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CAE解析とFEM解析の違いとは?コスト削減にもつながる解析方法のメリットとデメリット

ものづくりの現場では、さまざまな手法を用いて製造工程を見直し、コスト削減・利益創出を目指しています。
その点で役立ってきたのが、CAE解析やFEM解析です。では、それぞれの解析方法にはどんな違いがあるのでしょうか。

メリット・デメリットに加え、各解析方法のとらえ方についてもご紹介します。

CAE解析とFEM解析の違いとは?

CAEは、「Computer Aided Engineering」の略語で、直訳すると「コンピュータ支援設計」となります。機械設計のプロセスで、コンピュータを使ってシミュレーションしたり解析を行い、製造過程に入る前に問題をクリアにする役割を果たすのがCAEといえます。

一口に機械設計といっても、作られる製品の用途や使われ方は十人十色です。
そのため、CAE解析は1種類だけでなく、設計されるものに合わせて、いろいろな種類が出てきています。
それらの解析に使われる手段の一つがFEM解析で、主に構造系のCAEで用いられます。
端的に言うと、CAE解析を行う手段の一つがFEM解析であり、目的と手段という違いがあります。

FEMは「Finite Element Method」の略語で、日本語では「有限要素法」となります。
このFEM(有限要素法)ですが、構造物を解析しやすいよう複数の要素に分けることを指します。
例えば、構造物全体を三角形や四角形に細かく分解すると、分析可能な要素(メッシュ)に、頂点(節点)が生まれます。
各節点の間に、さらに中間節点を一つまたはそれ以上入れることで誤差を少なくし、計算精度を高めていくのがFEM解析のやり方です。
FEM解析は、構造物に対する強度解析や振動解析、それぞれの構造が持っている振動的な特性を調べる固有値解析などに使われます。
また、部品の解析では、一緒に使われる他の部品と合わせて調査できる点が、FEM解析の優位性といえます。

CAE解析のメリット・デメリット

CAE解析のメリット・デメリット

CAE解析には、さまざまなメリットがあります。こちらでは主な3つの点をご紹介します。

CAE解析のメリット1:時間や労力、製造コストを削減できる

CAE解析を導入すると、時間・労働力・生産コストを抑えることができますが、これはCAE解析が導入される前の状況を考えると理解しやすいでしょう。
CAE解析が導入される前は、まず製品の仕様やコンセプトを決めた後に設計に入り、正しく設計された図面などをもとに、試作品作りや本格的な製造が行われました。

ですが、試作や製造に入った段階で不具合が出ることも往々にしてあります。
そうなると、最悪の場合は設計初期段階からやり直さなければならず、時間もコストも余分にかかってしまいます。
ですが、仕様やコンセプトを決めた段階や、設計後にCAE解析を行えば、試作や製造の段階で手戻りが発生する確率を下げられますし、手戻りが必要な工程の数も減らすことができます。

CAE解析のメリット2:実験環境の構築やバラエティに富んだシミュレーションがしやすい

CAE解析では、論理式に当てはめて解析計算を行います。
そのことで、実測困難な挙動を確認し、製品品質を向上させることもできます。
仕様やコンセプト、設計段階ではひらめかなかったアイデアを製品に盛り込めるメリットが、CAE解析の醍醐味といえるでしょう。

CAE解析は有用ですが、デメリットも存在します。こちらでは、2つの点を取り上げます。

CAE解析のデメリット1:CAE解析には技術者が欠かせない

CAE解析では膨大な計算が必要なため、解析ソフトを利用するケースが増えていますが、解析実施のためにソフトの設定を行うには、ベースとなる知識が求められます。
一例をあげると、プリポロセッサ・ソルバー・ポストプロセッサなどの知識や知見です。
これからCAE解析を新たに始める企業は、前提となる知識や技術を一から勉強したり、CAE解析の経験があるエンジニアを雇う必要があるでしょう。
単に、CAE解析ソフトがあればよいという問題ではありません。

CAE解析のデメリット2:いくら綿密なシミュレーションをしても、実態と異なることがある

どんな分野であっても、机上の計算と実際に使用した結果が全く一致することは少ないかもしれません。
CAE解析でも同様です。想定しうるさまざまな場面を考え、条件を変えて解析を繰り返すなどして精度を上げることはできますが、あくまでシミュレーション結果であって、完ぺきではないということです。
本格的な製造工程に移行した後や、消費者の元に届いた段階での不具合発生もありえるため、過信は禁物です。

FEM解析のメリット・デメリット

FEM解析のメリット・デメリット

こちらでは、FEM解析のメリットとデメリットについて記載します。
FEM解析の良い点と注意点を頭に入れて解析を行うと、結果に対するバランスの取れた考え方ができるはずです。

FEM解析のメリット:形状にかかわらず解析が可能

FEM解析を使うメリットの一つが、複雑な形状のものでも再現しやすい点にあります。
構造物をメッシュ状に小さな領域に切り分け、それぞれを関数や方程式などを用い、単純計算を繰り返すことで、解析対象全体の挙動を確認する手段を取るため、形状にかかわらず解析が可能になります。
FEM解析は比較的広く使われる手法であるため、情報を集めやすい点もメリットです。

FEM解析のデメリット:解析結果が完ぺきではない

FEM解析のデメリットの一つは、解析結果が完ぺきではない点です。
これは、構造物をメッシュ状に切ってそれぞれを計算し、答えを近似する方法であることが関係しています。

また、精度向上は可能ですが、精度を高めれば高めるほど、解析時間を多く必要とします。
FEM解析では、切り分けたメッシュにある節点の間に中間節点を設けることで精度を上げられますが、その分だけ計算量が増えます。
ただでさえ計算量が多いうえに精度の高さを求めると、コンピュータの性能にもよりますが、想定時間内に解析が終わらないこともあるため、注意が必要です。

FEM解析は、強度を調べたり、プレスして力を加えた場合のシミュレーションには向いていますが、構造物を切ったり、ちぎったりするような用途の形状を正確に表現するのは不向きです。
用途に合った、目的に沿った解析を行うには、FEM解析を含むCAEに関する知識や経験を持った技術者が不可欠である点も、運用面でのデメリットに挙げられるでしょう。

CAE解析とFEM解析はどちらを選ぶべき?

CAE解析は一つに限られません。主なものを考えただけでも、

  • 製品に対して一定の重みを加えたときのひずみなどを見ていく「構造解析
  • 外部から振動を受けたときの影響を調べる「振動モード解析
  • 設置面積が少ない部材に負荷をかけた場合の変形具合を調べる「座屈解析
  • 熱を加えた際の構造物の変化を明らかにする「熱伝導解析

などがあります。そして、CAE解析に用いる手法は、先に説明したFEM解析に加え、

  • 熱解析や流体解析に用いられることが多い「FVM(有限体積法)
  • FVMと合わせて熱と流体を複合して解析する「FDM(有限差分法)
  • 解析対象を粒子の集合体とみなし、高い精度で解析が行える「粒子法

などがあります。CAEで行うさまざま解析を担う手段の一つがFEM解析だということを考えると、解析したい製品や目的に合わせて解析方法を選択する必要があることは容易に理解できるに違いありません。
それが構造系のCAE解析で、強度の調査やプレス加工シミュレーションなどであれば、FEM解析が使用されるケースが多くなるでしょう。

CAE解析とFEM解析の違いやメリット・デメリットを把握してものづくりに活用する

CAE解析は、機械設計による製品開発をスピーディーかつ無駄なく行うのに役立ちます。
そして、FEM解析は、さまざまな種類のCAE解析をする一つの方法という違いがあります。
FEM解析を使ってCAE解析を行うメリットは、構造物などの強度や負荷をかけた際のシミュレーションが可能になることです。
それぞれの特性や手段の優位性を理解して解析すると、手戻りやコストを最小限に抑えられるでしょう。

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