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Fusion 360とCNCを活用して今までになかった発想のウクレレやギターを作製

Fusion 360の活用事例を紹介するこちらのコーナー。第8回目は、ウクレレやギターなどの弦楽器製作家として活躍している尾伊端敏氏にお話を伺いました。

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ウクレレの仕上げを行う弦楽器製作家の尾伊端氏

ウクレレ作製のきっかけは友達の言葉

子どもの頃から弦楽器が好きで、趣味としてギターの改造や製作を行ってきた尾伊端氏。その後専業で弦楽器の製作を行うようになり、現在ではたくさんのプロのプレイヤーにもoihataブランドが愛用されています。そして最近、特に力を入れているのがウクレレの製作。きっかけは友達の言葉だったと言います。

「30歳を過ぎたころ友達から、ウクレレっていい楽器だよ、と言われたのがなんとなく頭の中に残っていたんです。その頃偶然にも妻が誕生日プレゼントにウクレレを買ってくれて、ウクレレを初めて触ってみて衝撃を受けました。ウクレレというと、どうしてもおもちゃみたいなイメージがあったのですが、実際に触れてみると音色も質感も本当に素晴らしくて、とても感動したのを覚えています。」(尾伊端氏)

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記事のトップ画像は尾伊端氏製作のウクレレ、こちらは同様に製作したギター。

CNC導入の決意はFusion 360との出会い

尾伊端氏はこれまでに数百本のウクレレを製作してきました。しかし、手作業ではどうしても限界があり、データに基づいて木材を切削するCNCの導入を考えていたそうです。ただ、CNCを利用するにはCAMと呼ばれる専門的なソフトが必要になります。そのCAMの価格の高さが、CNC導入への大きなハードルだったといいます。

「楽器を作っていると、手作業よりも機械で製作したほうが早くきれいに仕上がる部分も結構あります。また、厚い無垢材から彫り込んで楽器を作ってみたいとも考えていましたが、手作業では厳しいんですよね。それでCNCの導入を検討していたんですが、CNCを活用するにはミッドレンジの3D CADと高機能なCAMが必要になります。これらを揃えると500万円以上してしまい、私のような個人工房レベルでCNCを導入するのはちょっと無理かなと思っていました。そんな時に、今まででは考えられないほどの少ない投資で済むFusion 360が世に出たのです。そこで思い切ってCNCの導入に踏み切ってみました。」(尾伊端氏)

3D CADからCAMへシームレスに連携できるのがFusion 360の魅力

尾伊端氏がFusion 360とCNCを導入したのは約1年前ですが、操作にもすぐに慣れ今では3DモデリングもCAMもすべてFusion 360でやっているそうです。

「これまでいろいろな3Dソフトを試してきましたが、CNC導入後はCNCで造形するデータはすべてFusion 360で作製しています。通常のCADソフトでは、3D CADで作製したデータを一旦STLデータか何かに書き出してから、CAMソフトを起動してツールパスを作製するという、2段構えの作業になります。ですがFusin 360なら、モデリングしてからCAMのツールパスを作製する段階で、モデリングのここをちょっと修正したいなと思ったら、直接モデリング画面に戻ることができ、修正したらまたそれを瞬時にCAMのツールパスに反映させることができます。つまり、Fusion 360は、3D CADでのモデリングからCAMでのツールパス作製、CNCの制御までの連携が非常にスムーズに行えるのでとても便利なのです。」(尾伊端氏)

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Fusion 360は3D CADからCAMへの連携がスムーズに行える。

また、Fusion 360は動作が軽いことも魅力の一つだと尾伊端氏は言います。
「Fusion 360は、Quadroを搭載したワークステーション並のマシンを必要とせず、グラフィックボードがGeForceレベルのマシンでもサクサク動いてくれるので、その辺もとても楽です。」(尾伊端氏)

43_4.jpg実際にFusion 360を使ってCNCで削り出している様子。

Fusion 360とCNCにより今までにない発想の楽器が生まれる

尾伊端氏が、Fusion 360を使って楽器を製作する時は、大きく分けて2通りの方法があると言います。1つは、部分的なパーツのみをFusion 360でモデリングしてCNCで削り出すというもの。これは、主にアコースティック系の楽器で使われています。また、それに対してエレキギターや彫り込みのウクレレは、Fusion 360を使ってボディ、ネック、各パーツのすべてをモデリングしています。尾伊端氏はFusion 360とCNCを活用することで今までになかった発想の楽器を作ることができるようになり、プロの演奏者からも高い評価を得ているのです。

「実際に板を彫り込んで作ったウクレレは、プロの演奏者にも使っていただいているのですが、それをステージで見たお客さんからは『これはどうやって作ったんですか?』なんてことを言われます。」(尾伊端氏)

オリジナルマインド社製木材用CNCを使用

尾伊端氏は、オリジナルマインドの木材用CNC「KitMill MOC900」を利用して楽器を製作しています。KitMill MOC900の性能や使い勝手も満足しているといい、現在はさらに使いやすく改良して使っているそうです。

43_5.jpg尾伊端氏はCNCを自身で改良し、より使いやすいものにしている。

「オリジナルマインドのCNCは、コストパフォーマンスがとても優れていると思います。工場で使うようなCNCだと、金額の桁が一つくらい違いますので。オリジナルマインドのCNCはコントローラーも優秀で、設置してからの実際の運用も非常に楽ですね。また、サポートもしっかりしていますので助かっています。オリジナルのままでも十分ですが、ボールスクリューに変えたりして自分なりに使いやすいようにしています。」(尾伊端氏)

弦楽器製作家はFusion 360とCNCの導入を!

尾伊端氏の他に、アコースティック系の弦楽器を製作している中で、3D CADとCNCを導入している人はほとんどいないのです。しかし、尾伊端氏の事例を知ったことにより、尾伊端氏の元にはFusion 360とCNCを導入したいと考えている楽器製作者から問い合わせが来ることもあると言います。

そこで、尾伊端氏から、3D CADとCNCを活用した、ものづくりに興味がある楽器製作者に向けてメッセージをいただきました。

「Fusion 360の登場によって、CNCなどの工作機械を動かすためのハードルが下がったため、個人工房レベルでも導入ができるようになりました。モデリングのスキルとFusion 360とCNCとがあれば、作業が楽になるだけではなく楽器製作をする上での発想の幅も広げることができます。また、CNC導入により削減することができた時間を手作業でなければ仕上げることができない微妙なコントール作業などに時間を多く充てることができるのでさらに完成度が高くなります。そういった意味でもとても便利になってくると思うので、思い切って導入してみる価値はあると思います」(尾伊端氏)

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