日本の製造業は、かつては世界を牽引する存在として君臨しており、高度な技術力や品質力、現場力と呼ばれる独自の強みを持ち、世界から高い評価を受けてきましたが、近年は生産性低下が課題となり、かつての輝きを失いつつあります。
それでもなお、日本の製造業は国内産業の中で高い地位を保っています。その背景には、長年培われてきた現場力の存在が大きいと言えるでしょう。
現場の従業員たちは、日々改善活動に取り組み、品質向上やコスト削減に貢献してきました。しかし、長年の改善活動によって、製造現場における大きな改善点を見つけることは難しくなってきています。
そんな中、見過ごされがちなのが物流改善です。物流は、製造業において製品が顧客に届くまでのすべての工程を指し、製品の品質やコストに大きな影響を与えます。物流改善には、多岐にわたる取り組みが考えられます。
例えば、コスト削減の一環として、物流コストの内訳を細かく分析し、無駄な部分を徹底的に見直すことが重要です。
また、3Mの徹底的な排除や各作業工程における時間や資源の消費量を正確に把握し、管理することも欠かせません。
これらの取り組みを通じて、物流システム全体を最適化し、よりスピーディーかつ正確な物流を実現することが可能です。
今回は、物流コストにかかる費用の内訳や最適化するポイントを解説します。
物流コストにかかる費用の内訳とは
物流コストとは、商品や製品を目的地まで届けるためにかかる費用の総称で、内訳は、以下のような多様な要素によって細かく分かれます。
| 支払形態 | 外注先や社内での物流業務に伴う費用 |
| 物流プロセス | 商品の仕入れから顧客への納品までの費用 |
| 機能 | 輸送、保管、梱包などそれぞれの機能に費やされる費用 |
例えば、総額が同じ物流コストであっても、どの費用項目にどれだけの金額が費やされているのか、という内訳を細かく見ていくことで、より詳細な状況を把握することができます。
これらの内訳を分析することで、物流コストにおける課題を具体的に特定し、改善策を検討することが可能です。
支払形態
支払形態の物流コストは大きく2つに分類できます。
| 支払物流費 | 外部の物流業者に委託して行う物流業務に対して支払う費用 |
| 社内物流費 | 自社内で実施する物流業務にかかる費用 |
支払物流費には、トラックや鉄道、船舶を用いた輸送費、商品を保管する倉庫の賃料、商品を梱包する作業を外部に委託した場合の費用などが含まれます。つまり、自社以外の企業に支払う物流に関する全ての費用が、支払物流費に該当します。
一方、社内物流費には、自社が保有するトラックの購入費や維持費、燃料費などが代表的な例です。
また、物流業務を効率化するためのシステム導入費用やシステムを維持するための経費も含まれます。
さらに、物流に関わる従業員の人件費、自社で倉庫を保有している場合はその倉庫の維持費や光熱費なども社内物流費に分類されます。
支払形態別の物流コストは、それぞれの費用項目を把握し、適切に管理することで、企業全体の物流コストを最適化することが可能になるでしょう。
物流プロセス
物流プロセスにおける内訳は、物流コストが発生した段階別に大きく3つに分けられます。
| 1.製造仕入れ段階（調達物流費） | 原材料の調達や輸送に関連する経費 |
| 2.社内対応段階（社内物流費） | 部品や資材の工場内での移動、完成品の検査を行う際の費用 |
| 3.販売出荷段階（販売物流費） | 製品を顧客へ販売し、配送する際に発生する費用 |
製造仕入れ段階の経費は、調達物流費と呼ばれ、原材料を仕入れて自社の工場へ輸送するまでの間にかかる費用が該当します。
次に、社内対応段階では、社内物流費が発生します。製品が完成するまでの間、社内で発生する物流に関する全ての費用が含まれます。
最後に、販売出荷段階では、販売物流費が発生します。商品の梱包やラッピング、タグ付けなどの作業にかかる費用も含まれます。
各段階で発生する費用を明確にすることで、物流コストの削減策を検討することが可能になるでしょう。
機能
物流活動における具体的な業務ごとにコストを分けることで、どの部分にコストがかかっているのかを詳細に把握できます。
一般的に、機能別物流コストは「輸送費」「保管費」「荷役費」「物流管理人件費」の4つに大別されます。
機能別物流コストについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
物流コストの内訳を最適化するポイント
物流コストは、運送費、保管費、梱包費、人件費など、多岐にわたります。それぞれのコストがどのように発生し、どのような要素が影響しているのかを把握することは、最適化の第一歩です。
以下では、物流コストの内訳を最適化するポイントをご紹介します。
輸送コストを削減する方法については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
物流工程をマニュアル化で可視化する
物流プロセスにおいて、非効率な工程や個人のスキルに依存した作業が存在すると、コスト削減は容易ではありません。
このような状況を改善し、コスト削減を実現するためには、マニュアル化による作業の標準化が有効です。
マニュアル化は、物流業務における様々な手順を明確に定め、可視化することを意味します。
例えば、物流倉庫における入荷や収納、出荷など一連の作業について、誰がいつどのように行うべきかを詳細に記述したマニュアルを作成することで、業務のムラやムダを減らし、作業効率を向上させることができます。
マニュアル作成にあたっては、製造業の現場改善に用いられる「5S」の考え方を参考にすると良いでしょう。
5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、躾の頭文字をとったもので、これらを実践することで、作業環境を改善し、作業効率を向上させることができます。
物流現場においても、5Sの考え方を導入することで、作業場所の整理整頓を行い、必要なものがすぐに取り出せるような環境を整えることができるでしょう。
物流拠点を減らす
物流拠点を増やすことで、商品を迅速に顧客へ届けられ、業務効率は向上する一方で、多数の拠点の運営には、倉庫の維持費や管理費用など、多くのコストがかかります。
近年、宅配サービスの高度化により、都市部を中心に1〜2日での配送が可能となり、物流拠点間の輸送時間短縮の必要性が以前ほど高まらなくなってきました。
そのため、多くの企業が物流拠点を集約し、コスト削減を目指しています。
維持費を見直す
物流コストの見直しにおいて、人件費や保管費、情報処理費などの維持費を効率的に削減することで、全体的な物流コストの低減に繋がります。
人件費については、作業マニュアルの導入や工程の見直しによって、作業に必要な人員数を最適化することができます。
また、フォークリフトなどの機械類を導入することで、人手に頼っていた作業を自動化し、生産性を向上させることも可能です。
保管費に関しては需要予測を正確に行い、適切な量の在庫を保持することで、保管スペースの無駄をなくし、光熱費などの維持費も削減できます。
さらに、在庫管理システムの導入によって、リアルタイムで在庫状況を把握し、最適な在庫管理を実現できるでしょう。
情報処理費は、ITシステムの導入やクラウドサービスの活用など、新しい技術を取り入れることで、コスト削減を実現できるケースもあります。
人件費、保管費、情報処理費のそれぞれに対して、様々な改善策を講じることで、物流コストの削減を行うことができるでしょう。
物流業務をアウトソーシングする
物流業務を外部の専門企業に委託するアウトソーシングのメリットとして、物流コストの可視化が挙げられます。
自社で物流業務を行っている場合、物流にかかる費用がどこでどのように発生しているのか、詳細な把握が難しいケースが多く、ブラックボックス状態になりがちです。
しかし、物流業務をアウトソーシングすると、毎月請求書が届くため、費用対効果を客観的に評価できるようになり、物流コストの無駄を省き、効率的な物流体制を構築することができます。
また、物流業務は、専門的な知識や経験が必要となるため、自社で実施しようとすると、人員の確保や教育に多くの時間と労力を費やす必要があります。
しかし、物流業務を外部に委託することで、自社は商品の開発や製造、営業などのコア業務に集中できるようになり、企業全体の生産性を向上させることができます。
さらに、自社で物流業務を行っている場合、倉庫の賃貸費やトラックの購入費、物流担当者の給与など、多くの固定費が発生します。
アウトソーシングでは、これらの固定費を削減し、変動費中心の経営に移行することで、企業の収益性を高めることができます。
また、アウトソーシングによって、既存の物流資産を売却したり、賃貸に出したりすることで、現金化やキャッシュフローの改善を図ることも可能なため、新たな事業への投資や債務の削減など、経営戦略の幅を広げることもできるでしょう。
物流業務の管理ツールを導入する
物流管理システムを導入すると、従来、人手で行っていた作業をシステムに置き換えることで、作業ミスの減少や作業効率の向上を実現できます。
また、配送情報の一元管理が可能になり、リアルタイムで配送状況を把握できるため、迅速な対応が可能です。さらに、倉庫の在庫管理を最適化することで、倉庫回転率の向上にも繋がるでしょう。
物流管理システムでは、運賃に関する詳細なデータを分析することも可能なため、より最適な輸送手段やルートを選択し、運賃コストの削減を実現できます。
物流コストの内訳を最適化して利益を最大化しよう
今回は、物流コストにかかる費用の内訳や最適化するポイントを解説しました。事業拡大やEC市場の拡大に伴い、物流コストは企業にとって無視できない負担となっています。
利益率の向上と企業の持続的な成長のためには、物流コストの削減が不可欠です。
物流コストを削減することで、企業はより多くの利益を確保し、競争力を高めることができます。
この記事を参考に、貴社の物流コスト削減に取り組んでみてください。
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