Fusion 360の活用事例を紹介するこちらのコーナー。第11回目は、Fusion 360と3Dプリンターを活用してミニ四駆を製作したり、ワークショップの講師をされているTheMarutaWorksの圓田歩(まるた あゆみ)氏にお話を伺いました。
Fabミニ四駆との出会いがFusion 360習得へのきっかけ
圓田氏は、2年前にミニ四駆をデジタルファブリケーションで、カスタマイズして参戦するレース「Fabミニ四駆」に出会いました。その時は3D CADは一切使っておらず、レーザーカッターと手作業で参戦したそうですが、他の参加者は3D CADと3Dプリンターを活用していた人が多く、そのでき映えの素晴らしさに驚いたと言います。
「Fabミニ四駆に参戦している大人たちが本当にガチというか、中には自動車メーカーでカーデザインをやっていた人などもいました。私も小さい頃から車が大好きで、カーデザイナーになりたいという夢を持っていたので、とても興味深かったです。」(圓田氏)
圓田氏は初めて参加したFabミニ四駆で優勝し、賞品としてXYZプリンティングの3Dプリンターをもらいました。しかし、3Dプリンターがあっても、3D CADを使えないと宝の持ち腐れになってしまいます。そこで、圓田氏はオートデスクのFusion 360エヴァンジェリスト、藤村祐爾氏に自ら声をかけたのです。
「表彰式で藤村さんと出会って、3Dプリンターをもらったけど、データが作れないので3D CADを教えてくださいと頼みました。それがFusion 360との出会いです。」(圓田氏)
Fusion 360を使い始めてわずか1カ月でミニ四駆のボディを製作
圓田氏はそれまで、一度も3D CADを触ったことがなかったそうですが、藤村氏の指導と本人の努力で、わずか1カ月でミニ四駆のボディを自由にモデリングできるようになりました。
「藤村さんに初めて教わったのは2015年の7月で、2時間を2回くらいマンツーマンで教えていただきました。そしたら、8月のMaker Faire Tokyoまでに1台作ってみてと言われたんですよ。」(圓田氏)
圓田氏は、ミニ四駆のボディを作りたいというゴールが明確であったため、Fusion 360にある多くの機能の中でも、特にミニ四駆のボディのモデリングに便利な「スカルプト」機能を中心に教わったと言います。
最初に3Dプリンターで出力されたものを見た時には震えました
圓田氏は最初、自分でモデリングしたボディが、3Dプリンターで出力されたものを見たとき、大きな衝撃を受けたそうです。
「ネットで3Dプリンターという存在は知っていましたが、実際に自分がデザインしたものが形になって手元にあるという衝撃に震えました。」(圓田氏)
子供の頃から車が好きで、自分だけのオリジナルマシンに憧れていた圓田氏にとって、Fusion 360と3Dプリンターは子供の頃の夢を叶えてくれるツールとなったのです。
圓田氏がFusion 360でモデリングし、3Dプリンターで出力したミニ四駆のボディ
Fusion 360でモデリングし、レンダリングをしたミニ四駆のボディ
圓田氏は、Fusion 360の機能の中で、特に「スカルプト」と「レンダリング」を愛用しているとのこと。
また、手書きでラフスケッチを描いてからモデリングをするのではなく、いきなりFusion 360を立ち上げて、Fusion 360のスケッチで作っていくそうです。ボディのモデリング自体は5〜6時間あれば大体できるようになったと言います。
こうした曲面的なボディは、スカルプトを駆使してモデリングしている
Fusion 360でモデリングし、レンダリング機能を使ってビジュアル化したもの
Fusion 360活用の場は更に広がる
圓田氏は、会社が出展する展示会のために、Fusion 360を活用して1/1サイズの車をダンボールで製作しました。Fusion 360でデザインして、「スライサー」というプラグインで輪切りにしたものをダンボールで作り、それを積み重ねて作っていくそうです。切ったダンボールのパーツは800枚を超えるといいます。
Fusion 360を使ってダンボールで作った1/1サイズの車
更に、プライベートでは娘さんの手書きスケッチを元に製作したミニ四駆も製作。パッケージデザインまで圓田氏が手がけ、まるで市販品のようなでき上がりになりました。
圓田氏が娘さんの手書きスケッチを元に製作したミニ四駆。パッケージまで手がけている
まずは自分の好きなものを作ってみよう
圓田氏は、初めてFusion 360に触れてから1年も経たないうちに、FabCafeなどでFusion 360ワークショップの講師を務めるまでに上達しました。その上達の秘訣について聞いてみました。
「最初は難しいと思っても、自分の作りたいものを作ったほうがいいと思います。やっぱり自分の好きなものって頭の中でちゃんと形ができているので。最初は、思い描いているものと全然違うものができると思いますが、例えば電車だったら、電車っぽいものができれば、次はここをもうちょっとうまく……っていうふうに繋がっていくと思います。あとは、毎週1回や2回は触る時間を作って欲しいですね。」(圓田氏)
今後は、ドローンのボディ作りにも挑戦したいそうです。