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【2024】ANSYS(アンシス)とは?特徴・価格・機能・使い方

製品開発において、試作品の検証と試験で時間とコストを費やしている企業も少なくはありません。また、CAEツールを導入しているものの、欲しい機能が備えられていないこともあります。

今回は、便利な解析機能を備えたANSYS(アンシス)の特徴や導入するメリットについて解説します。また、企業の導入事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

ANSYS(アンシス)とは

ANSYS-Software

画像引用元:ANSYS

ANSYS(アンシス)は、複数の物理現象を解析するCAEソフトです。構造や電磁場、システム解析などを組み合わせた複合解析機能が備えられています。

近年では、製造業を取り巻く環境の変化に対応するために、業務のDXを支援する製品も取り揃えられています。

ANSYS(アンシス)の開発元であるANSYS社は、世界中の航空宇宙や自動車、機械など幅広い分野の製品開発に関わるエンジニアに向けてCAEを提供しています。また、権威性の高いメディアでは、世界でもっとも急成長を遂げている企業として注目されています。

ANSYS(アンシス)の特徴

ANSYSでは、構造解析や熱流体解析など用途に合わせた解析を組み合わせてシミュレーションを実施することが可能です。解析以外にも、データ管理や材料選定に役立つ機能も備えられています。PC上で仮想現実のプラットフォームにて、目に見えない物理現象の可視化や潜在的な故障の対策が可能です。

また、設計段階からシミュレーションを実施できるため、物理的な試作や手戻りを防止します。シミュレーションによる材料の評価と選定が可能になるため、結果的に開発コストの削減を期待できます。

ANSYS(アンシス)の価格

ANSYSには、年間払いもしくは一括払いのライセンスが用意されています。ANSYSのライセンスは、ネットワークライセンスになるため、購入したライセンス数を上限として同時に利用できます。

ANSYSをインストールするPCの数に制限はありませんが、ライセンスサーバーとして使用するPCが1台必要になります。また、オプションとして追加費用を支払うと、日本語化キットや英語版のマニュアルがついてきます。実際にANSYSを導入する際は、企業が抱えている現状の課題を明確にする必要があります。

業界や課題によっては、必要な機能も異なるため価格も変化します。また、ライセンスの契約と同時に年間のメンテナンス費とバージョンアップ費が必要です。

導入する前にANSYSの無料体験やセミナーも定期的に開催されているため、時間があれば参加することも一つの方法です。具体的な価格については、開発元のアンシス・ジャパン株式会社や国内の代理店に問い合わせましょう。

ANSYS(アンシス)の主な解析機能・使い方

ANSYS(アンシス)の主な解析機能は次のとおりです。

  • 構造解析機能
  • 流体解析機能
  • 電磁界解析機能
  • 光学解析機能
  • 3DCAD連携機能
  • 音響分析機能
  • 安全分析機能

それぞれ詳しく解説します。

構造解析機能

構造解析機能では、振動や伝熱の他に、伝熱・構造解析、音響・構造解析といった複雑な解析を実行できます。

現実では、実験が不可能な自然現象や事故のシミュレーションを行います。製品モデルに対する荷重や解析など詳細な条件設定を定義したうえで、製品を利用する環境に応じて条件設定が可能です。

解析を行った後は、図面やグラフの出力ができるため、用途に合わせて解析結果を閲覧できます。

構造解析機能を使用する事例として、容器包装の設計開発における耐久性を評価する際に圧縮試験が行われます。通常の圧縮試験では製品を試作するため、多くの時間とコストを要します。

しかし、ANSYSでは仮想試験が可能なので、短時間で解析結果を出力することができます。迅速に最適化された形状と低コストで製品開発が可能です。

流体解析機能

ANSYSの流体解析機能は、自動車や医療工学まで幅広い領域で活用されています。複雑な物理現象のモデル化が可能で、半導体製造や排水処理プラントの設計に貢献しています。

流体解析機能を使用するメリットは、試作品を作る工程がなくなるため、本来すべき業務に集中できる点です。実験による測定が困難な場合にデータとして可視化できるため、合理的な説明を行う際に役立ちます。

また、拡張性に特化した並列計算機能や高度なメッシュ機能を利用することで、現実に近い規模の解析が可能です。他にも、自分で値を定義できるため、新規モデルの組み込みや材質の数値をカスタマイズして使用できます。

電磁界解析機能

電磁界解析機能では、自動車のシステムを制御する電子プラットフォームや、都市に設置されているアンテナの空間解析が可能です。大規模な電波やデジタル信号の解析に優れているため、あらゆる分野の複雑な製品設計で役立ちます。

近年では、電源ケーブルや金属電極を使用しないワイヤレス給電と呼ばれる技術が使用されています。

EVやスマートフォンに使用されているワイヤレス給電は、安定した電力供給が可能ですが、伝送距離が短いデメリットがあります。伝送距離が短いと、コイル同士の位置がずれて電力効率が低下してしまいます。

電磁界解析機能では、コイルの位置がずれたときの電力効率を確認できるため、ずれないための対策を発見することが可能です。

光学解析機能

光学解析機能は、SolidWorksやCreoなどの3DCADと連携して、複雑な光反射や分散などの解析が求められる照明器具の設計に向いています。専用の光学設計ツールにより、照度や輝度評価まで柔軟に対応できます。

また、光学性能の解析や材質の最適化、実現性を可視化できるため、光学製品の設計に必要な機能として役立つでしょう。

ANSYSの光学解析機能で人間の視覚モデルをベースに解析を行うことで、色やコントラストの最適化が可能になります。時間帯で変化する視覚の条件を踏まえた評価やリアルタイムにレンダリングが可能になるため、結果的に製品開発のスピード向上につながります。

3DCAD連携機能

3DCAD連携機能には、設計と解析の機能を兼ね備えているため、データの一元管理やCADモデルを迅速に解析できるメリットがあります。一般的なCAEツールでは、追いつかない便利な機能が備えられています。

通常、3DCADで作成したデータが複雑化・大規模化すると、大量の作業が発生してしまいます。さらに、途中で修正が入った際には、手戻りによる遅延やミスが起こりやすくなります。

ANSYSの3DCAD連携機能を活用すれば、工数の削減が可能になるため、設計者のストレスの軽減につながります。また、有効なデータの出力により、設計者の意思決定が早まるため、開発コストの大幅な削減を期待できます。

音響分析機能

近年のEVの普及により、自動車の騒音問題に変化が現れ始めています。

従来の自動車は、エンジンが騒音の要因でしたが、エンジン音がないEVのモーター音や機器の稼働音が表面化しています。環境規制や快適性を追求した結果、自動車の静音化が課題となり、部品メーカーに対して高レベルの騒音対策を求めています。

ANSYSの音響分析機能では、CAEデータと振動・騒音の測定結果を分析することで、人間の認知レベルで音として出力が可能です。実物でシミュレーションを行わなくても、騒音対策に必要な時間とコストの削減を実現します。

安全分析機能

ANSYSの安全分析機能では、製品開発における安全分析手法の一元化が可能です。製品に潜むリスクを抽出することで、故障した際の対策や安全規格で義務付けられている活動を支援します。自動車や航空宇宙の分野で制御システムの開発に携わるエンジニアを対象としています。

ANSYSのモデルベースの安全分析では、故障モードの影響分析や複数の障害を発見するためのシステムに組み込まれた階層故障ネットリングが備えられています。また、複数のプロジェクトの比較やチームに共有できるスケジュールやタスクの管理が可能です。

ANSYS(アンシス)を導入するメリット

ANSYS(アンシス)を導入するメリットは、主に次の3点です。

  • 物理現象を可視化できる
  • 業務スピードの向上に役立つ
  • 製品開発コストを削減できる

それぞれ具体的に解説しましょう。

物理現象を可視化できる

ANSYSのCAE解析を利用することで、あらゆる環境を想定したバーチャルで解析が可能になります。

国内では作り出せない高温環境や猛烈な強風が横断する状況を構築できるため、物理的に危険な実験もシミュレーションで再現できます。身近な例でいえば、スマートフォンの落下解析では、人間が持つ高さから落としたときの衝撃をアニメーションで再現が可能です。

シミュレーションと実物では、必ずしも同じ結果が得られるわけではありません。ただ、シミュレーションの評価を繰り返すことで、製品の完成度を上げられるメリットがあります。

物理的な実験による時間とコストの削減が可能になるため、費用対効果が高い製品開発を実現できます。

業務スピードの向上に役立つ

ANSYSのCAE解析では、要素単位で構造物全体を構築するFEM(有限要素法)などの算出方法を用いたシミュレーションが可能です。実際に測定が困難な動作を可視化できるため、結果的に業務スピードと品質の向上に役立ちます。

しかし、解析機能を使いこなせるエンジニアが必要になるため、企業側にとっては人材の確保が課題になります。特に、初心者の場合は、一定期間中は解析の知識を学ぶ必要があるでしょう。

設計の段階で製品の不良を予測したいときにはシミュレーションが活躍するため、不良トラブルの未然防止につながります。製造業のグローバル化に伴い、次々と新製品を市場へ投入しなければ競合との差が大きくなってしまうため、多様化するニーズへの対応が求められています。ANSYSを導入することで、結果的に企画から市場投入までの時間短縮を実現します。

製品開発コストを削減できる

通常の製品開発には膨大な時間とコストがかかるため、納期の遅延に至る企業も少なくはありません。CAE解析を利用しない場合は、一から材料を加工して試作品を作成する工程があるため、手間がかかります。

たとえば、1回目の試験で変更箇所が多く発生すると、設計変更を行い、新たな試作品を作らなければなりません。さらに再試験と再評価を行うと、材料や人材の確保に莫大なコストがかかります。

ANSYSでは、試作の段階で評価できるため、試作回数や開発コストの削減を実現できます。実物がない段階でも、実際の評価と近い性能データや問題点を洗い出すことが可能です。ANSYSの導入は、企業にとって大きな費用対効果をもたらすでしょう。

ANSYS(アンシス)の導入事例

最後に、ANSYS(アンシス)を導入している企業の事例を紹介します。

本田技研工業株式会社

本田技研工業株式会社では、自動車のエンジンや車体に軽量な材料が多用されるようになり、通常の自動車開発では材料情報の高度化が求められていました。また、近年のグローバル化に伴い、ノウハウの共有が必須だったことからANSYSの導入に至りました。導入後は、シミュレーション機能や情報の一元管理により、業務の効率化を実現しています。

従来では、部門ごとに必要な材料データの性質が異なったり、管理方法を分散したりすることが課題でした。ANSYSの機能により、立場が異なる担当者が必要とするデータを格納するプラットフォームを設けました。

特定のユーザーにアクセス権を付与することで、データの信頼性を担保しています。また、データのリスト化やテンプレートにメモを追加することで、担当者同士の認識のずれを解消させています。

マツダ株式会社

マツダ株式会社では、製品のコンプライアンスの遵守や機能性の判断に悩む課題がありました。開発の初期段階から要件を満たすために、評価する必要に迫られていました。

同社でも設計段階から性能検証やモデルベース開発を行っていましたが、実物による検証に時間を費やしていました。

ANSYSの導入に至ったきっかけは、車体の銀メッキに太陽光による反射が非常にまぶしく、運転に支障をきたしたことでした。同社では、まぶしさの評価を数値化ができていなかったため、早急に対応できる機能を必要としていました。

ANSYSの導入後は、現実と近いシミュレーションを行うことで、問題点の解消に成功しています。検証の際に実物を作る手間がなくなり、第三者へ共有が容易になったようです。

株式会社デンソー

株式会社デンソーでは、電化製品や自動車などの事業展開を行う中で、2009年に起きた金融危機により、企業の経営環境が大きく変化したことで迅速な対応に迫られていました。激しい状況変化に対応するためには、CAEのベースを全社統一することで高品質で開発スピードの向上を重要視しました。

ANSYSの導入後は、拠点が異なるチームへの共有や同一のプラットフォームによる作業を実現しています。設計者にとっては、使い勝手の良いツールであると評価されています。グローバル化に対応している点でANSYSによる基盤を整えられたようです。

まとめ

ANSYS(アンシス)の特徴と導入するメリットについて解説しました。ANSYSを導入したことで、業務改善に至った企業も多く存在しているため、便利な解析機能を活用するメリットは大きいようです。この機会に、ANSYSの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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