切削加工や金型成形を行う際に必要不可欠なのが「マシニングセンタ」です。しかし、一括りに「マシニングセンタ」といってもさまざまな種類があり、その中でも豊富な製品が多数のメーカーから出ています。そのため、どの製品を選べば良いかわからない方も多いのではないでしょうか?
今回は、どのマシニングセンタを選べば良いか迷っている方向けに、マシニングセンタの種類やそれぞれのメリット、おすすめの製品を取り扱っているメーカーについて詳しく解説します。マシニングセンタの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
マシニングセンタとは
マシニングセンタとは、付属している工具を回転させながら材料を削り出していく機械のことを指します。一般的には切削する材料を固定しておき、そこに対して工具を当てていくように加工を施していきます。
マシニングセンタはプラスチック射出成形の金型製造や、ワンオフ試作品を製造するなど、現代の加工には必要不可欠なものとなってきています。
マシニングセンタが動く原理
マシニングセンタは制作過程において、人が関与しなくても製造に対応できます。マシニングセンタは設定されたプログラムをもとに加工を行うため、構築までを人が担当すれば、あとは自動で加工を行ってくれます。
同様の切削機能を持つ加工機に「フライス盤」があります。フライス盤は手作業やコンピュータの指示によって動くのに対して、マシニングセンタはコンピュータで作成したプログラムを駆使して自動で動く機械です。つまり、マシニングセンタ用のプログラムを作成してしまえば、最初から最後まで自動的に加工できるというメリットがあります。
また、工具の干渉防止機能や工具取り替えに対応しているシステムを活用すれば、複数の製品製造を自動で行わせることも可能です。
マシニングセンタの用途
マシニングセンタは、主に次のような用途で活用できます。
- プラスチック射出成形の金型
- ワンオフパーツの製造
- 半導体製造装置作成
- 複雑な形状を持つ切削加工
現代の製造過程においては、精密であることが求められます。マシニングセンタがなければ実現できない加工もあるほどのため、今の時代には必要不可欠な道具だといえるでしょう。
マシニングセンタの選び方
マシニングセンタにはさまざまな種類のものがあることから、どの製品を選べば良いのかと悩む方もいることでしょう。ここでは、主なマシニングセンタの選び方を3つ紹介します。
軸の仕様で選ぶ
1つ目のポイントは、軸の仕様で選ぶことです。
マシニングセンタには、主に次の3つの主軸の仕様があり、それぞれの項目において業務に最適なものを選択することが求められます。
- 最大回転数:小さなワークの場合は20,000mm-1以上の回転ができるものを選択するのが良い。
- 最大トルク:重量が必要な切削の場合は最大トルクができる限り高いものを選択すべき。
- 主軸径:主軸径には30mm、40mm、50mmといったものがある。重量加工が必要な場合は50mm、軽量加工の場合は30mmが良い。
テーブルの大きさで選ぶ
2つ目のポイントは、テーブルの大きさで選ぶことです。
マシニングセンタでは、加工するワークに最適なテーブルの大きさがあり、小さすぎてもあまり大きなワークには対応できません。
ただし、テーブルが大きいほど加工機の性能が高まり費用がかかるため、価格を抑えて
導入したいのであれば、小さいテーブルの加工機にオプションでテーブルをつけるなどができるモデルを選択することがおすすめです。
自動工具交換装置仕様で選ぶ
3つ目のポイントは、自動工具交換装置がついているものを選ぶことです。
ATC(Automatic Tool Changer)とも呼ばれますが、これらの性能が高いものを選べば、効率的に工具を交換でき、加工にかかるスピードが大幅に短縮できます。
自動工具交換装置には、主に2つの種類が存在します。
- タレット式:主軸の周りに放射状になるように工具をつける。工具を交換する頻度が多い場合にはタレット式がよい。
- マガジン式:マガジン式は機械内部の専用スペースに工具を収納するタイプのもの。収納できる工具の数が多く、取替にかかる工数を削減できる。
マシニングセンタの種類
マシニングセンタには、さまざまな方式で駆動するものがあります。求められる性能によって種類が分かれているため、業務に最適なマシニングセンタを活用する必要があるでしょう。
ここでは、一般的な加工現場で用いられるマシニングセンタの種類を3つ紹介します。
立形マシニングセンタ
立形マシニングセンタは、主軸が垂直方向になっているマシニングセンタを指します。垂直方向に大きいため、省スペースでも設置しやすいメリットがあります。
また、他のマシニングセンタよりも導入コストが低く、材料の交換もしやすいことも特徴です。とはいえ、高性能を持つものは少なく、XYZの3軸加工に特化しているものが多いです。
5軸立形マシニングセンタ
5軸立形マシニングセンタは2つの回転軸を備えたものです。5軸立形マシニングセンタは2〜3軸加工のものよりも立体的な加工ができるため、加工後に一度再設置が必要な製品だとしても1回の加工で製品を製造できます。
ただし、立形マシニングセンタよりも多くの費用を必要とするため、自社の加工状況に合わせて最適なものを選択するのがおすすめです。
横形マシニングセンタ
横形マシニングセンタは、主軸が水平に取り付けられているマシニングセンタです。立形のものよりも設置スペースは必要となりますが、加工中に材料交換をできたり、切り出した屑を排出しやすかったりといったメリットがあります。
また、大量生産に向いており、縦形より横形の方が活躍します。
立形マシニングセンタのメリット
ここまで、マシニングセンタの種類について紹介しました。続いては、それぞれのマシニングセンタのメリットについて詳しく解説します。まずは、立形マシニングセンタのメリットについて解説しましょう。
図面通りの加工でわかりやすい
1つ目のメリットは、図面通りの加工ができることです。図面と切削工具の向きが同じため、より直感的に加工が行えます。
省スペースで加工できる
2つ目のメリットは、省スペースで加工できることです。立形マシニングセンタは横型のものと比較して本体が小型のため、省スペースで設置ができます。工場の規模があまり大きくない場合におすすめの製品となっています。
5軸立形マシニングセンタのメリット
次に、5軸立形マシニングセンタのメリットを紹介します。
一度で多面加工ができる
1つ目のメリットは、一度で多面加工ができることです。
3軸加工の場合は、下面を加工する際に一度設置してある材料を取り外し、方向を変えて再設置する必要がありました。取外しの工数がかかることはもちろんですが、設置の位置ずれによって加工品質が低下する恐れもありました。
一方で、5軸加工に対応していれば、テーブルの旋回によってあらゆる面を加工できるため、台から素材を取り外す手間が省けます。加工精度を下げることなく、短時間で加工が可能となるでしょう。
長いツールが必要ない
2つ目のメリットは、長いツールが必要ないことです。
軸加工の場合はツールとワークの干渉を防ぐために長いツールを導入する必要があります。その結果、材料によってはツールがたわみ、加工精度に大きな影響を与えることがあります。
一方で、5軸の場合は干渉しない場所にツールを設置できるため、3軸加工よりも短いツールの長さで加工が可能です。安定性が上がり、ツールが故障する可能性も防げるでしょう。
最も効率の良い箇所で切削できる
3つ目のメリットは、最も効率の良い箇所で切削できることです。ツールの先端など最も効率の良い箇所で加工を施すようプログラムを構築できるため、少ない労力で加工を行えます。
横形マシニングセンタのメリット
次に、横形マシニングセンタのメリットを3つ紹介します。
高さのある加工に対応しやすい
1つ目のメリットは、高さのある加工に対応しやすいことです。
横形マシニングセンタは主軸が図面とは異なる横向きに設置されています。そのため、高さのあるワークでも対応しやすいメリットがあります。
切り屑が溜まりにくい
2つ目のメリットは、切り屑が溜まりにくいことです。
ワークを横から加工していくため、切り屑が重力に従って落下していきます。切削中に切屑が詰まったり、仕上げ面が傷ついたりする恐れが少なくなるため、工具を劣化から守ることができるでしょう。
APCがあれば長時間自動加工できる
3つ目のメリットは、APC(自動パレット交換装置)によって長時間の加工ができることです。
APCを搭載しているマシニングセンタの場合、機械の取り外しを自動で行ってくれます。したがって、複数のAPCを搭載しておけば、長時間自動で加工を施すことも可能です。
立形マシニングセンタでおすすめのメーカー一覧
これまで、マシニングセンタの種類やそれぞれのメリットについて解説しました。種類ごとにさまざまなメーカーが存在しており、それぞれ特徴も異なるため、自社に最適な製品を選択することが重要です。
ここからは、マシニングセンタでおすすめのメーカーを紹介していきます。まずは、立形マシニングセンタで主要メーカーを3つ紹介しましょう。
ブラザー工業株式会社
ブラザー工業株式会社は、FAXや複合機、プリンターなどを開発している企業です。精密機器に強い同社ですが、SPEEDIOブランドという名称で工作機械を製造しています。
CNCからマシニングセンタ、金属加工機など幅広い製品を製造しており、セットで機械を導入することもできます。特に、マシニングセンタは28本のマガジンに工具や治具をセットできるため、工作物に求められる加工クオリティに応じて幅広く対応可能です。
ファナック株式会社
ファナック株式会社は、自動化装置に強みを持つメーカーであり、CNC加工装置の国内シェア率は7割を超えている企業です。マシニングセンタでは小型加工に強みを持っています。
エンシュウ株式会社
エンシュウ株式会社は工作機械やレーザー加工機などを製造しているメーカーです。マシニングセンタにおいては、立形、横形、専用機など豊富なラインナップを取り揃えているため、自社の加工に最適な製品を選定できるでしょう。
5軸立形マシニングセンタでおすすめのメーカー一覧
次に、5軸立形マシニングセンタでおすすめのメーカーを3つ紹介します。
ヤマザキマザック株式会社
ヤマザキマザック株式会社は、CNCやレーザーカッター、5軸加工機、複合加工機など幅広い製品を取り扱っている会社です。
マシニングセンタにおいては、鉄などを加工できる重切削加工に対応しているものから、アルミニウムなどの軽量加工に対応しているものまで1つの機械で対応できる点が特徴として挙げられます。
DMG森精機株式会社
DMG森精機株式会社は、工作加工機や自動化システムの製造に強みを持つ会社です。工作加工機一つとっても、マシニングセンタだけでなく、ターニングセンタ、超音波加工機など幅広い製品を取り扱っています。
マシニングセンタにおいては立形と横形があり、それぞれさまざまなラインナップの商品が提供されています。
株式会社ジェイテクト
株式会社ジェイテクトは、自動車部品の製造から工作加工機、センサーの開発までさまざまな製品を手掛けているメーカーです。工作加工機においては研削機やマシニングセンタなどを取り揃えており、自社のニーズに最適な製品を選択できます。
マシニングセンタにおいては横形、立形、門形など幅広い製品が用意されており、加工範囲が細かく区分されているため、自社に最適な製品を選択できるでしょう。
横形マシニングセンタでおすすめのメーカー一覧
次に、横形マシニングセンタを選択する場合におすすめのメーカーを3つ紹介します。
コマツNTC株式会社
コマツNTC株式会社は自動車の製造や各種加工機の製造に強みを持つメーカーです。1945年設立から半世紀以上の業歴を重ねて培った自動車製造に関するノウハウを駆使して各種加工機の販売を行っています。
マシニングセンタにおいては「Nシリーズ」と呼ばれる製品が多数取り揃えられており、それぞれ異なる強みを持っています。豊富な製品の中から自社の運用状況に最適な一つの製品を選択できるでしょう。
東台精機
東台精機は、台湾の上場企業の中で売上高No.1の実績を持つ会社です。1969年創設から半世紀以上の歴史と実績をもとにさまざまな工作機を製造しています。
マシニングセンタにおいては、立形、立形5軸、横形などさまざまな製品を製造していますが、横型においてはBT-40、BT-50の2種類のタイプが存在しており、それぞれ加工範囲によって4種類取り揃えられています。
すべてのラインナップを合わせると、四方600mm程度の加工範囲から1,000mmを超えるラインナップまで幅広く用意されています。
オークマ株式会社
オークマ株式会社は複合機や旋盤加工機、研削機など各種加工機の製造に強みを持っているメーカーです。
同社の横形マシニングセンタにおいては、11種類の豊富なラインナップが存在しており、大物ワークに対応できるものから小物部品の加工時間を短縮できるものまでさまざまな強みを持つものが用意されています。
まとめ
どのマシニングセンタを選べば良いか迷っている方向けに、マシニングセンタの種類やそれぞれのメリット、おすすめの製品を取り扱っているメーカーについて詳しく解説しました。
マシニングセンタにはさまざまな製品が取り揃えられています。加工能力を満たさないものだと、自社の業務に支障をきたしてしまうことがありますし、あまりにも性能が高すぎるものだと、うまく使いきれないケースがあります。
今回紹介した選び方や、メーカーなども参考に最適なマシニングセンタを導入してみてください。