エンジニアリング向けの生成AIが数多く開発されているなかで、実務での活用が期待されているのが3Dモデルを直接生成できる「BrepGen(ビーレップジェン)」というAI技術です。現在開発中であるこの技術について、具体的に何ができるのか気になっている方も多いでしょう。
そこでこの記事では、BrepGenの概要や従来の生成AIとの違い、リリース後に活用するメリットをわかりやすくまとめました。Autodesk Fusionに搭載予定の機能であるため、Autodeskユーザーはぜひ参考にしてみてください。
BrepGenとは?CADの未来を変える生成AI技術
BrepGenは、現在開発中の「CADモデルを生成できるAI技術」です。
従来の生成AIがメッシュや点群を出力するのに対し、BrepGenでは立体モデルを表現するための主要なデータ形式のひとつであるB-rep形式の3Dモデルを生成できます。
まずは、BrepGenの概要と、従来の生成AIや他の生成AI研究との違いを紹介します。
- Autodesk ResearchとSFUが共同開発中する生成AI技術
- 従来の生成AI(メッシュ・点群)との仕組みの違い
- 他の生成AI研究(DeepCAD・SolidGen)との関係性
Autodesk ResearchとSFUが共同開発中する生成AI技術

BrepGenは、Autodesk ResearchとSimon Fraser Universityによって開発中の生成AI技術であり、「B-repを直接生成できる初の拡散モデル」として2024年に論文が公開されました。
(参考:Autodesk「BrepGen: A B-rep Generative Diffusion Model with Structured Latent
Geometry」)
生成した点群にノイズを加えてから除去する「拡散法」という技法を用いつつ、自動でノイズ除去を行うことにより、最適な3Dモデルが自動で生成されていきます。
従来の生成AI(メッシュ・点群)との仕組みの違い
エンジニア領域で活用されてきた従来の生成AI技術は、「視覚的な3Dモデルを生成する」ことが目的であり、細かな調整などを加えることができませんでした。一方でBrepGenは、最初から3DCAD環境で扱える「B-rep」を生成できるのが特徴です。
| 従来の生成AI | BrepGen | |
|---|---|---|
| データ形式 | メッシュ・STL・点群 | 自由に編集できるB-rep形式 (NURBS対応) |
| 編集の容易さ | 編集のために細かな調整が必要になる | 生成後すぐに編集できる |
| トポロジ | 曖昧 | 明示的に扱える |
特に、図形や3Dモデルデータの配置・接続を復元し、綺麗なモデルに仕上げてくれる「トポロジ」は、BrepGenが優れています。従来の生成AIでは、崩れてしまいやすい部分も正確につくり上げてくれるため、生成後の微調整を最小限に抑えやすいと期待されています。
なお、AIの仕組みからしっかりと理解していきたい方は、AI関連の資格取得を視野に入れてみるのはいかがでしょうか。以下の記事ではおすすめの資格情報を解説しています。
他の生成AI研究(DeepCAD・SolidGen)との関係性

生成AIの研究は、BrepGen以外にも次のようなものが実施されています。
- マサチューセッツ大学が実施する「DeepCAD」
- Autodeskが別途実施している「SolidGen」
そのなかでも、BrepGenは閉じた3Dモデルをつくり出せるのが強みです。
たとえばDeepCADは、過去の大量のCADモデルを学習し、次につくる形状や操作を予測できる点です。一方でSolidGenは、B-rep対応の3Dモデル(中身は空洞)を丸ごと生成できます。しかし、閉じたモデルを生成することができませんでした。
これに対しBrepGenは、そのまま実務で活用できる閉じた3Dモデルである水密B-repとしてデータの出力が可能です。生成後に発生する微調整の無駄を減らしやすくなると期待されています。
なお、現在提供されているAutodesk Fusionには、SolidGenの仕組みが搭載されています。
ジェネレーティブデザイン機能として利用できるため、詳しくは以下の記事をチェックしてみてください。
BrepGenで生成できるB-rep形式でできること
従来のAI生成では、見た目だけのメッシュや点群が多く、設計現場で使うには再構築が必要でしたが、BrepGenなら形状・面・エッジ・トポロジを保持したまま出力できると期待されています。
ここではBrepGen、そしてそこから生成されるB-rep形式のモデルでできることをわかりやすく解説します。
- CADとして扱える編集可能データとして出力される
- CAM・CAE・PLMへスムーズに連携できる
CADとして扱える編集可能データとして出力される
BrepGenで生成したB-rep形式のモデルは、Autodesk FusionやInventorなど、3Dモデルを扱えるCADソフトでそのまま読み込み、次のような編集が可能です。
- 寸法変更
- フィレット付け
- 穴加工
従来の生成AIは、メッシュデータとして出力されますが、見た目が綺麗である一方、制御点やスケッチの履歴がないため、再度同じモデルを手動でつくり直さなければならないという手間が発生していました。
これに対し、BrepGenなら特定のモデルをAIで生成し、寸法などの微調整をするだけで製造へ進めます。ただの参考としての出力ではなく、実務で使える出力として活用できると期待されています。
CAM・CAE・PLMへスムーズに連携できる
BrepGenで出力できるデータは、手動で作成した3Dモデルと同じように扱えるB-rep形式であるため、以下のような次の工程へ直接移行することも可能です。
- CAM
- CAE
- PLM
これまで発生していた生成されたモデルの再構築や詳細チェック、つくり直しをショートカットできます。単なるアイデア出しのためのだけのAIではなく、そのまま量産プロセスへ移行できる業務効率化AIとしての活用の可能性があります。
BrepGenの主な活用シーン一覧

BrepGenは「AI生成したモデルを、そのまま設計プロセスに活用できる」のが特徴です。
そのため以下のように、企画段階から量産前の検証まで、幅広いシーンでの活用が期待されています。
| 活用シーン | 内容・業務イメージ |
|---|---|
| アイデア設計 | 設計要件を入力することで初期モデル案を複数生成できる |
| コンセプト比較 | 意匠形状や寸法の違う3Dモデルのバリエーションを即座に比較できる |
| 設計途中のモデル補完 | 欠損データや途中保存データをB-rep形式として修復できる |
| モーフィング | 2つの形状の中間デザインを生成できる |
特に、実務での効果を期待できるのが「初期検討」「設計変更」です。
従来の生成AIはメッシュデータを出力するため、修正が難しく製造プロセスへの移行が困難でしたが、BrepGenは編集可能なB-rep形式で生成できます。そのため、人の設計意図を保ったままAIの生成力を組み合わせることが可能です。
よって、「0→1のアイデア出し」「部分的な補完」をAIに任せ、人は設計品質やコストに関する意思決定に集中できる状態をつくり出せるようになるでしょう。
BrepGenだけでなく3D設計の基本をセミナー講習で学ぼう

BrepGenで3Dモデルを生成できると言えど、3DモデリングができるCADソフト自体を操作できなければ設計を進行できません。
そのため、もしAutodesk FusionでBrepGenに対応したいと考えている方は、AIの前に、基本操作や実務的な使い方を学べる以下のセミナー講習で基礎を学びましょう。ソフトの全容を学べる体系的なカリキュラムを通じて、短期間で初心者から卒業できます。
セミナー名 Autodesk Fusionセミナー講習 運営元 GETT Proskill(ゲット プロスキル) 価格(税込) 41,800円〜 開催期間 2日間 受講形式 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング
BrepGenがリリースされるメリット
BrepGenのリリースはまだ未定ですが、今後リリースされることになれば、設計効率が格段に上がると予想されます。ここでは、リリース後に活用した場合のメリットを、実務シーンを交えながら解説します。
- デザインの初期検討を効率化できる
- 複雑な自由曲面・二重曲面を自動生成できる
デザインの初期検討を効率化できる
BrepGenは、条件を入力するだけで、複数の3Dモデル案をB-rep形式で自動生成してくれるため、デザインや設計の方向性を定めたい場合に役立ちます。
たとえば設計業務では、要求仕様から最初の形状を作る初期検討に時間がかかります。
特に人力で対応した場合には、比較案の数が多いほど、労力がかかる状況でした。
対してBrepGenがあれば、条件を与えるだけで即座に複数案を準備できます。
生成後に微調整を加えられるほか、新たな条件を与えて再生成することも可能であるため、すばやく社内レビューまで進行できるのがメリットです。
複雑な自由曲面・二重曲面を自動生成できる
BrepGenがあれば、経験が浅いモデリング担当者では作成が難しい場合であっても、生成AI機能にサポートしてもらえば、次のような形状の作成が可能となります。
- 自由曲面
- 二重曲面
特に3Dモデリングでは、自由曲面を使うケースが多い一方で、面の連続性や形状の滑らかさを保つ設計が難しく、ベテラン頼みになりがちです。対して、BrepGenなら面・稜線の接続関係を保持しながらNURBS曲面を生成できるため、曲面品質も維持しつつ3Dモデルを用意できます。
BrepGenが搭載されるのはAutodesk Fusionの予定

Autodesk社は、2025年のカンファレンス「Autodesk University 2025(AU 2025)」において、Autodesk Fusionに「編集可能なB-repジオメトリを生成できる生成AI機能(BrepGen)」を導入すると発表しました。
具体的なリリースのタイミングは発表されていませんが、BrepGenの研究成果が、そのまま実務に乗るソフトウェアとしてAutodesk Fusionに取り込まれれば、これからの3Dモデリングの当り前を変えるかもしれません。
(参考:オートデスクニュース「Autodesk、Fusion の最新 AI 機能を発表 〜生成 AI とオートデスク アシスタントを統合し、製品ライフサイクル管理の効率化とチーム連携を強化〜」)
「AU 2025」で発表されたその他の技術
AU 2025では、BrepGenによる生成機能以外にも、Autodesk製品で使える複数のAIや自動化機能が発表されています。代表的なものは以下の通りです。
- Autodesk Assistant(エージェント型AI)の統合
- スケッチの自動拘束・図面作成の自動化
- Neural CAD(CAD基盤モデル)の発表
これらの発表より、Autodeskは今後の製品提供を単なる「CADソフトの拡張」で終わらせず、「AI×CAD×製造プロセス」の統合プラットフォーム化を目指していると考えられます。
設計だけでなく、図面管理、PLM、チームコラボレーションまで含めた一連の流れをAIで対応することにより、ものづくりを根本から効率化しようとしているのかもしれません。
BrepGenについてよくある質問
ここまで紹介してきたBrepGenについて、よくある質問をFAQ形式で回答します。
BrepGenについてまとめ
BrepGenは、生成AIで出力した3DモデルをそのままCADとして編集できる「B-rep形式」が採用された最新の生成技術です。複雑な自由曲面・二重曲面の自動生成も可能であり、破損データの補完やモデル修正にも対応できます。
ただし、Autodesk社より発表はされているものの、現在開発中の技術です。
リリースまで時間がかかるため、今後の進展から目が離せません。