近年における「DX推進」の流れから、「AIエンジニア」の需要が高まっています。そのため、業務や必要なスキルに興味がある方も多いのではないでしょうか?
今回は、AIエンジニアの仕事内容や平均年収、求められる知識とスキルについて紹介します。本記事を読めば、未経験からAIエンジニアを目指すために必要な情報を網羅的に知ることができるでしょう。IT分野への転職を希望する方は、ぜひ最後までご覧ください。
AIエンジニアとは?他のITエンジニアとの違い
AIエンジニアとは、主にAIプログラミングを利用して、AI技術を搭載したシステムやソフトウェアを制作するエンジニアのことです。企業によっては、データ解析のみの場合や、モデルの開発とデータ分析どちらも行う場合があります。
一方で、データベースエンジニアやインフラエンジニアなどの他のITエンジニアは、AIが搭載されたシステムを使うことはあっても、AI自体を制作することはありません。
したがって、AIエンジニアと他のITエンジニアには、「AIシステムを作る側か・使う側か」という点に大きな違いがあります。
AIエンジニアの主な仕事内容
AIエンジニアは、幅広い業務に携わります。ここでは「AIエンジニアの主な仕事内容」について、次の5つに分けて紹介します。
- モデル設計
- データの収集・管理
- AIモデルの開発やデータ分析
- モデルのテスト・評価
- レポート作成・共有
AIエンジニアの仕事内容は、企業によってさまざまですので、一つの参考としてご覧ください。
1. モデル設計
既存のAIモデルで解決できない課題に対しては、「モデル設計」を立案する場合もあります。
モデル設計を行う際には、論文や過去の自社開発モデルを参考に考えます。モデル設計業務は、AI分野の知識量や情報収集力がもっとも必要になる業務です。
2. データの収集・管理
AIモデルの開発やデータ分析を行うために、「データの収集」を行う場合もあります。クライアントや関係部署から渡されたデータが不十分であれば、地方公共団体が提供する「公共データ」や、ときには自分でデータを作成し集める必要があります。
また、データベースエンジニアが在籍していない場合には、AIエンジニア自らデータを管理するケースもあります。
3. AIモデルの開発やデータ分析
AIエンジニアの本質となる業務が、「AIモデルの開発とデータ分析業務」です。
AIモデルの開発業務は、設計した内容に従いモデルをプログラムに落とし込みます。一方で、データ分析業務では収集したデータをAIモデルにあてはめ、データの規則性や因果関係などを分析します。
4. モデルのテスト・評価
AIモデルを開発した場合には、「テスト」を行います。AIエンジニアが行うテストは、主に次の2つです。
テスト項目 | テスト内容 |
動作テスト | プログラムにエラーがなく、設計通りに実装されているかを確認する |
検証テスト | 未知のデータを使用して、既存のモデルと精度を比較しAIモデルの有効性を客観的に検証する |
そして、ひと通りテストが完了したら、開発したAIモデルが「どれくらい企業に貢献できるかどうか」を定量的・定性的に「評価」します。
定量評価でよく用いられるのは「KPI」と呼ばれる指標で、「会社への貢献度合い」を示します。
また、評価はデータ分析業務のあとにも実施され、一般的に分析結果に基づいて見直された内容により、「どれくらい業務が改善されたかどうか」を評価します。
5. レポート作成・共有
AIエンジニアの仕事には、開発モデルやテスト結果について「レポートを作成し共有する」業務も含まれます。
たとえば、AIモデルを開発した場合のレポートには、次のような内容をわかりやすくまとめます。
- 企業が抱える問題や目標
- 課題に対して、どのような仮説に基づいてAIモデルの立案・開発したか
- 開発したAIモデルは何をどれくらい解決できたか
そして、作成したレポート内容をクライアントや自社の開発グループ内で、「プレゼンテーションを行い共有する」場合もあります。
AIエンジニアのやりがい
AIエンジニアのやりがいは、「最先端技術や情報に触れられる」ことです。
AI分野は、世界的に研究・開発が進められているため、技術革新が常に起こっています。そのため、時代を変える技術が生まれる瞬間を当事者として見られる魅力があります。
また、世の中の人の暮らしを変えるような新しい技術を自分自身で生み出せれば、大きなやりがいを感じることでしょう。
AIエンジニアの適性がある人の特徴
AIエンジニアは専門性が高く、誰でもできる職業ではないため、向き・不向きが存在します。ここでは「AIエンジニアの適性がある人の特徴」について、次の3つを紹介します。
- 新しいものへの好奇心が強い
- プログラミングに抵抗がない
- 地道な作業を楽しいと思える
AIエンジニアに興味がある方は、ご自身の性格と比べながら、確認してみてください。
新しいものへの好奇心が強い
AI技術は目覚ましい発展を遂げており、常に新しい技術や知識をインプットしなければ、AIエンジニアとして活躍することは困難です。
「新しいものへの好奇心が強い」方は、新しい情報の収集を積極的にできる傾向があるため、AIエンジニアの適性が高いといえます。
プログラミングに抵抗がない
AIエンジニアの業務の大半が、「AIプログラミング」を行う時間です。プログラミングに苦手意識がない方は、仕事に強制感を感じずに、楽しみながら取り組むことができます。
そのため、「プログラミングに抵抗がない」方は、AIエンジニアに高い適性があります。
地道な作業を楽しいと思える
AIと聞くときらびやかなイメージを想像する方も多いですが、実際のところはプログラミングのエラーと何時間も向き合うような、地道な業務も多く存在します。
そのため、積極的に人と関わることに興味がある方よりは、「地道な作業も楽しいと思える」方に適性があります。
【最新】AIエンジニアの平均年収相場
厚生労働省の「職業情報提供サイト jobtag」によると、AIエンジニア全体における平均年収は「約558万円」です。
また、AIエンジニアの平均年収相場を深く知るために、「地域ごとの平均年収」について次の表にまとめました。
都道府県 |
AIエンジニアの平均年収 |
東京都 | 約565万円 |
大阪府 | 約638万円 |
福岡県 | 約620万円 |
千葉県 |
約571万円 |
上記の表より、経済の中心都市である「東京都・大阪府」の平均年収と、地方の「福岡県・千葉県」の平均年収との差が、大きく開いていないことがわかります。
平均年収の地域差が小さい理由として、AIエンジニアは働く場所に限定されることがなく、地方でも稼ぎやすいことが挙げられます。AIエンジニアとして高い技術力を身につければ、地方でも十分稼げる魅力的な職業といえるでしょう。
AIエンジニアの需要が高い業界
AIエンジニアは、さまざまな業界で活躍の場を広げています。
ここでは「AIエンジニアの需要が高い業界」について、次の5つを紹介します。
- 物流業界
- 農業
- インフラ業界
- 製造業
- 医療業界
物流業界
物流業界では、近年におけるネットショッピングの需要拡大に伴う人手不足を解消するために、AIの活用が進められています。
たとえば、「ヤマト運輸」では「荷物量予測AI」を導入することで、配達員やトラックの数を自動的に適正配分することに成功し、大幅に計画工数を減らすことができています。
ヤマト運輸の例にあるように、物流業界全体でAIシステムの必要性が高まっているため、AI開発ができるAIエンジニアが求められています。
農業
農業就業人口の減少に伴い、省力化に役立つAIシステムの導入が進んでいます。
たとえば、「デンソー」では浅井農園と協力し、AIの画像認識技術で収穫の自動化を試みる研究開発が行われています。
デンソーの事業のように、農業にAI技術を活用する「スマート農業」が注目を集めているため、農業においてもAIエンジニアの高い需要があります。
インフラ業界
インフラ業界では、「JR東日本」の鉄道設備の障害発生時に原因を特定するシステムや、「東京電力」のAIを活用した電線異常の検知サービスなど、インフラメンテナンスを効率化するシステムにAIの活用が見られます。
インフラ業界では、「画像認識や異常検知技術が得意なAIエンジニア」の高い需要があります。
製造業
製造業では、属人化や技術者不足を解決するために、AIによる「生産ライン・作業者の異常検知システム」が盛んに開発されています。
たとえば、「日立」は「作業員の行動を監視・ルール違反者を検知するシステム」を提供し、監督者の労力を大幅に軽減することに貢献しています。
製造業では、工場にAI技術を活用した「スマートファクトリー化」の取り組みが注目されているため、AIエンジニアの需要が高い業界の一つです。
医療業界
近年AIの画像認識技術の向上に伴い、病気を早期発見するシステムや新薬の開発にAI技術が採用されています。
たとえば、「富士フイルム」のAIシステムは、胸部CT画像からコロナ肺炎の特徴が見られる部分をマーキング表示し、医師の診断に役立てられています。
医療業界では、医療機器メーカーを中心にAIエンジニアの高い需要があります。
AIエンジニアの現状と将来性
AIエンジニアの現状の需要や将来性に不安を感じ、目指すべきか迷っている方も多いでしょう。
ここでは「AIエンジニアの現状と将来性」について紹介します。
厚生労働省等のデータを踏まえて解説していきますので、参考にしてみてください。
AIエンジニアの現状
AIエンジニアの現状は、製造業やインフラ業界、医療業界など、さまざまな業界で高い需要があり、多くの企業から必要とされています。
需要の高さを測る目安として、「2022年時点の平均年収」を他の職業と比較してみましょう。
職種 |
平均年収 |
AIエンジニア | 約558万円 |
プログラマー | 約523万円 |
Webデザイナー |
約478万円 |
上記の表より、相対的にみてもAIエンジニアの需要が高いことがわかり、AIエンジニアの市場全体が活気付いていることが見て取れます。
AIエンジニアの将来性は明るい
AIエンジニアの需要は今後も伸び続け、「AIエンジニアの将来性は明るい」といえます。実際、ITコンサルティング会社のITRが公表した「IT Market View:AI市場2021」によると、2025年にはAIの市場規模は「1,200億円」にまで到達し、2019年から約3倍の拡大が予測されています。
AI市場の拡大は今後も続くことが見込まれるため、AIエンジニアの将来性は当分期待できるでしょう。
AIエンジニアに求められる知識・スキル
先述した業務内容を踏まえて、ここでは「AIエンジニアに求められる知識やスキル」について、次の3つを紹介します。
- AIプログラミングの高い実装力
- 統計・数学の深い知識
- 英語
特にAI学習が未経験の方は、学習する際の参考としてご覧ください。
AIプログラミングの高い実装力
AIエンジニアには、「AIプログラミングの高い実装力」が欠かせません。理由は、AIエンジニアが担ういずれの業務においても、PythonやTensorflow、R言語などのAIプログラミングを使うからです。
また、AIモデルが実装された「パッケージ」や、基本的な機能が実装されている「ライブラリ」は、参考書がなくてもある程度使いこなせるくらいの高い技術力が求められます。
統計・数学の深い知識
AIモデルやアルゴリズムの構造には、「統計・数学」の理論が使われています。
そのため、AIエンジニアは次のような「統計と数学の深い知識」の理解が必要です。
- 統計分布
- 確率統計
- 微分積分
- 行列
- 指数対数関数
また、AIの分野によって必要になる数学分野が異なるため、幅広い数学分野を習得しなければなりません。
英語
AIエンジニアには、「英語力」も必要です。
英語が必要な理由は、AI分野は世界的に開発されている分野であり、「英語で書かれた論文やマニュアル」から情報を得ることが多いからです。
業務をスムーズに行ううえでは、中学・高校レベルの英単語や文法を問題なく読解できる必要があります。
AIエンジニアのスキル習得に役立つ資格
AIエンジニアに必要なスキルは、資格勉強を通じて習得することができるものもあります。
ここでは「AIエンジニアのスキル習得に役立つ資格」について、次の2種類を紹介します。
- E資格
- G検定
それぞれの試験概要を紹介しますので、参考としてご覧ください。
E資格
「E資格」とは、確率統計等の応用数学や機械学習の基礎、深層学習のアルゴリズムなど、AIエンジニアに必要とされる基本的な知識を習得できる資格です。
また、E資格は「JDLA認定プログラム」を過去2年以内に修了している人でなければ、受験を認められていません。AI研究所では、AI未学習者でも短期間で受験資格を得られる集中講座を提供しています。
G検定
「G検定」とは、AIの動向や機械学習・ディープラーニング手法、数理統計の知識など、AIの基礎理論から基本的な手法までAIエンジニアに必要な知識を幅広く習得できる資格です。
さらには、AIプロジェクトの進め方やデータの収集方法、マネジメント論など、AIをビジネス運用する際に必要な考え方も身につけられます。
なお、E検定・G検定以外の資格に興味がある方は、『AIエンジニアの資格7選!おすすめスキルやAI資格おすすめのセミナーを紹介!』をチェックしてみてください。
未経験からAIエンジニアになるためのステップ
未経験からAIエンジニアになりたくても、どのような方法で目指せば良いのかわからない方も多いでしょう。
ここでは「未経験からAIエンジニアになるためのステップ」について、次の流れで紹介します。
- 働き方や目指す業界を決める
- AIの知識を学ぶ
- AIプログラミングを中級者レベルまで習得する
- ポートフォリオを制作する
- 転職活動をする
ステップ1:働き方や目指す業界を決める
AIエンジニアになりたい場合には、まず「働き方や目指す業界を決める」必要があります。
AIエンジニアは、多様な働き方ができる職業です。AIエンジニアとして企業で働く方法や、フリーランスとして独立して働く方法など、さまざまな働き方から選べます。
また、先述したように、IT企業だけでなく多種多様な業界でAIエンジニアの採用が増加傾向にあります。そのため「前職のスキルを活かせる業界で働くか」、もしくは「新しい業界に挑戦するか」をじっくりと決めると良いでしょう。
ステップ2:AIの知識を学ぶ
進路が明確に決まったら、次は「AIの知識を学ぶ」段階に進みましょう。
AIの分野は、画像認識や自然言語処理、音声認識など、さまざまな分野に分かれています。
すべてを学び尽くそうと思うと、相当な時間がかかってしまいます。
そのため、自分が目指す業界で用いられる「基本的なAIの手法やアルゴリズム」は、最低限習得するようにしましょう。
ステップ3:AIプログラミングを中級者レベルまで習得する
AIに関する知識がある程度インプットできたら、次は「AIプログラミングを中級者レベルまで習得する」段階です。
次の表にて、AIプログラミングの習得レベルとスキル目安をまとめたので、勉強を進める際の参考にしてみてください。
レベル | スキル目安 |
初級者 | 四則演算や条件分岐など、基本的なプログラミングができる |
中級者 | 作りたいものを参考書を見ながら自作できる |
上級者 | 新しいAIモデルを自力で実装できる |
特にプログラミングが未経験の場合には、いきなり中級者レベルの内容に取り組むのではなく、初級者レベルの内容から段階的に学ぶことをおすすめします。
なぜなら、プログラミングは初級と中級の内容がつながっているため、基礎固めが不足していると理解ができない内容も出てくるからです。
そのため、一つずつAIプログラミングでできることを増やしていくと良いでしょう。
ステップ4:ポートフォリオを作成する
AIの知識とプログラミングの学習がある程度完了すれば、「ポートフォリオを作成」しましょう。
ポートフォリオとは、過去の制作物やスキル、実績などをまとめた作品集のことです。
AIエンジニアの転職活動時には、履歴書の代わりにポートフォリオの提出が求められる場合もあります。
なお、ポートフォリオを初めて作成する方は、『初心者OK!Pythonのポートフォリオを作る手順!作り方から活用事例まで紹介』を参考にしてみてください。
ステップ5:転職活動をする
ポートフォリオが準備できれば、いよいよ「転職活動をする」段階です。
未経験からAIエンジニアを目指す場合には、IT専門の転職エージェントサイトに登録する方法が一番の近道です。
なぜなら、習得したスキルや前職を踏まえて、数多くあるAIエンジニア採用企業から適切な企業を紹介してもらえるからです。
コンサルタントにアドバイスをもらいながら、転職活動を進めると良いでしょう。
AIエンジニアを短期間で目指すならセミナーがおすすめ
AIエンジニアを短期間で目指したい方には、AIエンジニアに必要な知識とスキルを網羅できる「セミナー」がおすすめです。
ここでは、AI研究所が提供するAI系のセミナーを2つ紹介します。
それぞれで学べる内容やメリットも解説するので、セミナー選びの参考にしてみてください。
ビジネス向けAI完全攻略セミナー
ビジネス向けAI完全攻略セミナーは、AIの理論からデータの活用方法やAIモデルの実装手法まで、ビジネス活用レベルまで学べるセミナーです。1日でAIの基礎から応用まで完結するセミナーであるため、AIエンジニアになるためのスキルを効率よく習得できるメリットがあります。
また、受講形式は「会場受講」「ライブウェビナー」「eラーニング」から選ぶことができます。
AIエンジニア育成講座
AIエンジニア育成講座は、プログラミング開発環境の構築やAIモデルの実装方法、モデルの精度向上方法など、初歩から実務レベルまで総合的に学べるセミナーです。
セミナー中に配布される「オリジナル教材」は、AIエンジニアになってからも参考書として重宝します。また、東京会場受講だけでなく、「ライブウェビナー」や「eラーニング」からも受講できるため、当日に参加できない方でも気軽に学べます。
なお、上記以外のAIセミナーに興味がある方は、『おすすめAIセミナー7選!初心者から本格講座まで内容を徹底比較」も参考としてご覧ください。
まとめ
AIエンジニアの仕事内容や求められる知識とスキル、適性がある人について解説しました。
AIエンジニアは、AI技術を用いてシステムの開発やデータ分析を行う専門性の高い技術職です。そのため、AIプログラミングの実装力だけでなく、数学や英語の知識も必要です。
そこで、AIエンジニアに必要なスキルや知識を網羅的に学ぶには、AI技術の初歩からビジネス実用レベルまで学べる「セミナー」がおすすめです。
AI研究所では、AI未学習者・初学者向けにAIプログラミングを学べる講座を多数用意しています。特にAIエンジニアを短期間で目指したい方は、今回紹介した当社のセミナーを受講してみてはいかがでしょうか?
DXを推進したい、AIを業務に活用していきたい、まずはAIについてしっかりとした知識を得たい、AIプロジェクトを進めるために何が必要かを相談したいなど、御社の抱える課題を解決するサービスを提供しています。
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