facebook

板金加工とは?生活必需品に使われる事例や加工でできることを徹底解説

「板金加工」は、車の修理などでよく聞くものの、その奥深さについて理解している人は少ないようです。
こちらでは、板金加工の特徴やできることを、実例を取り上げながら考えます。
また、板金加工の価格相場もご紹介します。

板金加工とは?

板金加工とは

板金加工とは、板状の金属に圧力を加えて折り曲げるなどして、形状を整える加工方法です。
板金加工の特徴は、プレス加工と比較するとわかりやすいかもしれません。

プレス加工は、金属をプレスマシンで加工し、穴あけや曲げ、切断までを一気に行うことができます。
プレス加工には金型が必要になるため、コストがかかるものの、大量生産に向いているといえます。

一方、板金加工はベンディングマシンなどで加工した後、溶接やねじ、リベットなどによる結合が必要になります。
ですが、製品に特化した金型は必要なくコストを削減できるため、小ロットや多品種生産に向いています

板金加工は、

  • 手板金
  • 機械板金

2種類に分けられます。

手板金は、職人が工具を用いて一つずつ仕上げていく手法で、熟練した職人であれば、流線形など複雑な形状にも対応できます。
金型を作成するのはコスト的に高くつく、細かい作業が必要、などの理由で選ばれることが多いのが、手板金です。

他方、機械板金は、汎用性のある金型を利用し、ベンディングマシンなどを使って加工していきます。
オリジナルの金型を使うわけではないので、汎用金型で対応可能な範囲にとどまりますが、小規模から中規模の生産に利用されているようです。

板金加工でできること

細かい作業を得意とする板金加工にできることはたくさんあります。
こちらでは、製品作りの工程を含めてご紹介します。

展開図の作成やプログラミング

製品を作る際には、板金加工用に展開された図面を作成します。
こちらの展開図は、板金を加工する前の図で、折り紙やキャラメルなどが入ったサイコロ型の紙のパッケージを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。
板金加工用の展開図は、曲げの大きさまで考慮して寸法を記載する必要があり、板金の加工制限を加味した図面作成が求められます。
近年は、板金加工用の図面は、CADCAM等のソフトを使って作られることが多くなりました。

切断加工

図面データが出来上がったら、製品を展開した状態に板金を切り出していきます。
こちらの工程では、板金をハサミで切るようなイメージで切断できるシャーリングマシンを使ったり、パンチプレス加工やレーザー加工で切断作業を行います。

バリ取り

切断加工しただけでは、加工した端の部分にバリといわれるひげのようなものが残ってしまいます。
そのバリをきれいに削り取るのがバリ取りです。
バリ取りは、バリ取り機やエンドレス、サンダーなどの機器や道具を使って作業します。

曲げ加工

切断・バリ取りをした板金を、プレス機やベンダー機を使い、曲げていきます。
一口に曲げといっても、いくつかの種類があり、折り曲げるための金型は100種類以上に上ります。

代表的な曲げの一つが、V曲げといわれる「突き曲げ」です。
曲げる部分の線に沿って、パンチなどで力を加えて曲げるのが、V曲げになります。

また、L曲げと呼ばれる「押さえ曲げ」もあります。
L曲げは、台上に置いた板金を押さえつけ、端の部分を台からはみ出させた状態でパンチを置き、力を加えて曲げていきます。
製品の精度や外観を悪くしてしまう可能性がある場合、数人の作業員を要するL曲げが行われることが多いようです。

さらに、U曲げといわれる「逆押さえ曲げ」も利用されます。
2つの台に間隔を空け、その間に台よりも高さが低いパットを置き、板金を載せます。
その状態で、パットの幅とほぼ一緒のパンチで押すことで、U字の状態に曲げる加工です。

曲げは板金加工の醍醐味といえる工程ですが、同じく「絞り」も高い板金加工技術がいります。
絞り加工とは、板金に圧力をかけ、継ぎ目をつくらずにくぼみをつくる方法です。
絞り加工の形状は多種多様で、円筒や円錐、角筒などに加え、非対称の絞りも可能です。
なお、非対称の絞りは「異形絞り加工」ともいわれ、自動車の車体のパネルなどの使われます。
絞りの深さも、浅めや深めと選べるようになっています。

溶接

立体的に仕上がった板金を固定するため、溶接して接着します。
製品によっては、溶接加工をした後に、穴をあけたり、ねじ山をつくる作業も行われます。

仕上げ

表面を磨き上げる研磨、溶接や穴加工などで生じたバリ取り、加工段階で付着した金属粉の洗浄などの作業です。

チェック

全体の状況を最終確認して出荷されます。

板金加工の事例

板金加工の事例

板金加工技術は、幅広い業界や企業で使われています。
こちらでは、板金加工が生かされている分野を取り上げるとともに、高度な板金技術が使われている例を取り上げます。

自動車業界

板金加工は、自動車修理で広く行われていますが、製造段階でも技術が使われています。
例えば、自動車のボディや内部に使われている部品は、板金技術を使って行われることが一般的です。
板金加工は機械を使って流れ作業のように行われ、切断・絞り・溶接などの加工が施されていきます。
自動車修理の際に行われる板金加工は、老朽化などの車体自体の状況や事故の状況により、どんな作業をしたらよいかが異なってくるため、高い技術が求められます。

建築業界

建築業界では、住宅の屋根や外壁、雨どいなどに加え、ダクトや配管、キッチンの流し台やユニットバス設備などにも板金加工技術が使われています。
使用される材料は、場所によりさまざまです。一例として、トタン屋根の場合は、トタン板といわれる亜鉛メッキ鋼板や、ステンレス鋼板やアルミニウム合板などが使われます。
建築物は、機能性とともに見た目の良さも求められるので、加工技術の高さに加え、センスが要求されます。
板金加工が使われる構築物としては、駅などで見かける改札機や案内掲示板、建物に設置されるエレベーターや看板、街中にある信号機やエレベーターなどが挙げられます。

製造業

板金加工技術を必要とする工業製品はたくさんあります。
家電製品やスマートフォンの部品、パソコンのフレームなどにも板金加工は欠かせない技術です。
製造業で利用されるのは、精密板金加工といわれる技術で、プレス加工では難しい、繊細な作業が伴うものや、生産量が少ない製品に利用されます。

計量化を目指す精密板金加工の例

精密板金加工で使われる板金の厚さは1ミリから3ミリ程度のものが多いが、そこにねじ穴をあけようとすると、高い板金技術が必要になります。
ねじの終結力確保ためには、ねじピッチを3山以上にするのが一般的です。
そうなると、必然的に厚みのあるねじ山になってしまいますが、ねじ山部分にカシメナットなどを使うと、製品自体の重量がアップするデメリットがあります。
その点を解決するのに、バーリングタップという方法が用いられます。
これは、板金に下穴をあけ、成形金型で穴の周辺を力を加えて変形させて、バーリング(凸形状)をつくっくやり方です。
この方法を使うと、板金の厚さが1ミリ程度でも強度があるねじ山をつくることができます。

材料コスト7.9%削減を実現する自動ネスティングソフトはこちら

板金加工の価格相場

板金加工の価格は、材料と人件費で成り立っており、一概に価格提示できないのが現状といえるでしょう。
作りたい製品の構造や使うべき材料、それを実現できるだけの職人の技術が合わさって価格が決まってくるからです。
それでも、板金加工にかかる工程一つ一つを単価として提示しているところもあります。
一例として平板の加工を考えると、切断工程は、長辺600ミリまでが300円、それ以上が600円、コーナーカットが3カ所までは300円、それ以上になると1カ所増えるごとに100円です。
曲げ加工は長さ600ミリまでは150円、それ以上だと300円、バーリング3カ所まで150円、それ以上なると1カ所につき80円などです。
こちらはあくまで工賃であり、材料費は含んでいない価格になります。

板金加工の特徴とできることの種類や価格相場まとめ

板金加工は、板金に圧力をかけて形状を作ることができます。
オリジナルの金型がいらないという特徴があり、生産コストを抑えられるとともに、小ロット・小規模制作に向いています。
板金加工にできることや実際に利用されている分野は幅広く、これまでは不可能とされてきた強度を伴ったねじ山づくりにも生かされるようになっています。
板金加工の価格は、材料と人件費により決まってきます。

板金用CAD/CAMソフト「SigmaNEST」はこちら

最新情報をチェックしよう!