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レーザーカッターで伝統工芸品を”レガシー”に変えるアーティスト

東京五輪に関連する小池百合子都知事の発言で注目を集めた”レガシー”という言葉。「遺産」という和訳から転じて、建築物などの過去の資産を生まれ変わらせて、次の世代に残していく」という意味で使われています。今回は、伝統工芸品と呼ばれる過去の遺産に注目し、最新技術のレーザーカッターを利用して新しく生まれ変わらせるアーティストたちを紹介します。

レーザーカッターで繊細な沈金を施す「中静志帆氏」

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引用元 http://www.shiho-nakashizuka.com/forkplateknife?lightbox=image15pt

東京藝術大学で工芸を専攻していた中静志帆氏は、漆面に刃物で削りそこに金粉を流し込む沈金という伝統的な装飾技法をもとに、レーザーカッターを用いてアクリル素材に施す手法で多くの作品を制作しています。彼女の初期の作品「”knife” “fork” “plate”」は、透明なアクリル素材にレーザーカッターを用いて細い溝を彫った後、その溝に金を沈着させています。こうした手法によって、透明なアクリル素材に金の模様が埋め込まれているかのような視覚効果が生まれています。

中静氏のレーザーカッターによる沈金は、近作ではさらに洗練されたものとなり、アクリル素材の表面に金の絵の具で絵を描いたような繊細なデザインを実現しています。

何層にも重ねられた重厚な木彫作品「Gabriel Schama氏(ガブリエル シャーマ)」

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引用元 http://www.gabrielschama.com/new-index#laser-cut-work

Gabriel Schama氏は、伝統的な木彫にレーザーカッターを導入して重厚かつ複雑な木彫作品を制作しています。彼は、かつてはペーパークラフト作品を手がけていましたが、レーザーカッターに出会ったことによって、木彫りの「奥行きと複雑さ」を追求した作風に変わっていったそうです。

2014年3月、彼は作品の制作費を調達するためクラウドファンディングサイトKickstarterに作品を出品しました。この試みは、調達目標額10,000ドルに対し、たった1か月間でその5倍を上回る51,221ドルを調達するほどの成功を収めたのです。その後、出資者には彼の作品が送られました。

吸い込まれそうなほど緻密なペーパークラフト「Eric Standley氏(エリック スタンドレイ)」

Virginia Tech: Eric Standley from VirginiaTech on Vimeo.

Eric Standley氏は、レーザーカッターで緻密にカッティングした紙を何枚も重ねて、伝統的なゴシック様式のステンドグラスをイメージさせるペーパークラフト作品を制作しています。レーザーカッターは、Universal Laser system PLS6を使っているそうで、彼が言うにはカットした紙を重ねて立体造形するという手法のため、切り落とした紙の空洞部分がどのように重なるか、という点に最も注意を注いでいる、とのこと。

このような作風を確立した背景には、石が持っている硬くて重厚な質感を身近にある紙で表現できないか、という関心があったそうです。

レーザーカッターのようなファブリケーションやモデリングサービスの発展によって、今後も様々な伝統工芸品が生まれ変わり、私たちの前に魅力的な形で現れ、次代へと受け継がれていくでしょう。

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