様々な分野で活用されている構造解析ですが、行う目的は分野ごとで多岐に渡ります。
構造解析の中にも手法がいくつかあり、中身が複雑で理解が難しい部分が多くあります。
なのでここでは自動車産業と建築分野に絞った構造解析の概要を解説していきますので、これでこれまで難しそうで触れてこなかった方はぜひ参考にしていただければと思います。
構造解析とは?
構造解析とはひとくちにいってもその意味は広く定義付けするのは難しいですが、ここでは構造物に掛かる負荷と構造部材に生じる変位、応力、ひずみの関係を求める解析を構造解析と定義します。
構造解析を行う事で構造の設計に不可欠な部材の厚みや補強剤の形状を決定したり、自然災害など実験が不可能な事故時における構造物の安全性評価が可能になります。
構造解析はCADなどのソフトウェア上で操作する事になりますが、対象の3Dモデルの構造物に関して力学性状をシュミレーションできるのが利点となります。
こういった利点から製造業や建築分野で主に活用されており、安全性と信頼性を担保するために必要不可欠な解析手法だと言えます。
構造解析の種類
構造解析と一言でいってもその種類は大きく分けて6つあります。
線形静解析
構造解析の基本となる手法です。
「線形」が表す意味は負荷した荷重に対して変形量や変形形状が比例関係にあるという事を表しています。
支持条件や接触条件によって異なりますが、解析対象の構造物の変形度合いや材料の挙動を測りたい時に用いられます。
非線形解析
線形静解析で解析しきれない領域や事故時の安全評価に活用されるのが非線形解析です。
固有値解析
構造の固有振動数と固有モードを求めたい時に用いられます。
振動的な問題で発生する不快な振動や騒音、または破損などのトラブルを避けるためにどのくらいの周波数でどのように振動するか?を解析し対策を練ることが可能になります。
座屈解析
座屈解析は、座屈荷重(構造物を不安定にさせる臨界荷重)と座屈モード形状構造物の座屈応答に関係する特徴的な形状)を決定するのに使用されます。
動解析
動解析では、位置や速度等の状態量が平衡状態のもと、時間とともに変動する振動現象や外力が変化する現象を考えます。
動的問題は、変位が時間の関数で運動しているときの状態を表す運動方程式(微分方程式)を用いて、動的なつり合いを解きます。
熱伝導解析
熱伝導解析とは 熱量、初期温度、物性(熱伝導率、比熱、比重など)、境界条件などを設定し、数値解析により温度分布を求めるものです。 数値解析手法は有限要素法を用いています。
これら6つの手法をまとめて「構造解析」と呼ばれています。
構造解析を行う目的
構造解析を行う大きな目的は「安全性の評価」を行う事です。
以下に具体的に記載してみましたのでご覧下さい。
安全性を評価するため
仮に自動車産業が構造解析を行った場合、構造解析を用いたソフトウェア上でシュミレーションをすることで衝突時の破損状況、車両の変形、ボディの強度を測る事ができ、実際に衝突させることなく安全性を確かめる事が可能です。
建築分野で活用される例だと実験が困難な地震により倒壊する建物の応力や変形の力学性状を明らかにすることで適切な部材の選択や最適な設計が可能となります。
上記の2つの産業例を出しましたが、それ以外の分野でも応用可能です。
設計段階で必要な部材を決定するため
冒頭でも少し触れましたが、構造解析を通して部材の板厚や補強材の形状を決定するのも構造解析を行う目的のひとつです。
変位、応力、ひずみの関係を明らかにすることで製品を作る前の段階で対象の構造部材の強度が保たれているのかを確認することができます。
こうして事前に必要な部材や強度が確認できることで修正などの手間がかからなくなります。
構造解析を行う上での必要な知識
構造解析を行う前に必要な前提知識が3つあります。
工学系の基礎科目の理解
構造解析に限らずCAEを用いて解析行うためには工学系の基礎科目である、材料力学、機会学力、熱電熱力学、流体力学を理解する必要があります。
特に「変化量」や「応力」を算出する材料力学の知識は構造解析でも必要不可欠なので身に付けておきましょう。
FEMの基礎理論の習得
有限亜素法と呼ばれるFEMの解析理論も必要となります。
CAEソフトウェアを出している会社が実施している基礎セミナーなどを利用すると効率よく習得できます。
CAEソフトウェアの利用知識
ほとんどのCAEソフトウェアは、ソフトウェア上で入力(プリプロセッサ)、解析ソルバー(計算)、出力(ポストプロセッサ)の順で起動して操作します。
ソフトウェアを使いこなせるようになれば適切な入力データを作成したり、的確に出力を評価することが可能です。
構造解析の注意点
構造解析を行う前にFEM特有の問題点を頭に入れておきましょう。
FEMでは応力の集中する箇所は計算精度が良くない
これはFEM特有の問題点なのですが、応力集中部位の計算精度は高くないということです。
応力集中部位で起こるFEM特有の問題点として、メッシュのサイズによって応力値が変化する点やメッシュを細かくしていくと応力集中がどんどん大きくなっていくという点が挙げられます。
つまりどういうことかというと、応力集中が発生する箇所は応力の勾配がきつくなり、メッシュが粗いとその急激な変化を数値化することができず、応力が集中すべき箇所に集中が発生しないという現象が起こります。
反対にメッシュを細かくしていくと際限なく大きな応力が計算されることになり、これを対策しようと強度をあげようとすると結果的に強度が過剰な製品ができてしまいます。
よって応力集中箇所がある場合は応力集中係数と切り欠き係数の違いを利用して評価していくのが一般的です。
構造物の安全評価が行える『構造解析』とは? まとめ
今回は構造解析について解説しましたがいかがでしたか?
構造解析を行う事によって、実験が難しい環境での安全性の評価や、試作前に部材の耐久性や適切な部材の形状を決定できることが分かったかと思います。
構造がないと流体も電磁場も起こらないのでCAEの中でも特に重要な解析手法なのは確かです。
それでは最後におさらいとして箇条書きでまとめたものを記載して終わろうと思います。
- 構造解析は構造部材に生じる変位、応力、ひずみの関係を明らかにして必要な部材や安全性を評価するための解析。
- 構造解析の手法は大きく分けて6種類ある。
- 構造解析を行うためには工学系の基礎知識やCAEソフトウェアの利用知識、FEMの基礎知識が必要。
- 応力集中部位ではFEM特有の問題点が生じるため、そのときは応力集中係数と切り欠き係数の違いを利用して集中部位を解析する。