製造業や建築業をはじめとして、医療、教育、アパレルなどCADのSaaS化は急速に拡大しています。しかし、一方で「CADをSaaS化するメリットが良く分からない」という声も耳にするようになりました。
そこで本記事では、CADをSaaS化するメリットと移行時の注意点、導入を成功させるポイントについて解説します。
CADのSaaS化の現状と重要性
CADのSaaS化は、2010年代ごろから一般に認知されるようになりました。
初めて手掛けたのはアメリカのソフトウェア企業・PTCで、2010年後半にはCAD分野のトレンドとなるほど注目を集めます。
その後コロナ禍によるリモートワークの増加、国による「デジタル庁」の設置などを背景に急速な広がりを見せました。
現在は、クラウドやAIなどの先進技術を駆使した「パラメトリックモデリング」や「ジェネレーティブデザイン」などの斬新な手法を用い、CADの設計方法にさらなる革新をもたらしています。
CADのSaaS化はクラウドベースのアクセス性向上、設計プロセスの効率化などメリットも非常に多く、今や設計業界におけるデジタルトランスフォーメーション(デジタル技術による新たな価値の創造)において欠かせない技術となりました。
今後もモノづくりの現場をはじめとした広範な業種の効率性アップ、そして競争力向上に大きく貢献していくと予想されています。
SaaS型CADの基本的な特徴
インターネット経由で利用できるSaaS型CADには、クラウドベースならではの利点、柔軟性・スケーラビリティの高さなどの特徴があります。
クラウドベースの利点
SaaS型CADのようなクラウド型CADは、場所を問わずアクセスできるのがメリットです。
クラウドベースなので、設計者やエンジニアはパソコンとネット環境があれば移動中でも作業が可能です。最新情報の確認や簡易的な編集作業であれば、パソコン以外の端末(スマホなど)でも対応できます。
また、自動でアップデートするため、常に最新の機能やツールを利用できるのも魅力の一つです。
このように、クラウド型CADは設計プロセスの効率化、導入時のコスト削減、スムーズな共同作業などを可能にしました。
従来のCADソフトウェアにはなかったメリットを享受できるのは、やはりクラウドベースの利点といえるでしょう。
利用の柔軟性とスケーラビリティ
SaaS型CADの特徴は、利用の柔軟性とスケーラビリティです。
SaaSはモジュール化(機能的なまとまりに分割)されていて、必要であれば随時機能を追加することもできます(従量課金制)。
もちろん、ビジネスの要件に合わせて自由にカスタマイズしてもOKです。「無駄なコストを徹底的に削減したい」「最適なシステム構築を目指したい」という企業にとってもメリットが大きいでしょう。
SaaS型CADを利用する際には、あらかじめCADを始める方法を知っておくことも大切です。
以下の記事はCADの基本的知識から解説しているので、CAD初心者でもスムーズに理解できる内容となっています。
CADをSaaS化する主なメリット
CADをSaaS化するメリットは多岐にわたります。
本項では以下4つの主なメリットについて解説します。
- 初期投資の削減
- アップデートとメンテナンスの手間削減
- どこからでもアクセス可能
- コラボレーションの向上
導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
初期投資の削減
CADをSaaS化するメリットの一つは、初期投資の削減です。
初期投資を削減できると、資金面の不安がある企業もスムーズに導入できます。
従来は、オンプレミス型CAD(自社でソフトウェアをインストールするCADシステム)が主流で、導入時には高価なソフトウェアを購入しなければいけませんでした。
しかし、SaaS型CADはインターネット経由で利用できるため、物理的なサーバーが不要です。
また、必要な機能だけを選択できる従量課金制なので、納得のいく料金でサービスを利用できます。
アップデートとメンテナンスの手間削減
CADをSaaS化するメリットの一つは、アップデートとメンテナンスの手間削減です。
SaaS型CADでは、アップデートやメンテナンスを自動で行ってくれます。
例えば、プロバイダが常に最新機能やセキュリティパッチを適用するため、自社でアップデートする必要がありません。
「常に安全な環境で利用したい」「業務効率向上を目指したい」という企業にもおすすめのサービスです。
どこからでもアクセス可能
CADをSaaS化するメリットは、どこからでもアクセスできるということです。
SaaS型CADはクラウド上で動作し、インターネット環境があれば場所やデバイスを問わずアクセスできます。自宅や外出先など、あらゆる場所から作業できるため、テレワークやリモートワークにも最適です。
パソコンだけでなく、タブレットやスマートフォンが利用できる点も魅力といえるでしょう。
コラボレーションの向上
CADをSaaS化すると、コラボレーションが大幅に向上することもメリットです。
例えば、違う場所にいるメンバーでも、リアルタイムでデータにアクセスできます。
複数人で同じデータを編集できるため、「生産性が大幅にアップした」というケースも多いです。
コメント機能を活用すると、設計に関する意見交換の場を活性化・円滑化できます。
CADをSaaS化する際の注意点
CADをSaaS化する際にはいくつかの注意点があります。
データのセキュリティとプライバシー
CADをSaaS化する際には、データのセキュリティとプライバシーに注意しておきましょう。
例えば、情報漏洩防止対策・管理が十分である、情報を悪用されないように強力な暗号化技術を採用しているサービスがおすすめです。
CADをSaaS化するとデータはクラウド上で保存されるため、信頼できるサービスプロバイダを利用することを心がけてください。
インターネット接続の信頼性
CADをSaaS化するときは、インターネット接続の信頼性にも注意が必要です。
インターネット接続が切断されると、データへのアクセスができなくなります。
「作業が中断したために重要なデータが失われた」というケースもあるため、生産性を安定させるためにも信頼性の高いサービスを利用しましょう。
既存データの移行計画
CADをSaaS化する際の注意点は、既存データを新しいSaaS環境に移行する計画を立てることです。
大切なデータ損失を防ぐためにも、必ず実行しておいてください。
移行の際には、まず移行するデータの種類、量、フォーマットを明確にしたうえで、移行作業のスケジュール(開始時期、終了時期、作業工程など)を作成します。
専門業者による移行サービスもあるので、不安な場合は活用しても良いでしょう。
ユーザートレーニングとサポート体制
CADをSaaS化する際には、ユーザートレーニング(利用者が新しいツールを効果的に使用する方法を学ぶこと)とサポート体制に注意しておきましょう。
SaaS化したCADはインターネットに依存するため、トラブルが発生した場合はスピーディに対応する必要があります。
導入前には、ユーザートレーニングに対応できる人材育成をすること、問題に直面した際に適切なサポートを受けることを心がけてください。
SaaS型CAD導入を成功させるためには
SaaS型CAD導入を成功させるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
適切なソフトの選定
SaaS型CADを導入する際には、適切なSaaS対応のCADソフトの選定が重要です。
例えば、必要な機能がそろっているか、データ保護が十分か、トラブル時の対応が素早いか、日本語サポートに対応しているかなどが挙げられます。
エンジニアの生産性向上や製品開発・設計の円滑化、従業員の業務時間短縮を目指したい企業にはSaaS対応の3D CADソフト「Creo+」をおすすめします。
「Creo+」は、業界トップレベルの高度な機能を兼ね備えた3D CADソフト「Creo」のSaaS型版です。
現行の「Creo」と同じ機能を持っていますが、SaaS化によりアクセスのしやすさ、拡張性、コラボレーション、セキュリティが向上しCADのデータ管理を簡素化することが可能となりました。
「Creo」には無料体験版の用意がありますのでこの機に利用してみてはいかがでしょうか。
従業員のトレーニングと意識向上
SaaS型CAD導入を成功させるためには、従業員のトレーニングと意識向上が大切です。
新しい操作方法を習得することは、業務効率・設計品質の向上につながります。
従業員の意識を高めるためには、事前に導入の目的やメリットを明確に伝えることもポイントです。
導入に向けた理解と協力を促進するために、気軽に話せる意見交換の場を設けるのも良いでしょう。
継続的な評価とフィードバックの活用
SaaS型CAD導入を成功させるためには、導入後の継続的な評価とフィードバックの活用が重要です。具体的には、導入目的の達成度やコスト削減効果などを定期的に評価する、ユーザーによる使用感や機能性などのフィードバックを収集するなどが挙げられます。
SaaS型CADが業務効率化とイノベーションの源となるためにも、継続的な改善は欠かせないといえるでしょう。CADのSaaS化を成功させるためには、初心者向けのCADフリーソフトについて知っておくことも大切です。
CADをSaaS化するメリット まとめ
CADをSaaS化すると、初期投資の削減やアップデートの手間削減などさまざまなメリットがあります。導入時には、適切なプロバイダーの選定や従業員のトレーニングが必要なので、事前準備をしっかり行っておきましょう。