ChatGPTやGeminiの利用時に「また同じ指示を繰り返している」と感じたことはありませんか?たまになら良いですが、毎日の業務の場合、この「説明の二度手間」は大きなストレスです。
「一度伝えたことをAIがずっと覚えていてくれたら…」そんな願いを叶えるのが、Googleが発表したAIの新しいアーキテクチャ「Titans」です。
この記事では、Googleの長期記憶AI「Titans」について、初心者の方にもわかりやすく解説します。同時に発表された「MIRAS」についてもお伝えしますので、ぜひ本記事を通じて「Titans」の全貌を解き明かしてください。
Titansとは?
Titans(タイタンズ)とは、AIが人間のような長期記憶を実現するアーキテクチャです。Titansは、2025年12月4日にGoogle Researchが、その仕組みの指針「MIRAS」とともに発表しました。
アーキテクチャとは
Titansのアーキテクチャとは「AIの構造」のことです。ピンとこない方は、「家の間取り」を想像してみてください。
例えば、キッチンとリビングが離れていると生活の効率が悪くなるため、多くの家は近い間取りで設計されています。AIも「記憶の置き場」と「考える場所」が遠かったり狭かったりすると、必要な情報をうまく取り出せません。
Titansのアーキテクチャは導線を最適化
Titansのアーキテクチャは、「導線を綿密に計算して作られた家の間取り」のようなものです。つまり、記憶と推論が自然につながる構造を備えているのがTitansのアーキテクチャなのです。
TitansとジェネレーティブAIとの違い
Titansと従来のジェネレーティブAI(生成AI)の違いは、この「アーキテクチャ」にあります。現在、ジェネレーティブAI(ChatGPT、Geminiなど)は「トランスフォーマー」という設計を採用していますが、Titansは「神経長期記憶(Neural Long-Term Memory)」を用いています。
Titansはトランスフォーマーの課題を克服
しかし、このトランスフォーマー型AIは、情報が長くなるほど文脈が混濁し、動作も遅くなるという弱点がありました。
さらに、記憶するテキストが増えるほど、指数関数的に動作が遅くなり、コストも高くなります。これまで誰も修正できなかった根本的な限界でしたが、Titansは、この課題を「神経長期記憶」によって克服しました。
この長期記憶を叶えるTitansの登場は、製造・建設現場においても大きな転換点となるでしょう。数年分のデータによる故障予知や、膨大なマニュアルを活かした現場支援など、その実用化は目の前まで近づいています。
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Titansが注目される2つの理由
Titansがこれほど注目されているのは、従来のAIでは実現できなかった性能と仕組みを備えているためです。ここでは、その理由を2つの視点から解説します。
- ベンチマークでGPT-4に圧勝
- 記憶の自己更新
①ベンチマークでGPT-4に圧勝

Titansが注目された最大の理由は、ベンチマークで実証された圧倒的な精度の高さです。通常、AIは扱うテキスト量(トークン数)が増えると性能が急激に落ちます。
しかし、Titansは長文処理能力を測る評価テスト「BABILong」において、超大規模モデルであるGPT-4を含む他のすべてのAIを上回りました。このテストでは、GPT-4でさえ10万トークンを境に精度が大きく低下し、約12.8万トークン付近で完全に破綻しています。
一方でTitansは、100万トークン(本約10冊分)でも正答率94%、1,000万トークン(本約100冊分)でも約70%を維持しました。しかも使用したパラメータは少なく、GPT-4のような巨大な計算資源を使わずにこの結果を達成しているのです。
参照:Titans + MIRAS:AIに長期記憶を持たせるために
記憶の自己更新
Titansが注目される理由には、自分の記憶を自ら書き換える点も挙げられます。これは従来のAIでは困難だった能力です。ここでは、この能力の重要性をわかりやすい例でみてみましょう。
AIと相談してあるサービスに登録した例
- ユーザーは月額プラン(1ヶ月のみの支払い)を希望
- AIの確認不足で支払いは年額一括であった
- キャンセルもできず年額支払いが確定
- 「私は支払いに慎重な性格です。再発防止を徹底して。」とAIに伝達
人間の場合、こうした重大なミスは記憶に大きく刻まれます。そして、二度と同じ過ちを繰り返さないように、今後に活かそうと行動を改めるでしょう。
しかし、ともに思考したAIは「金銭面に慎重な人物である」という更新情報を記憶できません。そのため、同じ状況になった際に、同じミスを繰り返す恐れがあります。
一方でTitansは、人間の様に情報を自らの内部に刻み込み、振る舞いそのものを更新します。つまり、過去の成功や失敗を学び、知識と判断をアップデートし続けられるAIなのです。
Titansが長期記憶を実現する仕組み

Titansが長期記憶を実現する仕組みは、人間の脳の構造に由来します。人間は一つの記憶部分を持っているわけではなく、役割の異なる複数の記憶システムを使い分けています。
Titansはこれをデジタル的にコピーし、以下の3つの層(レイヤー)を協働させながら、かつてない記憶力を発揮します。
第1の層:長期記憶層(コンテクチュアル・メモリー)
一番上の層は、学習を担当する長期記憶層です。従来のAIが「数字の山(ベクトル行列)」として受動的に記録していたのに対し、Titansは「多層パーセプトロン(MLP)」という、いわば記憶専用の「小さなニューラルネットワーク」を使用します。
この層はただ記録するのではなく、膨大な情報間のパターンやつながりを自ら解明します。例えば、本の1ページ目に登場した人物Aを、600ページ後に登場した「背の高い人物」と同一であると、文脈から理解できるのです。
脳神経回路を模倣した機械学習方法。情報間のつながりに重みを付け精度を向上
第2の層:短期記憶層(コア)
Titansの2番目の層には、今現在のやり取りに集中する「短期記憶層」があります。この層は、これまでのジェネレーティブAI(トランスフォーマー)と同じ仕組みです。この際、
- 長期記憶層がすべての過去情報を要約
- 要約情報を短期記憶層に伝達
- その要約情報から必要な情報を抽出・活用
という仕組みで、Titansの短期記憶層は動作しています。つまり、目の前のやり取りだけではなく、関連する過去情報も照らし合わせながら回答を生成するのです。
第3の層:永続メモリ層(パーシステント・メモリー)
Titansの3つ目の層は、状況によって変化しない永続メモリ層です。例えば、「火は熱い」「重力で物が落ちる」のような、本能や根本的な知識が該当します。これはトレーニング時に焼き付けられた固定の知識であり、知能の基礎となる部分です。
3層が生み出す「人間らしい思考」
Titansはこれらの3つの記憶層が連携することで、
- AIが常識(永続メモリ層)を基盤に
- 過去の教訓(長期記憶層)を抽出しながら
- 目の前の状況(短期記憶層)に対応する
という思考プロセスを実現します。このTitansの仕組みにより、一度伝えたこだわりや過去の失敗を記憶・更新し、人間らしい思考を持つAGI(汎用人工知能)が生み出されるのです。
Titansを支える理論的フレームワーク「MIRAS」
Titansが長期記憶を実現する裏側には、「MIRAS(ミラス)」という理論的発見があります。
「MIRAS」と聞くとAIモデル名のようですが、これは、AIの情報処理システムにおける新たな理論(フレームワーク)のことです。わかりやすくいえば、Titansが構造、MIRASは設計図です。
ここでは、MIRASの理論に至った過程をお伝えしましょう。
「AIモデルは同じ」という発見
ChatGPTやMambaなど、AIモデルはそれぞれ違うように見えます。しかし、MIRASにより、実は連想記憶(アソシエイティブメモリー)という一つの目的を達成するための同じ方法というということがわかったのです。
例えば、ある家電メーカーが「自社製品のAは独自の機能を持つ洗濯機である」と主張したとしましょう。
しかし、技術者から見れば、どの洗濯機も結局はモーターで回転し、水と洗剤で洗うという同じ仕組みで動いている、というような感じです。つまり、MIRASは「AIの共通の仕組み」を定義した理論なのです。
AIモデルは4つの要素で決定する
MIRASは、どのようなAIモデルも4つの要素の組み合わせで決まると定義しています。
| 要素 | 役割 | 概要 |
| メモリ構造 | 情報の保存方法 | 知識をどのような形で保持するかを決める |
| 注意の基準 | 重要度の判断 | 入力情報の中から、何を優先して処理するかを決める |
| 忘却のルール | 記憶の整理 | 情報が増えすぎないよう、何を捨てるかを制御する |
| 更新の手順 | 学習の反映方法 | 新しい経験を、次の判断にどう活かすかを決める |
Titansでは、上記のメモリ構造に先ほどお伝えしたニューラルネットワークを使っています。
GitHubで進むTitansの検証

Titansは、Googleが発表して以降、開発者コミュニティの間で大きな注目を集めています。ここでは、Titansの理論を実践的に検証するGitHubでのプロジェクト「Titans デモンストレーションプラットフォーム」を紹介しましょう。
7つのAIエージェントを実装したプロジェクト
このプロジェクトは、Googleの論文「Titans: Learning to Memorize at Test Time」の概念を再現すべく、7つのエージェントが分担してTitansの機能を検証しています。
Titans検証における各エージェントの主な役割と内容は以下の通りです。
| エージェント名 | 主な役割 | 内容 |
| OpenAI | 記憶の実証 | 記憶の仕組みと忘却の動きを実証 |
| Anthropic | 歴史の統合 | 過去のやり取りを文脈に統合 |
| Mistral | 記憶の選別 | 短期と長期の記憶切り替え |
| Groq | 階層の統合 | 記憶のアーキテクチャを比較 |
| Gemini | 大規模検索 | 大規模データに対する検索能力 |
| Cohere | 実用化 | 理論を実際に応用するための設計 |
| Emergence | 構造分析 | アーキテクチャ解析、拡張性の議論 |
プラットフォームの使用例
Titansの検証環境は、自分のパソコンなどでプログラムを起動することで挙動を確認できます。
- 「http://localhost:8000」を通じてブラウザから操作画面へアクセス
- 「/demonstrate」を指定して開く
- Titansが動く様子を端から順にプレビュー
- WebSocketで各エージェントとリアルタイムに対話
- 各エージェントのパフォーマンスをリアルタイムで可視化
この手順で、Titansのパフォーマンス指標をリアルタイムでモニタリングできます。
参照:Titans:Learn-to-Memorize-at-Test-Time
Titansが活用される具体的なシーン

Titansの長期記憶機能は、どういった場面で活用されるのでしょうか?ここでは、Titansの活用が予想される具体的なシーンをお伝えしましょう。
膨大な文書を扱う場面
Titansは、何万文字もある文章を扱う場面での活用が期待されます。従来のAIでは、
- 一度に読み込める量に限界がある
- 理解に不十分な点が出てしまう
などが通常であるため、情報を細かく区分して、一つひとつ解釈してもらう必要がありました。
しかし、Titansであれば、冒頭から文末まですべての文脈を保持しながら、指示を一括して実行してくれます。特に、難解かつ正確性が求められる契約書や研究論文の要約・解釈の際には、その効果がさらに際立つでしょう。
配列データを読む場面
Titansは、長大な配列データを読む場面での活用も想定されます。例えば、
- 情報が一直線に続くDNA配列
- センサーから連続的に記録されるデータ
などは、途中で分断すると意味を成さなくなってしまいます。しかし、Titansは長い配列全体を一度に処理できるため、連続性が重要となる研究分野での応用が見込まれます。
過去の流れが重要な場面
Titansは、「過去の出来事が今にどう影響しているか」の分析にも向いています。例えば、
- 金融市場の値動き
- 工場・IoT機器のセンサーデータ
などは、短期の変化だけでなく、長期間の傾向が重要です。Titansは大量の時系列データをまとめて扱えるため、瞬間的な予測ではなく、流れを読む用途での活用が期待できるでしょう。
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Titansの登場が示すように、AIの世界は常に課題を克服し、目まぐるしく進化し続けています。今回のTitansが実現した長期記憶技術は、工場や建設現場で蓄積される膨大なデータにも応用できるため、現場の判断精度や改善サイクルを一変させる可能性があります。
しかし、この変化を追いきれなければ、業務改善や生産性向上のチャンスを逃してしまいかねません。だからこそ、最新のAI動向を把握し、早い段階で活用戦略を描くことが重要なのです。
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Titansについてまとめ
Titansは、私たちが使っているChatGPTやGeminiといった生成AIの「記憶の忘却」という課題を克服したアーキテクチャ(設計図)です。今後、TitansによりAIが長期記憶を実現し、第4次AIブームは最高潮を迎えると予想されます。
こういった状況下において、AIは業務アシスタントを超えた存在、つまり自分自身を誰よりも深く理解する最高のパートナーとして、私たちの働き方や学び方を根本から変えていくでしょう。
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