隣の部屋の生活音が気になる、ゲームや楽器の音で迷惑をかけたくないといった理由で、騒音対策を始めたいと考えていないでしょうか。それなら、音が鳴る趣味・仕事などに没頭しやすい防音室を導入するのがおすすめです。
この記事では、防音室の概要や導入すべき人の特徴、値段相場などについてわかりやすくまとめました。自分に合う防音室を選ぶ参考にしてみてください。
防音室とは?
防音室とは、室内の音が外に漏れにくく、外の音も中に入りにくいように設計された音環境を整える空間です。
専用の素材を使って壁や天井、床を覆うことから、通常の建物の室内よりも、まわりに音を届けにくくなります。
特に近年では、録音スタジオや楽器練習室といった業務用途だけでなく、個人的なゲーム配信や在宅ワークなど、家庭でも導入されるケースが増えています。
防音室のよくある誤解(完全無音ではない)
よく「防音室=完全に音が漏れない」と思われがちですが、実際には音を抑えることはできても、完全に遮断することは難しいのが現実です。
たとえば、防音性能はdB(デシベル)単位で評価されます。
この性能が20dBカット(-20dB)であれば、日常の話し声や生活音の多くは軽減されますが、大音量の楽器や怒鳴り声などは多少漏れる可能性があります。
よって、防音室を選ぶ際は「どの程度の音をどこまで抑えたいか」を明確にすることが重要です。
防音・遮音・吸音の違い
防音室の導入を検討している方は「防音」「遮音」「吸音」という3つの概念を知っておく必要があります。
| 意味 | 具体例 | |
|---|---|---|
| 防音 | 音を漏らさない・入れない総合的な対策 | 防音室、二重窓、遮音材+吸音材を併用する |
| 遮音 | 音をさえぎること(通過を防ぐ) | 壁の間に鉛・石膏ボードを入れる |
| 吸音 | 音の反射や残響を減らすこと | ウレタン吸音パネル、カーテン、カーペットを用いる |
防音室は、上記3つの要素が組み合わさっており、外部への音漏れや内部での反響を最小限に抑えるためには、それぞれのバランスを考慮することが重要です。
防音室で騒音はどれくらい変わる?(Dr-35・40の違い)

一般的に、50dBを超える音以上を騒音と言い、60dBを超える音が出ると、周囲の人たちを不快にしてしまうのが特徴です。上画像のイメージを考慮すると、日常的な会話以上の音を出し、それが長時間続くような場合には、防音室を設置するのが良いでしょう。
なお防音室は、音の大きさを表す基準であるdB(デシベル)を下げる効果をもっていますが、それは製品によって異なります。参考として以下に、室内で行う「音が出る趣味・活動」と遮音の効果をそれぞれ表にまとめました。
| 騒音シーン | 一般的なdB数 (目安) |
Dr-35 (-35dB) |
Dr-40 (-40dB) |
Dr-70 (-70dB) |
|---|---|---|---|---|
| 人の会話 | 50~90dB程度 (最大値は叫び声) |
15~55dB | 10~50dB | 0~20dB |
| ピアノ演奏 | 90~110db程度 | 55~75dB | 50~70dB | 20~40dB |
| 管楽器 | 110~120dB程度 | 75~85dB | 70~90dB | 40~50dB |
上表からわかるように、騒音の基準となる50dB以下に抑えたい場合には、遮音性能を見て製品を選ぶことが重要です。人によって必要な性能が違うため、上表の数値の変化を参考に、製品選びをスタートしましょう。
防音室の種類と違いを比較表で解説

防音室には、設置方法や構造によってさまざまな種類があり、それぞれ費用・防音性能・設置の自由度が違います。以下に、主な防音室を4種類紹介します。
| 意味 | 防音性能 | 戸建て・分譲 | 賃貸 | |
|---|---|---|---|---|
| 固定式 (リフォーム型) |
部屋を丸ごと施工する本格的な防音室 | ★★★★★ | 〇 | × |
| ユニット型 (組み立て式) |
完成品を設置する箱型タイプ | ★★★★☆ | 〇 | △ (契約条件による) |
| 簡易防音室 | パネルや吸音材を使った軽量タイプ | ★★☆☆☆ | 〇 | 〇 |
| レンタル型 | 一時的に借りられるタイプ | ★★★★☆ (製品はユニット式と同等) |
〇 | 〇 |
特に防音性能を高めたいなら、業務用としても利用されている固定式がおすすめです。
また費用を抑えつつ、小規模な防音だけで解決できる場合は、ユニット型・簡易防音室などを選ぶとよいでしょう。また長期的な利用に悩んでいる方は、契約期間だけ利用できるレンタル型を検討するのもひとつの手です。
防音室の値段相場(購入・リフォーム・レンタル・DIY)

防音室は、購入・リフォームするか、レンタルするか、自作するかによって費用が大きく変わります。
参考として以下に、防音室の導入にかかる値段相場をまとめました。
- 製品を購入する場合
- リフォームして防音室をつくる場合
- 製品をレンタルする場合
- 防音室を自作する場合
製品を購入する場合の値段相場
防音室をメーカーから購入する場合に、もっとも一般的なのがユニット型(組み立て式)防音室です。
ユニット型は性能や大きさによって金額が変動しやすく、安いものなら20万円台から、高額なものになると300万円近い製品までバリエーションが豊かです。なお、中小型の防音室であれば、新品の半額程度で購入できる場合もあります。
リフォームして防音室をつくる場合の値段相場
自宅の1室をリフォームして防音室に変える場合は、施工業者によって金額が変動しやすい点に注意してください。
製品購入の場合は、製品価格や組み立て費用だけで済みますが、リフォームをする場合には設計や材料の検討、工事などさまざまな費用が発生します。安くとも数百万円規模がかかるケースが多いため、まずは専門業者から見積もりを取得することから始めましょう。
製品をレンタルする場合の値段相場
防音室をレンタルする場合には、短期契約か、長期契約かで費用が変化します。
まず1~2畳程度の防音室を想定した場合、1~3ヶ月程度の短期契約なら、月1~3万円程度の費用がかかるケースが多いです。対して、半年契約など契約期間が長くなると月5,000~2万円程度まで抑えられる場合もあります。
なお、レンタルの設置・回収に追加料金がかかることも少なくありません。
事前に設置費・往復送料の見積もりを取得してレンタルサービスを比較しましょう。
防音室を自作する場合の値段相場
費用を抑えたい場合には、DIYで簡易防音室をつくるという手もあります。
たとえば、小規模な簡易防音室であれば、材料費などを考慮して5万円程度で作成できるケースが多いです。
ただし、素人がDIYをすると、遮音性能が不安定になりやすく、完成後の修正が難しい点に注意が必要です。あくまで簡易的な用途(テレワーク・勉強・軽音)向けと考えておくとよいでしょう。
防音室の製品の値段を詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
防音室の導入コストを抑える方法一覧
防音室の導入は決して安い買い物ではありません。
特に、購入やリフォームの場合、数十万〜数百万円のコストがかかることもあります。
しかし、工夫次第で必要な性能を確保しつつ費用を抑える方法があります。
以下に、導入コストを抑える方法を一覧化しました。
| 概要 | メリット | 注意点 | |
|---|---|---|---|
| 中古品を購入する | 中古を取り扱うECサイトなどで安いユニットを購入する | 新品より安く高性能モデルが手に入る | 移設費や設置費が別途必要な場合あり |
| 簡易防音で対策する (吸音材・遮音材) |
パネル・遮音シート・防音カーテンなどだけで対策する | DIYで手軽に始められ、賃貸でも使える | 完全防音は難しく、効果に限界がある |
| 防音室を自作する | 木材・石膏ボード・吸音材でDIYする | 低コスト・設計自由度が高い | 技術力が必要、性能が安定しにくい |
| 補助金・助成金を活用する | 自治体の支援制度を利用する(自治体による) | 補助により実質負担が軽減される | 対象条件・書類提出が必要、対応自治体が限られる |
長期に使うなら中古・自作、手軽に始めたいなら簡易防音対策、地域に制度があれば補助金で安く購入するのがおすすめです。
また、低コストで導入できる「簡易防音室」を自作する方法・選ぶコツを知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
防音室の後悔しない選び方|目的・用途別

防音室を導入した人によっては、選択を誤ってしまい「思ったほど音が防げなかった」「広さや仕様が使いにくい」といった後悔する声も少なくありません。そこで重要なのが、自分の目的に合った防音室を選ぶことです。
ここでは、目的や用途に分けて防音室の選び方を紹介します。
- ゲーム配信・YouTuber向けの選び方
- 楽器(ピアノ・ギター・管楽器)演奏向けの選び方
- テレワーク・勉強・読書向けの選び方
ゲーム配信・YouTuber向けの選び方
ゲーム実況やYouTube収録では、自分の声が外に漏れず、外部の生活音がマイクに入りにくい環境にできれば問題ありません。
身体を動かすことも少ないため、0.8〜1.5畳のユニット型防音室がコンパクトでおすすめです。
なお、密室で作業をすることから、遮音性能に加え、換気・照明・熱こもり対策も必須です。
また、ゲーム配信・YouTuberの場合、大声を出すケースも多く、叫び声の場合90dB程度の騒音が出ることも少なくありません。そのため、騒音の基準である50dB以下に抑えるためにも、Dr-40以上の防音室を選んでおくのがおすすめです。
楽器(ピアノ・ギター・管楽器)演奏向けの選び方
楽器の練習では、演奏音の音圧や音域に対応した防音性能が必要です。
電子ピアノやギターの練習であれば1.5〜3畳のユニット型がよく、管楽器やバンド演奏の場合には、固定型防音室が理想的です。広さと遮音性能の両方を考慮し、空調や響き方(吸音)にも配慮しましょう。
なお、楽器演奏をする場合には、大きな音を出すと100dB以上(管楽器の場合は120dBに届くことも)出るケースがあります。騒音の基準である50dB以下に抑えたいとき、120dB程度の音が出る場合には、Dr-70以上の防音室を選んでおくのがおすすめです。
テレワーク・勉強・読書向けの選び方
集中して仕事や学習を行いたい人には、簡易防音室や吸音パネルの導入がおすすめです。
完全防音でなくても、生活音や外の騒音を抑えるだけで作業効率が向上します。
広さを取らず賃貸でも使える組み立て式や吸音ブースは費用対効果も高く、リモート会議や音声収録にも適しています。
なお本項のなかでも音が出やすいのが、テレワーク中のタイピングです。
おおよそ50~60dB程度の音が出ると言われているため、Dr-10以上の防音性能をもつ防音室を選んでおくのが安心です。
防音室に関するよくある質問【FAQ】
防音室についてまとめ
防音室は、ゲーム配信・楽器演奏・テレワークなど、さまざまな用途に応じて選ぶことができます。
また、ユニット型や簡易型、自作・レンタルなど選択肢が多く、費用や防音性能も幅広いのが特徴です。導入する際に重要なのは「何のために使うか」を明確にしたうえで、目的に合ったタイプを選ぶことですので、予算や住環境に応じて最適な防音対策を検討しましょう。