた等高線のオフセットパスを出力します。モデルの形状や工具に合わせて、高精度の荒取り加工が行われます。
CAM TOOLの強みは、前工程の工具が接触できなかった未加工領域を自動検出できる点です。
出力パスは面の傾斜によって変化するため、面に沿ったオフセットパスや等高線パスの作成に活用できます。
④2.5軸加工機能
CAM TOOLの2.5軸加工機能では、ワイヤーフレームの輪郭に対して複数の断面を指定することで、ポケット形状や島形状の定義が可能です。
また、高品質な仕上げ面を実現するカッターパスは、2軸もしくは2.5軸加工で曲面から平面・断面の認識と作成を行います。加工モードで曲面との干渉を確認したり、安全で効率の良い工具の径補正のデータを作成したりします。
さらに、加工機能で出力されたカッターパスの経路や情報表示を始め、選択したパスの削除から編集まで可能です。
CAM TOOLの穴加工では、独自の処理機能により、加工済みの形状を認識した穴あけを実現します。他のシステムでデータを出力する必要がないため、CAM TOOLの機能で完結できます。
⑤5軸加工機能
CAM TOOLの5軸加工機能では、工具の負荷軽減と段取り替えの削減が可能です。
金型5軸加工において、高精度かつ効率的な加工を実現するためには、金型形状の特性を考慮しなければなりません。CAM TOOLを活用すれば、加工ワークをセットしてから完成するまで降ろす手間を省けるため、作業効率の向上に役立ちます。
また、同時5軸による操作は、傾斜角度の設定を行うことで、自動的に5軸のカッターパスを作成できます。CAM TOOLのスムージング機能では、旋回軸と傾斜軸の急激な角度変化を削除することで、滑らかな加工動作を実現します。
5軸パスの経験に頼らずに、簡単な操作で連続した高品質な加工面を確保しながら、干渉のリスクを抑えた5軸加工データの作成ができます。結果的に手戻りの工数を最小限に抑えられるため、大幅に空運転を行う時間を短縮します。
CAM TOOLの企業導入事例
最後に、CAM TOOLを導入している企業の活用事例を紹介しましょう。
リョービ株式会社
リョービ株式会社は、シリンダーブロックやトランスミッションケースなどの自動車部品を始めとする産業分野において、世界トップクラスのダイカストメーカーです。
同社では、世界的な規模で競争力をつけるためにリードタイムの短縮が課題でした。課題を解決するために社内の設備や加工方法の検討を開始しましたが、大型のダイカスト金型を加工するにあたって工具の突き出しが求められていました。
同時に5軸データの作成が必要になったため、複数のCAMシステムを選定した結果、CAM TOOLの導入に至りました。同社では、過去にCAM TOOLを導入しており、加工面の品質において実績と充実したサポート体制に注目したようです。
CAM TOOLを5台導入した結果、加工方法の改善と納期短縮に成功しています。
大型の製品を手がけた際に、従来では納期が50日程度でしたが、導入後は40日程度まで低減しています。短縮された期間を製品開発に注力することに使い、性能と品質の向上が大きなメリットをもたらしています。
株式会社名古屋精密金型
株式会社名古屋精密金型は、自動車のヘッドライト関連部品のプラスチック射出成形金型の設計製造を一貫して手がけており、グローバル展開を行っている企業です。
ヘッドライトのデザインの進化に伴い、明るい光源と電力消費が少ないLEDが主流になりました。一方で、複雑で高度なニーズの変化に対応しなければならない課題を抱えていました。
ヘッドライトの金型に直彫り加工するには限界があり、電極加工や放電加工が必須でした。
さらに、短期の納品を実現するためには、CAM TOOLの5軸加工が必要になり、システムの導入に至りました。
同社では、すでにCAM TOOLを導入していたため、5軸加工の習得と立ち上げは1日で完了したようです。実際の運用では、データ作成の工数を減らし、前工程の未加工領域を正確に検出できたことで業務改善に成功しています。
CAM TOOLで作業が完結するため、他のシステムとのやり取りを省き、迅速で高精度な製品開発を実現しています。加工面の精度が向上したことで、磨きに費やす時間を短縮しています。
CAM TOOLの導入により、効率的な加工と工具寿命の向上をもたらしています。
三光ライト工業株式会社
三光ライト工業株式会社では、携帯電話や通信機器の筐体、車載部分などの金型設計から組立まで行っています。多くのメーカーがグローバル展開を行う中で「メイド・イン・ジャパン」を掲げ、日本製に特化した製品開発に取り組んでいます。
多様化するニーズの変化に対応するために、金型の修正依頼が寄せられる場面において高精度の加工が必要不可欠でした。CAM TOOLの導入により、不要な要素を取り除き、穴埋めにおいてはトリム作業の効率化に成功しています。
従来のソリッドモデラーとは異なり、CAM TOOLのサーフェスプラスは失敗しても途中形状を作成できるため、手直しするだけで済む点に大きなメリットを感じているようです。
現在では、面移動機能を活用することで、複数の面を一括して延長を行っています。
実際に作業工数は40%の削減を実現しているため、15%のリードタイム短縮に貢献しています。
Fusion 360のCAMツールもおすすめ
CAM TOOL以外にも人気のCAMソフトはいくつかあり、Fusion 360も非常におすすめです。
Fusion 360はCAMの知識がない人でも扱えるほどUIが分かりやすく、簡単に操作することができます。MacでもWindowsでも使える便利なCAMソフトなので、ぜひこの機会にFusion 360の導入も検討してみてください。
クラウドで利用することもできるので、社内でのデータシェアもとても簡単です。
まとめ
CAM TOOLの使い方・価格・評判について解説しました。CAM TOOLは、次のような場面で使用した方が良いでしょう。
- 未加工領域の検出が難しい場合
- 金型設計で工数とコストがかかる場合
- 多様化するニーズに対応したい場合
上記の課題を解決するためには、CAM TOOLの曲面処理機能や多軸加工機能の活用がおすすめです。実際にCAM TOOLを使用しているユーザーからは、開発にかかる時間短縮とコスト削減について評価されています。
実際に導入する場合は、自社の課題と仕様によって価格が変動するため、使用する目的を明確にしてから検討してみてください。
